睡眠コラム by Koala Sleep Japan2025年6月6日読了目安時間: 5

【医師監修】寝る前にコーヒーを飲んでも大丈夫?メリットデメリットと上手な飲み方

寝る前のリラックスタイム、「コーヒーを1杯飲みたいけど、睡眠の質が悪くならないか心配」そんなことはありませんか?大好きなコーヒーと、大切な睡眠を両立するためには、知っておくべきいくつかのポイントがあります。

この記事では、最新の知見に基づき、寝る前のコーヒーについてメリット・デメリットから、適切な時間帯と量の目安から、コーヒーを活用した昼寝”コーヒーナップ”まで詳しく解説します。カフェインの一日の総摂取量を意識するなど、新しいアプローチが見えてくるかもしれません。

この記事を読んで不安を解消し、寝る前のコーヒーと質の高い睡眠を両立しましょう。

寝る前にコーヒーを飲む主なメリット

静かな空間でコーヒーを嗜む優雅な時間は、心安らぐひとときです。

夜にコーヒー飲む場合、カフェインの覚醒作用が懸念されますが、実は睡眠に関して良い効果が期待できる側面もあります。

香りによるリラックス効果

特定のコーヒーの香りには、心を落ち着かせるリラックス効果があることが科学的に示されています。グアテマラやブルーマウンテンの香りを嗅ぐと、脳のα波が増強され、ストレスが軽減されるという研究報告があります。心地よい香りが脳のα波を増やし、副交感神経を優位にして気分をゆったりと落ち着かせるのです。1)

血行促進による疲労回復

温かいコーヒーを飲むことで、体が内側から温まります。体が温まると血行が促進され、筋肉の緊張がほぐれ、疲労回復が期待できます。

体を温めることによる睡眠導入効果

体を温めることは睡眠に良い影響を与えます。入眠の際に、体温は自然と下降しますが、入浴などで就寝前に一時的に体温を上げておくことで、その後の体温低下がスムーズになり、睡眠導入を助けると考えられています。温かいコーヒーを飲むことで体を内側から温めると、同様の理屈で入眠の助けになります。

ダイエット中に嬉しいプラス効果はある?

カフェインには、代謝を高め、食欲を抑える働きがあります。さらに、食事と合わせて摂取すると、脂肪分解を促進する効果があるため、ダイエットに嬉しい効果が期待できます。2)

寝る前にコーヒーを飲むデメリットとリスク

寝る前のコーヒーにはメリットがある一方で、注意すべきデメリットとリスクもあります。デメリットを最小限に抑えられる自分に合ったコーヒーの飲み方を考えましょう。

覚醒作用で寝付きが悪くなる可能性

寝る前にコーヒーを飲むと寝付きが悪くなる可能性があります。これはコーヒーに含まれるカフェインの影響によるものです。

本来、疲労に伴って産生されるアデノシンという物質が受容体に結合して、覚醒作用のあるヒスタミンの放出を抑制することで眠気が生じます。しかし、カフェインがある場合には、カフェインがアデノシンの受容体への結合を妨げてしまうため、眠気が生じにくくなるのです。

コーヒーを飲んで30分〜2時間程度でカフェインの血中濃度は最大に達するため、コーヒーを飲むと比較的すぐに覚醒作用が現れて目が冴えてきてしまう可能性があります。3)

覚醒作用で睡眠が浅くなる可能性

カフェインの影響は入眠だけではありません。覚醒作用によってその後の睡眠が浅くなるおそれもあります。

脳波を用いて睡眠を客観的に評価した研究では、カフェインの摂取量が増えるほど、深い睡眠が減少し、中途覚醒が増えたという報告があります。4)

入眠に不都合を感じなくても、睡眠時間の短縮や深い睡眠の減少は多くの人に見られるため、注意が必要です。

利尿作用で夜中にトイレが増えるかも

カフェインには利尿作用があり、寝る前にコーヒーを飲むと夜中にトイレのために目が覚めることがあります。さらにこうして睡眠が中断されると、カフェインの覚醒作用によって再度眠りにつくのが難しかったり、浅い睡眠しか取れなかったりすることがあります。

夜コーヒーを楽しむための工夫

寝る前のコーヒーにはメリットもデメリットもあります。デメリットを抑えてコーヒーを楽しむコツを確認しましょう。

ホットコーヒーをゆっくり飲む

温かいコーヒーを少量ずつゆっくり楽しむことで、カフェインの急激な吸収を自然と防ぐことができ、体への負担が軽減します。また、コーヒーの湯気とともに漂う豊かな香りはリラックスを促進する要素でした。

静かな環境でブルーライトから離れて、温かいゆっくりとコーヒーを楽しむ時間は、上質なリラックスタイムを演出すると共に、副交感神経を優位にして睡眠への準備を進めてくれます。

ミルクや豆乳でカフェインを緩和

ブラックコーヒーが苦手な方や、カフェインの効果を和らげたい場合は、ミルクや豆乳を加えるのがおすすめです。カフェインの濃度を薄めることができる他、ミルクに含まれるカルシウムや、豆乳のタンパク質が体に優しく、胃粘膜保護作用も期待されます。

デカフェやカフェインレスを選ぶ

睡眠への影響を極力抑えたいときには、デカフェ(カフェインを取り除いたもの)や、カフェインレス(カフェイン含有量がこくわずか)のコーヒーを選ぶのがおすすめです。カフェインによる覚醒作用の影響を大幅に減らしてリラックスすることができます。

