睡眠コラム by Koala Sleep Japan2025年5月29日読了目安時間: 7

日本人の平均睡眠時間は本当に短い?世界と比較しながら徹底解説

松本 恭
コピーライター / 上級睡眠健康指導士

「健康の秘訣はぐっすり眠ること」がモットーで、これまでウォーターベッド、ウッドスプリングベッド、西式健康枕、ハンモックなどさまざまな寝具の寝心地を追求してきた睡眠マニア。偶然出会ったコアラマットレス®︎の快適さに感銘を受け、メンバーとして参加。上級睡眠健康指導士としての知識を通して、より多くの人に快眠を届けたいと願っている。

仕事や家事に追われ、ベッドに入るのは日付が変わる頃……いつも睡眠が足りない。他の人はどうやって時間をやりくりして寝ているんだろう、と疑問に思ったことはありませんか?大丈夫、それって「自分だけ」じゃないんです。

実は、世界で最も睡眠が足りていないのは日本人だというデータがあります。上級睡眠健康指導士でコアラマットレス社員の松本が、世界と比較した日本人の睡眠時間、都道府県別の睡眠時間の差、睡眠不足が及ぼすリスクや改善方法まで、詳しく解説します。

日本人の平均睡眠時間の最新データ

「日本人が世界で一番眠ってない……」と聞くと、驚きつつも納得、かもしれません。2021年に国際機関である経済協力開発機構(OECD)が世界36か国のジェンダーギャップを調査したデータによると、日本人の平均睡眠時間は444分(7時間24分)です。ちなみにこの調査で世界で最も睡眠時間が長いのは南アフリカ共和国の553分(9時間13分)であり、世界の平均値は508分(8時間28分)でした。世界平均の睡眠時間ぴったりに眠っているのはイギリスです。つまり、日本人の睡眠時間は世界平均より1時間以上短いのです。スマートフォンのアプリから睡眠時間を割り出した別の調査※1からもこの事実がよくわかります。

参考※1:https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.1501705

最初に触れたとおり、このOECDの睡眠時間の調査は「ジェンダーギャップ」を数値で示す一環として行われたものでした。したがって、男女別の睡眠時間のデータもあります。それによると、日本人男性は466分(7時間46分)、日本人女性は457分(7時間37分)で、女性のほうが9分も男性より睡眠時間が短いという結果でした。つまり「日本人は世界一睡眠が少ない」だけではなく、「日本人女性は世界一睡眠が足りていない」のです。

日本人の平均睡眠時間
日本人の平均睡眠時間は世界最短

その理由としては、妊娠・出産・子育てなどの際大きなライフスタイルの変化があること、またその際女性のほうがより家事や育児を担っている、ということが考えられます。

加えて、閉経前後に更年期障害で睡眠に影響が出たり、睡眠時無呼吸症候群となり中途覚醒が増えたりするなど、ホルモンバランスの変化による睡眠不足も報告されています。

睡眠時間について、日本国内で年代別に調査したデータもあります。その調査「国民健康・栄養調査」によると、特に40代、50代の睡眠が短い傾向にあるのだとか。日本の睡眠時間が短い理由として、仕事と私生活の両立が難しいこと、長時間の通勤、夜型の生活習慣がその背景にあるとされています。

これについてもう少し詳しく見ていきましょう。

国民健康・栄養調査から読み解く日本人の睡眠状況

「国民健康・栄養調査」は、国民の身体の状況、栄養摂取量、生活習慣の状況について把握するため、厚生労働省が毎年実施している公式な調査であり、その調査の中に「睡眠」も含まれています。

1日の平均睡眠時間は6時間以上7時間未満の人が最も多いのですが、近年、6時間未満の睡眠しか確保できていない人が増加しており、特に40代~50代の睡眠が短い傾向にあります。睡眠が6時間未満の人は、男性の30~50歳代、女性の40~60歳代でなんと4割以上にも上ることがわかりました。  

