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監修者

松岡 雄治
地方国立大学医学部卒業後、横浜市内で初期臨床研修を経て、関東の基幹病院で勤務中。
資格:医師国家試験合格、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級
生理中、下腹部の痛みで夜中に目が覚めたり、なかなか寝つけなかったりするとつらいものです。生理痛による刺激は睡眠を妨げることがありますが、鎮痛薬の使い方や体の温め方、寝る姿勢を工夫すると、痛みがやわらぐ場合があります。
この記事では、生理痛で夜中に目が覚める理由と、今夜からできる対処法を解説します。毎月強い痛みを繰り返している場合に、医療機関へ相談する目安も紹介します。
生理痛で夜中に目が覚める理由
月経中は、子宮の収縮による痛みや体内の変化によって、眠りが浅くなったり、夜中に目が覚めたりすることがあります。ここでは、生理痛が睡眠を妨げる理由を3つの側面から解説します。
1. プロスタグランジンによる子宮の収縮
月経時には、子宮内膜でプロスタグランジンという物質が作られます。プロスタグランジンには子宮を収縮させ、はがれた子宮内膜を経血として体外へ押し出す働きがあります。
この作用が強いと子宮が過剰に収縮し、下腹部痛や腰痛が起こりやすくなります。吐き気や頭痛、下痢などを伴うこともあります。
生理痛は、一般的に月経が始まった直後や経血量の多い時期に強くなる傾向があります。夜中に目が覚めるのも、夜間だけプロスタグランジンが増えるからではなく、日中から続いている痛みが睡眠を妨げている可能性があります。
※出典:厚生労働省研究班監修 女性の健康推進室ヘルスケアラボ「月経困難症」
2. 就寝中の冷えと血行不良
就寝中に下腹部や腰が冷えると、体がこわばり、生理痛をよりつらく感じることがあります。温めると楽になる場合は、腹部を冷やしにくい寝衣や寝具を選びましょう。
ただし、寝室を暖めすぎると、寝汗や寝具の蒸れによって目が覚めることがあります。腹部を穏やかに保温しながら、暑さや寒さを感じにくい室温と寝具に調整してください。
足先の冷えが気になる場合は、締め付けの少ない靴下を使う方法もあります。汗で衣服がぬれた場合は、体が冷えないよう乾いたものへ着替えましょう。
なお、生理痛には子宮の収縮や婦人科系の病気など、さまざまな原因が関係します。温めても強い痛みが続く場合は、冷えだけが原因だと考えないことが大切です。
3. ホルモンバランスの変化
月経周期に伴い、卵胞ホルモンと黄体ホルモンの分泌量は変化します。こうした変化によって、月経前後に睡眠の質や気分、体温の変化を感じる人もいます。
生理前のプロゲステロン(黄体ホルモン)の低下など、ホルモンの急激な変動は自律神経に影響を与え、体温調節を難しくしたり眠りを浅くしたりすることがあります。結果的に普段は問題にならない違和感でも目が覚めやすくなることがあります。生理痛のほか、経血が気になることや寝具の蒸れ、不安など、複数の要因が重なっている場合もあります。
原因を振り返るために、次の内容を記録しておくとよいでしょう。
- 目が覚めた時刻
- 痛みの強さと続いた時間
- 月経周期と経血量
- 吐き気や頭痛などの症状
- 気分や睡眠の変化
記録しておくことで、自分の症状の傾向を把握しやすくなり、婦人科へ相談する際にも状況を伝えやすくなります。
生理以外の要因による夜間覚醒や、生理前の寝つきにくさについては、以下の記事も参考にしてください。
【関連記事】
上級睡眠健康指導士監修|夜中に目が覚める原因6つと対処法3選
生理前に眠れない原因と今夜から試せる7つの対処法|ホルモンバランスと睡眠の関係を解説
生理痛で夜中に目が覚めてしまうときの対処法
生理痛で夜中に目が覚めた場合は、無理に我慢せず、鎮痛薬や温め方、寝る姿勢などを見直しましょう。痛みをなくそうとして強い刺激を加えるのではなく、体の力を抜いて楽に過ごせる方法を選ぶことが大切です。
ここでは、今夜から試せる4つの対処法を紹介します。ただし、痛みが急激に強くなった場合や、普段と異なる症状がある場合は、セルフケアだけで様子を見ず医療機関へ相談してください。
1. 鎮痛剤を使う
