目次
監修者
石川 恭子
コアラマットレス®︎のショールームで、お客様が「運命のマットレス」に巡り合えるようお手伝いしているカリスマコンシェルジュ。お客様の眠りの悩みに耳を傾ける中で、今すぐ活用できる睡眠の知識を届けたいと上級睡眠健康指導士の資格を取得。コアラ®︎のマットレスを通じて、毎日眠ることが待ち遠しくなるワクワク感を提供したい。
「最近、寝返りをほとんど打っていない気がする」「朝起きると肩や腰が痛い」「ぐっすり眠ったはずなのに疲れが残る」と感じていませんか。寝返りは自分では意識しにくいため、打てていないことに気づきにくい一方で、睡眠の質や体の不調に関係しているのではと不安になる人は少なくありません。
肩こりや腰痛、体のだるさが続くと、今のマットレスや枕が合っていないのか、姿勢や筋力の低下が原因なのかが気になりますよね。
本記事では、上級睡眠健康指導士の資格を持つコアラマットレス社員の石川が、寝返りを打たない・打ちにくい状態がなぜ起こるのかをわかりやすく整理します。睡眠中の寝返りの役割から、寝返りが少ないことで起こりやすい不快感、よくある原因の切り分け方、具体的な改善の方向性までまとめました。原因と対策を知って、今の悩みに合った見直し方を試していくことが大切です。
寝返りを打たないとどうなるのか
寝返りが体の中でどんな役割を果たしているのか、少ない状態が続くとどんな不快感につながりやすいのかをまず整理してみましょう。
寝返りは自然な体位変換であり完全に止めるものではない
寝返りは、眠っている間に無意識で起こる体位変換です。無意識下で体が自然に行う動きであるため、自分では気づきにくいという特徴があります。
寝返りの主な役割は大きく2つあります。1つは、体の特定の部位にかかり続ける圧力を分散させることです。同じ姿勢で長時間いると、接地している部分に圧力が集中して血流が悪くなりやすいため、寝返りによって圧力を定期的に逃がし、筋肉や関節への負担を軽減します。もう1つは、寝具の中の温度・湿度を調整することです。眠っている間に体から発せられる熱や汗が布団の中にこもりやすくなりますが、体位が変わることで空気が入れ替わり、快適な環境が保たれやすいのです。
奈良女子大学が行った終夜睡眠実験では、8時間の夜間睡眠中に被験者が仰臥位(あおむけ)、側臥位(横向き)、腹臥位(うつぶせ)のさまざまな体位を取り、仰臥位が全体の約50%、側臥位が約40%、腹臥位が約5%を占めたことが報告されています。また、1つの体位が連続して続く時間は長くても60分程度だったとされており、通常の睡眠では自然と体位が変化し続けていることがわかります。※1
つまり、「寝返りをまったく打っていない」という感覚があっても、実際には体がある程度動いていることが多いのです。
寝返りが少ないと起こりやすい不快感
では、実際に寝返りが少ない状態が続くとどうなるのでしょうか。体の一部に長時間圧力がかかり続けることで、起床時に肩や腰の違和感を感じやすくなります。また、布団の中の熱がこもりやすくなるため、夜中に目が覚めたり、眠りの深さが損なわれたりすることもあります。
寝返りが少ないと起こりやすいのは、「朝起きたのにすっきりしない」「体がこわばっている」という感覚です。これは睡眠時間そのものが短かったわけではなく、体の一部分への圧力集中や体温調節のうまくいかなさが影響していると考えられ、睡眠休養感(眠りによって体や心が回復したという感覚)が下がりやすいです。
ただし、寝返りの少なさ”だけ”が肩こりや腰痛の直接的な原因になるとは断言できません。日中の姿勢、寝具との相性、運動習慣、ストレス、睡眠環境など、複数の要因が絡み合って起こることがほとんどですので、「寝返りが少ないから腰痛になった」とすぐに結びつけず、自分の睡眠全体の状態を見直すきっかけにしてみましょう。
回数だけで睡眠の良し悪しは決められない
実際のところ、寝返りの回数だけで睡眠の良し悪しを判断するのは難しいです。