近年は、デカフェやカフェインレスのコーヒー豆も品質が向上しており、通常のコーヒーに劣らず深みやコクを楽しむことができるものが増えています。お気に入りの就寝前の1杯を、デカフェやカフェインレスのコーヒーから新たに探すのも楽しめるかもしれません。

カフェインに敏感な方も安心して寝る前の1杯のコーヒーを楽しめますね。

適切な時間帯と量の目安

寝る前のコーヒーが睡眠の妨げにならないためには、摂取するタイミングと量が非常に重要です。ここでは、タイミングと量について科学的に、より詳細に解説します。

個人差が大きいものの、一般的な目安を確認しましょう。

就寝30分前〜1時間前のコーヒーはアリ?

就寝直前のコーヒーは基本的には控えた方が無難です。

コーヒカップ1杯(140mL)のカフェイン含有量はおよそ80mgとされていますが、睡眠に影響するカフェインの量は、就寝の時点で体内に50mgが目安です。そのため、就寝前にコーヒーを1杯飲むと睡眠に何らかの影響が出ると考えられます。

カフェインの代謝には個人差が大きく、血中半減期(血中濃度が半分になるのに要する時間)は3〜7時間と幅があります。どうしても就寝直前に飲みたい場合には、ごく少量(50mL以下)とするか、デカフェやカフェインレスを選びましょう。

夕方以降は量を控えめに

カフェインの効果の持続時間や代謝速度には個人差がありますが、夕方以降はコーヒーの摂取量を控えめにすることが睡眠への影響を減らすポイントです。

これは半減期を考慮しても就眠までに十分に濃度が下がりきれず、睡眠を妨げる恐れがあるためです。

夕方以降にコーヒーを飲む場合は、小さめのカップを使うようにするなどして自然と調整できるようにしておくとよいでしょう。カフェインへの自身の反応を把握して、自分に合った適量を見つけることが、睡眠とコーヒーを両立させる鍵になります。

カフェインの総量を意識するのもポイント

カフェインはコーヒー以外にも含まれています。就寝時に体内にあるカフェインの量が問題なので、コーヒーを飲みたい場合には、日中にカフェインを含む飲料などを避けるとよいでしょう。最近では、コーヒーよりずっと多くのカフェインを含むエナジードリンクもあります。

ある研究では、カフェイン摂取量が107mg(コーヒーカップ1.25杯 =187mL)を超えると就寝時刻の9時間前であっても睡眠に影響し、217.5mg(コーヒカップ2.7杯 =約380mL)を超えると13時間前でも夜間の睡眠に影響したとの報告があります。5)

また、一般的な目安として、一日の総カフェイン摂取量を400mg以下(コーヒー700cc程度)に抑えることが推奨されています。4)

これらを目安にして日中のカフェイン摂取総量を減らしておくことで、夕方以降にコーヒーを飲んでも就寝時に十分な低下を期待できる範囲に収められるかもしれません。

お昼寝前のコーヒー”コーヒーナップ”のメリット

記事を終える前にコーヒーブレイクしましょう。

日中の眠気を解消し、その後のパフォーマンスを向上させる効果的なコーヒー活用法として「コーヒーナップ」が有名です。これは、仮眠を取る直前にコーヒーを1杯飲み、15〜30分程度の短い睡眠を取るという方法です。

カフェインが脳に作用し、アデノシンの働きを妨げ始めるまでに通常20分程度かかります。短い仮眠から目覚める頃には睡眠によって脳内のアデノシンがクリアになり始め、同時にカフェインが覚醒作用を発揮し始めることで、目覚めがスッキリしやすいという仕組みです。

睡眠直前にコーヒーを飲むのは、実はこのコーヒーナップの手順と同じことだったのです。

コーヒナップ自体は、午後の作業効率や集中力向上に役立つとされており、日中の眠気対策としておすすめです。しかし、夜の睡眠に影響しないよう、あくまで15〜30分の短い仮眠に限定することが重要です。

まとめ

寝る前のコーヒーには、香りによるリラックス効果や体を温める効果がある一方で、カフェインによる覚醒作用や利尿作用により睡眠を妨げてしまうデメリットがあります。これらのメリットとデメリットに加えて、カフェインの覚醒作用のメカニズムを理解しておくことがコーヒーと睡眠の両立への第一歩です。

具体的には、コーヒーを飲むタイミングと量を調整したり、デカフェやカフェインレスのコーヒーへの切り替えたりすることから検討しましょう。カフェインの感受性は個人差が大きく、体内時計やライフスタイルもそれぞれなので自分に合った飲み方を探しましょう。

夜のコーヒを楽しむ場合には、カフェインの覚醒作用を避けつつ、香りや温かさといったリラックス効果を最大限に活かす工夫をすることがおすすめです。良質な睡眠は、日中の活動をサポートし、生活全体の質を高める基盤となります。

ぜひ大好きなコーヒーを楽しみながら良質な睡眠をとりましょう。

【参考文献】

  1. https://www.jstage.jst.go.jp/article/islis/22/1/22_KJ00000786738/_pdf/-char/ja
  2. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7369170/
  3. https://www.ncnp.go.jp/hospital/guide/sleep-column14.html
  4. 健康づくりのための睡眠ガイド2023(案):https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001181265.pdf
  5. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1087079223000205