目次
監修者
松本 恭
「健康の秘訣はぐっすり眠ること」がモットーで、これまでウォーターベッド、ウッドスプリングベッド、西式健康枕、ハンモックなどさまざまな寝具の寝心地を追求してきた睡眠マニア。偶然出会ったコアラマットレス®︎の快適さに感銘を受け、メンバーとして参加。上級睡眠健康指導士としての知識を通して、より多くの人に快眠を届けたいと願っている。
日本では年々夏の気温が上昇し、熱帯夜の日数も増えてきています。令和5年の国民健康・栄養調査では、日本人の4人に1人が慢性的な睡眠不足を抱えているとされ、特に夏の寝苦しさは睡眠の質を大きく低下させる要因になっています。※1
寝る時のエアコンをどう使うかは、そのまま翌日のパフォーマンスに直結するほど重要なポイントです。
本記事では、上級睡眠健康指導士でコアラマットレス社員の松本が、厚生労働省の最新ガイドラインとダイキンの実験データを基に、最適な設定温度や運転方法、電気代を抑える実践テクニックまで、科学的根拠に基づいて体系的に解説していきます。
睡眠時のエアコン最適温度は26〜28℃|厚生労働省の推奨と科学的根拠

夏の寝室に適した温度は、多くの人が迷うテーマです。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、睡眠時の室温は13〜29℃が望ましいとされ、特に夏場は26〜28℃で眠りやすくなると報告されています。※2
国内のエアコンメーカーや寝具メーカーの調査でも、26℃前後の環境は入眠しやすく、中途覚醒の回数が少ない傾向が確認されているため、寝室づくりの基本として押さえておくことが大切になります。※3・4
1. 体温の自然な低下を妨げない26〜28℃が理想
人間の体は、就寝前から睡眠中にかけて深部体温が約1〜1.5℃下がることで深いノンレム睡眠へと移行します。この体温の低下がスムーズに進むほど眠りは深まりやすいです。
室温が高いと体温が下がりにくくなり寝つきが悪くなりますが、逆に低すぎると寒さで筋肉が緊張し、眠りが浅くなる原因になります。冷やしすぎず暑すぎない26〜28℃は、この体温変化を自然にサポートし、心地よい入眠につながる温度帯です。
2. 湿度50〜60%のコントロールで体感温度を4℃下げる
快適に眠るためには温度だけでなく湿度の管理も重要です。湿度が高い環境では汗が蒸発しにくく体温が下がりにくいため、蒸し暑さを感じやすくなります。
ダイキンの実験では、湿度が20%変わると体感温度が約4℃変化すると報告されており、湿度が適切なだけで同じ温度でも快適さが大きく変わります。※5
除湿運転を活用すれば、設定温度を1℃上げても心地よさを保ちやすくなり、寝返りの回数も減って深い睡眠が得られやすいでしょう。
3. 年代別・季節別の微調整ポイント
体温調節のしやすさには個人差があり、年代によっても快適な温度帯が異なります。高齢者は体温調節機能が低下しやすいため、若年層よりも1〜2℃高めの設定が心地よく感じる場合も少なくありません。
冬は暖房時の設定温度が20℃程度を目安にして、乾燥を防ぐために短時間の加湿を取り入れると快適に過ごせます。季節や体質に合わせて微調整しながら、自分にとって最適な寝室環境を整えることが睡眠の質向上につながります。
つけっぱなしvs切タイマー|暑さ指数(WBGT)で見る熱中症リスクの違い

