寝不足で風邪をひきやすくなる理由と予防法|睡眠時間と免疫力の科学的関係
睡眠コラム by Koala Sleep Japan2025年10月30日読了目安時間: 7

【医師監修】寝不足で風邪をひきやすくなる理由と予防法|睡眠時間と免疫力の科学的関係

本多 洋介
Myクリニック本多内科医院院長

群馬大学医学部卒業。
伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院(いずれも循環器内科)を経て、Myクリニック本多内科医院院長。

  • 免許・資格

総合内科専門医、循環器内科専門医、日本心血管インターベンション学会専門医、軽カテーテル的大動脈弁植え込み術指導医(Sapienシリーズ、Evolutシリーズ)

最近、少しの疲れや気温の変化で風邪をひいてしまうなどの体調の揺らぎを感じていませんか。私も以前、忙しさのあまり睡眠時間を削り続けた時期に、治ったと思った風邪がすぐぶり返すことが何度もありました。実はこの「風邪をひきやすい」状態は、免疫力そのものが落ちているサインかもしれません。

研究によると、睡眠時間が5時間未満の人は、7時間以上眠る人に比べて風邪の発症リスクが約4.5倍に高まると報告されています。※1 厚生労働省のデータでも、日本人の約4割が1日6時間未満しか眠れていないとされ、慢性的な寝不足が免疫の働きを弱めている可能性が指摘されています。

本記事では、上級睡眠健康指導士でコアラマットレス社員の松本が、睡眠と免疫力の関係を科学的に解説しながら、風邪を予防するための理想的な睡眠時間と、質を高めるための5つの実践法を紹介します。忙しい日々でも“眠りの力”を味方につけて、体調を崩しにくい日常を取り戻していきましょう。

寝不足で風邪をひきやすくなる3つの科学的理由

寝不足で風邪をひきやすくなる3つの科学的理由

「最近、よく風邪をひくようになった」と感じるとき、その背景には“睡眠不足”が関係しているかもしれません。実際、複数の研究で睡眠の質や量が免疫機能に大きく影響することが明らかになっています。ここでは、寝不足が風邪を引き起こしやすくする3つの科学的メカニズムを紹介します。

まずは、体の防御を担う免疫細胞がどのように変化するのかを見ていきましょう。

1. NK細胞などの免疫細胞の活性が30%低下

睡眠不足の状態が続くと、体を守る免疫細胞の働きが鈍りやすくなります。筑波大学の研究では、睡眠時間を制限した被験者において、NK(ナチュラルキラー)細胞の活性が約30%低下することが報告されています。※2

NK細胞は、ウイルスや腫瘍細胞をいち早く攻撃する“即応型の防衛システム”です。その活性が下がると、感染初期のウイルス排除が遅れ、風邪などの感染症にかかりやすくなると考えられます。さらに、睡眠不足時には炎症を促すサイトカインが増加し、体内の免疫バランスが不安定になる傾向も確認されています。

十分な睡眠は、免疫細胞を再び活性化させるためのメンテナンス時間といえるでしょう。

このように免疫細胞そのものの力が弱まるだけでなく、ウイルスを物理的にブロックする入り口の防御にも影響が及びます。

2. 粘膜免疫の主役「IgA抗体」が減少し感染リスク4.5倍に

私たちの体は、鼻や喉などの粘膜表面でウイルスの侵入を防いでいます。この最前線で働くのが、IgA抗体です。唾液や鼻粘液中に含まれるこの抗体は、外から入ってくる病原体を中和する重要な役割を担っています。

大塚製薬と国際医療福祉大学の共同研究によると、睡眠時間が5時間未満の人は、7時間以上眠る人に比べて風邪を発症するリスクが約4.5倍高くなることが明らかにされています。※1 これは、睡眠不足によってIgA抗体の分泌が減少し、粘膜免疫のバリア機能が低下することに起因すると考えられます。

毎晩7時間前後の睡眠を確保することは、体の入り口でウイルスを食い止める最も手軽で確実な予防策といえるでしょう。

では、眠ることがなぜ免疫修復につながるのでしょうか。そのカギを握るのが「成長ホルモン」です。

3. 成長ホルモンの分泌低下で免疫細胞の修復が阻害

深い眠りの時間帯(ノンレム睡眠)では、成長ホルモンが多く分泌されます。このホルモンは成長期だけでなく、成人においても細胞の修復や免疫システムの再生に欠かせません。

つまり、ただ長く眠るだけでなく、深く眠ることが免疫の回復には欠かせないのです。心身の修復を促す夜のひとときを、できるだけ良質な眠りに変えていくことが、風邪を寄せつけない第一歩といえるでしょう。 

この3つの視点から見ても、睡眠は単なる休息ではなく、体の防衛力を整えるための重要な生理機能です。短い睡眠が続いていると感じたら、今夜こそ自分の免疫を取り戻す時間を意識してみてください。

