目次
監修者

松岡 雄治
地方国立大学医学部卒業後、横浜市内で初期臨床研修を経て、関東の基幹病院で勤務中。
資格:医師国家試験合格、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級
布団を上げたときに黒い点々を見つけると、自宅で落とせるのか、買い替えが必要なのか迷うものです。
表面にうっすら付いた軽度のカビなら、素材に合った方法で拭き取り、十分に乾かして対処できる場合があります。ただし、カビが中まで入り込んでいたり、広範囲に広がっていたりする布団は、クリーニングや買い替えの検討が必要です。
この記事では、自宅で布団のカビを落とす手順と、素材別の注意点、カビを防ぐ工夫を解説します。手元の布団に合う対処法を知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
布団にカビが生える原因
布団にカビが生えるのは、汗による湿気や皮脂汚れがたまり、カビが増えやすい環境になるためです。カビは、温度20〜35℃、湿度70%以上で増えやすいとされています。
寝ているあいだにかいた汗は布団に移り、床との間に湿気がこもります。皮脂などの汚れも付くため、布団はカビの栄養源と湿気がそろいやすい寝具です。とくに、畳やフローリングに直接敷いたまま上げ下ろしをしていないと、裏側に湿気が残りやすくなります。
また、湿ったまま押し入れにしまうと、使っていない布団にもカビが生えることがあります。収納中は空気が通りにくいためです。
カビの生えた布団で寝るとどうなる?
カビの生えた布団を使い続けると、胞子を吸い込んでアレルギー症状が出ることがあります。カビは、室内にある代表的なアレルギーの原因物質です。なかでもアスペルギルスやアルテルナリアは、ぜん息の悪化との関係が知られています。
ぜん息のある方では、「アレルギー性気管支肺アスペルギルス症」が起こることもあります。吸い込んだカビが気管支にすみつき、それに対するアレルギー反応が引き金になると考えられている病気で、主な症状はせきやたんです。
ただし、カビを見つけたからといって、すぐに体調を崩すわけではありません。せきや鼻の症状が続く場合は、カビのある布団の使用を控え、医師に相談しましょう。
寝室のカビが体に与える影響や、部屋全体のカビ対策については、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:【医師監修】カビのある部屋で寝るとどうなる?健康被害の実態と今すぐできる対処法
布団のカビを自宅で落とす手順
表面にうっすら付いた軽度のカビは、取扱表示の確認、重曹水やエタノールでの拭き取り、カバーの洗濯などの手順で落とします。素材によっては使えない方法もあるため、確認から始め、使えるとわかった方法だけを順に進めてください。
1. 取扱表示とメーカーの案内を確認する
カビを拭く前に、布団の取扱表示とメーカーのお手入れ方法を確認しましょう。カバーを外して洗える製品でも、布団本体まで水洗いできるとは限りません。主に次の点を確認しておきましょう。
- 布団本体を家庭で洗えるか
- 部分洗いや水拭きができるか
- 重曹やアルコールを使用できるか
洗濯表示だけでは、重曹やアルコールを使えるかがわからないこともあります。その場合はメーカーの案内を確認し、見つからないときは薬剤を試さず、購入店や布団クリーニング店に相談してください。
2. 換気してマスクと手袋をつける
作業前に窓を開け、マスクとゴム手袋を着けて、カビや薬剤に触れにくい状態にしましょう。換気は作業中も続け、空気がこもる場所での処理は避けます。
消毒用エタノールは蒸発しやすく、発生した蒸気に火がつくおそれがあるため、近くでの喫煙や火気の使用はやめてから扱いましょう。密閉した室内で、布団全体に多量に吹きつける使い方も避けてください。
3. 重曹水でカビを拭き取る
水拭きと重曹の使用が認められている布団では、まず重曹水でカビの部分を拭き取りましょう。水100mLに重曹小さじ1を溶かした重曹水でやさしく拭くと、カビが落ちやすくなります。
布に少量を含ませ、カビの付いた部分を強くこすらずに拭いてください。布団の中まで水分がしみ込まないよう、ぬらす範囲と量を抑えます。拭き終えたら風を通し、水分を飛ばしておきましょう。
4. 消毒用エタノールで拭いて乾かす
メーカーがアルコールの使用を認めている布団では、重曹水で拭いた部分が乾いてから、消毒用エタノールで拭き取ります。布に少量を含ませ、カビの部分をやさしく拭きましょう。
拭いたあとは火気を避け、風通しのよい場所で十分に自然乾燥させましょう。アルコールが残っているうちは、布団乾燥機などで加熱しないでください。十分に乾いたあとなら、天日干しや布団乾燥機も使えます。
