お酒を飲むと寝られない理由と今夜から実践できる5つの改善方法
睡眠コラム by Koala Sleep Japan2025年12月26日読了目安時間: 7

【医師監修】お酒を飲むと寝られない理由と今夜から実践できる5つの改善方法

後平 泰信

医療法人徳洲会札幌もいわ徳洲会病院(名称変更) 病院長 現職。

【研究分野】睡眠全般、睡眠時無呼吸症候群、内科全般、循環器内科、スポーツ医学、遠隔医療、地域医療

明るくハキハキとした話し方で、専門的な内容もわかりやすく伝える。特に睡眠医療の分野で多数の講演・メディア出演歴があり、CPAP治療やいびき・睡眠負債など、広く深い見識から生活に密着したあらゆる話題にも柔軟に対応。寝具などスリープテック領域の開発や監修にも多数関わった実績あり。

「お酒を飲むとすぐ眠くなるのに、なぜか夜中に何度も目が覚めてしまう」-在宅勤務が続いていた頃、私もまさにこのパターンにはまり、寝る前の一杯がないと不安になる時期がありました。寝酒のおかげできちんと眠れているつもりが、朝起きると頭がボーッとして体も重く、日中は集中力が切れやすくなってコーヒーを飲む量だけが増えていきました。

日本では、男性の半数近くが週1回以上「眠るためにお酒を飲む」と言われるほど、寝酒が身近な習慣になっています。※1

一方で、夜中の中途覚醒や早朝覚醒、日中のだるさに悩む人も少なくありません。

本記事では、上級睡眠健康指導士でコアラマットレス社員の松本が、「なぜお酒を飲むと眠れなくなるのか」という科学的な理由を、アルコールが脳や中枢神経、睡眠のリズムに与える影響から分かりやすく解説します。そのうえで、寝酒習慣から無理なく卒業するために、今夜から実践できる5つの改善方法を具体的に紹介します。

お酒を完全にやめることをゴールにするのではなく、「お酒をほどよく楽しみながら夜はぐっすり眠れる自分」に近づくための現実的なステップを、一緒に整理していきます。

なぜお酒を飲むと眠れなくなるのか?アルコールが睡眠に与える3つの影響

なぜお酒を飲むと眠れなくなるのか?アルコールが睡眠に与える3つの影響

お酒を飲むと、いったんはふわっと眠気が来るので「寝つきには良さそう」と感じるかもしれません。しかし実際は夜中に目が冴えてしまい、結果的に寝不足になる人が多いです。

アルコールが睡眠に与える影響は、主にアルコールによる睡眠構造の変化、利尿作用による中途覚醒、そして睡眠時無呼吸症候群のリスク上昇の3つです。

1. 睡眠構造を破壊し、深い眠りを妨げる

私たちの睡眠は、浅い睡眠と深い睡眠、そして夢を見るレム睡眠が90分前後のサイクルで繰り返される仕組みになっています。睡眠サイクルが一定の状態で整っているほど、朝の爽快感や日中の良質なパフォーマンスが得られると言われています。

アルコールを飲むと、睡眠サイクルが乱れやすくなります。睡眠の前半では徐波睡眠と呼ばれる深い睡眠が一時的に増えるため、寝つきも良くなるように感じますが、研究によると代わりにレム睡眠が減ってしまい、後半になると一転して浅い睡眠が増えて中途覚醒が増えることが分かっています。※2

つまり、アルコールが脳の中枢神経に作用することで、一時的に「眠らされている」状態になるということです。この状態では、自然な睡眠で得られるような記憶の整理や感情の処理がうまく進まず、睡眠の質が下がりやすくなります。

お酒で無理やりスイッチを切ったように眠っても、深い睡眠とレム睡眠のバランスが崩れて、トータルの疲労回復力はむしろ落ちてしまうのです。最初はよく眠れた気がしても、続けるほど「浅い睡眠が増えてだるい朝」が増えていくため、すっきりしない日々が続くことになりかねません。※3

