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監修者
松本 恭
「健康の秘訣はぐっすり眠ること」がモットーで、これまでウォーターベッド、ウッドスプリングベッド、西式健康枕、ハンモックなどさまざまな寝具の寝心地を追求してきた睡眠マニア。偶然出会ったコアラマットレス®︎の快適さに感銘を受け、メンバーとして参加。上級睡眠健康指導士としての知識を通して、より多くの人に快眠を届けたいと願っている。
「生理前になるとなぜか夜中にパッと目が覚めてしまう」「布団の中で体が火照って寝返りばかり打っている」—自分ではコントロールできないこうした睡眠の不調に、戸惑いを感じていませんか。
私自身、かつては生理前の「眠りの浅さ」にひどく悩まされた一人です。しっかり寝たつもりでも翌朝の疲労感が抜けず、仕事中に猛烈な眠気に襲われては「自分の自己管理が甘いせいだ」と自分を責めていました。しかし、睡眠のメカニズムを学ぶ中で、それがプロゲステロンというホルモンの働きによる「深部体温の低下不足」が原因だと知り、驚くと同時に心の底から救われたのを覚えています。生理前の睡眠トラブルは、あなたの努力不足ではなく、体が一生懸命にリズムを刻もうとしている証拠なのです。
本記事では、上級睡眠健康指導士の資格を持つコアラマットレス社員の松本が、生理前に眠りが浅くなる本当の原因をわかりやすく紐解きます。ホルモンが体温にどう影響するのかという仕組みから、寝苦しい夜を少しでも快適にするための具体的なスイッチの切り替え方、受診の目安まで詳しくお伝えします。
生理前に眠りが浅くなる主な原因
生理前の眠りの浅さには、月経周期に伴う女性ホルモンの変化、深部体温のリズムの乱れ、自律神経の働きやPMSの影響といった、複数の要因が重なっています。まずはその仕組みを順番に見ていきましょう。
1. 女性ホルモンの変化で体温リズムが乱れやすくなる
排卵後から生理が始まるまでの時期を「黄体期」と呼びます。この時期には、プロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌量が増加し、基礎体温が高めに維持されます。
私たちの体は、夜になるにつれて深部体温が下がることで眠気が起きるようにできています。ところが黄体期には、夜間になっても深部体温が十分に低下しにくくなるため、体がなかなか「睡眠モード」に切り替わらない状態が続きます。なぜかというと、眠気をもたらす作用があるとも言われるプロゲステロンは、深部体温(脳や臓器の温度)の1日のリズムのメリハリを弱めてしまう働きを持つからです。※1
日本睡眠学会によると、黄体期には夜間に深部体温が十分低下せず、朝の体温上昇も緩やかになるため、睡眠が深くなりにくく、起床時刻も遅くなりやすいのだそうです。※2
「生理前は体が熱くて眠れない」「ぐっすり眠れた気がしない」という体感は、このような深部体温のリズム変化と深く関係しています。月経周期に伴う自然な体の変化なのです。
2. PMSやPMDDで不眠や眠気が出ることがある
「月経前症候群(PMS)」とは生理前の心身の不調の総称ですが、中でも特に気分の落ち込みやイライラが強い状態を「月経前不快気分障害(PMDD)」と言います。日本睡眠学会によると、健常な女性でも月経が始まる約1週間前(黄体後期)から何らかの睡眠障害を自覚する報告が多いようです。※3
PMSやPMDDでは、不安感や気分の波が強まるとともに、不眠や日中の眠気が合併する可能性があります。眠りの浅さや寝つきの悪さだけを切り離して考えるのではなく、気分の変化や体調の波とあわせて振り返ってみると、自分の状態をより整理しやすいでしょう。
3. ストレスや自律神経の乱れで寝つきが悪くなる
