睡眠コラム by Koala JP2026年9月8日読了目安時間: 5

実はNG?!入眠を妨げる就寝前の行動5選|今日から見直したい快眠習慣

森田 麻里子
Child Health Laboratory 代表 / 医師

医師・小児スリープコンサルタント・睡眠専門家

2012年東京大学医学部医学科卒。
亀田総合病院にて初期研修後、2014年仙台厚生病院、2016年南相馬市立総合病院にて麻酔科医として勤務。2017年の第1子出産をきっかけに、2018年より乳幼児の睡眠問題についてのカウンセリングや講座、企業と連携したアプリ監修など行っている。2019年昭和大学病院附属東病院睡眠医療センター非常勤勤務を経て、現在は大人の睡眠カウンセリングや企業向け睡眠講座も手掛ける。

「布団に入ってもなかなか眠れない」「寝ても疲れが取れない」——そんな悩みを抱えている人は少なくありません。厚生労働省の調査でも、日本人の約5人に1人が睡眠に関する何らかの不満を抱えていると言われています。

この記事では、入眠を妨げる代表的なNG行動を5つ厳選し、それぞれがなぜ眠りに悪影響を与えるのか、そのメカニズムと具体的な改善策をあわせて解説します。さらに後半では、NG行動をやめるだけでなく、快眠のために日頃から続けたい習慣もあわせて紹介します。今日からできる小さな見直しで、眠りの質を変えていきましょう。

そもそも、なぜ「寝つき」が悪くなるのか

NG行動を見ていく前に、簡単に入眠のメカニズムを押さえておきましょう。人がスムーズに眠りにつくためには、睡眠圧とサーカディアンリズムという2つのシステムが関わっています。睡眠圧とは、連続して起きている時間が長くなると眠気が増してくる仕組みのことを指します。一方、サーカディアンリズムというのは体内時計がコントロールするおよそ24時間のリズムのことです。このサーカディアンリズムに従って、「朝になったら起きて活動し、夜になったら眠る」よう身体の調子が調節されています。

今回は、サーカディアンリズムが主にコントロールしている「深部体温のリズム」と「メラトニンの分泌」に注目して解説していきます。

まず1つ目は「深部体温のリズム」です。人の体は、日中に体の内部の温度(深部体温)を高く保ち、夜になると手足の末端から熱を放散させて深部体温を下げるよう調節されています。急激に深部体温が下がる時に眠気が強くなることがわかっており、お風呂上がりに眠くなるのは、このメカニズムによるものです。

2つ目は「メラトニンの分泌」です。メラトニンは睡眠を促すホルモンで、夜になり周囲が暗くなる頃に分泌量が増えます。しかし夜の時間でも強い光を浴びると、脳が「まだ昼間だったのか」といわば錯覚してしまい、メラトニンの分泌が抑えられてしまうのです。

これから紹介するNG行動の多くは、この「深部体温の低下」と「メラトニンの分泌」のどちらか、あるいは両方を妨げてしまうことが共通しています。仕組みを理解しておくと、なぜその行動がNGなのかが腹落ちしやすくなります。

1. 就寝直前のスマホ・SNSチェック

寝る直前までスマートフォンを見てしまう人は非常に多いですが、これは入眠の大敵です。画面から発せられるブルーライトは、前述したメラトニンの分泌を抑制してしまうことがわかっています。

さらに問題なのは光の刺激だけではありません。SNSのタイムラインやニュースサイトは、感情を揺さぶる情報や新しい情報が次々と流れてくるため、脳が「情報処理モード」に入ってしまいます。これにより、リラックスすべき時間帯にもかかわらず交感神経が優位になり、体は興奮状態のまま布団に入ることになります。「あと1本だけ」で動画を見続けてしまい、気づけば1時間経っていた、という経験がある人も多いのではないでしょうか。

改善のヒント:就寝30分〜1時間前にはスマホを寝室の外に置く、あるいは機内モードにするなど、物理的に距離を取るのが効果的です。その時間は読書や軽いストレッチ、照明を落としての音楽鑑賞など、脳を興奮させない過ごし方に切り替えましょう。

