目次
監修者

南 茂幸
理学療法士の資格を持つ睡眠コンサルタント。睡眠について数名から100名以上の規模でセミナー講師として登壇、他にもコンサルティング、ラジオ出演、睡眠グッズ監修等幅広く活躍。「睡眠の質が人生の質」と捉え、睡眠は自分への投資であると考え、現在出版準備中。
「寝つきが悪い」「夜中に何度も目が覚める」「朝起きても疲れが取れない」-そんな睡眠の質に関する悩みを抱えていませんか。こうした不調をきっかけに、マグネシウムが睡眠改善に効果が期待できると聞いたことはないでしょうか。
マグネシウムは体に欠かせないミネラルのひとつであり、神経や筋肉の働きに関わることから、睡眠との関係が注目されることがあります。ただし、現時点では「摂れば必ず眠れるようになる」と断定できるほどの明確なエビデンスが揃っているわけではありません。
この記事では、マグネシウムと睡眠の関係について、研究でわかっていることを元に整理します。そのうえで、推奨摂取量や食品・サプリの違い、安全な取り入れ方まで、実生活に落とし込める形で解説していきます。
睡眠とマグネシウムの関係
不眠症の高齢者を対象とした研究では、マグネシウムを摂取することでプラセボ群と比較して睡眠効率や睡眠時間、入眠潜時、メラトニン濃度などを改善すると報告されています。※1
一方で、厚生労働省のまとめた資料によるとマグネシウムに関する研究の質の問題や相反する結果が示されており、必ずしもマグネシウムが睡眠改善に効果があると断定できないようです。※2
マグネシウムはどんな栄養素か
マグネシウムとは、人の体にとって欠かせない必須ミネラルのひとつです。骨や歯の形成に関わるだけでなく、エネルギー代謝、筋肉の収縮、神経伝達など、さまざまな生理機能に関与しています。
特に重要なのが、神経と筋肉の働きを調整する役割です。神経の興奮を抑えたり、筋肉の緊張を和らげたりする働きがあるため、体をリラックスさせる方向に作用する可能性があります。マグネシウムが不足すると「足がつる」機会が増えることも。
このように、マグネシウムは「睡眠専用の成分」ではなく、全身の機能を支える基礎的な栄養素である点を理解しておきましょう。
睡眠とマグネシウムの関係が注目される背景
マグネシウムが睡眠の文脈で語られる理由のひとつに、「リラックスとの関係」があります。
マグネシウムは、副交感神経の働きをサポートすると考えられており、ストレスによる過度な緊張状態をやわらげる可能性があります。また、セロトニンやメラトニンといった睡眠に関わるホルモンの働きにも間接的に関与していると考えられています。
こうした背景から、入眠しやすさや睡眠の質との関連が示唆されることがあります。ただし、「関連がある可能性がある」という段階であり、直接的な因果関係が明確に証明されているわけではないようです。
マグネシウムの摂取は睡眠に効果があるのか
結論から言うと、マグネシウムが睡眠に良い影響を与える可能性は指摘されていますが、現時点では十分な根拠があるとは言い切れません。複数の研究をまとめたレビューでは、睡眠の質や不眠に対する効果について「有用性はあるが研究の質は低く、十分な推奨を行える段階ではない」と結論づけています。※3
つまり、
- 一部では効果が示唆されている
- しかし研究数が少なく質も十分とはいえない
- 結論としてはまだ判断材料が足りない
というのが現状です。
そのため、「マグネシウムを摂れば不眠が改善する」といった断定的な理解ではなく、「栄養状態のひとつとして見直す価値がある」と捉えるのが現実的です。
※3:Oral magnesium supplementation for insomnia in older adults: a Systematic Review & Meta-Analysis
マグネシウム摂取量の目安
マグネシウムを取り入れるうえで重要なのが、「どれくらい摂ればよいのか」という点です。日本人の食事摂取基準(2025年版)では、30〜49歳の推奨量は以下の通りです。※4
- 男性:約380mg/日
- 女性:約290mg/日
一方、サプリメントなど食品以外から摂取する場合は「耐容上限量」が設定されている点に注意しましょう。成人の場合、摂取量の上限は350mg/日(サプリ由来)です。
※4:厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2025年版)の策定ポイント
マグネシウムを多く含む食べ物
マグネシウムは、日常の食事からも十分に摂取可能です。代表的な食品と含有量の目安を見てみましょう。
- 納豆(100g):約100mg
- アーモンド(100g):約290mg
納豆1パック(約50g)でも約50mgのマグネシウムが摂れるため、日々の食事に取り入れやすい食品です。また、アーモンドは間食として取り入れやすく、効率よく補えるのが特徴です。
このように、特別なサプリに頼らなくても、食事の工夫である程度カバーできる点は大きなメリットです。
サプリを使うときの上限と注意点