生理前はホルモンバランスの変化だけでなく、心身の不調によってストレスを感じやすい状態にもなっています。ストレスが重なると自律神経のバランスが乱れ、活動時に優位になる交感神経が夜になっても高ぶった状態が続きやすくなります。本来、夜はリラックスを司る副交感神経が優位になることで眠りにつきやすくなるはずが、自律神経の乱れの影響で体がリラックスモードに入れません。
さらに、夜遅いスマホの使用や就寝直前の食事、仕事や育児・家事によるストレスなどが重なると、眠りの浅さがより強まります。生理前はホルモンの変化によって元々寝つきにくい時期であるため、日常的なストレスの影響もいつも以上に表れやすいと考えておきましょう。
関連記事:【医師監修】生理中の眠気がひどい原因と今すぐできる対処法|医学的メカニズムを解説
生理前の眠りが浅い時に起こりやすい症状
生理前の睡眠トラブルとして起こりやすい症状を3つに整理しましたので、セルフチェックの材料として参考にしてみてください。
1. 夜中に目が覚める、寝た気がしない
生理前に眠りが浅くなる方の多くが感じるのが、夜中に何度も目が覚めるという体験です。眠れている時間はあるはずなのに疲れが取れない、夢をやたらよく見るように感じる、浅い眠りとうとうとした状態を繰り返しているような感覚、といった声が多く聞かれます。
これは、深部体温が十分に低下しないことで深い眠り(ノンレム睡眠)が得られにくくなり、睡眠を通じて比較的浅い眠りが続きやすくなることと関係しています。※2
「眠れているはずなのに疲れが抜けない」という感覚が強まります。
2. 日中の眠気や集中力低下が続く
夜の睡眠の質が下がると、日中にも影響が現れてきます。強い眠気やだるさ、集中力の低下、気分の落ち込みなどは、夜間の眠りの浅さとセットで起こりやすい症状です。黄体期には体温リズムの振幅が低下し、昼夜の睡眠と覚醒のメリハリが失われやすくなるため、日中の眠気が強くなるという体感が生じやすいと考えられています。※4
「生理前だけ仕事や勉強に集中できない」「午後になると急激に眠くなる」という体験が毎月繰り返されているなら、睡眠の質が低下しているサインかもしれません。
3. イライラや不安感などPMS症状も重なる
睡眠トラブルに加えて、イライラや不安感、涙もろさ、気分の落ち込みといった感情の変化、さらに頭痛や腹痛、むくみなどの身体症状も重なる場合は、PMSの影響が加わっている可能性があります。眠りの浅さだけを切り離して「寝る前の行動が悪いから」と自己解決しようとしても、なかなか改善しないケースがあるのはこのためです。
「眠りが浅い」という症状が、PMSの一部として現れている場合があることを頭に置いておくと、後半でご紹介する相談目安の判断にも役立ちます。
生理前に眠りが浅い時の対処法5選
生理前の体の変化はある程度避けられないものですが、日常の少しした工夫で睡眠の質を整えやすくすることは十分可能です。自分の体調と相談しながら、できるものから始めてみてください。
1. 寝る前のスマホや強い光を控える
就寝直前までスマホやパソコン、テレビを見ていると、画面から発せられるブルーライトや強い光が脳を覚醒させ、眠気を引き起こすホルモン(メラトニン)の分泌を抑制してしまいます。生理前はただでさえ体が睡眠モードに入りにくい状態ですから、この影響がより大きく出やすいです。
完全にスマホをやめることはが難しくても、就寝の30分前から画面を遠ざけるようにするだけで、寝つきが改善しやすくなります。通知をオフにする、画面の明るさを最低限まで下げる、部屋の照明を暖色系のやわらかいものに切り替えるといった小さな工夫から、ぜひ始めてみてください。
2. ぬるめの入浴やストレッチでリラックスする
