睡眠コラム by 松岡 雄治•2026年10月26日•読了目安時間: 6 分

睡眠と腸内環境の関係は?研究でわかっていることと生活習慣の整え方

寝つきの悪さとおなかの不調が重なると、腸を整えれば眠りも変わるのか気になるものです。睡眠と腸内環境には関連が報告されていますが、腸を整えるだけで眠れるようになるとは限りません。

この記事では、睡眠と腸内環境の関係について研究でわかっていることと、生活習慣の整え方を解説します。眠りとおなかの関係が気になる方は、ぜひ最後までご覧ください。

 

睡眠と腸内環境は関係ある?

睡眠と腸内環境は、互いに影響し合うと考えられています。腸と脳の働きが影響し合う関係を「脳腸相関」と呼び、腸にすむ細菌の集まりである「腸内細菌叢」も、このつながりに関わっています。

睡眠が腸に影響する方向では、北海道大学が地域住民35人の睡眠と便を調べた研究があります。睡眠時間が短い人ほど、腸を守る物質「αディフェンシン」の分泌量が少ない傾向が見られ、腸内細菌の構成の変化や、細菌が作る短鎖脂肪酸の減少との関連も報告されました。

反対に、腸内環境が睡眠に影響する方向では、マウスの研究があります。抗生物質で腸内細菌を除いたマウスでは、本来眠る時間帯の睡眠が減り、活動する時間帯の睡眠が増えました。腸内環境の変化により、眠りと目覚めのメリハリが弱まる可能性が示されています。

ただし、人の調査でわかったのは関連までで、どちらが原因かは確かめられていません。マウスの結果もそのまま人に当てはまるわけではなく、人に役立つ方法は研究が進められている段階です。

 

腸内環境が睡眠に関わると言われているのはなぜ?

腸内環境が睡眠に関わると言われるのは、腸内細菌が作る物質が体内時計に関わることなどが、研究で報告されているためです。腸でのセロトニンの産生に腸内細菌が関わることも報告されていますが、眠りとのつながりはまだはっきりしていません。ただし、いずれも研究で示されている段階で、確立した仕組みではありません。

1. 腸内細菌が作る物質が体内時計に関わる

腸内細菌が作る物質には、体内時計の働きに関わるものがあると考えられています。そのひとつが、細菌が食物繊維を利用して作る「短鎖脂肪酸」です。マウスや培養組織を使った基礎研究では、短鎖脂肪酸の一種である酪酸を与えると、体内時計を動かす遺伝子のリズムがはっきりすることが示されました。

また、腸内細菌の種類の割合や働きは、1日の中でも時間帯によって変化しており、これを「日内変動」と呼びます。眠りや目覚めを調節する体内時計の働きは、脳だけでなく腸などの臓器にも及んでいて、腸内細菌が作る物質にも日内変動が見られます。

2. 腸内細菌はセロトニンの産生にも関わる

腸内細菌は、腸でのセロトニンの産生にも関わっていると考えられています。金沢大学などのマウスを使った研究では、腸内細菌が作るフェネチルアミンという物質が、腸でのセロトニンの産生を促すことが示されました。

ただし、腸のセロトニンと脳のセロトニンは働きが異なります。体内のセロトニンの95%以上は、脳などの中枢以外にある「末梢セロトニン」で、腸では内容物を先へ送る蠕動運動を促すなどの役割があります。一方、脳のセロトニンは、神経の情報伝達に関わっています。腸で作られたセロトニンが眠りにどう関わるかは、まだはっきりしていません。

また、腸のセロトニンは多いほどよいわけではなく、過剰に作られると骨粗しょう症や過敏性腸症候群の原因になると考えられています。

 

腸内環境が悪いサインはある?

便秘や下痢などの便通の変化は、おなかの状態に気づく手がかりになります。ただし、便通は食事などの生活習慣で変わるほか、病気が関係していることもあるため、便通だけで腸内環境の良し悪しは判断できません。便が出る回数に加え、硬さなどにも注目しましょう。

生活を見直しても便通の乱れが続く場合は、内科や消化器内科に相談してください。とくに次のような症状がある場合は、大腸の病気が隠れていないかを検査で確かめる目安になります。

  • 便に血が混じる
  • 熱が出る
  • 食事量を減らしていないのに体重が落ちる

睡眠についても、眠れない状態が続き、日中の生活に支障が出ている場合は、医師に相談しましょう。

受診時に、便通や睡眠の変化がいつから続いているかや、飲んでいる薬を伝えると、原因を調べる助けになります。

 

乳酸菌飲料やサプリで睡眠は良くなる?