寝る時のエアコン設定で多くの人が迷うのが、「朝までつけっぱなし」にするか「切タイマー」を使うかという点です。
ダイキンが一般住宅で行った実験では、両者の環境が大きく異なることが示されており、特に熱中症リスクを表す基準であるWBGT(暑さ指数)の変化は、睡眠中の体の負担を判断するうえで重要な指標です。※6・7
ちなみに、WBGT25以上が「警戒」、28以上が「厳重警戒」に分類されます。※8
この指標を基にすると、夏の夜間にエアコンをどう使うかが、睡眠と健康に直結することが分かります。
1. 切タイマー3時間後、明け方にWBGT25の危険水準に達する
ダイキンの実験では、就寝3時間後にエアコンが停止するように設定すると、明け方にWBGTが25まで上昇する結果が確認されています。※6
睡眠中の体は深部体温が下がっているため、外気温の上昇に対して敏感に反応しやすくなります。エアコン停止後に室温と湿度が急上昇すると、体はストレスを感じやすくなるため、寝苦しさで目が覚めたり、汗をかいて不快感を覚えたりして睡眠の質が下がってしまいます。
切タイマーの使用は熱中症リスクが高まるだけでなく、中途覚醒や睡眠の質の低下につながる可能性があるため、設定する際には注意が必要です。
2. つけっぱなし運転で安定したWBGT値をキープ
一方、エアコンを朝までつけっぱなしにした場合は、WBGTの数値が大きく上がらず、安定した環境で眠れる傾向があります。※6
寝室が高温・多湿になると深い睡眠が妨げられ、体への負担が増えますが、つけっぱなしであれば温度と湿度が一定に保たれるため、体が余計なストレスを受けにくいのです。
電気代が気になる場合でも、設定温度を少し高めにしたり、湿度を下げたりするだけで快適さを維持できます。エアコンの性能を活かしながら、身体への負担を最小限に抑える使い方として、つけっぱなし運転は非常に有効です。
3. 奈良女子大学が実証|切タイマーなら3時間設定が睡眠サイクルに最適
切タイマーをどうしても使いたい場合は、奈良女子大学の研究によって「3時間設定」が最も理想的とされています。※7
人間の睡眠は約90分を基本的な1サイクルとして、深い睡眠と浅い睡眠を繰り返しています。入眠後の約3時間はもっとも深いノンレム睡眠が続く時間帯ですが、このタイミングでエアコンが停止すると、体温の自然なリズムが維持されやすくなり、睡眠サイクルへの影響を最小限に抑えられます。
逆に、1時間など短いタイマー設定は深い睡眠の途中で室温が上昇してしまうため、寝苦しさや中途覚醒を引き起こしやすくなる点に注意しましょう。
エアコンの電気代を抑える5つの実践テクニック

寝る時のエアコン使用で気になるのが電気代の負担です。電気代は「消費電力 × 使用時間 × 電気料金単価」で計算されます。本記事を執筆している2025年11月時点において、一般家庭の電気料金単価の目安は31円/kWh前後です。※9
10畳用のエアコンを夏に毎日8時間使用した場合、月額で約5,400円台になる計算ですが、エアコンの使い方を少し工夫するだけで、快適さを保ちながら電気代を抑えることができます。
ここでは、家庭でもすぐに取り入れやすいエアコンの電気代を抑える5つの方法を紹介します。
1. 風向きを水平にして直接風を避ける
風向きを水平に設定すると体に直接風が当たりにくくなり、冷えすぎを防ぎながら寝室全体を均一に冷やせます。
体に風が当たると冷たさを感じてしまい、設定温度を低くしがちですが、風向きを調整するだけで快適さは大きく変わります。サーキュレーターや扇風機を併用すると空気が循環しやすくなり、設定温度を1℃上げても心地よく眠れる環境をつくることができます。
2. 自動運転モードで消費電力を最適化
エアコンの電気代を抑えるうえで効果的なのが、自動運転モードの活用です。風量を「強」や「弱」に手動で切り替えるよりも、自動運転の方が室温に応じて最適な運転に切り替わるため無駄な電力消費が少なくなります。
メーカーの検証では、自動運転の方が手動運転よりも消費電力が約3割少なくなるという結果も示されています※10。設定温度に達した後は消費電力が大幅に下がるため、長時間の運転でも電気代の負担を抑えやすいでしょう。
3. 就寝1時間前からの予冷で効率アップ
部屋が熱をため込んだ状態のまま寝ようとすると、設定温度を下げる必要があり電気代が高くなってしまいます。そこでおすすめしたいのが、就寝の30分〜1時間前からエアコンを入れて予冷しておく方法です。
寝るタイミングですでに快適な室温になっているため、設定温度を高めにしても眠りやすい環境が整っています。特に熱帯夜は壁や天井に熱がこもりやすいため、予冷を取り入れるだけで快適度が大きく変わるでしょう。
4. 2週間に1度のフィルター掃除で電力15%削減
フィルターが汚れていると冷房効率が低下し、無駄な電力を使ってしまいます。メーカーの実験では、フィルター掃除をするだけで消費電力が最大15%削減できるとされており、定期的なメンテナンスが節電に直結します。※11
理想的な掃除頻度は2週間に1度です。
5. 室外機の日除け設置で冷房効率アップ
室外機が直射日光にさらされると温度が上がり、冷房の効きが悪くなるだけでなく電気代の増加にもつながります。すだれや日除けカバーを利用して室外機が直射日光に当たらないよう工夫すれば、室外機の負担が軽くなって冷房効率も安定します。
ただし、室外機の周囲を覆いすぎると風通しが悪くなるため、コンプレッサーをふさがないこと、周囲に適度なスペースを確保することを意識してください。
睡眠の質を高めるエアコン活用法|よくある悩みと解決策