2. 靴下を履いたまま寝る

「足が冷えるから」という理由で、靴下を履いたまま寝る人は少なくありません。しかし、これには注意が必要です。

先ほど説明した通り、入眠時には手足の末端から熱を放散させることで深部体温を下げ、自然な眠気が起こります。ところが、締め付けの強い靴下や厚手の靴下を履いたまま寝ると、足からの放熱がうまくいかず、かえって寝苦しさや夜中の目覚めにつながることがあります。特に汗をかきやすい人や、暖房の効いた部屋で寝る人は、蒸れによる不快感も相まって夜中の中途覚醒を招くケースも見られます。

一方で、冷え性で足先が冷たすぎて眠れないという人がいるのも事実で、「靴下=絶対NG」と一概に言い切れるわけではありません。手足が冷たすぎると末端の血流が悪くなり、深部体温は低下しにくくなります。足先の冷えを防いで血流を保つことが、放熱を促すことにつながります。大切なのは、履くかどうかよりも「放熱を妨げないこと」です。

改善のヒント:足の冷えが気になる場合は、就寝前にレッグウォーマーや靴下で温めておき、布団に入るタイミングで脱ぐのがおすすめです。どうしても履いたまま寝たい場合は、締め付けの少ない、通気性のよい素材のものを選びましょう。

3. 就寝前のカフェイン・アルコール摂取

コーヒーや緑茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインには覚醒作用があり、少なくとも摂取後4〜5時間、体質によってはそれ以上体内に残ると言われています。「夕食後の一杯」のつもりが、気づかぬうちに寝つきを悪くしている、というのはよくあるパターンです。

また、「寝酒」として知られるアルコールにも注意が必要です。アルコールには一時的に眠気を誘う作用がありますが、体内で分解される過程で睡眠の後半部分が浅くなり、夜中に目が覚めやすくなることがわかっています。飲んだ日に限って夜中や早朝に目が覚めてしまう、という人は寝酒が原因かもしれません。

改善のヒント:カフェインは就寝の8時間前までを目安に控え、夕方以降はカフェインレスの飲み物に切り替えましょう。アルコールは就寝の4時間前までとし、「入眠のための手段」として使うことのないよう意識することが大切です。

4. 就寝直前の熱すぎる・長すぎる入浴

入浴自体は快眠に効果的な習慣として知られていますが、タイミングと温度を間違えると逆効果になってしまいます。

就寝直前に熱すぎるお湯(42℃以上など)に長時間浸かると、交感神経が刺激されて体が興奮状態になります。さらに、上がった深部体温が下がりきる前にベッドに入ることになるため、逆に寝つきにくくなってしまいます。

改善のヒント:入浴は就寝の1〜2時間前に済ませ、38〜40℃程度のぬるめのお湯に、10〜15分ほど浸かるのが理想的です。このタイミングで一度上がった深部体温が、就寝時に向けて自然に下がっていくことで、スムーズな入眠につながります。

5. 就寝前の激しい運動

適度な運動は睡眠の質を高めることが知られていますが、タイミングを誤ると逆効果です。就寝直前に筋トレやランニングなどの激しい運動を行うと、交感神経が刺激されて心拍数や体温が上昇し、体が興奮状態のまま布団に入ることになってしまいます。また、上がった深部体温が下がらないまま眠ろうとするのも、寝つきを悪くする原因になります。

「疲れさせれば眠れるはず」と考えて夜遅くに運動する人もいますが、これは入眠の観点からは逆効果になりやすい行動です。

改善のヒント:ジョギングや筋トレなどの強度が高い運動は、就寝の3時間以上前に済ませておきましょう。就寝前に体を動かしたい場合は、心拍数が大きく上がらない軽いストレッチやヨガ程度にとどめるのがおすすめです。

快眠のために継続したい行動

NG行動をやめるだけでなく、日中から意識的に「良い習慣」を積み重ねることも、快眠への近道です。ここでは、体内時計・深部体温・メラトニンのリズムを整えるために、継続して取り入れたい行動を紹介します。

起床・就寝時刻をできるだけ一定にする

体内時計は、毎日同じ時刻に起きて同じ時刻に寝るという「リズムの一貫性」によって安定します。休日に寝だめをして起床時刻が大きくずれると、体内時計が乱れ、いわゆる「社会的時差ボケ」の状態になり、平日の寝つきが悪くなる原因になります。平日・休日の起床時刻の差は、できれば1〜2時間以内に収めるのが理想です。

朝、太陽の光を浴びる

朝に太陽光を浴びると、体内時計がリセットされ、そこから約14〜16時間後にメラトニンの分泌が始まるようにセットされます。つまり「朝しっかり光を浴びること」は、その日の夜に自然な眠気を呼び込むための準備でもあるのです。起床後すぐにカーテンを開ける、少し外に出て朝食をとるなど、無理のない範囲で朝の光を取り入れましょう。