日本心理学会大会で発表された研究によると、眠りが安定する最初の2時間では、睡眠効率の高い日のほうが寝返り回数が少ない傾向がみられたと報告されています。一方で、眠りが安定した2時間以降については、寝返りの割合が高いほうが疲労回復が高く良い睡眠であることが示唆されたともされています。※2
この結果が示しているのは、「寝返りは多いほどよい、少ないほど悪い」という単純な話ではないということです。眠りの前半と後半では、寝返りが持つ意味合いが異なる可能性があるため、回数の多い少ないだけを基準にするのではなく、起床時の体の感覚や日中の眠気・倦怠感なども合わせて判断する視点が重要です。
続いて、「なぜ寝返りが減るのか」という原因を整理していきます。自分に当てはまりそうな原因があるか確認してみてください。
姿勢の乱れや体のこわばりで動きにくくなる
睡眠中に寝返りを打つためには、体をある程度スムーズに動かせる柔軟性が必要です。日中に同じ姿勢を長時間続けていたり、運動不足の状態が続いていたりすると、肩周りや股関節周り、腰回りの筋肉や関節が固くなりやすいです。その結果、眠っているときにも体が動きにくい状態になり、寝返りが減ることがあります。
特に影響を受けやすいのが、長時間のデスクワークやスマートフォンの使用による前傾姿勢の習慣化です。猫背や巻き肩が定着すると、首や肩周りの筋肉に慢性的な緊張が生じます。反り腰も同様で、腰周りの筋肉や股関節の可動域が制限されることで、寝ている間の動きに影響が出やすいのです。
体のこわばりが原因であれば、寝具を変えても根本的な改善にはなりにくいため、日中の姿勢の見直しと、体の動きやすさを取り戻すためのケアが必要になります。
マットレスや枕が体に合っていない
体の柔軟性に問題がなくても、寝具との相性が悪いと寝返りが打ちにくくなることは少なくありません。最もよくあるのが、マットレスが柔らかすぎて体が沈み込んでしまう状態です。深く沈み込むと体全体が包まれたような状態になり、動きたくても動けない状況が生まれます。低反発素材のマットレスはこの状態になりやすい傾向があります。
ただし、硬すぎるマットレスも問題です。体のラインに沿った体圧分散ができないと、接地面に圧力が集中して痛みや違和感が生じ、それが寝返りのきっかけにはなりにくい状態を作り出します。
枕の影響も見逃せません。枕の高さが合っていないと首や肩への負担が増し、結果的に体を動かしにくい状態になることがあります。また、頭の幅の3倍程度の枕の横幅が確保されていると寝返りがしやすいとされていますが、枕の幅が狭いと寝返りを打ったときに頭が落ちてしまい、無意識のうちに体が動きを避けてしまいがちです。
寝具の見直しは比較的取り組みやすい改善策のひとつです。マットレスの硬さや素材、枕の高さや幅が今の体に合っているかどうかを確認しましょう。
加齢や筋力低下で寝返りが減ることがある
年齢を重ねると、筋力や体の柔軟性が少しずつ変化していきます。若い頃と比べて体が動きにくくなった、寝返りが減った気がすると感じる方がいるのは、加齢による変化が背景にあることが多いです。特に高齢になるにつれて筋力が低下すると、体を動かすための力そのものが衰え、睡眠中の自然な体位変換が減りやすいです。
ただし、加齢だけが原因ということはほとんどなく、運動不足、日中の姿勢の悪化、寝具との相性といった他の要因が重なって起こることがほとんどです。「年齢のせいだから仕方ない」と諦める前に、日中の運動習慣や寝具の状態を一度見直してみましょう。
また、特定の薬(睡眠薬や精神科系の薬)の服用や、就寝前のアルコール摂取が眠りを深くしすぎる状態を作り出し、結果として寝返りが減ることもあります。思い当たる方は、主治医や薬剤師に確認してみてください。
自分が寝返りを打てているか確かめる見方
「寝返りをしていない気がする」という感覚は、あくまでも主観的な印象です。眠っている間の自分の動きを正確に把握するのは、実は簡単ではありません。自分の寝返りの状態を確かめるための現実的な視点を整理します。
起床時のサインから見る