エアコンを使って寝ると、冷えすぎや乾燥、翌朝のだるさなどの悩みが生じることがあります。ただし、正しい使い方を理解すれば、こうした不快感を解消しながら心地よい睡眠環境を整えられます。睡眠研究の知見やメーカーの推奨を取り入れた具体的な対策を紹介します。
1. 「朝起きたら体がだるい」原因と対策
朝起きたときに体がだるく感じる原因として、睡眠中の冷えすぎが挙げられます。薄着で寝たり、直接風を受け続けたりすると筋肉が緊張し、疲労が取れにくくなるのです。
吸湿性と保温性を備えた素材のパジャマを着て寝ると快適に過ごしやすくなります。加えて、エアコンの風が直接体に当たらないように調整して冷えすぎを防ぎましょう。掛け布団も季節に合わせて適切な厚さに整え、体が冷えない環境をつくることが大切です。
2. 喉の乾燥を防ぐ加湿テクニック
エアコン使用時は湿度が下がりやすいため、喉が乾燥しがちです。加湿器を併用したり、就寝前に濡れタオルを枕元に置いたりする方法が有効です。
また、寝る前にコップ一杯の水を飲むことで、寝ている間の肌の乾燥を軽減できます。快適な湿度は50〜60%が目安なため、湿度計を見ながら調整しましょう。
3. タイマーが切れた後の暑さ対策
切タイマーを利用している場合、タイマーが切れた後の室温の上昇で目が覚めてしまうことがあります。
冷感寝具は熱を逃がしやすく、暑さによる寝苦しさを軽減できます。扇風機を弱風で回し続け、空気を緩やかに循環させて体感温度を下げる方法も効果的です。
ただし、明け方の室温が高くなりすぎると熱中症リスクが高まるため、十分に注意しましょう。※8
快適な睡眠環境づくりは総合的なアプローチが重要

寝る時のエアコン設定は、温度26〜28℃、湿度50〜60%が基本です。つけっぱなし運転はWBGTの観点からも安全性が高く、切タイマーを使うなら睡眠サイクルに合わせた3時間設定が理想的です。
電気代が気になる場合でも、予冷の習慣や自動運転モードの活用、定期的なフィルター掃除によって電気代を抑えながら快適な環境をつくれます。さらに、睡眠の質を大きく左右するパジャマや掛け布団、マットレスなども慎重に選びましょう。
より快適な睡眠を目指す際には、マットレスや枕選びに関する情報も参考にしながら、自分に合った環境づくりを進めていくことが大切です。
参考
※1 令和5年「国民健康・栄養調査」の結果 | 厚生労働省
※2 健康づくりのための睡眠ガイド 2023 | 厚生労働省
※3 寝苦しい夏におススメ ぐっすり快眠環境をつくるエアコン活用方法 | パナソニック
※4 エアコンは寝るときにつけっぱなしでいい?温度設定の目安や暑くて寝苦しい夜の対処法 | 日本橋西川
※5 熱中症とエアコンの使い方|湿度と体感温度の関係 | ダイキン 空気の困りごとラボ
※6 mission8 夏の睡眠時のエアコンは「切タイマー運転」と「つけっぱなし運転」どちらがよいか | ダイキン工業
※7 熱帯夜の困りごとと解決法 | ダイキン 空気の困りごとラボ(sultry-night)
※8 暑さ指数(WBGT)とは? | 環境省 熱中症予防情報サイト
※9 1kWhの電気代はいくら?計算方法と電力会社で単価が異なる理由を解説 | ドコモでんき
※10 エアコンの風量「自動」運転時の消費電力比較に関する実証結果 | ダイキン プレスリリース(2024年4月24日)
※11 エアコンのフィルター清掃による消費電力量削減効果 | ダイキン プレスリリース(2022年8月9日)










