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監修者
松本 恭
「健康の秘訣はぐっすり眠ること」がモットーで、これまでウォーターベッド、ウッドスプリングベッド、西式健康枕、ハンモックなどさまざまな寝具の寝心地を追求してきた睡眠マニア。偶然出会ったコアラマットレス®︎の快適さに感銘を受け、メンバーとして参加。上級睡眠健康指導士としての知識を通して、より多くの人に快眠を届けたいと願っている。
「コアラは1日18~20時間も寝る」と聞くと、本当なのか気になりますよね。動物園で丸まって眠り続ける姿を見て、正直うらやましいと思ったことがある人もいるかもしれません。
本記事では、上級睡眠健康指導士でコアラマットレス社員の松本が、コアラの睡眠時間が18〜20時間、条件次第では最大22時間と言われる理由を整理しつつ、なぜそこまで長く眠る必要があるのかを分かりやすく解説します。ユーカリで酔っているという噂の真相や、睡眠と休息の違いを知れば、次にコアラが寝ている姿を見たとき、今までとは違う捉え方ができるかもしれません。
コアラの睡眠時間は約18〜20時間が目安、最大22時間とされることもある
コアラの睡眠時間は、一般的に1日あたり約18〜20時間が目安と言われており、最大22時間前後という表現が用いられる資料や紹介記事もあります。
数字に幅があるのは基準とする値が異なるためです。海外の保護団体や大学の資料では「約18〜20時間」というレンジが基本として示されていますが、ある条件が重なった場合に「22時間」という値が出される傾向にあります。※1
平均と最大の違いを先に押さえる
コアラの睡眠時間を語るときに混乱しやすいのが、平均値としての時間と、最大値として紹介される時間です。多くの個体を観察したうえでの日常的な行動パターンに近い数値として出す場合は、1日18〜20時間が広く引用されます。対して、22時間という数字は、体調や環境条件が重なった日に休んでいることがある最大値に近い数値として扱われます。
人間が平日は7時間前後の睡眠でも、疲れがたまった休日に10時間以上眠ることがあるのと同じだと考えれば分かりやすいでしょう。
睡眠と休息が混ざると数字がズレる
コアラの行動を観察すると、完全に眠っている時間だけでなく、目を閉じたり動かずに過ごしている時間もあります。この動かない時間を「休息」として扱う場合もあれば、「睡眠」に含めて計算する場合もあります。
コアラはユーカリの葉という消化にエネルギーを要する食事をしているため、起きているときでも極力動かず、エネルギー消費を抑えます。そのため、活動していない時間を広く含めると、合計が22時間前後という計算になるのです。
飼育下と野生、季節や個体差で変わる
コアラの睡眠時間は、固定されていません。野生で暮らしているか、動物園などの飼育下にいるかによっても差が生じますし、気温や季節、年齢や個体の体調によっても変わります。特に暑い時期には、体力の消耗を避けるために、より長く休む傾向があるとされています。
そのため、数字はともかくコアラは1日の大半を休息と睡眠にあてている、起きて活動している時間はごくわずかだと理解しましょう。「18時間なのか22時間なのか」と悩む必要はありません。
なぜコアラは長時間寝るのか:ユーカリの低栄養と消化負荷がカギ
よく「ユーカリを食べると酔うからコアラはよく眠る」という話を見かけますが、これは正確ではありません。ユーカリは栄養価が低く、毒素を含み、消化に時間がかかるため、活動時間を極端に減らす必要が生じているのです。この事実についてもう少し深堀りしてみましょう。
栄養が少ないので省エネ生活になりやすい
ユーカリの葉は、水分と繊維質が中心で、タンパク質や糖質といったエネルギー源はあまり含まれていません。そのため、同じ量を食べても得られるエネルギーは限られています。もしコアラが活発に動き回れば、摂取した以上のエネルギーを消費してしまい、生き延びることができません。
ユーカリを主食とするコアラとしては、活動量を増やすよりも、休息を増やして消費を抑える方が圧倒的に合理的なのです。
毒素の処理が必要で、無駄に動けない
さらに、ユーカリにはタンニンや精油成分など、他の動物にとっては有害となりうる物質が含まれています。コアラはこれらを処理できる特殊な腸内細菌や代謝の仕組みを持っていますが、解毒や代謝には一定のエネルギー負荷がかかることが知られています。※2
食後すぐに活発に動くよりも、体内での処理を優先した方が安全で効率的です。そのため、コアラは摂食後に長い休息時間を取ります。外から見ると「ずっと寝ている」ように見える状態の時、体の中で静かに解毒や代謝を進めているのです。
繊維質で消化に時間がかかる
