睡眠コラム by 松岡 雄治2026年5月22日読了目安時間: 5

寝ると逆に疲れる・・寝ても疲れが取れない原因と今日からできる対処法を解説

松岡 雄治
医師

地方国立大学医学部卒業後、横浜市内で初期臨床研修を経て、関東の基幹病院で勤務中。
資格:医師国家試験合格、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級

「しっかり寝たはずなのに疲れが取れない」「長く寝たのに朝からだるい」。日中も眠気が抜けない状態が続くと、ご自身の睡眠に何か問題があるのではと不安になりますよね。厚生労働省の調査でも、働き盛りの多くが「睡眠で休養が十分にとれていない」と回答しています。

寝ても疲れる原因は、単なる寝不足だけではありません。睡眠の質の低下、寝過ぎ、生活リズムの乱れなど、複数の要因が重なっています。この記事では、原因の見当をつけ、朝のだるさや日中の眠気を減らすための具体的な改善策をお伝えします。

寝ても疲れが取れない主な原因

疲れが取れない理由は、睡眠時間の不足だけではありません。

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、時間の確保と同じくらい「睡眠で休めた感覚(睡眠休養感)」が重要視されています。ご自身の状態が、時間不足なのか、質の問題なのか、それとも生活習慣の影響なのかを整理してください。

原因1. 睡眠の質が下がっている

時間の長さではなく「質」の問題かもしれません。

  • 部屋の温度や湿度が適切でなく、寝ている間に体力を消耗している
  • 寝る直前までスマートフォンを見ており、脳が興奮状態で眠りに入っている
  • 外の光や物音が気になり、深い眠りが妨げられている

原因2. 寝過ぎや床上時間の長さが逆効果になっている

長く寝床にいることの弊害を知ることで、休日の過ごし方を見直せます。

  • 休日に普段より極端に長く寝ることで、体内時計のリズムが崩れる
  • 必要以上に長く寝床で過ごす(床上時間が長すぎる)と、かえって睡眠の質が下がる
  • 何度も二度寝を繰り返すことで、疲労回復の実感が薄れていく

原因3. 生活習慣やストレスの影響を受けている

睡眠を単体で捉えず、一日の過ごし方を見直すことで解決につながることもあります。

  • 日中に強いストレスを感じており、夜になっても脳の疲労(脳疲労)が抜けない
  • 運動不足で身体が適度に疲れておらず、深い睡眠に入りにくい
  • 夕食の時間が遅い、または朝食を抜いているため、体内リズムが乱れている

寝すぎると逆に疲れるのはなぜ?

長く寝れば回復するとは限りません。休日の寝だめや長時間の睡眠は、かえって身体のだるさを引き起こしやすいため、注意しましょう。

理由1. 体内時計がズレてだるさが残る

リズムの乱れを自覚することで、休日の起床時間をコントロールしやすくなります。

  • 休日に普段より何時間も遅く起きると、体内時計が後ろにズレる
  • このズレは「ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ぼけ)」と呼ばれ、海外旅行後のようなだるさを生む
  • 休み明けの朝に頭や身体が動きにくくなり、強い疲労感につながる

理由2. 長時間同じ姿勢で血行不良になる

睡眠中の姿勢と血流の関係を知ることで、起床時の身体のだるさを軽減しやすくなります。

  • 睡眠中の寝返りは、同じ部位の圧迫による血液循環の滞りを防ぐための生理的な働きである
  • 柔らかすぎる寝具などで寝返りの回数が減ると、筋肉がこわばり血流が低下する
  • 結果として、起床時に首、肩、腰などに重さや痛みを感じる原因になる

理由3. 二度寝で浅い眠りが増える

睡眠周期の乱れを知ることで、すっきりとした目覚めを作ることができます。

  • 睡眠は、浅い眠り(レム睡眠)と深い眠り(ノンレム睡眠)を繰り返している
  • 起きる直前に二度寝をすると、深い眠りに入りきれず浅い眠りを繰り返す
  • 睡眠のリズムが中途半端に途切れ、かえって目覚めが悪く疲労感が残る