6時間未満の睡眠しか取れてない人数、10人につき

20代 30代 40代 50代 60代
男性 3.9人 4.3人 4.7人 5.2人 4人
女性 3.6人 3.8人 4.8人 5.9人 4.7人

人は年齢とともに早寝早起きになる傾向がありますが、一方で若年層はスマホやPC利用により睡眠不足になりがちです。これには、スマートフォンの普及や仕事量の増加が影響しており、日中のパフォーマンス低下や生活習慣病のリスクを高める可能性があります。

睡眠不足で個人のパフォーマンスが下がると、国の経済にも影響するというデータもあります。米国のシンクタンク・ランド研究所が算出した数値によると、日本は睡眠不足で年間15兆円もの損失を出しているとか※2。したがって、十分な睡眠をとるための対策が国としても今後の課題である、とされています。

参考※2:https://www.rand.org/pubs/research_reports/RR1791.html

都道府県別でみる睡眠時間の差

日本は世界の中でも睡眠時間が短い国、というのがわかりました。では、日本の中で最も睡眠が短い県、あるいは一番たっぷり睡眠が取れている県はどこなのでしょうか?都道府県別の睡眠時間は、総務省統計局の令和3年版「社会生活基本調査」の中で行われているので覗いてみましょう。一番睡眠時間が短いのは……神奈川県と東京都。一番睡眠時間がたっぷりなのは青森県です。

 [都道府県別・睡眠時間が多い順位]

1 青森県 12 宮崎県 29 大分県
2 秋田県 18 新潟県 34 岐阜県
3 鹿児島県 18 滋賀県 35 愛知県
4 宮城県 18 佐賀県 35 奈良県
4 高知県 21 三重県 35 愛媛県
6 山形県 21 山口県 38 徳島県
7 福井県 21 香川県 38 長崎県
7 沖縄県 24 茨城県 40 埼玉県
9 北海道 24 長野県 40 千葉県
9 岩手県 24 京都府 40 大阪府
9 鳥取県 24 福岡県 43 兵庫県
12 福島県 24 熊本県 43 岡山県
12 石川県 29 栃木県 44 静岡県
12 山梨県 29 群馬県 46 東京都
12 島根県 29 富山県 46 神奈川県
12 広島県 29 和歌山県

*令和3年社会生活基本調査結果に基づく。同順位は平均睡眠時間が同じ。

この結果を見ると、なんとなく傾向が見えてきますよね。詳しく解説してみましょう。

睡眠時間が長い県・短い県の特徴

日本人の睡眠時間の長さの順位を俯瞰すると、まず気付くのは都市部と地方で差が見られる、ということです。睡眠時間が短い都市部に対し、地方ではより長く睡眠を取る傾向が見られます。

特に、東京・神奈川・埼玉・千葉などの首都圏や、大阪・兵庫など近畿地方の大都市圏では、通勤時間の長さ、満員電車でのストレス、残業の多さに加え、深夜営業の充実による就寝時刻の遅れ、共働き家庭における育児や家事の負担などが原因で、睡眠時間が短い傾向にあります。

一方、青森県や秋田県を含む東北地方の一部では、全国平均よりも睡眠時間が長いことがわかります。地方では、職場と自宅が近く移動の負担が少ない、夜間の娯楽施設が少ないといった背景があり、通勤や仕事後の時間に余裕があるため、比較的長い睡眠時間を確保しやすいと考えられます。

また、北欧など緯度が高い地域のほうが睡眠時間が長い傾向にあるため、青森県や秋田県で睡眠時間が長いのは、緯度とも関係があるかもしれません。青森市はニューヨークとほぼ同じ緯度にあります。

なぜ日本人は睡眠時間が短いのか?

