
森田 麻里子
医師・小児スリープコンサルタント・睡眠専門家
2012年東京大学医学部医学科卒。
亀田総合病院にて初期研修後、2014年仙台厚生病院、2016
朝までぐっすり眠りたいのに、夜中に目が覚めてしまうのは辛いですね。
このように、夜中に何度も目が覚めてしまい、その後寝付きが悪くなることを「中途覚醒」といいます。
睡眠の質が低くなると、生活のあらゆる面で支障が出てしまいます。
そこで本記事では、中途覚醒の原因や予防策、対処法などの具体的な対策について解説します。
質の良い睡眠をサポートすべく、生活習慣の見直しから専門医の受診に至るまで、幅広くお伝えしますので、ぜひ最後までお読みくださいね。
中途覚醒とは
はじめに中途覚醒の定義や特徴、睡眠に及ぼす影響について理解しておきましょう。 中途覚醒とは睡眠の途中で何度も起きてしまう状態のこと。睡眠の質の低下や寝不足感が続くことにつながります。 夜中に目覚める回数が多いほど深い眠りが妨げられ、身体の回復や脳の休息が不十分になります。その結果、翌日の集中力や体調にも悪影響を及ぼすこともあるでしょう。原因や特徴を知ることは、適切な対策を行ううえで重要なファーストステップです。
中途覚醒の定義と特徴
中途覚醒とは、入眠後から起床までの間、意図せず何度も目が覚める状態を指します。寝ている途中で目が覚めて、再び眠れなくなってしまうことも多く、睡眠の一定リズムが崩れやすいことが特徴です。特に夜間の深い睡眠が確保されない場合、昼間の眠気や作業効率の低下が顕著になります。
中途覚醒が与える睡眠への影響
中途覚醒は熟睡を妨げるため、身体や脳の回復が十分に行われず、朝起きた時に疲れや倦怠感を強く感じる原因になります。また、覚醒のたびに神経が活性化され、スムーズな眠りへ戻りにくくなります。こうした睡眠リズムの乱れが続くと心身の健康を損なうリスクが高まります。
中途覚醒の原因を理解する
中途覚醒を引き起こす主な要因や背景を知ることで、予防や改善につなげることができます。
中途覚醒の原因としては、ストレスや生活習慣、身体的・精神的疾患など多岐にわたります。中にはアルコールの摂取によって入眠はしやすいものの、かえって夜中の覚醒を増やしてしまうケースもあります。まずは自分自身の生活習慣や体調を客観的に振り返り、どの要因が関与しているかを把握することが重要です。
ストレスや不安との関係
日常生活でのストレスや不安は自律神経のバランスを乱し、睡眠の質を低下させる原因となります。ストレスが大きいほどリラックスしにくくなり、夜中に目を覚ましてしまうことが増えます。精神的負荷が大きい時期には、ストレスマネジメントが中途覚醒の対策に直結するポイントとなるでしょう。
アルコールやカフェインの影響
アルコールは一見リラックス効果があるように感じられますが、代謝が進むにつれて覚醒を引き起こす作用があります。またカフェインも脳を刺激して目覚めやすくするため、夕方以降の摂取は中途覚醒を招きやすくなります。日常的にお酒やコーヒー、エナジードリンクなどの摂取タイミングや摂取量を意識的に調整することが大切です。
睡眠時無呼吸症候群などの疾患
中途覚醒を引き起こす代表的な疾患として、睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群、夜間頻尿などがあげられます。こうした場合は専門医の診断を受け、必要に応じた治療を行うことが大切です。
年齢別に異なる睡眠の変化
加齢によって睡眠の深さや時間帯の変化が起こります。中年期に入ると就寝時間も起床時間も早まり、睡眠が浅くなって中途覚醒しやすくなるケースがあります。特に高齢者では夜間頻尿が重なることで、睡眠を分断しやすくなります。年齢との関係を踏まえながら、適切な睡眠対策や生活リズムの見直しを考えていくことが重要です。
生活習慣の乱れや環境要因
不規則な就寝・起床時刻や、騒音・光の強い場所での就寝などは睡眠のリズムを崩す要因になります。就寝前にスマートフォンを見ることで脳の覚醒レベルが上がり、中途覚醒が起こりやすくなります。生活パターンや就寝環境を整えることで、睡眠の質を高めることができます。
ホルモンバランスの変化や更年期の影響
ホルモン分泌が変化する更年期には、体温調節や自律神経への影響が強まり、睡眠が不安定になることがあります。さらに女性の場合は月経周期や妊娠、出産によるホルモン変化も睡眠トラブルを招く要因になります。こうした身体的変化に合わせたケアや、専門的なアドバイスを受けることも中途覚醒の改善に役立ちます。