睡眠休養感が低い人に共通しやすい生活習慣

何時間寝たかではなく、「休養感(=休めた感じがあるか)」という視点が大切です。

厚生労働省のガイドラインでも、睡眠休養感を下げる要因として日中の行動が挙げられています。就寝前の行動や食事、運動など、ご自身の生活習慣と照らし合わせてください。

習慣1. 就寝前の食事や夜食が遅い

胃腸の働きと睡眠の質の関係を知ることで、夕食のタイミングを調整できます。

  • 就寝前の夜食や間食は体内時計を後退させ、翌朝の睡眠休養感や睡眠の質を低下させる
  • 寝る直前に食事をすると、胃腸が消化活動を続けてしまい身体が休まらない
  • 夕食は就寝の2〜3時間前までに済ませるか、遅くなる場合は消化の良いものを選ぶ

習慣2. 運動不足で眠りが浅くなる

日中の活動量が夜の睡眠を深くする仕組みを知り、眠りの質を高めましょう。

  • デスクワークなどで日中の活動量が少ないと、身体が適度に疲労しない
  • 運動習慣がないと深い睡眠に入りにくく、睡眠休養感が低くなることがわかっている
  • 激しい運動は必要なく、日中の散歩や階段の上り下りなど軽い活動を取り入れる

習慣3. ストレスで心身が休まりにくい

精神的な緊張が自律神経に与える影響を知ることで、夜のリラックスを意識できます。

  • 仕事や人間関係のストレスが強いと、交感神経(緊張の神経)が優位なまま夜を迎える
  • リラックスをつかさどる副交感神経に切り替わらず、脳が常に警戒状態になる
  • 眠りが浅くなり、朝起きても「休まった感覚」が得られなくなるため、就寝の少なくとも1時間前にはリラックスする時間を確保する

寝ても疲れるときに試したい改善策

睡眠休養感を高めるためには、厚生労働省の「睡眠5原則」に基づく行動が有効です。

難しいことはありません。朝の光の活用や寝具の見直しなど、今日からすぐに試せる具体的な対処法を整理しました。

改善1. 起きる時間をなるべく一定にする

体内時計の基準を固定することで、夜の自然な眠気を引き出します。

  • 寝る時間を気にするよりも、まずは毎朝「起きる時間」を一定にする
  • 休日の寝だめ(遅起き)は、平日の起床時間から「プラス1時間以内」にとどめる
  • 起床時刻を固定することで、夜に眠くなるタイミングも安定してくる

改善2. 朝の光を浴びて体内リズムを整える

光の刺激を利用することで、睡眠ホルモンの分泌サイクルを正常化します。

  • 朝起きたらすぐにカーテンを開け、太陽の光を浴びて脳を覚醒させる
  • 朝の光を浴びてから約14時間後に、睡眠ホルモン(メラトニン)が分泌され始める
  • これにより、夜になると自然と休息モードへの切り替えが行われる

改善3. 寝る前のスマホや刺激を減らす

脳の興奮を抑えることで、スムーズな入眠と深い睡眠をサポートします。

  • 就寝前にはスマートフォンの画面を見るのを控える
  • 強い光(ブルーライト)や情報過多は、脳を覚醒させてしまう
  • 寝る前は部屋の照明を少し落とし、ストレッチや読書など静かに過ごす

改善4. 寝室の温度・音・光を見直す

睡眠を妨げる外部要因を排除することで、途中で目が覚めるのを防ぎます。

  • 季節に合わせて、暑すぎず寒すぎない適切な室温にエアコンを設定する
  • 外の街灯や朝日がまぶしい場合は、遮光カーテンを活用して寝室を暗くする
  • スマートフォンの通知音はオフにするか、寝床から離れた場所に置く