2. 利尿作用で夜中に何度も目が覚める

アルコールには、抗利尿ホルモンの分泌を抑える作用があります。その結果、腎臓から尿が作られやすくなり、利尿作用が強まりやすくなります。

就寝前の飲酒によって利尿作用が強まると、睡眠中でもトイレに行きたくなり中途覚醒が増えます。特にビールやチューハイなど、飲料としての水分量が多いお酒では顕著です。

睡眠コラムでも、寝酒によって尿が出やすくなり、夜間頻尿や中途覚醒を招くことが指摘されています。※1

トイレで目が覚めた後、頭が冴えてしまい、なかなか寝つけなくなる経験をしたことがあるかもしれません。アルコールの利尿作用が後半の覚醒作用が重なると、再び深い睡眠に入り直すのが難しくなり、浅い睡眠が増えてしまう点に注意が必要です。

また、高齢者の場合は、夜間にトイレへ向かう際のふらつきによる転倒リスクも懸念されます。

3. 睡眠時無呼吸症候群のリスクが25%上昇

アルコールには、筋肉の緊張を緩める作用があります。一時的に気持ちよく感じられるかもしれませんが、睡眠中の気道にとっては要注意です。

喉の周りの筋肉がゆるむと、気道が狭くなり、いびきが悪化したり、睡眠時無呼吸症候群を起こしやすくなったりします。多量飲酒者は、睡眠時無呼吸症候群のリスクが非飲酒者や少量飲酒の人に比べて約25%高くなることが報告されています。※4

睡眠時に無呼吸となる状態が起こると、低酸素状態と覚醒反応を繰り返すことになります。深い睡眠が削られ、睡眠の質が著しく低下しかねません。

「お酒を飲むといびきがひどい」と言われる人や、日中の強い眠気が気になる人は、寝酒が睡眠時無呼吸症候群を悪化させている可能性を一度疑ってみることが大切です。

関連記事:【医師監修】睡眠時無呼吸症候群(SAS)のセルフチェック方法

寝酒の効果はたった3日で消える?依存への道筋

ここまで見ると、「それでも寝つきが良くなるなら、多少は寝酒もありなのでは」と思うかもしれません。しかし、残念ながら、アルコールによる寝つき改善効果は、連続して飲んだ場合に数日で頭打ちになることが示されています。※2

なぜこのようなことが起こるのか、そのメカニズムを見ていきましょう。

アルコール耐性の形成メカニズム

アルコールが体内に入ると、脳の中枢神経でGABA受容体を刺激し、興奮を抑えてリラックスさせる方向に働きます。しかし、アルコールが入ってくる状態が繰り返されると、脳は「いつも強い抑制がかかっている状態は困る」と感じて、GABA受容体の感受性を下げたり、興奮系の神経伝達を強めたりしてバランスを取り直そうとします。※5

これがアルコール耐性のメカニズムです。同じ量のお酒を飲んでも、以前ほどリラックスできず、寝つきの良さも感じにくくなるため、飲酒量を増やすことでリラックス感を得ようとしてしまいます。「少しだけ飲んで眠る習慣」だったはずが、「ある程度の量を飲まないと眠れない状態」に少しずつ変わり、不眠が解消されないのに飲酒量は増えていくというパターンに陥りやすくなるのです。

反跳性不眠という悪循環

さらに厄介なのが、寝酒をやめたときに起こる「反跳性不眠」です。アルコールを睡眠薬代わりに使ってきた人が急に飲酒をやめると、それまでアルコールで抑え込まれていた中枢神経の興奮が一気に表出します。

その結果、寝つきが急激に悪くなったり、中途覚醒や早朝覚醒が何度も起きたりするようになり、「以前よりも不眠が悪化した」と感じやすくなります。これらは離脱症状の一つであり、断酒後も数週間、長いと数ヶ月続きます。※6

この段階で「やはりお酒がないと眠れない」と考え、寝酒を再開する人は少なくありません。さらに悪循環が続くと、アルコール依存症へとつながってしまいます。不眠がアルコール依存症の一部として固定化されてしまう前に、寝酒との付き合い方を見直すことが重要です。

後平 泰信 医師
後平 泰信 医師
寝付けないのでお酒を飲む習慣がある方は少なからずいらっしゃると思いますが、決して推奨されません。
飲酒は睡眠潜時(寝付くまでの時間)は短くなるものの、睡眠の質が悪化し浅い睡眠が多くなります。記事でも触れていますが、アルコールの利尿作用で尿意を催すことも途中で起きる原因です。
生活習慣を見直し、改善がなければ寝酒に走らず、医療機関を受診してください。