中途覚醒を防ぐ予防策と改善方法
いつもの生活習慣や睡眠環境を少し見直すことで、中途覚醒を防ぐ手助けになるかもしれません。自分に合った方法を試してみることで、より良い眠りが得られることを期待できますよ。
根本的な対処には、生活リズムを規則正しく整えること習慣の規則化や睡眠環境の見直しが不可欠です。特に朝食をしっかり摂り、昼間に適度な運動を取り入れることで、自然な睡眠リズムを形成できます。 寝る前の時間にはスマートフォンやパソコンの使用を控え、リラックスできる習慣を作ると夜間にぐっすり眠れるようになってきます。
日常生活の工夫
毎日同じ時間に起きて、寝ることは体内時計を整えるのに大切です。また、毎日30分程度のウォーキングなどの軽い運動もおすすめです。週に複数回行うと、身体をしっかり疲れさせることができ、高い睡眠効率につながります。また、寝酒は深い睡眠を阻害するため避け、代わりに就寝前に軽いストレッチをすると体がほぐれて、リラックスできます。
規則正しい生活リズムと運動
朝は決まった時間に起きて太陽の光を浴びます。これにより睡眠ホルモンの分泌が整いやすくなり、中途覚醒を減らせます。加えて、日中の適度な運動はストレス発散にもつながり、精神面の安定による睡眠改善も期待できます。
就寝前のリラックス方法(入浴・瞑想)
就寝1~2時間前にぬるめのお湯に浸かると体温が急激に下がり、入眠しやすくなります。また、短時間の瞑想や軽いストレッチなどリラックスしやすい習慣を取り入れると、交感神経の興奮が和らぎ、ゆっくりと眠りに入ることができます。
スマートフォンやパソコンの使用制限
就寝前にディスプレイから発生するブルーライトを多く浴びると、睡眠ホルモンの分泌が抑制され、夜間に目覚めてしまうことがあります。また、スマートフォンやパソコンで利用するコンテンツそのものが脳を興奮させてしまうこともあります。ベッドに入る1~2時間前にはスマートフォンやパソコンの使用を控え、読書などの落ち着いたアクティビティを取り入れると効果的です。
睡眠環境の改善
自分に合った寝具や遮光・静音の工夫、室温・湿度の最適化など、身のまわりの環境づくりも中途覚醒を減らすポイントです。寝具が合っていないと体に負担がかかり無意識に目が覚めやすくなります。また、部屋の明るさや騒音、室温などは熟睡度を左右する大切な要素です。
適切な寝具選び
寝返りがしやすく、身体を支えてくれるマットレスや枕を選ぶことが大切です。個人差があるため、試し寝や専門店のアドバイスを参考にして快眠できる寝具を確保しましょう。身体に合った寝具は長期的に見ると睡眠の質を格段に向上させます。
遮光や静音環境の確保
夜間に光や音があると、それが刺激となり、脳が目覚めやすくなります。遮光カーテンを利用したり、耳栓やホワイトノイズマシンで外の音を和らげる工夫をすることも大切です。静かで安心して眠れる空間に身を置くことで、途中で目が覚めることを防ぎやすくなります。
室温・湿度の調整
一般的に快適な睡眠環境は、室温はやや低め、湿度は適度に保たれていることが理想です。高すぎない湿度や体が冷え過ぎない室温を心がければ、身体機能が安定し夜間に目覚めにくくなります。季節に合わせて空調や寝具を組み合わせることがポイントです。
食事や嗜好品の工夫
食生活は睡眠の質に大きく関わるため、中途覚醒を防ぐには食事のタイミングや内容にも注意が必要です。夜遅くの食事や夕方以降のカフェイン、適量以上のアルコールは避け、身体に負担をかけない食べ方を心がけましょう。睡眠をサポートする成分を含む食品や飲料を取り入れるのも一案です。
中途覚醒に効果的な食材と飲み物
タンパク質やマグネシウムを多く含む食品は、心身の安定と睡眠ホルモンの分泌をサポートします。また、カモミールやラベンダーなどのハーブティーはリラックス効果が期待されます。これらを上手に組み合わせて取り入れることで、よりスムーズな入眠と深い睡眠につながる可能性があります。
カフェイン・アルコールの摂取を夕方以降控える
カフェインは覚醒作用が長く続き、アルコールは代謝後に睡眠を浅くする作用を持ちます。そのため、夕方以降はコーヒーやエナジードリンク、適量以上のお酒などを控えることが望ましいです。飲み物をハーブティーやノンカフェイン製品に替えることで、夜中に目覚めにくくなり、快適な睡眠に近づきます。
中途覚醒時の対処法
