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監修者
石川 恭子
コアラマットレス®︎のショールームで、お客様が「運命のマットレス」に巡り合えるようお手伝いしているカリスマコンシェルジュ。お客様の眠りの悩みに耳を傾ける中で、今すぐ活用できる睡眠の知識を届けたいと上級睡眠健康指導士の資格を取得。コアラ®︎のマットレスを通じて、毎日眠ることが待ち遠しくなるワクワク感を提供したい。
「最近、呼吸が浅くなっている気がする」「ストレスがたまると、つい息を詰めてしまう」などと感じることはありませんか。実は私自身、仕事で大きなプレゼンを控えていた時期、緊張のあまり呼吸が浅くなりすぎて、夜もなかなか寝付けない日々を過ごした経験があります。そのとき、ふと思い立って「腹式呼吸」を数分間だけ試してみたところ、肩の力がふっと抜け、驚くほど心が穏やかになったのを今でも鮮明に覚えています。
特別な道具も場所も必要なく、ただ「息の仕方を意識するだけ」で自分のコンディションをコントロールできる呼吸法は、忙しい現代人にとって最も手軽で強力なセルフケアツールです。しかし、「4-7-8呼吸法」や「片鼻呼吸」など、専門的な名前がたくさん出てきて、どれが自分に合うのか迷いますよね。
本記事では、上級睡眠健康指導士の資格を持つコアラマットレス社員の石川が、代表的な呼吸法の種類をわかりやすく整理し、それぞれの特徴や期待できる効果、具体的なやり方を解説します。
呼吸法にはどんな種類があるのか
呼吸法と聞くと、何か特別な修行のようなイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし実際には、種類によって目的や難しさはさまざまです。まずは全体像を大まかに把握しておきましょう。
まず知っておきたい代表的な呼吸法
呼吸法には、日常的に取り入れやすい基礎的なものから、特定の目的に特化した応用的なものまで幅広い種類があります。
腹式呼吸:横隔膜を使ってお腹を膨らませながら行う呼吸法で、多くの呼吸法の土台となる基本的な方法 胸式呼吸:肋骨を広げるように胸に息を取り込む方法で、日常で無意識にやっている呼吸に近い 4-7-8呼吸法:4秒吸って7秒止めて8秒かけて吐くというカウントつきの方法で、リラックスや就寝前のケアとして注目されている 片鼻呼吸:ヨガ由来の方法で、左右の鼻を交互に使いながら心身のバランスを整えるのに向いている 完全呼吸:お腹・胸・鎖骨まで全体を使う深い呼吸法 丹田呼吸法:下腹部の丹田を意識しながら行う方法
基礎の呼吸法と応用の呼吸法の違い
呼吸法はざっくりと「基礎」と「応用」に分けて考えると、どこから始めればよいかが判断しやすくなります。
基礎に位置するのは、腹式呼吸と胸式呼吸です。この2つは多くの呼吸法の起点になっており、特別な道具も手順の暗記も必要なく、今すぐ試せます。まず自分がどんな呼吸をしているかを知り、お腹を意識した深い呼吸に慣れることが、他の呼吸法をうまく実践するために欠かせません。
応用に位置するのが、4-7-8呼吸法、片鼻呼吸、完全呼吸、丹田呼吸法などです。これらは腹式呼吸の感覚を土台にしながら、カウントや手の使い方、意識する部位を加えることで、より特定の目的(リラックス、集中、深い呼吸の感覚など)に向けたアプローチができます。初めて呼吸法に取り組む場合は、まず腹式呼吸に慣れてから、目的に合わせて応用の方法を試していくのがおすすめです。
呼吸法がリラックスや睡眠前に使われる理由
呼吸法はヨガやマインドフルネスの文脈でよく語られますが、近年ではセルフケアや睡眠改善の手段としても注目を集めています。
呼吸と自律神経の関係をやさしく理解する
わたしたちの体は、活動時に働く「交感神経」と、休息時に働く「副交感神経」という2種類の自律神経によってバランスが保たれています。ストレスを感じたり緊張したりしているときは交感神経が優位になり、心拍数や血圧が上がって体が活動モードになります。逆に、副交感神経が優位になると心身が落ち着き、リラックスした状態へと導かれます。
呼吸はこの自律神経に直接働きかけることができる数少ない手段のひとつです。息をゆっくり長く吐くことで副交感神経が優位になりやすくなり、体が「休んでいいよ」というサインを受け取ります。特に腹式呼吸のように横隔膜を大きく動かしてゆっくり呼吸する方法は、副交感神経の活動を高める効果が研究でも示されています。
