今回の記事では、普段からコアラの睡眠ブログの記事を監修していただいている心療内科医の田中貫平先生に、タッチベースドマインドフルネスとご自身で開発したshinsetsu-tionという手法についてその独自のアプローチと背景について詳しくお話を伺いました。感情表現や自己主張の文化的な違いから、心身のケアの新しい形まで、幅広い視点での対話を通じて、日本における心のケアの可能性を探ります。
田中貫平医師プロフィール
今回セッションを提供していただいた心療内科医の田中先生は、タクティールケアの資格を持ち、タッチベースドマインドフルネスの概念の提唱と、「shinsetsu-tion」を開発。タッチケアを通じた新しい心のケアの形である「shinsetsu-tion」の商標登録を行い、心身のケアの新しいアプローチを確立した。スウェーデン発祥のタクティールケアの知見を基に、より簡便で効果的なメソッドを考案している。
私たちは日常的に正しく心身のケアができているのか?
日本人の感情表現の特徴について、どのようにお考えですか?
田中先生:安心感が十分でないと、多くの人が自身の感情に気づけていない状況があります。また日本人は民族の歴史からか、不安を感じる傾向が強く、怒りの感情を表現することが少ないのが特徴です。ただし、不安の裏には大なり小なり怒りも存在していることがほとんどです。
その背景には何があるとお考えですか?
日本人の自己主張をしない国民性が大きく影響しているかもしれません。個人の差はもちろんありますが、他の国の人たちと比べて日本人は感情を内に秘めてしまう傾向がありますね。
今日八木が受けさせていただくタッチベースドマインドフルネスについて、詳しく教えていただけますか?
田中先生:タッチ・ベースド・マインドフルネスは、患者さんへのタクティールケア®︎の実践を通して考案された方法です。タクティールケア®︎は、丁寧な「手当て」を行うマッサージで、もともとは未熟児の療法として生まれ、現在では認知症やがんの患者さんにも用いられています。
マインドフルネスは理論的には理解できても感覚的に捉えにくいことがあるため、その理解を助ける補助的な手法として、タッチ・ベースド・マインドフルネスを私は活用しています。また、「shinsetsu-tion」はタッチベースドマインドフルネスの一形態です。背中へのケアを、相手へのねぎらいや感謝の気持ちを込めて行います。マインドフルネスの理解がなくても実施可能な手法です。
shinsetsu-tionについて説明する田中医師と弊社ブログ担当の八木
開発の背景には何があったのでしょうか?
田中先生:元々はスウェーデンのタクティールケアがベースにあります。看護師のタッチケアが未熟児への発育に良い影響を与えたという研究から始まり、現在では、がん患者さんや認知症の方々のケアにも活用されています。私自身もタクティールケアの資格を取得していますが、誰でもすぐに覚えられて実施できる方法として簡単にしました。 普段の家族の中でのケアはもちろんのこと、災害時などにも避難所で集まった人たちが、円を作ってお互いを支え合う方法として今後は役に立つのではないか。個人的にはそう考えています。
「shinsetsu-tion」に含まれている「親切」という言葉には、どのような意味が込められているのでしょうか?
田中先生:「親切」という言葉は、本来は「切ないくらい近い」という意味だそうです。ただ、私は自分の家族背景も影響してかなぜか「親を切る」という風に解釈してしまいました。もちろん実際に縁を切るという話ではないですよ(笑)。親密さだけではなく、親からの「自立」や「自律」という意味です。「切る」という漢字をあてるとしたら、親との「適切な距離感」とも言えるかもしれません。「頑張って自分で立とうね、でも後ろからずっと見守っているから大丈夫だよ」、言葉にするとそのような感じでしょうか。そういうことで、shinsetsu-tionは「親密や信頼」と「自立/自律」のダブルミーニングですね。最後に、親からの自立とは反対にはなりますが、子から親への親孝行の1つの形としてもshinsetsu-tionは使えますよ。
「shinsetsu-tion」のやり方
それでは今日ここで八木が受ける「shinsetsu-tion」のやり方について紹介します。
- やる人の両手を受ける人の両肩に置く/添える。そのまま10秒ほど置いておく。
- 両手を背中(心臓の裏側)までゆっくりとスライドさせ、そこに20秒ほど置く。
- 両手を腰(仙骨部位 – おへそより下の部分)までスライドさせ、そこに30秒ほど置く。
- 腰から背中へスライドさせ、そこで再び20秒ほど置く。
- 背中から両肩にスライドさせ、そこで10秒ほど置く。1–5で1セットとなる。
- 上記を2–3セット繰り返す。施術者と受け手を交代して同様に1–6を行う。
注意点
※お互いが望まない場合、shinsetsu-tionは行わないでください。
※妊娠中または妊娠を考えている方は、産婦人科の先生に必ず相談してください。
※途中でどちらかまたは双方が疲れることがあれば、静かにその時点で終わりましょう。
※背中と腰の間のみぞおち(胃の辺り・おへそより上)の裏に置いてもかまいません。その際には、両手を重ねて背骨の真ん中に置きましょう。腎臓やおへその裏側に長く手を当てていると血圧が上がる恐れがあります。
ポイント
①常に両手が肌に密着していることと、両手を動かしていく時には「ゆっくり」と行う。
②秒数よりも丁寧に労いの気持ちをもって行おうとすることに重きを置く(普段の生活で言いたいことがあっても、shinsetsu-tionの時間は、「よく頑張ったね」など優しく声かけ、「お疲れ様」的な思いで手の感覚に集中するのがgoodです)。お互いが肌が触れ合っている感覚に集中できるよう、静かで落ち着いた環境で行うことが望ましい。
③受け手の希望を尊重してあげる。気持ちが良いところは長めに置いてあげたり、手の圧も受け手の好みに合わせてあげるなど。
「shinsetsu-tion」を受けた感想
施術の中で、特に印象に残っているのは背中に手が置かれたときの感覚です。
その瞬間、支えられているような安心感があり、思わずホッとしました。
事前に家族に関する過去のモヤモヤを話していたこともあり、ただ身体に触れられているというよりも、自分の気持ちごと受け止めてもらっているように感じました。
背中に触れられている間は、「ひとりで全部抱えなくていいんだ」と思えた気がします。それは静かな安心感でした。
背中に触れられたときに感じた、あの小さな“ホッとする感覚”。
それは、特別な治療というよりも、「人が人を思いやる力」の可能性を教えてくれるものでした。
心のケアは、難しい理論だけでなく、
誰かをねぎらい、支え合う、その静かな時間の中にもあるのかもしれません。
今回、丁寧にお話を聞かせてくださり、そして実際にセッションを体験させてくださった田中貫平先生に、心より感謝申し上げます。
この記事が、読者の皆さまにとっても、自分自身を大切にするきっかけとなれば幸いです。