ユーカリの葉は繊維が非常に硬く、消化が簡単ではありません。コアラは発達した盲腸を使って、時間をかけて繊維を分解・発酵させています。この消化プロセスには長い時間が必要で、消化中は新たなエネルギーを生み出しにくい状態です。
その結果、起きて動き続ける余力は少なくなります。消化に集中している時間帯に活動を控えることは、エネルギー収支の面でも理にかなっています。栄養が少ない、毒素の処理が必要、消化に時間がかかるという条件が重なった結果として、1日18〜20時間前後の睡眠と休息が定着したと考えられます。
コアラはいつ起きている?起きている時間と採食時間の内訳
「コアラは寝てばかり」という印象を持つ人は多いですが、実際には起きている時間に明確な役割があります。岡山県立図書館が公開しているレファレンス協同データベースでは、1日の大半を休息にあて、残りの時間をほぼ採食に集中しているという行動配分が示されています。※3
このような一次情報を踏まえると、コアラの生活は「長く眠る動物」ではなく、「必要なこと以外は極力しない動物」という捉え方が近いと言えます。
起きている時間は食事と移動が中心
コアラが起きている時間は1日あたりおよそ4〜5時間で、そのうちの約3〜4時間はユーカリを食べる時間に使われ、残りの時間は木から木への移動や毛づくろいといった最低限の行動にあてられます。※3
ユーカリは栄養効率が低いため、1日に600g〜800g程度を食べ続けなければなりません。その結果、起きている時間の優先順位は「まず食べること」が最上位になり、食事が終わると余計なエネルギー消費を避けるために再び休息に入ります。この流れが1日の基本サイクルです。
半夜行性なので、昼に寝て見えやすい
動物園でコアラを見たときに寝ていることが多いのは、コアラが半夜行性(薄明薄暮性)の動物だからです。半夜行性とは、夕方から夜、そして明け方にかけて活動が増える性質を指します。※4
そのため、人間が最も活動する昼間の時間帯は、コアラにとっては休息時間です。ただし、完全な夜行性ではないため、昼に少し動くこともあれば、夜にも休むことがあります。
動物園で起きている姿を見たいときの見方
起きているコアラを見たいなら、給餌の時間帯を意識することがポイントです。多くの動物園では、新鮮なユーカリに交換する時間帯に合わせて、コアラが目を覚まして採食を始める傾向があります。
ただし、起床のタイミングや行動には個体差があり、必ず起きているとは限りません。事前に各園の飼育情報やスケジュールを確認し、「見られたらラッキー」くらいの気持ちで観察するとよいでしょう。
よくある誤解:ユーカリで酔う説は本当?
コアラについて調べていると、「ユーカリの成分で酔っているから、あんなに寝ている」という話を目にすることがあります。雑学としては面白く聞こえますが、結論から言うと、この説は正しくありません。一次情報を確認すると、ユーカリで酔うという言い伝えは誤りであることが明確に示されています。※1
では、なぜこのような話が広まり、何が正しい説明なのでしょうか。誤解が生まれた背景を科学的に解説します。
酔っているのではなく、省エネの結果として眠る
前提として、ユーカリにはアルコール成分は含まれていません。酔って意識がもうろうとしているからではなく、栄養価が低く毒素を含んでいて消化に負荷のかかるユーカリを主食としているため、エネルギーを極限まで節約する必要があるというのがコアラが長く眠る理由のひとつです。活動量を抑え、休息と睡眠を増やすことが、結果として最も合理的な生存戦略になっているのです。
食条件に適応した結果として眠っていると理解するのが適切でしょう。
休息と睡眠の言葉の混同が誤解を増やす
もう一つ、誤解を広げている要因として、前述したように「睡眠」と「休息」が混同されやすいことが挙げられます。コアラは完全に眠っている時間だけでなく、目を閉じて動かずに過ごす時間も非常に長いのですが、必ずしも深い睡眠ではなく、消化や代謝に集中するための休息に近い場合も少なくありません。
人間の感覚で見るとその区別は分かりにくいため、「寝ている」「ぼんやりしている」とひとまとめにしがちです。その結果、「動かない=酔っているのではないか」という解釈につながり、俗説として広まった可能性があります。情報を読む際には、その時間が睡眠を指しているのか、休息を含んでいるのかを意識することが重要です。
信頼できる情報源の選び方
こうした誤解を避けるためには、情報源の選び方も大切です。コアラの生態について信頼性が高いのは、保全団体や動物園、公的機関、大学などが発信している一次情報や解説です。特に、現地の保全活動を行っている団体や、日常的に飼育・観察を行っている動物園の情報は、根拠が明確で表現も慎重です。
