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監修者

松岡 雄治
地方国立大学医学部卒業後、横浜市内で初期臨床研修を経て、関東の基幹病院で勤務中。
資格:医師国家試験合格、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級
「気付くと寝すぎてしまう」「長時間眠ってしまうことが不安」と感じている方もいるでしょう。
睡眠時間が長くなる理由には、普段の疲れを回復しようとしている場合や、ストレス、生活リズムの乱れ、睡眠の質の低下などが関係しているケースがあります。
しかし、日中に強い眠気があったり、慢性的な疲れを感じたりする場合は、単なる睡眠不足や寝すぎ以外に原因が隠れている可能性もあります。このようなサインに気付いたときは、生活習慣を見直したり、医師に相談したりすることが大切です。
この記事では、睡眠時間が長くなる原因やメリット・デメリット、注意するべきサイン、睡眠の質を高めるための生活習慣について解説します。自分の状態を確かめたい方は、ぜひ最後までお読みください。
成人の睡眠時間は6〜8時間
厚生労働省によると、20~59歳の成人にはおおむね6~8時間の睡眠が推奨されています。ただし、睡眠時間が8時間を少し超えて9時間程度になったとしても、一般的には適切な範囲内と考えられています。
したがって、8時間を超えて眠ったからといって、すぐに「寝すぎ」と判断する必要はありません。
また、良い睡眠かどうかは睡眠時間だけで決まるものではなく、「十分に休息できた」「朝すっきり目覚められた」と感じられるかといった睡眠の質によっても大きく左右されます。
なお、ロングスリーパーの特徴や過眠症との見分け方については、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:【医師監修】ロングスリーパーとは?原因・特徴や病気との違い、過眠症との見分け方まで解説
※出典:厚生労働省 スマート・ライフ・プロジェクト「睡眠の質」
睡眠時間が長くなる主な原因
睡眠時間が長くなる背景には、いくつかの要因が重なっていることがあります。どれに当てはまるかがわかると、見直す方向が定まります。ここでは、考えられる主な原因を4つに分けて確認していきます。
1. 睡眠不足
休日に長時間眠ってしまう人は、実は平日に十分な睡眠がとれていない可能性があります。人間の身体は「寝だめ」をして睡眠不足を完全に補うことはできません。
厚生労働省も、休日に長く眠る必要が生じるのは、平日に慢性的な睡眠不足が続いている影響であると説明しています。毎週末に寝すぎてしまう状態が続く場合は、まず平日の睡眠習慣を見直すことが大切です。
寝だめが悪いわけではありませんが、寝不足のサインということはぜひ知っておいてください。
厚生労働省によると、平日に最低限の睡眠時間(6時間程度)を確保したうえで、休日に1時間程度の寝溜めをすることで寿命が延びるとの報告があります。一方で、2時間以上の寝溜めや、平日の睡眠時間が極端に短い場合では寿命を延ばす効果はないとされています。
※出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
2. 一時的な疲労やストレス
疲労やストレスが重なると、睡眠時間が一時的に長くなることがあります。たとえば、仕事が忙しいときや激しい運動をした後、精神的な負担を感じているとき、体調を崩した後などに起こりやすくなります。
数日から1〜2週間ほどで元の状態に戻れば、あまり心配しなくてもよいでしょう。ただし、長く寝てしまう状態が数週間続く場合は、他にも原因がないか医師への相談も検討しましょう。
3. 体質や季節による変化
体質や季節によって、必要な睡眠時間や眠気の感じ方には個人差があります。
たとえば、もともと長い睡眠が必要な「ロングスリーパー」と呼ばれる人たちは、十分に休息を取れば日中も支障なく活動できます。
また、季節の変化も睡眠時間に影響します。とくに冬のように日照時間が短くなる時期は、普段よりも眠気を感じやすくなる場合があります。