関連記事:2日寝ないとどうなる?体と脳に現れる緊急シグナル4つ

本多洋介 医師
本多洋介 医師
寝不足が続くと風邪をひきやすくなることがあります。睡眠が短いと、体を守る免疫の働きが弱まり、鼻やのどの「守り」も弱くなり、ウイルスが入りやすくなります。深い眠りの間に行われる体の修復も進みにくく、疲れが残って体調を崩しやすくなります。日本では6時間未満の睡眠の人が多く、知らないうちに影響が出ている可能性があります。まずは6時間以上、できれば7時間を目標に睡眠を確保しましょう。質を上げるには、毎朝同じ時間に起きる、寝る前1時間はスマホを控える、夕食は寝る3時間前までに済ます、日中に軽い運動をすることが有効です。寝室は少し涼しめで乾燥しすぎない環境に整え、合う寝具を使うことも大切です。

日本人の睡眠不足の実態|働き盛り世代の約半数が危険ゾーン

日本人の睡眠不足の実態|働き盛り世代の約半数が危険ゾーン

現代の日本では、「時間が足りない」「寝る間も惜しい」という言葉が日常の一部になっています。厚生労働省が公表した『健康づくりのための睡眠ガイド2023』によると、日本人の約4割が1日6時間未満の睡眠しか取れていないことが明らかになっています。※3

この傾向は特に働き盛り世代で顕著であり、30〜50代では半数近くが慢性的な寝不足に陥っているとされます。仕事のプレッシャーや家事・育児の両立、さらにはデジタルデバイスの長時間使用など、生活リズムを乱す要因が重なり、質の高い睡眠を確保することが難しくなっているのが現状です。

ここでは、男女別にみた睡眠不足の実態と、その背景にある生活上の要因を詳しく見ていきます。

30~50代男性の約50%が睡眠時間6時間未満

厚生労働省の統計によると、男性では30代の47.6%、40代の48.9%、そして50代では49.4%が1日6時間未満の睡眠しか取れていません。※3 この年代は仕事量が最も多く、責任やストレスも大きい時期です。長時間労働や不規則な勤務形態、深夜までのパソコン作業などが続くことで、就寝時間が必然的に後ろ倒しになりやすい傾向があります。

慢性的な寝不足は、集中力や判断力の低下だけでなく、免疫機能にも影響します。特にウイルス感染への抵抗力が落ちやすく、風邪やインフルエンザにかかるリスクが高まることが指摘されています。睡眠を削って頑張るよりも、十分に休むことが結果的に体と仕事を守る近道といえるでしょう。

男性に続き、女性の間でも睡眠不足は年齢とともに深刻化しています。特に40代以降では、ホルモン変化や家庭内の負担が複雑に絡み合うことで、睡眠の質そのものが低下しやすくなることが知られています。

女性は40~50代で睡眠不足が深刻化

同調査によると、女性の40代では46.4%、50代では53.1%が6時間未満の睡眠時間にとどまっています。※3 この時期は、更年期によるホルモンバランスの変化が起こりやすく、自律神経の乱れや寝つきの悪化、夜間の中途覚醒といった不調が増える傾向があります。

さらに、家事や育児に加えて、親の介護を担う年代にも重なるため、心身の負担が積み重なりやすいのが現実です。眠りが浅くなることで疲労が蓄積し、免疫力の低下や体調不良のリスクが高まります。こうした背景を踏まえると、睡眠を「休息」ではなく「健康を維持するための時間」として再認識することが大切です。

このように、男女ともに働き盛りの世代で睡眠不足が常態化していることが、日本全体の健康課題として浮かび上がっています。生活の中で少しでも睡眠時間を確保し、質を高める工夫を意識することが、長期的な健康維持につながっていくでしょう。

関連記事:寝不足で食欲が止まらない理由とは?睡眠とホルモンの関係を科学的に解説

風邪予防に必要な睡眠時間と睡眠の質

風邪予防に必要な睡眠時間と睡眠の質

「どれくらい眠れば健康を保てるのか」という問いに、科学的な答えが少しずつ見えてきています。厚生労働省『健康づくりのための睡眠ガイド2023』では、成人に対して1日6時間以上の睡眠確保を推奨しています。※3

しかし、ただ長く眠れば良いというわけではなく、眠りの“質”も風邪予防の大きな鍵を握ります。ここでは、睡眠時間と睡眠効率の両面から、健康を守るための具体的な目安を見ていきましょう。

成人は最低6時間以上、理想は7時間の睡眠確保

厚生労働省は、成人に対して「6時間以上の睡眠を取ることが望ましい」としています。※3 睡眠時間が5時間を下回る人では、心身の不調が増えやすく、免疫力が低下する傾向があると報告されています。

さらに、複数の疫学研究では、7時間前後の睡眠を取る人が最も健康指標が安定していることが確認されており、風邪や感染症の発症率、肥満リスク、心血管疾患などの数値を総合的に比較した場合、7時間を中心としたグループが最も良好な結果を示すといえるでしょう

つまり、「6時間は最低ライン、7時間が理想的なライン」と考えるのが現実的です。
眠ることを「時間の浪費」と捉えるのではなく、翌日の集中力と免疫力を保つ“先行投資”と見なすことで、生活リズムを整えやすくなります。