深部体温は、一度上げてから下がるときに急激に低下することで眠気が生じやすくなります。就寝の1〜2時間前に38〜40℃程度のぬるめのお湯にゆっくりつかると、入浴後に深部体温がスムーズに低下しやすくなります。熱すぎるお湯は逆に体を覚醒させてしまうため、生理前は特に湯温に注意して調整してみてください。
入浴後には、軽いストレッチや深呼吸を取り入れましょう。自律神経の副交感神経が優位になりやすくなり、心身をリラックスした状態に持っていきやすくなります。「生理前は体がだるい」という方は、無理に激しく動かす必要はありません。横になったままできる簡単なストレッチで十分です。
3. 日中に軽く体を動かす
日中に適度な活動をすることで、昼間の覚醒と夜間の睡眠のメリハリがつきやすくなります。※1
生理前は体がだるく感じることもあるため、「運動しなければ」と自分を追い込む必要はありません。激しい運動は必要なく、ウォーキングや軽いヨガ、階段の利用など気持ちよく体を動かせる範囲で、生理前の体調に合わせた無理のない活動量を意識するだけでも、夜の睡眠の質を高める効果が期待できます。
4. カフェインや夜遅い食事を見直す
眠りにつきにくい時期である生理前は、カフェインの影響が普段より大きく出ることがあります。カフェインには覚醒作用があり、摂取後も数時間にわたって体内に残るため、午後3時以降のコーヒーや緑茶、エナジードリンクなどを控えると夜の寝つきが改善しやすくなります。
また、夜遅い時間の食事や就寝直前の間食は、消化のために体が活動状態を維持することになり、睡眠の質を低下させかねません。夕食はなるべく就寝の2〜3時間前までに済ませ、どうしても空腹の場合は消化のよいものを少量にするのがおすすめです。アルコールも眠りを浅くする原因になるため、生理前は特に量を控えましょう。
5. 寝室の温度と寝具環境を整える
生理前は体温が高めになる時期のため、室温や寝具の通気性が睡眠の質に影響しやすいです。特に暖房が効きすぎている環境では、深部体温がさらに下がりにくくなってしまいます。寝室の温度は16〜26℃程度、湿度は40〜60%を目安に調整できると、快適に眠れます。
寝具については、吸湿・放熱性の高い素材や、寝返りが打ちやすい環境を整えることも睡眠の質を支える要素です。体に合ったマットレスや枕を見直すと、毎月繰り返す睡眠トラブルの改善につながるでしょう。
関連記事:【医師監修】生理前に眠れない原因と今夜から試せる7つの対処法|ホルモンバランスと睡眠の関係を解説
生理前の睡眠トラブルを軽くするために普段からできること
毎月繰り返す睡眠トラブルを少しずつ軽くしていくためには、普段から自分の体の変化を把握し、生理前の時期を「睡眠を守る期間」として意識的に過ごす習慣を持つことが大切です。
1. 生理周期と睡眠の状態を記録する
生理が来た日、眠りが浅くなり始めた日、夜中に目が覚めた日、日中の眠気が強かった日、気分の変化があった日などを記録していくことで、自分の体のリズムが見えてきます。専用のアプリでも、シンプルな手書きのメモでも構いません。
数カ月分の記録が蓄積されると、「生理の何日前から眠りが浅くなる傾向があるか」「PMS症状がどの程度続くか」といったパターンが把握できます。継続的な対策を立てやすくするだけでなく、医療機関に相談する際に医師が状態を把握する助けにもなります。睡眠の質と月経随伴症状の関連を調べた研究においても、自分の状態を継続的に把握することの重要性が示唆されています(ただし、同研究は横断的な調査であるため睡眠の質と月経随伴症状の因果関係を明らかにするものではありません)。※5
2. 眠りが浅くなりやすい時期は予定を詰め込みすぎない
記録によって「生理前のこの時期は眠りが浅くなりやすい」とわかってきたら、その時期に重要な予定や負荷の高い作業を集中させないよう調整できるのが理想的ではあります。すべてを避けることは難しくても、この時期は「睡眠時間を削らない」「早めに就寝準備を始める」「休息の時間を意識して確保する」といった小さな工夫を積み重ねることで、翌日の体調が変わってきます。