日本人の寝酒習慣は世界ワースト?知られざる実態

日本人の寝酒習慣は世界ワースト?知られざる実態

実は、日本は「寝酒大国」と言われるほど、眠れないときの自己対処法としてお酒に頼る人が多い国です。

世界10カ国を対象に「眠れない時の対処法」を調べたところ、「眠るために飲酒する」と答えた人の割合が日本では30%と、10カ国平均を上回りトップだったと報告されています。※1

男性の約半数が週1回以上寝酒をしている現実

久里浜医療センター資料によると、日本の一般成人のうち、週1回以上の頻度で「眠るためにアルコールを摂取する」人の割合は男性48.3%、女性18.3%と記載されています。※1

多くの人が、医療機関に相談したり睡眠専門医を受診したりする前に、まず自分でお酒で何とかしようとします。その結果、寝酒習慣が固定化し、不眠とアルコールの両方の問題が見えにくい形で進行していくのです。

日本人に多い真面目な気質により、「病院に行くほどではない」「自分で何とかしないといけない」という気持ちが強く働きやすいことも寝酒文化を強めている背景かもしれません。

睡眠不足による経済損失は年間15兆円

寝酒による不眠や睡眠障害で引き起こされる注意力や判断力の低下は、個人の体調不良にとどまらず、仕事のミスや生産性低下につながる可能性があります。

RAND Europeの試算をもとにした日本の調査では、睡眠不足による日本の経済損失は年間約15兆円に達すると報告されています。※7

厚生労働省の調査では、成人の約4割が睡眠時間6時間未満であり、その多くが「夜間に目が覚めて困る」といった睡眠の質の低下を自覚していることも示されています。※3

飲み会や晩酌そのものが悪いわけではありませんが、「眠れないからお酒に頼る」という習慣を持つ人の多さが、日本全体の睡眠負債と生産性低下に拍車をかけていることは間違いありません。

関連記事:睡眠不足で医療ミスは7.5倍、交通事故は10倍以上!睡眠と集中力の関係を解説

今夜から実践できる!寝酒に頼らない5つの睡眠改善法

今夜から実践できる!寝酒に頼らない5つの睡眠改善法

では、寝酒に頼らずに眠れるようになるための具体的なステップを見ていきましょう。いきなりすべてを完璧に行う必要はありません。できそうなものから一つずつ試していくことが大切です。

1. 飲酒は就寝3時間前までに

アルコールが体から抜けるまでには、それなりに時間がかかります。秋田県医師会の解説では、体重60kgの人は1時間に約6gのアルコールを処理し、純アルコール20g(日本酒1合、ビール中瓶1本相当)を分解するのに3〜4時間必要とされています。※8

つまり、体重60kg程度の人がビール中瓶1本または日本酒1合を飲むなら、少なくとも就寝3時間前までに飲み終えておくと、眠る頃にはアルコールの影響をかなり減らせます。

就寝直前の「一杯だけ」が習慣になっている人は、まずその一杯の時間帯を少しずつ前倒しして、寝る3時間前には飲み終えることを目標にしてみてください。

2. 寝る前のリラックスルーティンを作る

「お酒を飲まないとリラックスできない」と感じている人は、アルコール以外のリラックススイッチをいくつか持っておくと安心です。

たとえば、ぬるめのお風呂にゆっくり浸かると、入浴後に体の内部の温度が下がり、自然な眠気が生まれやすくなります。軽いストレッチやヨガ、深呼吸で体の緊張をほぐすことも効果的です。

スマホの強い光を避けて、温かい飲み物を飲みながら紙の本を読むのも、脳の覚醒を抑えながらリラックスできる方法です。

ポイントは、「これをやると眠る準備モードに切り替わる」という合図を自分の中に作ることです。最初は意識して続ける必要がありますが、数週間続けると、ルーティンそのものが入眠のサインとして働き始めます。