4. 病気が隠れているケース
睡眠時間が長くなる背景として、何らかの病気が関係していることも考えられます。代表的なものとしては、次のような病気があります。
- 過眠症(特発性過眠症・ナルコレプシー)
- 睡眠時無呼吸症候群
- 甲状腺機能低下症
- うつ病
これらの病気が原因の場合、自分で原因を正確に判断するのは困難です。十分に眠っていても、日中に強い眠気や疲れがたまって生活に支障をきたすようなら、なるべく早く医師に相談しましょう。
令和元年に、20歳以上の成人約5,700人を対象に厚生労働省が実施した調査では、「この1ヵ月間に、週3回以上、日中に眠気を感じた人」は、34.8%にものぼりました。日中の眠気は睡眠不足だけによるものではなく例えば眠気を生じる薬の内服などさまざまな原因が考えられますが、現代のとても一般的な悩みだとわかります。慢性的な睡眠不足は、パフォーマンスの低下の他、生活習慣病や精神疾患のリスクにもなるため、どうか無理せず必要に応じて医療を活用してください。
※出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「昼間の眠気―睡眠不足だけではなく睡眠・覚醒障害にも注意が必要」
長時間睡眠のメリットとデメリット
長時間の睡眠は、体や心にさまざまな影響を与えます。一つの側面だけを見ると正しい判断ができないことがあるため、良い点と気をつけたい点の両方を知っておくことが大切です。
長時間睡眠のメリット
平日に十分な睡眠をとれているなら、他の日に睡眠時間が長くなっても、あまり気にする必要はありません。
睡眠中は、体のダメージが回復し、記憶が整理され、気持ちも落ち着きます。自分に合った時間をしっかり眠れていれば、朝は気持ちよく目覚められ、日中も集中して過ごしやすくなります。
十分に眠れているかを確かめたいときは、睡眠時間ではなく翌日の体調に注目しましょう。起きたときに休めたと感じ、日中に強い眠気で困ることがなければ、その睡眠時間は自分に合っていると考えられます。
長時間睡眠のデメリット
一方で、長時間睡眠が続く場合は注意点もあります。主なデメリットとして、以下が指摘されています。
- 生活習慣病のリスクが高まる場合がある
- 気分の落ち込みや抑うつ的な状態を招くことがある
- 日中の活動量が減少し、生活全体のリズムが乱れやすくなる
とくに、寝すぎると夜に眠れなくなったり日中に眠気が残ったりして、悪循環に陥ることがあるため、注意が必要です。
ただし、長く眠ったからといって必ずしも健康を損なうとは限りません。身体や心の不調など、ほかに原因が隠れていることも考えられます。睡眠時間だけに注目するのではなく、体全体の健康状態や生活習慣もあわせて見直すことが大切です。
睡眠時間と健康リスク
長時間睡眠が健康リスクの直接的な原因になるとは限りません。公的な調査データでは、睡眠時間が長いことで死亡リスクが高まるという報告もあります。ただし、データだけで不安になる前に、背景をきちんと理解することが大切です。
たとえば、国立がん研究センターが日本人約10万人を対象に実施した研究では、1日7時間睡眠の人と比べて、10時間以上睡眠をとる人の死亡リスクが高いことが報告されました。
しかし、同研究では、長時間睡眠の背後に睡眠時無呼吸症候群などの疾患が隠れている可能性も示唆されています。つまり、「長く寝る状態」が継続する場合は、単に睡眠時間だけで判断するのではなく、何らかの体調不良や隠れた病気が潜んでいないか確認する視点が重要です。
この報告は、長く寝ること自体が寿命を縮めていくという内容ではありません。
要点としては、「10時間以上寝ないと体がもたない(疲れが取れない)」背景に、睡眠時無呼吸症候群や心疾患、うつ病など、死亡リスクを高める別の疾患が隠れている可能性があるということです。
ロングスリーパーといって、健康でも人よりも長く寝る必要がある方もいます。そのような方の寿命が短いということでもなく、長時間の睡眠が必要な背景について見直す必要があるということです。