乳酸菌飲料やサプリが睡眠に役立つかどうかは、まだ研究が進められている段階です。腸内細菌を介して睡眠に働きかける方法として、次のようなものが研究されています。

  • プロバイオティクス:乳酸菌やビフィズス菌など、体によい働きをもたらす生きた菌
  • プレバイオティクス:腸内の有用な細菌のえさになる食品成分

睡眠障害のある人では、おなかの不調を訴えることも多くみられます。そのため、乳酸菌飲料などで眠りがよくなったとしても、腸内細菌を介した働きなのか、おなかの症状がやわらいだためなのかを分けて確かめる必要があると指摘されています。

また、特定の菌を使った研究の結果が、どの乳酸菌飲料やサプリにも当てはまるわけではありません。取り入れるなら、普段の食事を補うものとして、続けられる範囲で選びましょう。不眠が続くときは、整腸剤などで対処し続けず、医師に症状を伝えてください。

乳酸菌飲料やサプリメントは、睡眠薬のように直接的な眠気を引き起こすものではありません。しかし、睡眠障害を抱える方は、同時にお腹の不調(便秘や下痢)を伴っていることがあります。プロバイオティクス等によって腸内環境が整い、消化器症状の不快感が軽減された結果として、間接的に睡眠の質が向上したと感じることがあるのです。不眠の根本解決策として過信せず、まずは食事全体のバランスを整える補助として取り入れてみましょう。

 

睡眠のリズムと寝室環境から整える

眠りが気になるときは、起床時刻をそろえて朝の光を浴びる、寝室の光・音・温度を整えるなど、睡眠のリズムと環境から見直しましょう。

食事を工夫していても、夜更かしが続いたり、寝室が暑くて目が覚めたりすれば、十分に休みにくくなります。どれも腸内細菌に働きかけるものではありませんが、睡眠そのものを支える基本です。

1. 起床時刻をそろえて朝の光を浴びる

毎朝の起床時刻を大きくずらさず、起きたら朝の光を浴びましょう。朝の光を浴びることで体内時計が調整され、眠る時間と起きる時間のリズムが整います。

目が覚めたらカーテンを開け、部屋に日光を取り入れてください。日中も、なるべく外の明るさに触れる時間をつくりましょう。日中に光を多く浴びておくと、夜に分泌されるメラトニンの量が増え、寝つきやすくなります。

休日に起きる時刻が大きく遅れると、体内時計も後ろへずれやすくなります。平日とのずれが続いているなら、まず朝起きる時刻をそろえましょう。早起きで睡眠時間が削られないよう、夜の予定もあわせて調整してください。

朝の光が体内時計を整える仕組みや、曇りの日や冬に朝の光を取り入れる工夫については、以下の記事もあわせてご覧ください。

関連記事:【医師監修】朝日を浴びる効果とは?朝の光が睡眠と体内時計に与える影響や正しい習慣を解説

2. 寝室の光・音・温度を整える

寝室はできるだけ暗く静かにし、暑すぎず寒すぎない温度に整えましょう。就寝前に強い光を浴びると、メラトニンの分泌が抑えられ、寝つきが悪くなることがあります。スマートフォンは寝室の外に置き、眠るときは照明を消しましょう。

また、騒音があると、寝床にいる時間のうち実際に眠っている割合である「睡眠効率」が低くなる傾向があります。外の音が気になるときは、窓を閉めるなどして音の入り方を見直しましょう。

夏はエアコンで涼しく保ち、冬は室温18℃以上を目安に保つようにしましょう。寝具の暖かさと室温をあわせて調整し、夜中に起きたときも寒さを感じにくくしておきます。

スマートフォンなどから発せられるブルーライトは網膜のセンサーに特に強く反応します。夜間にブルーライトを浴びるとメラトニン分泌が抑えられて睡眠を妨げてしまいます。寝る前の取り扱いに注意することで快眠が実現しやすくなります。

※出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」

3. 体に合った寝具で寝床内を快適に保つ

寝具は、体に無理のない姿勢を保てて、暑さや蒸れを調整しやすいものを選びましょう。体と寝具の間にできる空間を「寝床内」と呼び、その快適さは、寝室の温度とは別に、掛け布団などの使い方で変わります。