寝返りの状態を間接的に確かめる方法のひとつが、朝目が覚めたときの体の感覚を振り返ることです。
たとえば、特定の部位(肩や腰、首など)が毎朝決まったように痛い、こわばっている、または寝た直後よりも疲れている感覚があるといった場合は、睡眠中の体位変換が少なかった可能性があります。また、寝具にくっきりと体のかたちがついている、パジャマがほとんどよれていないというのも、あまり動いていないサインです。
ただし、これらはあくまでも「気づきのきっかけ」です。同じ症状があっても、寝具の硬さや部屋の温度、枕の高さなど別の原因が影響していることも多いため、起床時の感覚を出発点として複数の原因がある可能性を考えることが大切です。
主観だけではわかりにくい理由
実は、人は自分が眠っている間にどれくらい動いているかを、ほとんど正確に把握できません。「まったく寝返りをしていなかった」と感じていても、実際にはある程度の体位変換が行われていることがあります。
藤田医科大学の研究では、0〜86歳にわたる396例の終夜睡眠ポリグラフ検査をもとに睡眠中の体位変換が調べられており、睡眠中は仰臥位・側臥位・腹臥位の体位変換を繰り返すことが確認されています。また、子どもを対象にした調査では、問診による体位変換状況と実測結果の間に有意な相関がみられなかったとも報告されています。※3
少なくとも本人や家族の感覚だけでは、睡眠中の動きを正確に把握しにくいことがあることの証左です。
「全然動いていない気がする」という感覚はひとつの参考情報として受け取りつつ、体の不調が気になる場合は睡眠外来への相談も選択肢に入れてください。スマートフォンの睡眠記録アプリを活用する方法もありますが、精度には限界があるため、あくまでも傾向をつかむための補助的なツールとして使うのがよいでしょう。
原因の見当がついたら、次はできることから改善に取り組んでいきましょう。改善の方向性は大きく「寝具の見直し」「日中の姿勢と運動」「寝室環境と就寝前の習慣」の3つに分けられます。それぞれの要因を少しずつバランスよく整えていくのが効果的です。
寝具の見直しで動きやすさを整える
寝返りしやすい環境を整えるうえで、もっとも効果が出やすいのが寝具の見直しです。マットレス選びでは「体圧分散」と「反発力」のバランスを確認しましょう。
ポイントは、体が沈み込みすぎないこと、かつ接地部位に過度な圧力がかからないことの両方がカバーできているかという点です。低反発のマットレスは寝返りがしにくくなりやすいため、ある程度の反発力を持つ素材を選ぶほうが動きやすさの面では有利です。コイル系(ポケットコイル・ボンネルコイル)や高反発ウレタン、ラテックス素材などが寝返りのしやすさという観点からは向いているとされています。
枕については、高さと幅の両方を確認してください。横向きになったときに首が自然なカーブを保てる高さが目安です。また、枕の幅が狭いと寝返りの際に頭が落ちる感覚が生じ、睡眠中の動きを妨げることがあるため、十分な幅があるかもチェックしましょう。
掛け布団については、重いと体への圧迫感が増し、寝返りを打ちにくくする要因になり得ます。軽くて体温調節しやすい素材の寝具を選び、動きやすさを確保しましょう。
日中の姿勢と軽い運動を見直す
寝返りのしやすさは、眠っている時間だけでなく、起きている間の体の使い方にも影響を受けます。日中に体が固まっていると、夜に動きにくい状態で眠ることになるためです。
まず意識したいのが、長時間同じ姿勢を続けないことです。デスクワークが多い方は、1〜2時間に1回程度を目安に、立ち上がったり軽くストレッチをしたりする習慣をつけると、筋肉のこわばりが軽減されやすいです。
就寝前に、寝返りに関わる部位である腰回りや股関節、肩周りをほぐすことも重要です。仰向けで両膝を立て、左右にゆっくりと倒すひねりの動作や、膝を胸に引き寄せる動作が手軽に取り組めて続けやすいでしょう。激しい運動である必要はなく、「気持ちよく伸びる」程度の強さで10〜15分続けることが習慣化しやすいコツです。