天日干しをするときは、清潔なカバーやシーツで覆って生地を保護し、布団たたきで強くたたかないようにしましょう。
エタノールで拭いたのに、黒い点が消えず、効果がなかったのでは、と焦る方も多いですが、安心してください。エタノールや重曹水は確かに「カビ菌を死滅させる」ことができます。
一方で、カビが残した黒いシミ(メラニン色素)を漂白する力はありません。黒ずみを消したい場合には漂白などを行いましょう。
5. カバーとシーツは洗濯表示に従って洗う
カバーやシーツの軽度のカビは、本体から外し、それぞれの洗濯表示に従って洗いましょう。漂白剤を使いたい場合は、布製品の表示と漂白剤の用途を両方確かめます。
酸素系の漂白剤だけを使えるものもあれば、漂白自体ができないものもあるため、塩素系をいきなり使うのは避けてください。
洗ったあとは十分に乾かし、湿ったまま布団に掛け戻さないようにしましょう。
漂白剤の表示は、三角形(△)のマークで示されます。下記の意味合いになっているため確認してみてください。
空の△:塩素系・酸素系ともに使用可
斜線が入った△:酸素系のみ使用可(塩素系は不可)
×印がついた△:漂白剤全般が使用不可
※出典:消費者庁「洗濯表示(令和6年8月20日以降)」
布団のカビ取りでやってはいけないこと
布団のカビ取りでは、塩素系のカビ取り剤を重ねたり、力任せにこすったりする方法を避けましょう。汚れが落ちないからと作業を強めると、薬剤同士が反応したり、生地を傷めたりするおそれがあります。
1. エタノールのあとに塩素系のカビ取り剤を使う
エタノールで拭いた場所に、塩素系のカビ取り剤を重ねてはいけません。次亜塩素酸塩を含む塩素系洗浄剤が酸やエタノールと混ざると、塩素ガスが発生することが確認されています。
同じ容器で混ぜる場合だけでなく、先に使った薬剤が残っている場所に使うのも危険です。浴室用のカビ取り剤を布団に使うのはやめ、薬剤は表示された用途で、ほかの薬剤と併用せずに使ってください。
ガスが発生したら作業をやめ、その場を離れてください。吸い込んだ場合は医師に相談し、息苦しさがあるときはすぐに医療機関を受診しましょう。
2. ブラシでこすってカビを広げる
カビのある部分をブラシで強くこすったり、布団をたたいて払い落としたりするのは避けましょう。カビの胞子を周囲に散らすおそれがあるうえ、生地や詰めものにも負担がかかります。
拭き取りができる製品なら、布を軽く当てて、汚れを移し取るように拭きましょう。
力を入れても落ちない黒ずみや、中まで入り込んだカビは、家庭で落とすのは難しいため、こすり続けずにその時点で手を止めましょう。
素材別に変わるカビ取りの注意点
布団のカビ取りや手入れの方法は、詰めものの素材によって変わります。湿気の逃げ方や洗える条件が異なるため、素材ごとの扱いを確かめましょう。
| 素材 | カビ取りの注意点 |
| 綿・ポリエステル | 丸洗いできるのはウォッシャブル表示のある薄手のものだけ。床に接する裏側まで乾かす |
| 羽毛・羊毛 | 洗える表示があれば30℃以下の水と中性洗剤で洗う。水分を含ませすぎない |
| ウレタン | 中材を洗えるかは製品しだい。アルコールや漂白剤は使えると確かめるまで使わない |
綿・ポリエステルの敷布団
綿やポリエステルの敷布団は、床に接する裏側の湿気にも注意して手入れしましょう。綿は湿気を吸いやすい一方、外に逃がす力はやや低いため、乾かさないと重くなり、へたりも早まります。ポリエステルは湿気をやや吸いにくいものの、湿気を通す性質があります。
家庭で丸洗いできるのは、ウォッシャブル表示のある薄手のものだけです。洗えるポリエステル布団は、40℃以下の水と合成洗剤で洗うのが一般的な目安で、洗ったあとは中まで十分に乾かしてください。
羽毛布団・羊毛布団
羽毛布団や羊毛布団は、家庭で洗えるかを確かめてから、水温と洗剤を選びましょう。どちらも湿気を吸って逃がす性質に優れた素材ですが、だからといって自由に水洗いできるわけではありません。
洗える製品は、30℃以下の水と中性洗剤で洗うのが一般的です。カバーと同じ感覚で、熱い湯や漂白剤を使わないようにしましょう。部分的に手入れする場合も、水分を含ませすぎず、処理後は十分に乾かしてください。
ウレタンのマットレス
ウレタンは基本的に水や湿気に弱い素材です。そのため、ウレタンのマットレスは、中材を洗えるか、カバーだけを洗えるかを分けて確認しましょう。カバーのファスナーは中材を入れるためのもので、中材を取り出すためのものではありません。カバーを外して洗えるのは、洗濯できると表示されている製品だけです。
アルコールや漂白剤は、メーカーの案内で使えると確かめられるまで、直接スプレーしないでください。表面のカビを取るときも、水分をしみ込ませないようにします。
