松本 恭
「健康の秘訣はぐっすり眠ること」がモットーで、これまでウォーターベッド、ウッドスプリングベッド、西式健康枕、ハンモックなどさまざまな寝具の寝心地を追求してきた睡眠マニア。偶然出会ったコアラマットレス®︎の快適さに感銘を受け、メンバーとして参加。上級睡眠健康指導士としての知識を通して、より多くの人に快眠を届けたいと願っている。
「また今夜も3時に目が覚めてしまった…」
深夜の暗闇の中、時計を見てため息をつく。そんな経験はありませんか?夜中に何度も目が覚める中途覚醒は、多くの方が抱える睡眠の悩みです。気にしすぎると余計に眠れなくなると分かっていても、翌日の仕事のことを考えると焦りは募り、インターネットで調べれば「様々な健康リスク」といった不安を煽る情報が目についてしまうため、どう対処すべきか迷ってしまうという方もいるのではないでしょうか。
実は、中途覚醒への適切な向き合い方を知ることで、過度な心配から解放され、自然な睡眠リズムを取り戻すことができるのです。本記事では、「気にしない」ことと「適切な対処」のバランスを保ちながら、中途覚醒を改善する方法をご紹介します。
中途覚醒を「気にしない」ことが大切な3つの理由
中途覚醒そのものが悪化してしまう要因の一つは「気にしすぎてしまうこと」です。もちろん朝までぐっすりと眠りたいと思うのは自然なことですが、寝なければいけないと気にしすぎた結果さらに眠れないという悪循環に陥りかねません。あまり気にしない方が良いとお伝えするには、もちろんしっかりとした理由があります。
睡眠の主観的評価は「当てにならない」という事実
睡眠に関する主観的な評価はあまり当てにならないことが多いです。不眠傾向が強い方には、実際の睡眠と自分の考える睡眠状況が異なる「睡眠誤認」という現象が起こりやすいといわれています。
わかりやすい例で説明しましょう。「夜中の1時に起きてしまい、そこから4時までずっと眠れなかった。3時にも時計を確認したから覚えてる!」と主張する方について、実際に脳波などを用いた客観的な指標で睡眠の状態を測定してみると、確かに1時と3時、そして4時に目覚めてはいるもののそれ以外はぐっすりと眠れているということが少なくありません。こういった事例は案外多く、主観的な評価と客観的な評価には乖離があることを示しています。
気にしすぎることで生じる「不眠恐怖」の悪循環
不眠恐怖の悪循環は、まず睡眠に対する過度の注意と心配から始まります。夜になると「今日もまた眠れないのではないか」という不安が生じ、覚醒レベルを高めます。この認知的な覚醒は、身体的な覚醒よりも不眠の主要因として認識されることが多く、いわゆる「頭の中が騒がしい」という状態を引き起こすだけでなく、睡眠への意識的な努力が逆効果となることも指摘されています。
「早く眠らなければ」と焦れば焦るほど、本来自動的に起こるべき睡眠のプロセスが妨げられてしまうというわけです。睡眠を意識的にコントロールしようとすればするほど、かえって自然な睡眠を妨げてしまうことが考えられます。※1)
一時的な中途覚醒は自然な現象
基本的に朝までぐっすり眠れている方でも、微量な覚醒は睡眠中に起こっていることがあります。そして、多くの場合は自覚していません。また、年齢を重ねると、ホルモンの関係で一晩のうちで浅い睡眠の割合が増えるため、自ずと覚醒する時間が増えるのは自然なことです。昔ほど眠れなくなった、前は朝までに目が覚めることなどなかった、というケースのほとんどは自然な現象ですから、気にしすぎない方が良いでしょう。
ただし、これから解説するサインがある場合は、睡眠を見直した方が良いケースです。早速確認してみましょう。
中途覚醒を放置してはいけない4つのサイン

週3回以上、30分以上の中途覚醒が続く
不眠症における最も注意すべき重要な要素の一つは「症状が慢性化しているか」という点です。一時的な不眠は多くの人が経験しますが、長期間続く慢性不眠症になると日常生活への影響が大きくなり、適切な対応が必要になります。また、夜中に何度も目が覚めてしまうことは苦痛を伴うこともありますが、大事なことは中途覚醒してから再度入眠することができないという点です。
加齢とともに睡眠が浅くなり、覚醒の回数は自然と増えることを考慮したうえで、一晩のうちトータル何分起きていたかを考える必要があります。目安としては、だいたい30分以上覚醒している日が週に3回以上ある場合には、専門機関の受診をおすすめします。3ヶ月を基準にして、それ以上だと慢性不眠症、それ以下だと短期不眠症と分類されます。※2)