夜中に目が覚めてしまった際にも、正しい対応を行うことで再入眠を促せます。
中途覚醒は誰にでも起こりうるものですが、対処の仕方を知っているかどうかで再入眠のしやすさが変わります。焦ってしまうとさらに目が冴えてしまうため、意識的にリラックスできる習慣を整えることが重要です。自分に合うリラックス方法を理解し、実践することで、不安を和らげ、短時間で再び深い眠りへ戻る手助けとなります。
リラックス法の実践
夜中に目が覚めてしまった際は、まず身体と心を落ち着かせることが大切です。深呼吸や瞑想、軽いストレッチなどにより、交感神経の興奮を抑え、副交感神経が優位になるよう切り替えます。特に呼吸を丁寧に行うと、自然と心拍数が下がり心が落ち着くので、寝つきやすい状態を作り出せます。深呼吸や瞑想のテクニック
呼吸に意識を集中することで、脳を一時的に休息できるように導きます。4秒かけて息を吸い、4秒息を止めてから8秒かけて息を吐くなど一定のリズムを守るのがおすすめです。短時間でも瞑想を取り入れると不安感が和らぎ、再び眠りに落ちやすくなります。
再び眠るための心身のリラックス
温かい毛布で体を包んだり、ゆったりと横になる姿勢をとることで心身に安心感が生まれます。頭の中を過去や未来に向けず、今の呼吸や身体の感覚に意識を向けることで、自然と眠気が戻りやすくなります。眠れないときは無理に眠ろうと考えず、身体を休ませたりリラックスさせたりすることが大切です。
起きたまま気楽に過ごす重要性
焦って再び眠ろうとすればするほど頭が冴えてしまい、逆効果になることがあります。そのような時には、いったんベッドを離れて読書や簡単なストレッチを行うなど、無理に眠ろうとしないことが大切です。再び眠気を感じたら再度ベッドに入るという流れを作り、自然と眠りにつけるように意識を向けましょう。
中途覚醒への意識過剰を避ける心構え
人によっては一度目が覚めると「また眠れなくなる」と不安に陥り、さらに状態を悪化させる場合があります。中途覚醒は誰にでも起こり得るものです。すぐに再入眠できる中途覚醒は、気にしすぎず自然な生理現象の一部と捉えるのがよいでしょう。一方、眠れないと感じたらベッドを出て眠くなるまで待つのが大切です。
中途覚醒が治らない場合の医療的対策
生活習慣を見直しても十分な効果が感じられない場合は、医師に相談してみるのも重要です。治療が必要な場合もあります。
投薬やカウンセリングなど、専門家の知見を取り入れることで、より早く中途覚醒を改善できる可能性があります。
睡眠薬やサプリメントの活用
医師の判断のもとで睡眠薬を使用すると、一時的に中途覚醒を軽減できる場合があります。また、メラトニンなどのサプリメントを活用する手段もあります。ただし、薬剤選択や用量調整は専門家の指示を必ず守りましょう。
薬物療法の効果と注意点
睡眠薬は正しく使うことで、睡眠改善の近道になります。しかしその一方で、長期間使用すると依存リスクや副作用が生じる可能性があります。ですから正しい用法・用量を守り、定期的な診察を受けながら安全に進めることが必要です。眠気が日中に残る場合や、効果が実感できない場合は勝手に判断をせずに、速やかに医師に相談しましょう。
中途覚醒に効果的なサプリメント選び
サプリメントのメリットは、副作用が比較的少なく、睡眠のリズム調整やリラックスを助けてくれることです。商品によって配合成分や濃度が異なるため、信頼できるメーカーのものを選ぶと良いでしょう。自身の体質や生活リズムを踏まえて継続的に試すことで効果を実感しやすくなります。尚、サプリメントの長期間の服用はやめましょう。サプリメントを一定期間服用して効果が見られなかった場合や睡眠薬などを服薬している場合は、必ず医師に相談してください。
非薬物療法の活用
薬に頼らない中途覚醒を改善する方法として、認知行動療法やカウンセリングなどの非薬物療法が注目されています。これらの療法は、思考パターンや生活習慣を根本的に見直すため、持続的な改善へとつながりやすい点が特徴です。副作用や依存症のリスクがほとんどないことも大きなメリットです。
認知行動療法の有用性
不安やストレスを引き起こす思考パターンを修正するので、睡眠に対するネガティブなイメージを改善することができます。認知行動療法は医療機関や専門カウンセラーによって提供される場合が多く、個々の状況に合わせて進められます。中長期的に見ると、より持続的な睡眠の安定化が期待できます。
カウンセリングや専門医の診察