生理痛には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの鎮痛薬が使われます。NSAIDsには、痛みの原因となるプロスタグランジンが作られるのを抑える働きがあります。
市販薬を使用する場合は、添付文書に記載された用法・用量と服用間隔を守りましょう。空腹時を避ける必要があるかなど、服用時の注意も薬によって異なります。
次に当てはまる場合は、服用前に医師や薬剤師へ相談してください。
- 持病や薬のアレルギーがある
- 妊娠している、または妊娠の可能性がある
- ほかの薬を服用している
薬が効かないからといって、自己判断で服用量や回数を増やしてはいけません。鎮痛薬を使っても痛みが治まらない場合や、毎月多くの薬が必要になる場合は、婦人科へ相談しましょう。
2. 下腹部や腰を温める
下腹部や腰を穏やかに温めると、痛みがやわらぐ場合があります。蒸しタオルや湯たんぽなどを使い、心地よいと感じる温度に調整しましょう。
ただし、湯たんぽや使い捨てカイロを肌へ直接当てると、低温やけどを起こすおそれがあります。布や衣服の上から使用し、同じ場所を長時間温め続けないでください。
眠っている間は熱さに気づきにくいため、就寝用ではない器具をつけたまま眠るのは避けましょう。電気毛布などを使う場合も製品の説明書に従い、就寝時は温度を下げるなどして安全に使用してください。
3. 横向きで膝を曲げ楽な姿勢をとる
横向きになって膝を軽く曲げると、腹部の力を抜きやすくなり、痛みがやわらぐことがあります。背中を丸めすぎず、呼吸しやすい姿勢を探してみましょう。
腰や骨盤周りが安定しない場合は、膝の間にクッションを挟んだり、抱き枕を使ったりすると楽になることがあります。
ただし、すべての人に適した寝姿勢があるわけではありません。仰向けが楽な場合は、膝の下にクッションを置き、腰の反りを抑える方法もあります。姿勢を変えたときの痛みや呼吸のしやすさを確かめ、自分が力を抜きやすい姿勢を選んでください。
4. 下腹部や腰をマッサージする
下腹部や腰に手を当て、ゆっくりさすると、緊張がやわらぎ心地よく感じられる場合があります。痛みを我慢して強く押したり、揉んだりする必要はありません。
マッサージによる感じ方には個人差があり、生理痛の原因を解消できるものではありません。しかし、手を当ててさするなど、刺激を入れることで痛みを感じにくくなることがあります。次のような症状がある場合はマッサージを中止し、医療機関へ相談してください。
- 突然、激しい痛みが現れた
- 触れると強く痛む
- 出血量が急に増えた
- 普段とは異なる痛みがある
この場合は、無理に患部へ触れず、楽な姿勢で安静にしましょう。
「ゲートコントロール理論」というものがあります。痛み刺激が脳に伝わるにあたって関所(ゲート)があり、これが痛みを抑えるのに応用できるという説です。
身近なところでは、痛いときにさすると少しマシになったように感じる現象のことです。痛みの刺激が脳に伝わるときに、さする刺激など別の信号が入ると、痛みが脳に伝わりにくくなるのです。
※出典:日本臨床麻酔学会誌「術後痛の予測・内因性鎮痛機構─内因性鎮痛からこれからの周術期疼痛管理を考える─」
生理痛がつらい夜でも眠るための工夫
生理痛への対処とあわせて、入浴や寝具、就寝前の過ごし方を見直すと、眠りに入りやすくなる場合があります。ここでは、体に負担をかけずに取り入れられる3つの工夫を紹介します。
ただし、睡眠環境を整えても強い痛みが続く場合は、無理に眠ろうとせず、鎮痛薬の使用や医療機関への相談も検討してください。
1. 入浴で体を温める
体調が安定している場合は、就寝の1〜2時間前に入浴して体を温めましょう。厚生労働省では、約40℃のお湯に10〜15分つかる方法を、快眠につながる入浴の目安として紹介しています。
入浴後に深部体温が下がっていくと、自然な眠気が訪れやすくなります。また、下腹部や腰が温まることで、生理痛がやわらぐ場合もあります。
ただし、経血量が多い場合や、めまい・立ちくらみがある場合は、無理に湯船へ入らないでください。短時間のシャワーに替えるか、体調が落ち着くまで休みましょう。
熱いお湯や長時間の入浴は、のぼせや脱水につながります。入浴後は水分を補給し、浴槽や浴室から出るときはゆっくり立ち上がってください。
※出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」