日中の軽い有酸素運動(ウォーキングや軽い体操)を日常に取り入れることも、筋力や柔軟性の維持につながります。毎日少しずつ体を動かす習慣が、夜の寝返りのしやすさにつながります。
寝室環境と寝る前の習慣を整える
寝具や体のケアと並んで、寝室全体の環境も睡眠の質に影響します。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、成人の睡眠については時間だけでなく、睡眠休養感や生活習慣・睡眠環境の見直しが重要だと示されています。睡眠の質は室温や湿度、騒音、光など複合的な環境要因と深く関連しているのが分かります。※4
快適に眠れる室温の目安は22〜26℃程度が参考値として挙げられます。湿度は50〜60%が推奨されています。季節によって適切な範囲は変わりますが、暑すぎても寒すぎても眠りの質に影響が出やすくなるため、参考値をベースに都度微調整しましょう。
寝る前の習慣改善としては、就寝の1時間程度前からスマートフォンやパソコンの使用を控えることが推奨されます。ブルーライトは眠気を促すメラトニンの分泌を抑制し、寝つきが悪くなったり眠りが浅くなったりする原因になります。
パジャマの選び方も見直してみてください。フード付きのものや締め付けの強いもの、素材が固くて摩擦が大きいものは体の動きを妨げます。動きやすく吸湿性の高い素材のパジャマを選ぶと、睡眠中の体位変換を邪魔しません。
受診を考えたいケース
寝返りが少ないという悩みの多くは、寝具の見直しや生活習慣の改善で対処できることが多いです。しかし、症状の内容によっては、セルフケアだけで様子を見るのではなく、医療機関への相談を検討したほうがよいケースがあります。
強い痛みやしびれが続くとき
朝起きたときの肩や腰の違和感が「起きているうちに収まる程度」であれば、まずは寝具や生活習慣の見直しから始めましょう。一方で、日中も痛みが続く、しびれを感じる、手足に力が入りにくいといった症状がある場合は、寝返り不足以外の原因が潜んでいる可能性があります。
特に腰や首のしびれが続く場合、脊椎疾患や神経の問題が絡んでいるかもしれません。「なんとなく体が痛い」という段階であれば生活習慣の見直しで様子を見ることができますが、2週間以上症状が続く場合や、痛みが強くなっている場合は整形外科や整骨院への相談を検討してください。
眠気やいびきなど睡眠全体の問題があるとき
寝返りの少なさに加えて、「日中に強い眠気がある」「熟睡した感覚がほとんどない」「パートナーから大きないびきや呼吸の止まりを指摘された」という場合は、睡眠時無呼吸症候群など睡眠全体の問題が隠れている可能性を考えましょう。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、睡眠休養感の低下がある場合は、生活習慣や睡眠環境の見直しに加え、病気が潜む可能性にも留意することが重要だと記されています。※4
「寝ているはずなのにいつも疲れている」という状態が続くなら、睡眠外来や内科への相談が適切なタイミングです。
不安を抱えたまま過ごすよりも、早めに相談したほうが結果的に回復も早くなります。
寝返りは睡眠中に自然に起こる体位変換であり、回数の多い少ないだけで睡眠の良し悪しを判断できるものではありません。「寝返りをしていない気がする」という感覚は、実際には体がある程度動いていることがほとんどですが、体の不快感や起床時の違和感が続いている場合は、原因を切り分けて見直す価値があります。
寝具の硬さ・反発力・枕の高さを確認する、日中の姿勢や就寝前のストレッチを習慣にする、そして寝室の温湿度環境や就寝前のスマートフォン使用を見直すといった取り組みを進めてみてください。
なお、強い痛みやしびれ、日中の強い眠気、いびきや無呼吸のサインがある場合は、医療機関への相談を検討してください。原因を正しく理解したうえで改善に取り組むことが、快適な眠りへの最短ルートなのです。
・参考