3. 睡眠環境を整える

同じ睡眠時間でも、寝室の環境によって睡眠の質は大きく変わります。理想的な寝室の条件は、暗めの照明、静かな環境、やや涼しめの室温、そして自分に合った寝具です。

特にマットレスや枕は、深い睡眠と浅い睡眠のバランスに影響する体圧分散や姿勢保持に大きく関わります。体が沈み込みすぎたり、逆に硬すぎたりすると、寝返りの回数が増えて睡眠が分断されやすくなります。

「お酒を飲まないと眠れない」と感じている人の中には、実は寝具や寝室環境が合っていないために寝つきが悪くなり、そのストレスから寝酒に流れているケースも多いです。寝室の光や音、マットレスや枕の状態を一度見直してみるのもよいでしょう。

4. 段階的に飲酒量を減らす

長年寝酒が習慣になっている人にとって、「今日から完全に断酒」はハードルが高く感じられるものです。その場合は、段階的に飲酒量や飲酒頻度を減らしていく方法が有効です。

たとえば、平日毎日飲んでいる人なら、まず週に1日の休肝日を作るところから始めます。慣れてきたら週2日、週3日と少しずつ増やしていくと、体や脳がゆっくり新しいリズムに適応していくため無理がありません。

一日の中でも、飲み始める時間を少し遅らせる、一回あたりの量を減らす、アルコール度数の低い飲み物に切り替える、アルコールの合間に必ず水を飲むなど、小さな工夫を積み重ねると「気づいたら前より飲まなくても平気になった」という変化につながります。

5. 専門医への相談を検討する

不眠が2週間以上続いている場合や、寝酒がどうしてもやめられない場合は、医療機関や睡眠外来に相談する方が安全で確実です。

現在は、薬に頼りきりにならない不眠症治療として、認知行動療法などの科学的な方法も確立されています。寝床での行動や考え方のクセを少しずつ変えていけば、睡眠薬やアルコールに依存せずに眠れるようになることが期待できます。

睡眠時無呼吸症候群やうつ病、不安障害など、他の睡眠障害やメンタルの病気が隠れているケースもあるため、「おかしいな」と感じた段階で相談しておくと、早めに対応できて安心です。

まとめ:寝酒は百害あって一利なし。今夜から始める健康的な睡眠習慣

まとめ:寝酒は百害あって一利なし。今夜から始める健康的な睡眠習慣

お酒を飲むと一時的に眠気が出るため、「寝酒は眠りの味方」と感じやすいです。

しかし、実際にはアルコールが睡眠構造を壊し、深い睡眠とレム睡眠を削り、中途覚醒や早朝覚醒を増やします。利尿作用や睡眠時無呼吸の悪化も重なり、「お酒を飲むとぐっすり眠れない」という状態を自ら作り出してしまうのです。

さらに、アルコール耐性によって睡眠改善効果は数日で薄れるため、飲酒量が増えて不眠と依存症リスクの両方が高まる可能性があります。今日から少しずつでも睡眠習慣を整えていくことが大切です。

飲酒は就寝3時間前までに済ませるようにして、アルコール以外のリラックスルーティンを育てていきましょう。寝室環境やマットレス、枕などの寝具を見直すことも、睡眠の質を底上げする強力な味方になります。

「お酒を楽しみつつも、ぐっすり眠りたい」という願いは、正しい知識と少しの工夫で叶えられます。

今夜、寝る前の一杯を少し早めに切り上げて、代わりにぬるめのお風呂とストレッチ、そして自分に合ったマットレスでゆっくり横になってみてください。

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・参考

※1 回復者施設職員向け依存症重複障害対応マニュアル | 久里浜医療センター
※2 お酒を飲むとぐっすり眠れる? | 国立精神・神経医療研究センター
※3 健康づくりのための睡眠指針2014 | 厚生労働省
※4 Association of alcohol consumption and sleep disordered breathing in men and women | J Clin Sleep Med
※5 アルコール依存症の治療方法 | 銀座心療内科クリニック
※6 反跳性不眠の正体|睡眠薬の安全なやめ方と離脱症状の対処【薬剤師監修】| まちかど薬局情報館
※7 経営判断を誤らせる「睡眠負債」を睡眠日誌で返済する | ダイアモンドオンライン
※8 飲酒の基礎知識 | アルコール健康医学協会