一方で、SNSや雑学系の記事は、分かりやすさや面白さを優先するあまり、話が単純化されたり誇張されたりすることが珍しくありません。「誰が、どの立場で発信している情報か」を一度立ち止まって確認すると、誤解に振り回されにくくなるでしょう。
関連記事:猫の1日の睡眠時間はどれくらい?年齢や習性から解説
他の動物と比べるとどれくらい長い?睡眠時間の位置づけ
コアラは動物界でも睡眠時間がかなり長い部類に入る代表例ですが、必ずしも常に最長というわけではありません。主要な動物と比べながら、コアラの睡眠時間がどの位置づけにあるのか解説します。
コアラは長時間睡眠の代表例
コアラは1日あたり約18〜20時間とされることが多く、これは多くの哺乳類と比べても非常に長い数値です。ナマケモノも長時間眠る動物として有名ですが、条件によってはコアラより短いこともあります。ライオンは肉食獣でありながら10〜15時間程度、犬は10〜12時間、人間は7〜8時間前後が一般的です。同じ草食動物でもキリンは2〜4時間程度とされ、立ったまま短時間の睡眠をとります。
18〜20時間という睡眠レンジは、相対的に見て長時間睡眠であることは確かですが、「動物界で必ず一番」という断定ではなく、条件次第と解釈するのが適切です。
比較するときの注意点:測定条件と定義
動物の睡眠時間を比較する際には、測定条件や定義の違いによるブレがあることを忘れてはいけません。脳波を測定した厳密な睡眠時間なのか、動かずに休んでいる時間を含めた数値なのかによって、結果は大きく変わります。ナマケモノについても、飼育下では長く眠っているように見えても、野生下では実際の睡眠時間が10時間前後だったという報告があります。
そのため、一覧表やランキングをそのまま鵜呑みにするのではなく、あくまでも相対的な理解のための目安として捉えてくださいす。
人間の睡眠と混同しないための整理
最後に強調しておきたいのは、コアラの睡眠と人間の睡眠を同じ基準で考えないことです。人間が1日に20時間眠っていれば、健康状態を疑う必要がありますが、コアラにとってはそれが正常で健康的な生活リズムです。長時間眠ること自体が、食性と環境に適応した結果だからです。
「コアラみたいにたくさん寝たい」と感じる人もいるかもしれませんが、人間には人間に適した睡眠時間があります。コアラの生態を知ればそのことが実感できるでしょう。
関連記事:【獣医師監修】猫が一緒に寝る理由は?メリットや心理を徹底解説
寝てばかりで心配になる疑問に答える:正常に見えるサインと注意点
動物園でずっと寝ているコアラを初めて見ていると、心配になるのは自然な反応です。昼間にほとんど動かず眠っていること自体は、コアラにとって正常な行動ですので、過剰に不安にならないための考え方をご紹介します。
昼に眠って見えても、行動リズムとして自然
これまで説明してきた通り、コアラは半夜行性であり、活動の中心は夕方から夜、そして明け方にかけてです。そのため、人間が動物園を訪れる昼間の時間帯は、コアラにとっての休息時間にあたります。昼に寝て見えるのは、生活リズムどおりに過ごしている結果です。。
心配しすぎないための観察の視点
それでも「今日は本当に大丈夫かな」と感じた場合は、極端な判断をする前に、いくつかの基本的な視点で様子を見てみましょう。たとえば、食事の時間にユーカリをしっかり食べていれば、大きな問題はないと考えられます。また毛並みが比較的整っていて、完全に無反応というわけではなく、呼吸に合わせて体がゆっくり動いている場合も、深く休息している状態なだけで体調に問題はない可能性が高いでしょう。
逆に、明らかに食事を取らない状態が続いている、昼夜を問わず全く姿勢を変えないといった場合には、自己判断せず飼育員に聞くか公式案内を確認しましょう。多くの場合、「今は休息の時間です」と説明してもらえるはずです。
まとめ:コアラの睡眠時間が長いのはユーカリ由来の省エネ戦略
コアラの睡眠時間は1日18〜20時間が目安で、条件によっては最大22時間前後と表現されることがあります。長時間眠る理由は、怠けているからでも、ユーカリで酔っているからでもありません。栄養価が低く、毒素を含み、消化にエネルギーを要するユーカリを主食にしているため、活動を最小限に抑える省エネ戦略が必要という生存戦略のひとつなのです。
動物園でコアラが昼間に丸まって寝ている姿を見かけても、過度に心配する必要はありません。「今日も効率よくエネルギーを節約して生きているんだな」と理解し、見守ってあげるくらいがちょうど良いかもしれませんね。
参考文献
※1 Koala Facts | Australian Koala Foundation
※2 コアラについて | WWFジャパン
※3レコアラの睡眠 レファレンス協同データベース|岡山県立図書館
※4 コアラ紹介 平川動物公園