※出典:国立がん研究センター 多目的コホート研究「睡眠時間と死亡との関連について」
長時間睡眠の人が注意したいサイン
長時間寝ても体調が優れない場合は、何か原因が隠れていることがあります。必要以上に不安になる必要はありませんが、状況に応じて医療機関を受診することが大切です。
ここでは、医師に相談をしたほうがよい3つのサインについて解説します。
1. 日中の強い眠気で生活に支障がある
夜に長く寝ているにもかかわらず、日中に強い眠気が続く場合は注意が必要です。たとえば、授業中や仕事中に居眠りしてしまう、集中できないといった状態が当てはまります。
夜に十分眠っているのに昼間に強い眠気が続き、居眠りしてしまう病気として、過眠症があります。学業や仕事に支障が出ているなら、睡眠障害を専門とする医師への相談を推奨します。
2. いびきや無呼吸を指摘されたことがある
長く寝ても疲れが取れないのは、睡眠中の呼吸の乱れが関わっている場合があります。たとえば、家族から大きないびきや、息が止まっていることを指摘されたことはないでしょうか。
また、朝起きたときに頭が痛かったり、日中に強い眠気を感じたりする場合も注意が必要です。これらの症状がいくつも当てはまる場合は、睡眠時無呼吸症候群などの可能性があるため、一度医師に相談してみることをおすすめします。
睡眠時無呼吸症候群の場合、寝ている間に何度も呼吸が止まってしまいます。ほとんど窒息しているような状態になり、体内の酸素濃度が大幅に下がってしまうこともあります。その度に交感神経が刺激されて、脳が覚醒を繰り返すため、何時間寝ても十分に休まりません。結果として「10時間以上寝ても疲れが取れない」という状態に陥ります。いびきを指摘される方や、起きた時に頭痛がある方は、早めに睡眠外来や呼吸器内科の受診を検討しましょう。
3. 気分の落ち込みや意欲低下が続いている
長時間眠ってしまう状態が、気分の落ち込みや意欲の低下と同時に続く場合は注意が必要です。
たとえば、寝すぎてしまう状態が続き、何をするにもやる気が起きなかったり、おっくうに感じたりする状態が数週間続く場合は、心や体の不調が関係している可能性があります。
気分の落ち込みや生活リズムの乱れが長引くときは、抱え込まずに医師へ相談してみましょう。早めに相談することで、対応の選択肢が広がります。
睡眠時間が長い人が見直すべき生活習慣
睡眠の質は、日々の習慣によって変わっていきます。特別な道具がなくても、今日から始められる工夫がいくつもあります。ここでは、無理なく取り入れやすい4つの見直し方を紹介します。
1. 起床時刻をなるべく固定する
まず取り組みたいのは、起床時刻をなるべくそろえることです。睡眠時間を無理に削るのではなく、起きる時間を安定させることから始めましょう。生活リズムが整うと、夜の寝つきも改善しやすくなります。
休日に長く寝てしまう人も、起床時刻のズレは少なくするのがおすすめです。いきなり平日と同じにするのが難しければ、15〜30分単位で少しずつ調整してみましょう。
2. 朝の光と日中の活動量を増やす
朝に光を浴びることは、体内時計を整えるために効果的です。起きたらまずカーテンを開けて、部屋に光を取り入れることから始めてみましょう。さらに、通勤や散歩などで外に出ることもおすすめです。曇りの日でも屋内の蛍光灯よりも、太陽光はずっと明るいため、ぜひ光を浴びましょう。
また、日中に体を動かすことも夜に自然と眠くなる助けになります。たとえば、昼休みに少し歩いてみたり、電車やバスの一駅分を歩くなど、毎日の中で活動量を増やす工夫をするとよいでしょう。
3. 寝る前のスマホや飲酒を見直す
就寝前にスマホを使ったり、お酒を飲んだりする習慣は、睡眠の質を下げやすいといわれています。
スマホの画面から出る光や、アプリなどで得られる情報の刺激が脳を覚醒させて、寝つきを悪くするおそれがあります。また、寝酒は一時的に眠りやすくなるものの、睡眠の後半で眠りが浅くなり、夜中に目が覚めやすくなります。
まずは就寝前の30分間だけでもスマホを使うのをやめてみたり、飲酒の量を少しずつ減らしたりすることから始めてみましょう。