世界一睡眠時間が短い日本人。なぜ日本人の睡眠時間は短いのでしょうか?もちろん、個人の生活リズムもありますが、その背景には、競争社会や仕事中心のライフスタイルといった社会構造的な要因が存在します。また都市部での夜間の娯楽、SNSの普及といったことも、睡眠不足を深刻化させています。忙しい現代において、仕事や家事だけで一日を終えたくない、「自分の時間」を味わいたい、という心理が夜更かしを促し、結果として睡眠不足につながる人が増えています。

労働時間と通勤時間の影響

日本人の労働時間自体は年々減少傾向にあるのですが、OECDの2021年の調査によると、日本ではアルバイトやパートなど短時間労働者の割合が世界第3位と高いため、フルタイムの従業員ひとりひとりの業務量が多い傾向がある、と言えます。

減ってきたという労働時間も欧州と比較すると、まだまだ長時間労働です。そのため就寝時間が遅れやすく、睡眠不足のリスクが高くなっています。

都市部では通勤時間が長いため、早朝出勤や深夜帰宅により十分な睡眠時間を確保することが難しくなります。満員電車や仕事のストレスによる疲労も、睡眠の質を低下させる要因です。特に子育て世代や働き盛りの世代においては、残業後に家事や育児を行う、いわゆる「無償の労働」があるため、就寝時間が遅くなる傾向があります。

夜型ライフスタイルと睡眠リズムの乱れ

日本では、24時間営業のコンビニ、深夜営業の飲食店が多く、夜間でも比較的安全に出かけることができます。また、インターネットやSNSへのアクセスが容易なため、動画視聴、ゲーム、チャットなどで夜更かしをする人が増えています。

仕事が終わった夜こそ自分だけの時間を楽しめるのは豊かなことではあります。しかし、日本のこういった社会状況が夜型ライフスタイルを助長し、就寝時間の遅れと翌朝の睡眠不足という悪循環を招きやすい、という分析もあります。さらに、スマートフォンやパソコンから発せられるブルーライトは脳を覚醒させ、体内時計を狂わせる要因となっています。

睡眠不足が及ぼす身体的・精神的リスク

睡眠不足が慢性化すると、どんなリスクがあるか知っていますか?主なものは以下のとおりです。

睡眠不足で起こりうること リスク
食欲を調整するホルモンのバランスが崩れ、過食になりやすい。
肥満や高血圧といった生活習慣病のリスクが高まる。
睡眠には脳のストレスを解消する効果があるが、脳がきちんと休めない。
精神的なストレスを増大させ、うつ病や不安障害などの精神疾患の発症や悪化につながることも。
睡眠中に身体がリセットされないため、疲労感が続く。
日中の集中力や意欲が低下し、仕事や学業のパフォーマンスに悪影響が。
睡眠リズムが崩れてしまう。
睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害に及ぶことも。心血管系に大きな負担をかけるため、早期の診断が必要。

年齢やライフステージによる理想的な睡眠時間

子どもや若年層は、学習や運動量が多く成長ホルモン分泌も活発なため、成人よりも長い睡眠時間を確保することが理想です。特に、受験や部活動で忙しい時期は、睡眠時間の確保が重要となります。

一方、高齢者は深い眠りの時間が短くなり、夜中に目覚めることが増える傾向があります。そのため、昼間の活動量を増やし、規則正しい就寝・起床を心がけることが大切です。

20~60代の現役世代は、仕事や家事、育児などによって睡眠時間を削りがちです。しかし、健康とパフォーマンスを維持するためには、必要十分な睡眠時間を意識的に確保する工夫が求められます。

睡眠の質を向上させるための具体的な方法

ここまでは睡眠時間、つまり睡眠の長さについて考えてきました。しかし、良質な睡眠を得るには、睡眠時間を増やすだけでなく、睡眠の質を高めることが重要です。睡眠の質とは何かというと、

  • いかに深い眠り=ノンレム睡眠を実現するか

です。そのために大事なのは、90分から120分ごとにレム睡眠→ノンレム睡眠を繰り返すことです。

レム睡眠
脳は起きていて、体は眠っている。急速眼球運動(Rapid Eye Movement)があることから、レム睡眠(REM)と呼ばれる。夢を見るのはこの睡眠中。
ノンレム睡眠
脳が眠っている状態のこと。夢はほとんどみず、筋肉は働いている。