日本体力医学会誌に掲載された研究では、女性20名を対象に呼気と吸気の比を2:1にした20分間の腹式呼吸を実施したところ、意識的な腹式呼吸が副交感神経活動を亢進状態に導き、特に交感神経が緊張しやすい傾向にある人により大きな効果が認められたと報告されています※1。
さらに、別の研究では健康成人女性11名を対象に腹式呼吸中の生体反応を調べた結果、腹式呼吸時に副交感神経が優位になるとともに、尿中のノルアドレナリン、アドレナリン、コルチゾール濃度の有意な低下が確認されています。※2 ノルアドレナリンやアドレナリンは緊張・興奮時に分泌されるホルモンで、コルチゾールはストレスホルモンとも呼ばれます。呼吸法は気分転換の印象論ではなく、ホルモンレベルでも体に働きかけていることが示されているのです。
睡眠前に呼吸法を取り入れたい人が多い背景
眠る前に気持ちが高ぶって寝つけない、仕事や家事のことが頭から離れないという経験は、多くの人に共通しています。実際、厚生労働省の「令和5年国民健康・栄養調査報告」によると、20歳以上の総数で「5時間未満」の睡眠時間という人が9.5%、「5時間以上6時間未満」が31.7%と、合計41.2%もの人が6時間未満の睡眠しか取れていないことが明らかになっています。※3 睡眠に悩む人が決して少なくない現状が、数字からも見えてきます。
こうした背景もあり、薬や特別な道具を使わずに眠る前の緊張をほぐせる手段として、呼吸法への関心が高まっています。副交感神経を優位にする効果が研究で示されている腹式呼吸や、カウントを数えることで思考を切り替えやすい4-7-8呼吸法は、就寝前の心身の切り替えに向いている方法として広く取り入れられています。眠れないときにスマートフォンを触り続けるより、呼吸に意識を向けることから始めてみるといいかもしれません。
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初心者が最初に覚えたい基本の呼吸法
呼吸法を始めてみようと思ったとき、最初に覚えるべきなのは難しい技法ではなく、体の使い方の基本です。
腹式呼吸の特徴と基本のやり方
腹式呼吸は、横隔膜を上下に動かして深い呼吸をする方法です。息を吸ったときにお腹が膨らみ、吐いたときにお腹がへこむのが特徴で、深くゆっくりとした呼吸によって副交感神経が優位になりやすく、リラックスを促す効果が期待できます。
厚生労働省が公開している資料によると、腹式呼吸の基本的なテンポは「約5拍で吸い、約10拍かけて吐く」ことが目安とされています。※4 吸う時間の2倍をかけてゆっくり吐くことで、副交感神経に働きかけやすくなるとされています。
基本的なやり方は次のとおりです。
椅子に座るか仰向けになり、肩の力を抜いてリラックスした姿勢を取る。 鼻からゆっくりと息を吸い込みながら、お腹を風船のようにふわっと膨らませていく。 吸い込んだら、吸った時間の倍くらいをかけて口から「ふーっ」と細く長く息を吐き出す。
うまくできているかどうかの目安は、お腹の動きです。胸ではなくお腹が動いているかを手で確かめながら行うと、感覚をつかみやすいです。最初は「深く吸おう」と力み過ぎて胸に力が入りやすいので、吸う量を控えめにして、吐くことに集中してください。
胸式呼吸の特徴と腹式呼吸との違い
胸式呼吸は、肋骨を横に広げながら胸に息を取り込む呼吸法です。息を吸ったときに胸が膨らみ、肩が上がる感覚があります。現代人の多くは日常的にこの胸式呼吸を中心に行っており、ストレスや緊張が続くと胸式呼吸が優位になりやすく、浅い呼吸になりがちです。
胸式呼吸は決して悪いものではありません。運動で体を動かしているときや、すばやく酸素を取り込む必要がある場面では自然と胸式呼吸が機能します。一方で、安静時や就寝前など体を落ち着かせたい場面では、腹式呼吸のほうが副交感神経に働きかけやすいとされています。
2つの違いを簡単にまとめると、腹式呼吸は横隔膜を動かしてお腹が膨らむ呼吸、胸式呼吸は肋骨を動かして胸が膨らむ呼吸です。どちらが優れているというものではなく、場面に応じて使い分けることが大切です。ただし、リラックスや睡眠前のセルフケアを目的とするなら、まず腹式呼吸を意識して取り入れることから始めてみてください。