精神的ストレスや不安が強い場合、精神状態が中途覚醒に関わっている可能性もあります。精神科や心療内科の診察では、必要に応じて薬物療法と非薬物療法を併用し、最適な治療方法を検討します。カウンセリングを利用して気持ちの整理をすることも効果的です。自分に合ったサポートを受けることで、より安心して治療に取り組むことができます。
睡眠障害専門医への相談
長引く中途覚醒は睡眠障害の一種として扱われる場合もあり、適切な診断・治療が欠かせません。一般の内科や精神科でなかなか改善が見られないと感じたら、他の医師から話をきくことも大切です。セカンドオピニオンを受けることで、担当医の意見を別の角度から理解できたり、睡眠への理解が深まるきっかけになることもあります。ぐっすり眠れない日が続く場合は、睡眠専門医や睡眠外来を受診することを検討してみましょう。専門医ならではの知見を活かした検査や治療法を提案してもらうことが可能です。
正しい診断と治療の流れ
まずは問診や睡眠日誌などで日々の睡眠パターンを把握し、必要に応じて睡眠ポリグラフ検査などを行います。症状やデータを総合的に判断し、薬物療法・非薬物療法・環境調整など多角的に治療方針が立てられます。自己判断で対処していた部分を専門的な視点で補うことで、より的確な治療が期待できます。
必要な検査や診療内容
睡眠ポリグラフ検査は脳波や呼吸、心拍数などを観察し、睡眠時無呼吸症候群などを診断する重要な手法です。さらに血液検査やホルモンバランスの確認を行うこともあります。こうした専門的な検査を受けることで、最適な治療プランを立案しやすくなります。
中途覚醒の対策方法まとめ
寝ている途中で目が覚めてしまい、なかなか再入眠できずに心身の疲労が回復しないまま朝を迎えると、日中にだるさが残ったり集中力が欠けたりして、高いパフォーマンスを発揮することはできません。
辛い中途覚醒ですが、原因の把握と適切な対策を行うことで、改善が期待できます。中途覚醒はストレスや生活習慣、加齢など多様な要因から起こりますが、それぞれに合った予防策や改善方法を組み合わせて対処しましょう。自分に合う方法を見つけて継続することで、夜間の熟睡感を取り戻せることもあります。
特に生活リズムの維持や睡眠環境の最適化は、あらゆるケースで基本かつ重要なポイントです。
生活リズムの維持とは、毎日同じ時間に起きて、同じ時間に寝ること習慣化することで、体の中の「眠るサイクル」が整いやすくなります。また、睡眠環境の最適化とは、自分に合った寝具や遮光・静音の工夫、室温・湿度など、身のまわりの環境を整えることが大切です。
快眠できる寝具を使い、夜間は光や音を遮断し、やや低めの室温、適度な湿度が保たれていることが理想です。そして就寝前は、スマートフォンやパソコンの使用を控えて、ディスプレイから発生するブルーライトを浴びないようにしましょう。
日々の生活リズムや環境を見直すことで、ぐっすり眠れるようになり、心身ともにリフレッシュできるようになる可能性は高まります。
原因を理解し、生活習慣と環境を見直す
まずは自分の生活習慣と環境を見直すことで、中途覚醒の要因を客観的に把握しましょう。
その上で食事や運動、就寝前の行動など日常生活のあらゆる要素を見直すことが大切です。
睡眠に良いとされる食品は、タンパク質やマグネシウムを多く含むものです。また、カモミールやラベンダーなどのハーブティーはリラックス効果が期待されます。これらを上手に組み合わせて取り入れることもおすすめです。
逆に、夕方以降は特に避けた方がよいのは、覚醒作用が長く続くカフェインやエナジードリンク、睡眠を浅くする作用のあるアルコールです。
そして、環境要因も含めてトータルに改善を図ることで、深く安定した睡眠を実現しやすくなります。
朝日を浴びることや、昼間に軽い運動をすることで、自然と夜になると眠りやすくなるのです。また、就寝1〜2時間前にぬるめのお湯に浸かると体温が急激に下がり、入眠しやすくなります。
小さな習慣の積み重ねが大きな変化を生むこともあるでしょう。
適切な治療・予防で質の良い睡眠を維持する
もし生活習慣の調整だけで効果が得られない場合は、医師に相談し、睡眠薬や認知行動療法などの医療的サポートを検討しましょう。原因や体質に合わせた複合的な対策を続けることで、中途覚醒を減らし、質の高い睡眠を保ったまま日々を快適に過ごせるようになることもあります。
医師へ受診後、効果が実感できない場合は、勝手に判断をせずに、再度速やかに医師に相談することが大切です。