2. 保温性のある寝具・パジャマを選ぶ
寝具やパジャマは、腹部を冷やしにくく、締め付けの少ないものを選びましょう。ウエストがきつい衣類は、下腹部の痛みや不快感を強めることがあります。
一方で、厚い寝具を重ねすぎると、蒸れや寝返りのしにくさによってかえって睡眠の質が下がることがあります。寝返りは、睡眠中に体の一部がずっと圧迫されることで血液が循環しにくくなるのを避けたり、体温や熱・水分の発散を調節したりといった働きもあります。
保温性だけでなく、汗や湿気を逃がしやすい素材かどうかも確認してください。
経血漏れが気になって眠れない場合は、就寝前に生理用品を交換し、必要に応じて防水シーツを使う方法も検討しましょう。漏れへの不安を減らし、安心して寝返りできる環境を整えましょう。
季節や素材に合わせた寝るときの服装については、以下の記事も参考にしてください。
関連記事:寝る時の服装は何が正解?パジャマと部屋着の違いから季節別の選び方まで解説
※出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「快眠のためのテクニック」
3. 寝る前のスマホ・カフェインを控える
就寝前はスマートフォンを見る時間を短くし、使用する場合も画面の明るさを抑えましょう。画面から発せられる光だけでなく、動画やメッセージなどによる刺激も寝つきを妨げることがあります。
また、カフェインには覚醒作用があります。影響を受けやすい人は、就寝の5〜6時間前から摂取を控えてみましょう。カフェインはコーヒーだけでなく、緑茶やエナジードリンクなどにも含まれています。
夜中に痛みで目が覚めたときも、照明は必要な範囲にとどめ、スマートフォンを長時間見ないようにします。時刻を何度も確認すると焦りにつながるため、時計を視界に入りにくい向きへ置くのもひとつの方法です。
カフェインについては、摂取する総量にも注意が必要です。カフェインの摂取量が400mgを超えると朝だとしても、その日の夜の睡眠に影響が出ると警告されています。眠りへの影響が気になる場合には、ぜひ確認してみてください。
〈カフェインの目安の量〉
カフェイン400mgを含むコーヒーの目安量
- ドリップコーヒーでコーヒーカップ 4杯分(700cc)
- 市販 のペットボトルコーヒー 1.5本分(750cc)
※出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
受診を考えたい目安
生理痛によって眠れないなど、日常生活に支障が出ている場合は、痛みを我慢せず婦人科へ相談しましょう。月経に伴う症状によって日常生活が難しくなる状態は「月経困難症」と呼ばれ、治療の対象になります。
次のような症状がある場合は、婦人科の受診を検討してください。
- 痛みによって毎月眠れない、または夜中に目が覚める
- 鎮痛薬を用法・用量どおりに使用しても痛みが強い
- 生理痛が以前よりも強くなっている
- 月経時以外にも下腹部や腰が痛む
- 排便時や性交時にも痛みを感じる
- 経血量が多く、息切れや立ちくらみがある
強い生理痛の背景に、子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が隠れていることもあります。子宮内膜症では、月経痛のほか、慢性的な骨盤の痛みや排便時の痛みなどが現れます。子宮筋腫では、月経痛や経血量の増加、それに伴う貧血が起こる場合があります。
婦人科では、症状や月経周期についての問診、超音波検査などを通して原因を確認します。治療法は、症状の程度や年齢、妊娠の希望などを考慮して医師と相談しながら決めます。
なお、突然の激しい腹痛や大量の出血、意識が遠のくような症状がある場合は、通常の生理痛だと自己判断せず、速やかに医療機関を受診してください。自力での移動が難しい場合や意識がおかしい場合は、救急車を呼びましょう。
※出典:日本産科婦人科学会「子宮内膜症」
※出典:日本産科婦人科学会「子宮筋腫」
生理痛と夜の睡眠に関するよくある質問
生理痛と睡眠は互いに影響し合い、痛みで眠れなくなる一方、睡眠不足によって痛みをつらく感じることもあります。ここでは、生理痛と睡眠に関するよくある3つの疑問に答えます。
Q1. 寝不足だと生理痛はひどくなる?
