
森田 麻里子
医師・小児スリープコンサルタント・睡眠専門家
2012年東京大学医学部医学科卒。
亀田総合病院にて初期研修後、2014年仙台厚生病院、2016
布団に入ると足だけが熱くなり、なかなか眠れない夜もあるでしょう。寝る前の足の温かさには、体の熱を外へ逃がす自然な働きが関係しています。一方、焼けるような熱さやしびれが続く場合は、神経の障害などが隠れていることもあります。※1・2
この記事では、寝るときに足が熱くなる原因と、寝苦しさを減らすためにできる工夫を解説します。受診を考えたい症状も確認し、足の状態に合った対処につなげましょう。
寝るときに足が熱くなる原因
足の熱さは、寝る前の体温変化や寝床の暑さによって感じる場合と、病気に伴う症状として現れる場合があります。気になるときは、熱さだけでなく、痛み・しびれ・むずむず感などもあわせて確認しましょう。
1. 寝る前に手足から熱を逃がす働き
眠りにつく前は、手足などの皮膚から熱が逃げ、脳や内臓など体の内部の温度である「深部体温」が下がります。このとき手足の表面温度は上がるため、足先が温かく感じられます。※1
足が温かくなること自体は、眠りに向かう体の変化のひとつです。ただ、痛いほどの熱さや繰り返すしびれまで、寝る前の自然な反応として片づけないようにしましょう。
2. 寝室や寝具にこもる熱
室温や湿度が高いと、体から熱を逃がしにくくなり、寝つきが妨げられます。寝室の空気だけでなく、布団の中の温度や湿度も眠りに関わります。※1
厚い掛け布団を重ねている、暖房を強くしている、足元が汗で蒸れている場合は、寝床が暑すぎる可能性があります。足の熱さを感じたら、まず寝具やパジャマの厚さが季節に合っているか見直してみてください。
3. 糖尿病などによる末梢神経の障害
足の感覚を伝える末梢神経が傷つくと、焼けるような痛みやピリピリした感覚、しびれが現れることがあります。神経の障害による痛みは夜に強まり、睡眠を妨げる場合もあります。※2
原因には糖尿病のほか、ビタミンの不足、長期にわたる過度な飲酒、薬の影響などがあります。熱さに加えて感覚の鈍さや痛みが続くときは、症状の原因を調べることが大切です。
4. むずむず脚症候群による不快感
足の熱さとともに「脚を動かしたくてじっとしていられない」と感じる場合は、むずむず脚症候群が関係していることもあります。これは、横になったり座ったりしているときに、脚に不快な感覚が現れる病気です。熱い、むずむずする、虫がはうようだなど、感じ方は人によって異なります。※3
夕方から夜に症状が出やすく、歩いたり脚を動かしたりすると一時的に楽になるのが特徴です。動きを止めると再び気になり、眠れなくなることもあります。※4
5. 更年期に伴うほてりや発汗
更年期には、女性ホルモンの変化などに伴うほてりや発汗が、睡眠を妨げることがあります。顔や頭、胸のあたりが急に熱くなる「ホットフラッシュ」が代表的な症状です。※5
足の熱さだけで更年期の影響と判断するのは難しいため、全身のほてりや寝汗など、ほかの変化にも目を向けましょう。夜のほてりや発汗で生活に支障があるときは、婦人科で治療について相談できます。
更年期に眠りにくくなる理由や対処法は、以下の記事でも紹介しています。
関連記事:【医師監修】更年期で眠れない女性へ|不眠症状の原因と今夜からできる5つの改善法
足が熱くて眠れないときの対処法
寝床の暑さが気になるときは、室温と掛けるものを調整して、熱がこもりにくい状態にしましょう。痛みやしびれが続く場合は、環境の見直しだけで対処せず、原因を確認することも必要です。
1. 寝室の温度と湿度を調整する
エアコンや除湿機を使い、暑すぎず寒すぎない寝室に整えましょう。適した室温は季節やパジャマ、寝具によって変わるため、数字だけで決めず、横になったときの暑さや汗のかき方も見て調整します。※1
寝る直前まで暑さが残る部屋では、少し早めに空調を入れておくと調整しやすくなります。足の熱さを抑えようと室温を下げすぎず、体全体が心地よく感じる温度を目安にしてください。
2. 掛け布団や足元の蒸れを見直す
布団の中が暑いときは、掛け布団を薄手のものに替えたり、重ねる枚数を減らしたりして調整します。足元だけに熱がこもるなら、掛け物のかかり方も変えてみましょう。
靴下やパジャマが汗で湿っていれば着替え、シーツや敷きパッドも乾いた状態に保ちます。寝具を選ぶ際は、保温性だけでなく、汗を吸いやすいか、蒸れにくいかにも目を向けるとよいでしょう。寝具の調整は、寝苦しさを減らすための工夫として取り入れてください。
マットレスや寝具の使い方については、以下の記事も参考にしてください。
関連記事:【上級睡眠健康指導士監修】マットレスの使い方について1から解説!他のおすすめ寝具やお手入れ方法とは?