日中の強い眠気や倦怠感がある
夜間の中途覚醒により十分な睡眠がとれていない場合、日中に強い眠気や倦怠感を感じることがあります。これは単なる疲れとは異なり、休憩をとっても改善されない持続的な症状です。会議中や運転中に強い眠気に襲われたり、午後の時間帯に極度の疲労感を感じたりする場合は、睡眠の質に問題がある可能性が高いです。このような状態が続くと、集中力の低下や判断力の鈍化につながり、日常生活や仕事でのミスが増える原因となります。また、慢性的な睡眠不足は免疫力の低下にもつながるため、風邪をひきやすくなったり体調を崩しやすくなったりすることも多いです。
仕事の生産性が低下している
睡眠の質の低下は、仕事のパフォーマンスにも直接的な影響を与えます。中途覚醒により深い睡眠が妨げられると、脳の情報処理能力や記憶力が低下し、仕事の効率が著しく落ちることがあります。具体的には、普段なら簡単にできる作業に時間がかかるようになったり、ケアレスミスが増えたり、創造的な発想が出にくくなったりすることも珍しくありません。会議での発言が減る、企画書の作成に通常の倍以上の時間がかかるなど、明らかに仕事の質が低下している場合は、睡眠の問題を真剣に考える必要があります。
いびきや呼吸の乱れを指摘される
家族やパートナーから「いびきがひどい」「寝ている間に呼吸が止まっているようだ」と指摘されたら、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の可能性を疑いましょう。閉塞性睡眠時無呼吸症候群は睡眠中に気道が狭まることで呼吸が妨げられる疾患で、頻繁に目が覚める原因となります。閉塞性睡眠時無呼吸症候群は肥満の人に多く見られますが、顎が小さい、首が短いなどの身体的特徴がある人でも発症することがあるうえに、高血圧や脳卒中、心筋梗塞などの循環器疾患のリスクを高めるため早期の診断と治療が重要です。いびきが大きく頻繁である、日中の眠気が強い、朝起きたときに頭痛がある、夜間に何度もトイレに起きるなどの症状がある場合は、専門機関に相談しましょう。
いびきに関してはなかなか自覚することが難しいので、家族やパートナーから指摘を受けたり、一人で寝ている場合であれば無料のアプリなどで録音したりするのも良いでしょう。閉塞性睡眠時無呼吸症候群は様々な健康リスクと関連しているため、少し注意が必要な項目です。
今すぐできる中途覚醒の改善方法5選

睡眠時間より「床上時間」を意識する
睡眠の質を改善するうえで重要なのは、実は睡眠時間そのものよりも「床上時間」です。床上時間とは、ベッドや布団で横になっている時間のことを指します。多くの人は眠れないからといって長時間ベッドで過ごしがちですが、逆効果になることが多い方法です。身体が必要とする睡眠時間以上に床で過ごすと、寝つくまでに時間がかかったり、途中で目が覚める回数が増えたり、熟眠感(心身ともにすっきり目覚める感覚)が減少したりします。
理想的な床上時間は、実際の睡眠時間にプラス30分程度です。6時間睡眠の方であれば、床上時間は6時間30分から7時間程度に留めることが推奨されます。眠れないときは無理に寝ようとせず、一旦寝室を離れて、静かで暗めの場所で眠気が訪れるまで過ごし、眠くなってから寝床に戻るようにしましょう。
朝の光を浴びて体内時計を整える
私たちの身体には「体内時計」と呼ばれる生体リズムがあり、これが睡眠と覚醒のサイクルを調整しています。朝の光を浴びることで、この体内時計がリセットされ、夜の良質な睡眠につながります。起床後はすぐにカーテンを開けて朝日を取り入れましょう。日中もできるだけ屋外で過ごす時間を作り、1,000ルクス以上の明るい光を浴びることが大切です。これにより、夜間のメラトニン(睡眠を促すホルモン)の分泌が増加し、入眠がスムーズになるのです。
一方で、就寝の約2時間前からは照明を落とし、スマートフォンやタブレット端末の使用を控えましょう。これらの機器から発せられるブルーライトは、メラトニンの分泌を抑制し、睡眠の質を低下させる原因となります。
適度な運動で睡眠の質を向上