睡眠時間を確保できても、夜中に何度も目が覚めてしまうようでは、実際に体が回復できない場合があります。次に、眠りの“質”を示す指標について見ていきます。

今夜から実践できる睡眠の質を高める5つの方法

今夜から実践できる睡眠の質を高める5つの方法

「寝ても疲れが取れない」「夜中に何度も目が覚める」といった悩みを感じたときは、睡眠時間だけでなく質に目を向けてみることが大切です。厚生労働省の『健康づくりのための睡眠ガイド2023』でも、睡眠の質を左右する要因として環境・リズム・生活習慣の3つが挙げられています。※3

少しの工夫で眠りの深さは変わります。ここでは、科学的根拠に基づき、今夜からすぐに試せる5つの方法を紹介します。

1. 寝室の温度を18〜22℃、湿度を40〜60%に調整

心地よい眠りを得るには、寝室の温度と湿度を整えることが基本です。睡眠中は体温が自然に下がっていきますが、室温18〜22℃・湿度40〜60%の範囲に保つことで、その体温変化をスムーズにサポートできます。※3

乾燥が進むと喉や鼻の粘膜が弱まり、ウイルスが侵入しやすくなることもあるため、加湿器の使用や就寝時のマスクも有効です。快適な寝室環境は、免疫を守るための見えない盾のような役割を果たしてくれます。

2. 就寝3時間前までに夕食を済ませる

眠りの質は、食べる時間によっても左右されます。就寝直前の食事は、消化活動を活発にして体温を下げにくくし、深い睡眠を妨げる要因になるといわれています。

理想的なのは、就寝の3時間前までに夕食を終えることです。※3 この間に消化がある程度進むことで、体が休息モードに入りやすくなり、深いノンレム睡眠へと移行しやすくなります。

どうしても遅くなる場合は、消化に時間がかかる脂質やアルコールを控え、軽めの食事にするだけでも眠りの質が高まりやすいでしょう

3. 毎日同じ時刻に起床して体内時計をリセット

休日に長く寝てしまう「寝だめ」は、一見回復につながるように思えますが、実は体内時計をずらしてしまう原因になるといわれています。順調な睡眠リズムを保つには、起きる時刻を毎日そろえることが最も効果的です。※3

特に週末の寝だめが続くと、平日との時差が生まれ、月曜の朝に体が“時差ボケ”のような状態に陥ることもあります。一定の起床時刻を守る、眠気と覚醒のリズムが整い、結果的に夜の入眠もスムーズになりやすいです

4. 就寝前のスマホ・PCを控えブルーライトを避ける

夜遅くまでスマートフォンやパソコンの画面を見続けていると、目から入るブルーライトが脳を刺激し、眠りを促すホルモン「メラトニン」の分泌を抑えてしまいます。

少なくとも就寝の1時間前から画面を見ない時間を作ることで、自然な眠気が訪れやすくなるといわれています。※3

照明を少し落とし、温かみのある光に切り替えると、体が徐々に「休む時間」と認識しやすくなります。スクリーンを閉じることが、眠りのスイッチを押す最初の一歩です。

5. 適度な運動習慣で深睡眠を増加させる

日中の活動量は、夜の睡眠の深さに直結します。激しい運動でなくても構いません。昼間に15分ほどのウォーキングやストレッチを取り入れるだけでも、夜の深い眠りにつながります。

また、寝具選びも深睡眠を支える重要な要素です。体圧を分散するマットレスや、通気性の良い寝具を整えると、より自然に眠りのリズムが整っていきます。

体を動かし、整った環境で休むことが、免疫を支える質の高い眠りへの近道といえるでしょう。

小さな工夫を積み重ねるだけでも、翌朝の目覚めや疲労感が驚くほど変わります。「寝る前1時間をどう過ごすか」「朝をどう迎えるか」といった違いが、体の回復力を左右する鍵になります。

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まとめ|寝不足と風邪の関係を理解し、今日から睡眠習慣を改善しよう

まとめ|寝不足と風邪の関係を理解し、今日から睡眠習慣を改善しよう

睡眠不足は、免疫機能の低下を通じて風邪や感染症のリスクを高める要因になると考えられています。特に6時間未満の睡眠が続くと、体の防御システムが十分に働かず、ウイルスへの抵抗力が下がる可能性があります。

健康を守るためには、まず6時間以上、理想的には7時間の睡眠を確保することが基本です。次に、途中で目覚める回数を減らし、睡眠効率を高めることが大切です。そして、毎朝同じ時間に起きる習慣をつくり、体内時計を整えることが、安定した眠りのリズムを維持するカギになります。

さらに、寝室の温度・湿度を整えたり、体に合った寝具を選んだりすることも、質の高い睡眠を支える重要な要素です。眠りの環境を見直すだけでも、翌朝の目覚めや体調の変化を実感しやすくなるでしょう。

今夜から少しずつ、自分の体に合った睡眠の習慣を育てていきましょう。

・参考

※1 Behaviorally Assessed Sleep and Susceptibility to the Common Cold | PubMed

※2 睡眠の質と深い関係にある成長ホルモンの知識 | 阪野クリニック

※3 健康づくりのための睡眠ガイド2023 | 厚生労働省