睡眠不足や途切れた睡眠によって、痛みを敏感に感じる可能性があります。一方で、強い生理痛が睡眠を妨げ、その結果、翌日に痛みや疲労をさらにつらく感じることも考えられます。
つまり、寝不足だけが生理痛の原因になるわけではなく、痛みと睡眠不足が互いに影響している可能性があります。痛みで眠れない状態が続く場合は、睡眠習慣だけで解決しようとせず、生理痛について婦人科へ相談しましょう。
また、寝不足による眠気が強い日は、車の運転や危険を伴う作業をできるだけ避けてください。
Q2. 夜の方が生理痛が痛いのはなぜ?
夜間に生理痛が必ず強くなるという、一律の仕組みはありません。夜は周囲の刺激が少なくなるため、日中よりも痛みに意識が向きやすくなることがあります。
また、寝具の冷えや蒸れ、長時間同じ姿勢を続けることなどが、不快感を強めている可能性もあります。
毎回同じ時間帯に痛みが強くなる場合は、次の内容を記録しておきましょう。
- 痛みで目が覚めた時刻
- 痛みの強さ
- 鎮痛薬を服用した時刻
- 服用後の痛みの変化
記録があると症状の傾向を把握しやすくなります。鎮痛薬を使用するタイミングや種類を変えたい場合は、自己判断せず医師や薬剤師へ相談してください。
Q3. 生理痛で目が覚めるのは病気のサイン?
一度、生理痛で目が覚めただけで、病気があるとは限りません。ただし、毎月眠れないほど痛む場合や、学校・仕事を休むほど日常生活に支障が出ている場合は、婦人科へ相談しましょう。
特に、次のような症状がある場合は、子宮内膜症などの病気が隠れている可能性があります。
- 生理痛が年々強くなっている
- 月経時以外にも下腹部や腰が痛む
- 排便時や性交時に痛みがある
- 用法・用量どおりに鎮痛薬を使用しても痛みが強い
- 経血量が以前より増えている
受診する際は、痛みの強さや出血量、睡眠や日常生活への影響を伝えてください。症状を記録しておくと、診察時に状況を説明しやすくなります。
まとめ:生理痛の夜は温めと寝る工夫でぐっすりを目指そう
生理痛で夜中に目が覚めるときは、子宮の収縮による痛みが睡眠を妨げている可能性があります。無理に我慢せず、自分の体調に合った方法で痛みをやわらげましょう。
今夜できる主な対処法は、次のとおりです。
- 用法・用量を守って鎮痛薬を使用する
- 下腹部や腰を心地よい温度で温める
- 横向きで膝を曲げるなど、力を抜きやすい姿勢で休む
- 寝具やパジャマを暑すぎず寒すぎない状態に整える
- 就寝前のスマートフォンやカフェインを控える
ただし、眠れないほどの痛みを毎月繰り返す場合や、痛みが年々強くなっている場合、鎮痛薬を使用しても改善しない場合は、婦人科へ相談してください。
痛みの強さや目が覚めた時刻、経血量、薬を服用した時刻などを記録しておくと、受診時に症状を伝えやすくなります。