「生理前だけ無理をして頑張る」のではなく、自分の周期に合わせて睡眠を守る生活設計ができると、毎月の消耗が少しずつ和らいでいくはずです。
病院や専門機関に相談した方がよいケース
以下のようなケースに当てはまる場合は、一人で抱え込まずに受診の選択肢を考えてみてください。
なお、この記事は医師監修ではなく一般的な情報をお伝えするものですので、診断や治療の判断は医療機関にご確認ください。
1. 眠れない状態が続き日常生活に支障がある
眠りが浅いだけでなく、毎月数日にわたってほとんど眠れない、仕事や家事に集中できない、強い眠気で通常の活動が困難になるという状態が繰り返される場合は、早めに相談することをおすすめします。婦人科や睡眠外来では、症状に応じた対応策を一緒に考えることができます。※3
「生理前のことだから仕方ない」と我慢し続ける必要はありません。早めに相談することで、対処の選択肢が広がります。
2. 気分の落ち込みや不安が強い
眠りの浅さに加えて、強い落ち込み、激しい不安感、涙が止まらない、怒りをコントロールしにくいといった気分の変化が生理前に毎月繰り返される場合は、PMSやPMDDの可能性も考えられます。これらは婦人科や心療内科・精神科で対応できる症状であり、適切なサポートを受けることで生活の質が改善することがあります。※3
「気合いが足りない」「自分がおかしいのかも」と思わずに、症状の変化を記録したうえで専門家に相談しましょう。
生理前の眠りの浅さに関するよくある質問
本文では触れきれなかったポイントも含めていますので、ぜひ参考にしてみてください。
Q1. 生理前に一睡もできないのはよくあることですか?
生理前に眠りにくくなる方は多く、日本睡眠学会でも月経開始の約1週間前から睡眠に関する何らかの自覚症状が出る女性がいることが報告されています。※3
ただし、一睡もできない状態が毎月繰り返されたり、日常生活に大きな支障が出ている場合は、セルフケアの範囲を超えている可能性があります。「よくあること」として放置せず、婦人科や睡眠外来への相談を検討してください。
Q2. 生理前の眠りの浅さと妊娠初期は見分けられますか?
妊娠初期でも、プロゲステロンの増加によって強い眠気や疲労感、体温の変化が現れることがあります。生理前の症状と妊娠初期の症状は非常に似ているため、症状だけで見分けることは難しいです。妊娠の可能性がある場合は、生理予定日から1〜2週間後以降に市販の妊娠検査薬で確認するか、婦人科を受診しましょう。どちらの可能性もあるため、自己判断せずに早めに確認することが安心につながります。
生理前の眠りの浅さは原因を知り、できる対策から整えよう
生理前に眠りが浅くなる背景には、黄体期のプロゲステロン増加による深部体温リズムの変化、PMSやPMDDによる睡眠への影響、ストレスや自律神経の乱れなど複数の要因が関係しています。月経周期に伴う体の自然な変化として理解することが、対策を考える第一歩です。
今日からできる対処法として、就寝前のスマホを控える、ぬるめの入浴でリラックスする、日中に軽く体を動かす、カフェインや夜遅い食事を見直す、寝室の温度と寝具を整えるという5つをご紹介しました。また、生理周期と睡眠の状態を記録して自分の体のリズムを把握し、眠りが浅くなりやすい時期に無理な予定を入れないという習慣も、長い目で見て毎月の消耗を軽くする助けになります。
症状が強く、日常生活に支障が出るような場合は、一人で抱え込まずに婦人科や睡眠外来などへ相談してください。自分の体に合った方法を少しずつ取り入れながら、毎月の睡眠トラブルをうまく乗り越えていきましょう。
・参考