日中の適度な運動は、良質な睡眠を得るために非常に効果的です。運動によって日中の身体活動量が増えることで、夜間の睡眠欲求が高まり、入眠が促進されるとともに中途覚醒も減少します。ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動は、寝つきを良くし、深い睡眠を増加させます。また、軽い筋力トレーニングやヨガなども睡眠改善に効果的です。1日60分程度の身体活動を心がけることが望ましいですが、まとまった時間が取れない場合は10分ずつ分割して行っても構いません。
運動のタイミングも重要で、就寝の約2〜4時間前までには終えるようにしましょう。就寝前1時間以内の激しい運動は、交感神経が優位になって睡眠を妨げる可能性があるため、できるだけ避けることが大切です。
カフェイン・アルコールを控える
カフェインやアルコールなどの嗜好品は、睡眠に大きな影響を与えます。カフェインには覚醒作用があり、摂取後3〜7時間は血液中に残存します。例えば、朝9時に400mgのカフェインを摂取すると、夜7時になっても100mg相当が体内に残っていることになります。1日のカフェイン摂取量は400mg以下(コーヒー約700cc)に抑え、特に夕方以降の摂取は控えましょう。夕方以降は、カフェインを含まない麦茶やハーブティーなどに置き換えるのがおすすめです。
アルコールは一時的に寝つきを良くする効果がありますが、睡眠後半の質を著しく悪化させます。アルコールが体内で代謝される過程で生成されるアセトアルデヒドには交感神経刺激作用があり、中途覚醒を増加させる原因となりやすいため、寝酒は避けて晩酌も控えめにすることが大切です。
寝室環境を快適に整える
快適な睡眠環境は、中途覚醒を防ぐうえで重要な要素です。温度、音、光の3つの要素を適切に管理することで、睡眠の質を大幅に改善できます。温度については、夏場はエアコンを使用して涼しく保ち、冬場は室温を18℃以上に維持することが推奨されます。また、就寝の1〜2時間前に入浴することで、体温調節がスムーズに行われ、入眠しやすくなります。騒音対策としては、防音カーテンの設置や、必要に応じて耳栓の使用も検討しましょう。寝室はできるだけ暗くすることが理想的ですが、夜間のトイレなどで移動する際の安全を考慮し、間接照明や足元灯を活用しましょう。※3)
まとめ:中途覚醒と上手に付き合うために

夜中に目が覚めてしまう中途覚醒は、「気にしすぎること」が症状を悪化させる大きな要因です。睡眠の主観的な評価は実際と異なることが多く、「眠れなかった」と感じても、実際は断続的に眠れていることがほとんどです。ただし、週3回以上の中途覚醒が3ヶ月以上続き、日中の生活に支障がある場合は対処が必要です。
改善のポイントは、床上時間を睡眠時間プラス30分程度に留めること。朝の光を浴びて体内時計を整え、夕方以降のカフェインは控えることも効果的です。中途覚醒を完全になくそうと焦る必要はありません。過度な心配は「不眠恐怖」という悪循環を生みます。基本的な生活習慣を改善し、リラックスして自然に眠れるよう環境を整えてください。それでも改善しない場合は、専門医への相談を検討しましょう。
中途覚醒は自然な現象の一部として受け入れながら、自分に合った睡眠リズムを見つけていくことが、良質な睡眠への近道となるでしょう。
参考
※1)Tang et al., 2023, Journal of Sleep Research.
Tang NKY, Saconi B, Jansson-Fröjmark M, Ong JC, Carney CE. Cognitive factors and processes in models of insomnia: A systematic review. Journal of Sleep Research. 2023;32(6):e13923. doi:10.1111/jsr.13923.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12186352/
※2)American Academy of Sleep Medicine, 2023, ICSD-3-TR.
American Academy of Sleep Medicine. International Classification of Sleep Disorders — Third Edition, Text Revision (ICSD-3-TR). Darien, IL: American Academy of Sleep Medicine; 2023.
※3)厚生労働省 健康づくりのための睡眠ガイド2023