改善5. 自分に合う寝具や寝姿勢を整える

体に余計な負担をかけないことで、睡眠中の疲労回復を促します。

  • マットレスが柔らかすぎたり硬すぎたりすると、寝返りが打ちにくく血流が滞る
  • 枕の高さが合っていないと、首や肩の筋肉が緊張したままになり疲れが残る
  • 「自分に合うマットレスの選び方」などを参考に、寝返りのしやすい寝具を見直す

医療機関の受診を検討すべきケース

睡眠の改善策を試してもだるさが続く場合は、医療の介入が必要なサインです。

いびきや激しい眠気の裏には、睡眠時無呼吸症候群などの疾患が隠れていることがあります。以下の目安に当てはまる場合は、自己判断で放置せず受診を検討しましょう。

日中の眠気や倦怠感が強く生活に支障がある

危険性を客観視することで、ためらわずに専門家へ相談できます。

  • 仕事中のミスが増える、会議中にどうしても起きていられない
  • 車の運転中に強い眠気を感じるなど、安全に関わる事態が起きている
  • 睡眠時間を確保しているにもかかわらず、強い倦怠感が続く

いびきや息苦しさがある

睡眠中の異常なサインを見逃さないことで、疾患の早期発見につながります。睡眠時無呼吸症候群では、眠ることで気道が塞がり、目覚めて寝てを繰り返すため身体が休まりません。

  • 家族から「いびきがうるさい」「寝ている間に呼吸が止まっている」と指摘される
  • 夜中に息苦しさで目が覚めることがある
  • 最近体重が増加し、それに伴って朝のだるさや頭痛が強くなっている

倦怠感や気分の落ち込みが続く

心のサインを見落とさないことで、うつ病や自律神経失調症への対処が早まります。

  • 睡眠の問題だけでなく、一日中気分が沈んで意欲がわかない
  • 何に対しても興味が持てず、食欲の低下なども伴っている
  • 単なる疲労ではなく、心身の不調が長期間(2週間以上)続いている場合は精神科や心療内科に相談する

寝ても疲れることに関するよくある質問

寝ても疲れが取れない悩みに関する、よくある疑問に対する考え方を示します。

Q1. 何時間寝れば疲れは取れる?

適切な睡眠時間は、年齢や個人によって異なります。一律の正解はありません。

  • 一般的に、成人では6〜8時間程度の睡眠が必要とされている
  • 10代は長く、高齢になるほど必要な睡眠時間は短くなる傾向がある
  • 「何時間寝たか」よりも、「日中に眠気で困らないか」「しっかり休めた感覚があるか」を基準にする

Q2. 3・3・7睡眠法って効果がある?

入眠直後の深い睡眠と、トータルの睡眠時間を意識した考え方です。生活リズムを整える一つの目安としては有効ですが、目安と考えてください。

  • 最初の「3」時間で深い睡眠(ノンレム睡眠)を確保する
  • 夜中の「3」時(深夜帯)には眠っている状態を作る
  • 合計「7」時間の睡眠時間を確保することを目指す

寝ると疲れるときは睡眠時間だけでなく休養感まで見直そう

「寝ると疲れる」原因は一つではありません。睡眠時間の過不足だけでなく、睡眠の質の低下、生活習慣の乱れ、そして「休めたという実感(睡眠休養感)」の欠如が関係しています。

まずは、休日の極端な寝だめをやめて起床時間を一定にし、朝の光を浴びることから始めてください。就寝前のスマートフォンの使用を控え、寝室の環境を整えるだけでも、疲労感は大きく変化します。

しかし、 いびきがひどい場合や、日中の眠気で生活に支障が出ている場合は無理をせず、睡眠外来などの医療機関への受診をご検討検討してください。ご自身の生活リズムと睡眠環境を見直し、朝すっきり起きられる習慣を作っていきましょう。