たまの休みの前には、食事とお酒を心ゆくまで楽しみ、翌朝の起床時間など考えずに気持ちよく眠りにつきたいものです。お酒は実際、入眠を助ける働きをします。
しかし、睡眠全体でみるとやはりマイナスが大きく、医師としては寝酒は勧められないのです。お酒の睡眠への影響は、アルコールの利尿効果だけでなく、代謝によって生じるアセトアルデヒドが交感神経を刺激することで深い眠りを妨げてしまうことにもよります。
「そんなわけで、私は早い時間に飲むようにしています。」というのは、どうか真似しないでいただきたいお酒好きの屁理屈です。
4. 寝室環境と寝具の合わなさを確認する
寝室の環境も、睡眠の質に影響します。たとえば、寝室の温度や明るさ、外からの音が適切でない場合、眠りが浅くなったり途中で目が覚めやすくなったりします。
このような場合は、エアコンや遮光カーテンを使って快適な環境に調整することがおすすめです。
また、意外と見落としがちなのが、枕やマットレスの相性です。体に合わない寝具を使っていると、寝返りがしにくくなり、結果として睡眠の質が下がることがあります。寝返りのしやすさや寝姿勢などに合わせて寝具を見直すことで、睡眠の質の改善が期待できます。
マットレスの選び方については以下の記事も参考にしてください。
関連記事:マットレスの種類や選び方のポイントを徹底解説!自分に合うマットレスはどれか探してみよう
睡眠時間が長い人によくある質問
睡眠時間の長さについて、多く寄せられる質問に回答します。
Q1. 8時間以上は寝すぎ?
8時間以上眠っても、寝すぎとは限りません。適正な睡眠時間には個人差があり、年齢によっても変わります。
判断の目安になるのは、日中の眠気や、朝に休養感を得られているかどうかです。長く寝てすっきり過ごせているなら、過度に心配する必要はありません。
子どもがよく寝て高齢になると睡眠時間が短くなるのは、自然なことです。必要な睡眠時間は15歳前後では約8時間、25歳で約7時間、65歳で約6時間と、成人後は20年ごとに30分程度の割合で減少することが知られています。一方で、これは目安にすぎず、個人差があること、睡眠によって日中しっかりと活動できることが大切です。
※出典:厚生労働省 スマート・ライフ・プロジェクト「睡眠の質」
Q2. 休日に12時間寝てしまう原因は?
たまに12時間ほど眠るだけなら、疲労や睡眠不足の回復として起こる場合があります。
一方で、毎週のように休日に長く寝てしまうなら、平日の睡眠不足のサインかもしれません。睡眠不足の場合は、平日の睡眠時間の確保や生活リズムの見直しから始めましょう。
Q3. ロングスリーパーはどう治す?
ロングスリーパーであっても、日中に支障がなく元気に過ごせているのであれば、睡眠時間を無理に短縮する必要はありません。そもそもロングスリーパーは、睡眠時間が一般より長いという体質です。
一方で、いくら長く寝ても日中に眠気や疲労感が残り、仕事や学業に悪影響が出ている場合には注意が必要です。睡眠の質が悪かったり、何らかの病気が隠れている可能性があります。
まとめ:睡眠時間が長いときは時間だけでなく休養感を見直そう
長く眠ることが、必ずしも悪いとは限りません。睡眠時間が長くなる背景には、体質や睡眠不足、睡眠の質の低下、疲労、病気などさまざまな理由があります。
適切な睡眠かどうかを判断するためには、翌日の自分の状態を確認することが重要です。具体的には、以下の点を確認しましょう。
- 朝起きたときに、休めたと感じられるか
- 日中に強い眠気で困っていないか
- 仕事や家事など、生活に支障が出ていないか
これらの点に問題がなければ、今の睡眠時間は適切と考えてよいでしょう。一方で、気になる点があれば、起床時刻を一定にする、朝に光を浴びて日中の活動量を増やす、寝室の環境を見直すなど、身近なことから改善してみましょう。
ただし、長く眠っても疲れが取れない状態が続く場合や、日中の強い眠気、いびきなどが気になるときは、医師に相談してください。
寝すぎによる体への影響については、以下の記事も参考にしてください。