就寝前の環境を整えたり、リラックスできる方法を取り入れたりすることで、短い睡眠時間でもレム睡眠とノンレム睡眠が繰り返される、質の高い休息が得られます。また、平日と休日で起床・就寝時刻が大きく異なると体内時計が乱れるため、毎日同じようなリズムで生活することが大切です。具体的な方法を説明します。

快眠のための生活リズムづくり

毎日同じ時間に目覚めましょう。起床時間を固定にし、リモートワークで出社がない人でも朝日に当たると体内時計が整い、目覚めが良くなります。朝食はしっかり摂って身体を目覚めさせ、夕食は控えめにして就寝の2~3時間前までに済ませる習慣を心がけると、睡眠の質が上がります。

就寝1時間前からはスマートフォンやパソコンなどの使用を避け、入浴などでリラックスすると入眠しやすくなります。

快適な寝具の利用

身体のどこにも負担をかけず快適に寝られる寝具だと、寝ている間に適度な寝返りを打て、目覚めることなく快眠できます。

ベッドで寝る場合のマットレスはほどよく心地よい沈み込み(低反発)、同時に身体をしっかり支える硬さがある(高反発)のが理想のバランスです。以下の点をチェックしてみましょう。

  • 仰向けで寝て、腰の下に手の平を入れてみる。手のひらが抵抗なく入る場合は硬すぎる可能性がある
  • 横向きで寝て、肩や腰の位置を確認する。深く沈み込んでいる場合は柔らかすぎる可能性がある
  • 寝起きの体の状態をチェックする。腰痛や肩こりがある場合は、硬さが合っていない可能性がある

そんなおすすめのマットレスのひとつに「コアラマットレスプラス PLUS」があります。従来品よりも低反発と高反発を組み合わせた独自素材のクラウドセル™を20%増量してあり、より快適な寝心地が得られます。

質の高い睡眠には、枕も欠かせません。首の自然なカーブを支える高さの枕を選ぶことで、気道が確保されやすくなります。

さらに、季節や体調に合わせて寝具の素材を選ぶことも大切です。通気性の良い素材を選ぶと、体温がこもらず、より快適な睡眠を得られます。

日中の適度な運動と昼寝の活用

日中の適度な運動は血行を促進し、夜の深い睡眠につながります。ウォーキングや軽いストレッチのほか、家事で身体を動かすのも有効です。

眠気を感じる場合は、15~20分の短い昼寝(パワーナップ)が脳の疲労回復に役立ち、午後の作業効率を向上させます。ただし、長い昼寝は夜の入眠を妨げる可能性があるため、ランチ後の早い時間に短時間で行うのが理想的です。パワーナップについては、理学療法士が監修した「パワーナップの効果とその正しい摂り方とは?」を参考にしてみてください。

まとめ

日本人の平均睡眠時間は世界的に見て短く、特に働き盛りの世代や都市部に住む人々の間で睡眠不足が深刻な問題となっています。原因は単純ではなく、長時間労働を求める社会構造、通勤時間、夜型の生活習慣など、多様な要因が複雑に絡み合っています。つまり、日本人の睡眠が足りていないのは、「ライフスタイルを変えよう」という個人の努力不足が原因では決してないのです。

慢性的な睡眠不足は、生活習慣病のリスクを高めるだけでなく、精神的なストレスの増加にも繋がるため、社会全体での取り組みが必要、という共通認識ができつつあります。

とは言っても、自分自身の睡眠不足解消には、人任せにせず、睡眠の質と量をしっかりと確保しようと意識することが不可欠です。必要な睡眠時間は年齢やライフステージによって異なりますが、ぜひ、紹介した快眠のためのヒントや規則正しい生活リズムの作り方を参考にして睡眠環境を見直し、健康維持とパフォーマンス向上に繋げてみてください。