カビが生えた場合の落とし方は、メーカーや購入店に確かめましょう。日頃は、立てかけて風を通すなどして湿気を逃がします。直射日光は変色の原因になることも覚えておいてください。
布団のカビが落ちないときの対処法
自宅で拭いてもカビの跡が残る場合は、薬剤を足さず、布団クリーニング店や寝具専門店に相談しましょう。とくに、黒いしみが定着している場合や、広い範囲や中綿までカビが広がっている場合は、自宅での処理は困難です。
受け付けてもらえるかどうかや料金は、素材やカビの状態、布団の種類や枚数によって変わります。状態を伝えて、見積もりを取りましょう。
また、中綿まで変色している場合や、干してもふくらまない場合は、買い替えも検討しましょう。綿の布団は打ち直し、羽毛布団はリフォームを相談できることもあります。
布団にカビを生やさないための予防法
布団のカビを防ぐには、起きてすぐにたたまない、素材に合わせて干す、寝室を換気するなどして湿気を逃がし、汚れもためないようにしましょう。カバーやシーツをこまめに洗うと、本体に皮脂などが付くのを抑えられます。
1. 起きてすぐには布団をたたまない
起床後の布団は、湿気を逃がしてからたたみましょう。寝ているあいだにかいた汗の水分が残っているため、すぐ押し入れにしまうと、湿気を持ち込むことになります。
掛け布団をめくってしばらく空気に触れさせ、敷布団の裏側にも風を通しましょう。畳や床に敷いている場合は、基本的に毎日上げ下ろしをします。
布団を上げたときは、裏側や床が湿っていないかも確認しましょう。湿り気が残る場合はそのまま収納せず、製品に合った方法で乾燥させてください。
2. 素材に合わせた頻度で布団を干す
布団を干す頻度は、詰めものの素材に合わせて調整しましょう。一般的な目安は、次のとおりです。
- 綿・ポリエステル:週に1〜2回程度
- 羊毛:週に1回程度
- 羽毛:月に1〜2回程度
天日干しができる製品は、乾燥した晴れの日を選び、湿度の低い午前10時〜午後3時ごろに干します。片面だけでなく、両面に風や日が当たるようにしましょう。
外に干せないときは、布団乾燥機を使う方法もあります。陰干しの指定がある布団はその案内を守り、乾燥機の取扱説明書も確かめてください。
3. 除湿シートやすのこで湿気をためない
床に布団を敷く場合は、布団の下に除湿シートを敷いて、床との間にたまる湿気を吸わせましょう。ただし、除湿シートを使っていても、布団の上げ下ろしは続けてください。
除湿シートも湿気を吸ったままにせず、製品の案内に合わせて乾かしたり交換したりしましょう。床にもカビが生えている場合は、床の材質に合う方法で掃除します。
押し入れにしまうときは、すのこを敷いて、布団や荷物を詰め込みすぎないようにしましょう。
フローリングに布団を直接敷いている場合の、除湿シートやすのこマットの使い方については、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:フローリングに布団を敷いて快適に眠るためにはどうしたらいい?フローリングに布団を敷くメリットとデメリットを紹介!
4. 寝室を換気して湿度を下げる
寝室はこまめに換気して、湿度が高い状態が続かないようにしましょう。布団を乾かしても、寝室や収納場所が湿っていると、再び湿気がたまりやすくなります。
窓を開けて風を通し、雨の日や花粉の多い時期など窓を開けにくいときは、除湿機やエアコンで湿度を下げましょう。
家具は壁から少し離して置き、家具の裏や押し入れの奥にも空気が通るよう、荷物の置き方を工夫しましょう。
寝室や押し入れの湿度を下げる具体的な方法については、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:【医師監修】湿度を下げる方法とは?最短で解決する手順と湿気対策のコツ
まとめ:布団のカビは素材と取扱表示を確かめてから落とそう
布団のカビ取りは、素材と取扱表示を確かめ、自宅で扱える軽度のものに限って行いましょう。重曹水やエタノールを使える布団では、重曹水で拭き取って乾かしてから、消毒用エタノールで拭いて十分に乾かします。
ただし、エタノールで拭いたあとに塩素系のカビ取り剤を重ねると、塩素ガスが発生するおそれがあるため、ほかの薬剤は足さないでください。
広い範囲にカビがある場合は、布団クリーニング店などに相談しましょう。中綿まで変色している場合や、干してもふくらまない場合は、買い替えも検討します。
カビをくり返さないためには、起きてすぐに布団をたたまず、素材に合わせて干して湿気を逃がしましょう。カバーやシーツをこまめに洗い、寝室や押し入れの換気も続けてください。
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