日中に体を動かす習慣をつける

NG行動の項目では「就寝直前の激しい運動」を避けるべきと述べましたが、日中の適度な運動はむしろ快眠の助けになります。ウォーキングや軽いジョギングなどの運動を日中に行う習慣は、夜の深い睡眠を増やし、寝つきを良くする効果が期待できます。時間帯としては、夕方までに済ませておくのがおすすめです。

就寝前の「入眠ルーティン」をつくる

毎晩同じ手順で就寝前の時間を過ごす「入眠ルーティン」は、脳に「これから眠る時間だ」と認識させる合図になります。照明を暖色系の間接照明に切り替える、軽いストレッチをする、深呼吸や瞑想を数分行うなど、内容は何でも構いません。大切なのは、毎日同じ流れを繰り返すことです。

寝室の温度・湿度・光環境・睡眠温度を整える

寝室の環境も、深部体温やメラトニンの働きに直接影響します。一般的に、寝室の温度は夏場で25〜26℃前後、冬場で18〜19℃前後、湿度は50〜60%程度が快適とされています。また、豆電球程度のわずかな光でもメラトニンの分泌に影響を与えることがあるため、遮光カーテンを使うなどしてできるだけ部屋を暗く保つことも効果的です。

寝室の室温も大事ですが、適切な寝床内温度(睡眠温度)も快眠に重要です。

快適な住空間に関する研究で、就寝すると布団と体が触れる部分の温度は入床直後に急上昇し、約30分で平衡状態に達したのち、季節を問わず一晩を通じておよそ32〜35℃で推移することが、四季にわたる寝床内気候の連続測定で確認されています。

一方で湿度は温度と逆位相で変動し、特に夏場は高湿になりやすいという季節差が大きいことも示されています。これらの生理反応データをもとに、快適な睡眠が得られる寝床内気候の目安として、温度33±1℃・湿度は50±5%という条件が良いとされています。

参考:住 空 間 の 快 適 性 に 関 わ る 生 理 ・心 理 学 的 研 究

よくある質問(Q&A)

  1. NG行動を1つでもやめれば、すぐに寝つきは良くなりますか?
    A. 個人差はありますが、多くの場合は複数の習慣が組み合わさって寝つきの悪さを招いています。まずは自分に一番当てはまるものから1つずつ見直し、1〜2週間ほど継続して変化を観察してみることをおすすめします。
  2. 靴下は結局、履いて寝てもいいのですか?
    A.
    室温・寝具・服装の調節により靴下は必要ないことが多いです。ただし、締め付けがが弱く通気性の良いものであれば、冷え対策として問題ないケースもあります。ポイントは「足からの放熱を妨げすぎないこと」です。厚手のものや圧迫感の強いものは避けましょう。
  3. 改善しても眠れない場合はどうすればいいですか?
    A. NG行動を見直しても不眠の状態が長く続く場合は、何らかの睡眠障害や体調面の要因が関わっている可能性もあります。自己判断で抱え込まず、医療機関や睡眠外来への相談も検討しましょう。

まとめ

入眠を妨げるNG行動は、決して特別なものではなく、多くの人が日常的に行っている習慣の中に潜んでいます。

  • 就寝直前のスマホ・SNSチェック
  • 靴下を履いたまま寝る(締め付けの強いもの)
  • 就寝前のカフェイン・アルコール摂取
  • 熱すぎる・長すぎる入浴
  • 就寝直前の激しい運動

これらに共通するのは、「深部体温の低下」と「メラトニンの分泌」という、入眠に必要な2つの体のリズムを妨げてしまうという点です。

一方で、快眠のためにはNG行動をやめるだけでなく、以下のような習慣を日頃から続けていくことも大切です。

  • 起床・就寝時刻をできるだけ一定にする
  • 朝、太陽の光を浴びる
  • 日中に体を動かす習慣をつける
  • 就寝前の「入眠ルーティン」をつくる
  • 寝室の温度・湿度・光環境を整える

NG行動をやめる「引き算」と、良い習慣を積み重ねる「足し算」の両方を意識することで、寝つきや睡眠の質は大きく変わります。まずは自分に当てはまる習慣から、今夜から改善してみてはいかがでしょうか。

 

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