暖かさだけを求めて掛け布団を重ねすぎると、汗や湿気がこもることがあります。掛けるものの枚数を調整し、湿気を吸って外へ逃がしやすい素材を選びましょう。

枕やマットレスは、体格や普段の寝姿勢によって合うものが違います。硬さの表示だけで決めず、実際に横になって次の点を確かめてみましょう。

  • 首や肩に無理な力が入っていないか
  • 腰や背中の一部に圧迫感がないか
  • 寝返りを打つときに動きにくくないか

体格や寝姿勢に合うマットレスと枕の選び方については、以下の記事もあわせてご覧ください。

関連記事:【上級睡眠健康指導士監修】寝具のおすすめをプロが解説!快眠につながる選び方

 

食事から腸内環境を整える

食事では、食物繊維を目標量に近づける、発酵食品を取り入れる、食事の時間帯をそろえるなど、続けやすいところから見直しましょう。特定の食品に偏らせるより、主食やおかずの選び方を変えるほうが、毎日の食事に組み込みやすくなります。

1. 食物繊維を目標量に近づける

食物繊維は、便のかさを増やし、腸内細菌にも利用される成分です。成人の1日の目標量は、男性20g以上、女性18g以上とされています。国民健康・栄養調査によると、日本人成人の平均摂取量は1日18.1gで、目標量よりも少ない状況です。まずは今より1日3〜4g多く摂ることを目安に、普段の食事で意識してみましょう。

たとえば、1日1食の主食を、食物繊維の多い次のようなものに替える方法があります。

  • 麦ごはん
  • 全粒小麦パン
  • そば

いつもの白いごはんや食パンと置き換えるだけなので、日々の食事を大きく変えずに取り入れられます。主食に加えて、野菜のおかずや豆類を添えると、副菜からも食物繊維を摂りやすくなります。

2. 発酵食品を無理なく取り入れる

発酵食品は、好みに合うものを普段の食事に組み込むと続けやすくなります。たとえば、朝食の一品をヨーグルトにしたり、主食に納豆を添えたりするのがおすすめです。食物繊維の多い主食や野菜と組み合わせて、食事全体を整えましょう。

ただし、みそを取り入れる場合は塩分に注意が必要です。みそ汁なら野菜などの具を増やし、食事全体で塩分を摂りすぎないようにしてください。

なお、睡眠の質をよくする個別の食品は、現時点では特定されていません。発酵食品も、眠るために量を増やすのではなく、主食・主菜・副菜をそろえた食事の一品として楽しみましょう。

3. 食事の時間帯をそろえる

朝食を摂り、就寝直前の夜食を控えると、睡眠と目覚めのリズムが整いやすくなります。朝の光に加えて、食事のタイミングも体内時計を調整する手がかりになるためです。夜遅い食事が続き、翌朝は食欲がなくて朝食を抜く、といった流れになっていないか見直しましょう。

腸内細菌の日内変動にも、食べるタイミングが関わっています。マウスの研究では、食べる時間帯を決めることで、乱れた腸内細菌のリズムが回復したと報告されています。

仕事で夕食が遅くなる日は、夕方に主食を摂っておき、帰宅後はおかずを軽めにする方法もあります。

夕食から就寝までにあけたい時間や、帰りが遅い日の食事の摂り方については、以下の記事もあわせてご覧ください。

関連記事:寝る前の食事は何時間前までOK?太らない食べ物・NGな食べ物を管理栄養士が解説

 

まとめ:睡眠と腸は相関関係にあると考えられている

睡眠と腸内環境には関連があり、睡眠が腸に、腸内環境が睡眠に影響する両方の向きから研究が進められています。ただし、腸を整えれば眠れるという単純な関係ではないため、睡眠と食事のそれぞれで基本を見直しましょう。

睡眠では、朝起きる時刻をそろえて朝の光を浴び、夜は寝室を暗く静かにして、体に合った寝具で眠りましょう。食事では、食物繊維を目標量に近づけ、好みに合う発酵食品を一品として取り入れます。

また、朝食を摂り、就寝直前の夜食を控えて食事の時間帯をそろえることも、眠りと腸内細菌の両方のリズムに関わります。便通の乱れや眠れない状態が続く場合は、食品やサプリだけで対処せず、医師に相談しましょう。

 

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