3. 氷や保冷剤で冷やしすぎない
足が熱いからといって、氷水に長く浸したり、凍った保冷剤を直接当てたりするのは避けましょう。強い冷却は皮膚を傷めるおそれがあります。足が赤くなり、焼けるように痛む病気でも、氷や冷水による冷却に注意が促されています。※6
まずは掛け物を調整するなど、足元の熱を逃がす工夫から試してください。冷やさないと耐えられないほどの熱さがある場合や、冷やしても繰り返す場合は、医療機関で症状を伝えましょう。
4. 寝る前は落ち着いて過ごす
足の不快感に加えて気持ちも高ぶっているときは、仕事や家事を切り上げ、静かに過ごす時間をつくりましょう。ゆっくり呼吸する、照明を落として好きな音楽を聴くなど、無理なくリラックスできる方法を選びます。※7
眠ろうと焦って寝床にとどまるより、いったん離れて、眠気が戻るまで暗めの落ち着ける場所で過ごす方法もあります。生活習慣の調整は眠りを支えるためのもので、足の痛みやしびれが続くときには、その症状への対応も必要です。
足の熱さとあわせて注意したい症状
熱さのために眠れない状態が続くときや、痛み・しびれを伴うときは、医療機関へ相談しましょう。症状の出る時間帯や、片足だけか両足かも、原因を調べる手がかりになります。
痛み・しびれや感覚の鈍さが続く
焼けるような痛みやしびれ、触られてもわかりにくい感覚は、末梢神経の障害でみられる症状です。繰り返す場合は、かかりつけ医や内科に相談し、必要に応じて専門の診療科につないでもらいましょう。※2
受診時には、次のことを伝えると症状を説明しやすくなります。
- いつから、どの時間帯に熱くなるか
- 足裏・足先など、どこに症状があるか
- 片足だけか、両足にあるか
- 痛みやしびれ、赤みなどもあるか
- 脚を動かすと楽になるか、眠りにどの程度影響するか
持病や服用中の薬がある場合も、あわせて伝えてください。
赤み・腫れ・痛みを伴う
足が赤く腫れて熱を持ち、痛みもあるときは、皮膚の感染症などが原因になっている場合があります。寝具の暑さと決めつけず、早めに医療機関を受診してください。※8
高い熱や悪寒、強いだるさなど全身の症状もある場合は、速やかな受診が必要です。足だけでなく、体調全体の変化も伝えましょう。
まとめ|足の熱さの原因を確認し、眠りやすい環境を整えよう
寝る前に足が温かくなるのは自然な体温変化のひとつですが、眠れないほどの熱さには、寝床の暑さや病気が関係することもあります。
まずは室温や掛け布団を調整し、足元の蒸れを見直しましょう。氷や保冷剤で強く冷やし続けるのは避け、痛み・しびれがあるときや睡眠への影響が続くときは、医療機関に相談してください。寝室でできる工夫と症状に応じた対応を組み合わせ、落ち着いて休める環境を整えていきましょう。
参考
※1 国立精神・神経医療研究センター病院「温度、湿度と睡眠」
※2 米国国立神経疾患・脳卒中研究所「Peripheral Neuropathy」
※3 米国国立医学図書館 MedlinePlus「Restless Legs」
※6 英国国民保健サービス「Erythromelalgia」
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