マグネシウムのサプリを利用する場合は、上限量を意識することが重要です。過剰摂取によって起こりうる症状には、下痢、腹部不快感、吐き気などがあります。特にサプリは吸収が早く、短時間で摂取量が増えやすいため、「多く摂れば効果が高まる」という考え方は注意しましょう。
マグネシウムを取り入れるときに注意したいこと
マグネシウムは睡眠の質に関わる栄養素ですが、取り入れ方を間違えると体に負担をかける可能性もあります。ここでは、マグネシウムを摂取する前に、押さえておきたい3つのポイントを解説します。
多く摂ればよいわけではない
マグネシウムは重要な栄養素ですが、量を増やせば増やすほど良いわけではありません。推奨量はあくまで「適切な範囲」であり、そこから大きく外れると体調不良の原因になりかねません。特にサプリの過剰摂取では下痢などが起こりやすく、不整脈や心停止を引き起こす可能性があります。※2
睡眠の質を改善するためには、単一の栄養素に頼るのではなく、全体のバランスを見ることが大切です。
腎機能に不安がある人は医師に相談する
腎機能に不安がある方は、マグネシウムの摂取に注意が必要です。マグネシウムは主に腎臓で排泄されるため、腎機能が低下している場合、体内に蓄積しやすくなります。その結果、不整脈などのリスクが高まる可能性があります。
持病がある方や薬を服用している方は、自己判断でサプリを使用せず、医師に相談しましょう。
睡眠の悩みが強いときは生活全体を見直す
マグネシウムだけで睡眠を改善しようとするのは現実的ではありません。例えば、寝る直前までスマートフォンを使っている、カフェインを夜遅くに摂取している、寝室の環境が整っていないなど、このような要因がある場合、いくら栄養を整えても効果は限定的です。
睡眠環境や生活習慣を見直すことが、結果的に最も大きな改善につながります。
関連記事:【医師監修】睡眠と免疫力を底上げする方法と寝具改善の全て
睡眠の質を上げるために一緒に見直したいこと
マグネシウムの摂取と並行して、睡眠の土台となる生活習慣も整えていきましょう。栄養面のアプローチと生活習慣の見直しを組み合わせることで、より効果を実感しやすくなるでしょう。
朝の光を浴びて体内時計を整える
朝起きたらできるだけ早く自然光を浴びることで、体内時計がリセットされます。これにより夜の眠気が自然に訪れやすくなり、入眠しやすくなります。
関連記事:朝日を浴びる効果とは?朝の光が睡眠と体内時計に与える影響や正しい習慣を解説
※今月作成
就寝前のカフェインやアルコールを控える
カフェインは覚醒作用があり、夕方以降にカフェインを摂取すると入眠を妨げます。またアルコールは一時的に眠気を誘うものの、睡眠の質を下げてしまうため、注意しましょう。
寝室環境を整える
快適な睡眠には、寝室環境も重要です。温度・湿度・照明・寝具などを整えることで、自然と眠りやすい状態をつくることができます。室温は18〜25℃程、湿度は50%前後、就寝時は真っ暗にするなど、できることから変えていきましょう。
関連記事:【上級睡眠健康指導士監修】マットレスの使い方について1から解説!他のおすすめ寝具やお手入れ方法とは?
睡眠とマグネシウムの関係についてよくある質問
ここからは睡眠とマグネシウムの関係について、よく寄せられる質問に回答します。
マグネシウムは朝と夜どちらに摂るのがいいですか?
明確に「この時間がベスト」と断定できる根拠はありません。朝に摂る場合は、日中の代謝や神経機能のサポートが期待できます。一方で夜に摂る場合は、リラックス習慣の一部として取り入れやすいというメリットがあります。
最も大切なのは「継続できるタイミング」で摂ることです。
妊娠中にマグネシウムを摂っても大丈夫ですか?
基本的に食事からの摂取であれば問題ないとされています。ただし、サプリメントを使用する場合は、過剰摂取のリスクがあるため注意が必要です。
妊娠中は体の状態が大きく変化するため、サプリの使用については医師に相談するのが安全です。
マグネシウムが不足しているときのサインはありますか?
健康な人では、腎臓がマグネシウムの排泄を調整するため、明確な欠乏症が起こることはまれです。ただし、不足が進んだ場合には、以下のような初期症状が現れることがあります。
- 食欲不振
- 吐き気
- 倦怠感
- 脱力感
まとめ:睡眠とマグネシウムの関係を理解して自分に合う方法で取り入れよう
マグネシウムは、神経や筋肉の働きに関わる重要なミネラルであり、睡眠との関連が注目されています。実際に、入眠のしやすさなどに良い影響を与える可能性も示唆されています。ただし、現時点では研究数が限られており、睡眠改善効果を断定できる段階ではありません。
そのため、
- まずは食事から適切な量を摂る
- サプリは上限量を守って補助的に使う
- 睡眠環境や生活習慣もあわせて見直す
といったバランスの取れた取り入れ方が重要です。
睡眠の質を本当に高めたい場合は、栄養だけでなく、生活全体を整える視点を持つことが、最も確実な近道でしょう。