目的別に選びやすい代表的な呼吸法
腹式呼吸に慣れてきたら、目的に応じてさまざまな呼吸法を試してみましょう。
4-7-8呼吸法は寝る前や緊張時に向く
4-7-8呼吸法(フォーセブンエイト呼吸法)は、アメリカの医師アンドルー・ウェイル氏が広めた腹式呼吸の一種で、4秒かけて鼻から吸い、7秒間息を止め、8秒かけて口からゆっくり吐くという3段階のカウントで行います。
やり方の手順は次のとおりです。
楽な姿勢をとり、舌先を上の歯の裏側に触れさせる。 口から息をすべて吐ききり、鼻から静かに4カウントで息を吸い込む。 7カウントの間、息を止めてそのままキープする。 最後に「ふぅーーーっ」と音を立てながら8カウントで細く長く吐き切る。
これを1サイクルとして、最初は4回繰り返しましょう。
寝る前や緊張したとき、気持ちを整えたいときに取り入れやすい方法で、数を数えることで雑念が頭に入りにくくなるのも利点のひとつです。ただし、慣れないうちは呼吸が乱れたり、めまいや動悸を感じるかもしれません。無理にカウントを守ろうとせず、1日4回以内を目安にしてください。違和感を感じたらすぐに中止し、通常の呼吸に戻してください。
片鼻呼吸は集中前や気分転換の選択肢になる
片鼻呼吸(ナーディショーダナ)は、左右の鼻の穴を交互に使って行うヨガ由来の呼吸法です。左右の鼻にはそれぞれ異なる神経系とのつながりがあるとされており、左右を交互に使うことで自律神経のバランスを整えやすくなると言われています。
右手の親指で右の鼻を押さえながら左の鼻から息を吸い込む。 吸い切ったら今度は薬指(または中指と薬指)で左の鼻を押さえて右の鼻から吐き出す。 このサイクルを繰り返す。
手のひらは顔の前で「ヴィシュヌムドラ」と呼ばれる形を作ることが多いですが、難しければ人差し指と中指を曲げて親指と薬指だけを使う形で十分です。
ヨガ由来の方法と聞くとハードルが高く感じるかもしれませんが、道具不要で座ったまま試せるシンプルな方法です。仕事の合間に気分を切り替えたいとき、集中モードに入る前のルーティンとして取り入れる感覚だと気軽で続けやすいですよ。
完全呼吸と丹田呼吸法は呼吸を深めたい人向け
呼吸が浅いと感じている方や、呼吸にもっと意識を向けたいと思っている方には、完全呼吸と丹田呼吸法という2つの方法が選択肢になります。
完全呼吸は、腹式呼吸・胸式呼吸・鎖骨まで息を入れる呼吸の3段階を組み合わせた、ヨガで用いられる呼吸法です。
お腹をふくらませながら吸う。 胸を広げ、最後に鎖骨のあたりまで息を入れる。 吐くときは逆に鎖骨・胸・お腹の順に空気を出していく
体全体の呼吸筋を使うため、呼吸の深さや感覚を全身で体感できるのが特徴です。腹式呼吸だけでは物足りなくなってきた方に向いています。
丹田呼吸法は、おへその少し下にある「丹田」と呼ばれる部位を意識しながら行う呼吸法で、東洋医学や武道の世界でも長く用いられてきた方法です。丹田を意識しながらゆっくり息を吐き切り、その後ゆっくり鼻から吸い込みます。「吐くことを先にする」意識が、横隔膜の動きをより深く感じやすくするポイントです。深い腹式呼吸に慣れてきた方が、さらに呼吸を整えたいと思ったときの次のステップとして取り入れやすい方法です。
どちらも上級者専用の方法ではなく、腹式呼吸の感覚をある程度つかんでいれば試してみられる内容です。無理に深めようとせず、自然に呼吸が深まっていく感覚を楽しみながら取り組んでみてください。
呼吸法を行うときのコツと注意点
「いざ試してみるとなんとなくうまくいかない」「どれくらいやればいいの?」と迷うことも少なくありません。呼吸法を初めて実践する人がつまずきやすいポイントと、日常に無理なく取り入れるためのコツをまとめます。
呼吸法がうまくできないときの見直しポイント
よくある失敗のひとつは、吸おうとするあまり肩に力が入ってしまうことです。腹式呼吸はお腹を膨らませる呼吸ですが、意識が強すぎると胸や肩が動いてしまいます。吸う力を抜いて、まず「吐くこと」に集中するほうがお腹の動きを感じやすいです。
もうひとつは、息を吸いすぎてしまうこともよくあります。深い呼吸をしようと無理に大量の空気を吸おうとすると、かえって苦しくなります。吸う量は7〜8割程度で十分です。ゆっくり吐ききることの方が大切なので、「吐くことの練習」として取り組む意識でちょうどよいでしょう。
4-7-8呼吸法のようなカウントつきの方法では、数を数えることに集中しすぎて体の感覚を無視してしまうことがあります。カウントはあくまでペースの目安ですので、最初は比率(吸う:止める:吐く = 4:7:8)を大まかに意識する程度で十分です。完璧にこなそうとせず、緩く取り組みましょう。
無理なく続けるための取り入れ方
呼吸法の効果は一度試しただけでは実感しにくく、日々の習慣として続けることで少しずつ変化を感じやすくなります。 朝起きたときのベッドの中、仕事の合間に1〜2分、就寝前の布団の中などがおすすめです。特定の時間に固定しなくても、「緊張したとき」「気分を切り替えたいとき」に3〜5回の深呼吸を入れるだけでも、一日の快適なスタートとしては十分です。
回数や時間の目安は、腹式呼吸であれば1回3〜5分、4-7-8呼吸法なら就寝前に4サイクルから始めるのが現実的です。大切なのは「毎日少しでも続ける」ことであり、完璧に行う必要はありません。呼吸法は特別なトレーニングではなく、日常のセルフケアのひとつとして気軽に位置づけて、自然と習慣になっていくようにしましょう。
なお、持病のある方や妊娠中の方、心肺機能に不安がある方は、呼吸法を取り入れる前に医師に相談することをおすすめします。実践中にめまい、動悸、過度の息苦しさを感じた場合はすぐに中止し、通常の呼吸に戻してください。
自分に合う呼吸法の選び方
種類とやり方が頭に入ったところで、「結局どれを選べばいいの?」という疑問が浮かぶかもしれません。呼吸法には正解があるわけではなく、自分の目的や状況に合ったものを選ぶのが一番です。
リラックスしたい人に向く選び方
緊張やストレスをやわらげたい、気持ちを落ち着かせたいという目的なら、まず腹式呼吸から始めるのが最も無理のない選択です。特別な手順もカウントも不要で、ゆっくりお腹に意識を向けて吐くだけで始められます。慣れてきたら、4-7-8呼吸法を取り入れるとカウントによる気持ちの切り替え効果も加わります。
丹田呼吸法も、緊張をほぐす目的との相性が良い方法です。下腹部に意識を向けながらゆっくり吐くという動作が、頭の中の考えを落ち着かせる助けになります。「どれかひとつ選ぶなら」という場合は、腹式呼吸を1日数回取り入れることから始めて、効果を感じながら自分のペースで方法を広げていくのがおすすめです。
寝る前に取り入れたい人に向く選び方
就寝前に頭が冴えてしまったり、体の緊張がほぐれなかったりする方には、4-7-8呼吸法が取り入れやすい方法として向いています。布団に入ったまま目を閉じて、カウントに合わせて呼吸するだけでもかまいません。カウントを数えることで思考が止まりやすくなる効果が期待できます。
複雑な手順が難しいと感じるなら、腹式呼吸だけでも十分です。「5拍で吸って、10拍かけて吐く」というテンポを繰り返すだけで、副交感神経が優位になりやすい状態を作れます。光や騒音など寝室の環境も睡眠の質に影響しますので、呼吸法と合わせて温度・湿度・光などの環境も整えることで、より快適な眠りにつながるでしょう。
ポイントは、就寝前に「今夜はこの呼吸をする」という一つの方法を決めておくことです。その日の気分でいろいろ試してしまうと、逆に頭が動いてしまうことがあります。まず1つ選んで1〜2週間続けてみてください。
まとめ 呼吸法の種類を知って自分に合う方法から始めよう
呼吸法には腹式呼吸・胸式呼吸のような基礎から、4-7-8呼吸法・片鼻呼吸・完全呼吸・丹田呼吸法のような応用まで、さまざまな種類があります。それぞれ特徴や向いている場面が異なります。
初心者の方は、まず腹式呼吸の感覚をつかむところから始めてみてください。ゆっくり吐くことを意識するだけで、日常の小さな緊張をほぐす助けになります。慣れてきたら目的に合わせて、就寝前なら4-7-8呼吸法、気分転換なら片鼻呼吸、呼吸を深めたいなら完全呼吸や丹田呼吸法を試してみると、自分に合う方法が見つかりやすくなります。
呼吸法は睡眠前の習慣として取り入れると効果を感じやすいですが、同時に寝室環境を整えることも睡眠の質に大きく影響します。枕やマットレスの選び方、寝室の温湿度管理なども合わせて見直してみると、毎日の眠りがさらに快適になるでしょう。
・参考
※1 腹式呼吸が自律神経機能に与える影響 | 日本体力医学会










