睡眠コラム by 松岡 雄治2025年12月26日読了目安時間: 5

【医師監修】カビのある部屋で寝るとどうなる?健康被害の実態と今すぐできる対処法

森田 麻里子
Child Health Laboratory 代表 / 医師

医師・小児スリープコンサルタント・睡眠専門家

2012年東京大学医学部医学科卒。
亀田総合病院にて初期研修後、2014年仙台厚生病院、2016年南相馬市立総合病院にて麻酔科医として勤務。2017年の第1子出産をきっかけに、2018年より乳幼児の睡眠問題についてのカウンセリングや講座、企業と連携したアプリ監修など行っている。2019年昭和大学病院附属東病院睡眠医療センター非常勤勤務を経て、現在は大人の睡眠カウンセリングや企業向け睡眠講座も手掛ける。

部屋の壁や窓際に黒い斑点を見つけて、「このまま寝て大丈夫なのだろうか」「子供への影響は?」そんな不安が頭をよぎったことはないでしょうか。実際、カビが発生した部屋で過ごすと、深刻な健康被害につながる可能性があります。「朝起きると鼻水が止まらない、咳が続く、なんとなく体調がすぐれない」といった症状があるなら、カビが原因かもしれません。特に赤ちゃんや小さな子ども、高齢者など免疫力の弱い家族がいる場合には注意が必要です。

厚生労働省の調査では、アレルギー性疾患の有病率が年々増加しています。特に小児喘息の有病率は、1960年代の1%から2000年代初頭には10%以上にまで上昇していました。※1

この記事では、カビが引き起こす具体的な健康被害について医学的根拠に基づいて詳しく解説し、今すぐできる応急処置から、根本的なカビ対策まで紹介します。本記事を通して、「カビのある部屋で寝続けることの危険性」を正しく理解し、快適で健康的な寝室を取り戻しましょう。

カビのある部屋で寝ると起こる4つの健康被害

カビの胞子はアレルゲンや病原体として作用し、寝室の健康リスクを上昇させます。カビのある部屋で寝ると、私たちはさまざまな影響を受けます。

1.アレルギー症状(鼻水・くしゃみ・咳)の慢性化

カビの胞子を吸い込むと、免疫の反応によってくしゃみや咳、鼻水といったアレルギー症状が引き起こされます。カビがアレルギー性鼻炎や気管支喘息の原因となるのはこうした理由からです。

2.呼吸器感染症のリスク増大

カビの胞子は、アレルギーだけでなくアスペルギルスやトリコスポロン等による肺炎などの原因にもなります。※2

カビによる感染症は、健康な状態であれば、わたしたちの体に備わった免疫により、感染を免れる場合もありますが、子どもや高齢者、免疫力が低下している方では重篤な状態に発展するリスクとなります。

3.睡眠の質低下と睡眠障害

アレルギー症状が睡眠中にも続くと、睡眠障害を起こすことがあります。睡眠障害が慢性化すると生活の質も大きく低下してしまうため、注意が必要です。

4.赤ちゃん・子どもへの深刻な影響

赤ちゃんや子どもなど免疫系が未発達な状態ではカビの影響を受けやすく、特に深刻な健康被害のリスクがあります。小児喘息の有症率の上昇にはカビなどの室内の空気環境も深く関わっていると考えられています。※2

 

寝室のカビ危険度チェックリスト【5つのサイン】

カビの特性を理解するために、ここで危険度をチェックしてみましょう。※3

  • 湿度が常に60%以上ある

カビが最も活動的になる条件は湿度です。文部科学省の博物館や図書館向けカビ対策マニュアルによると、カビの発生しやすい資料の場合、温度25度における相対湿度が70%ではカビは数か月で繁殖しますが、75%を越すと繁殖速度が急激に早まり、90%になるとわずか2日で目に見える程度まで繁殖すると記載されています。湿度がカビ発生に大きな影響を与えていることが分かります。

  • 窓や壁に結露が発生している

部屋の中と外の温度差により、部分的に湿度の高い環境を作ってしまうことがあります。

  • カビ臭い、嫌な臭いがする

カビが活発に繁殖しているときには、カビから揮発性有機化合物(MVOC)という物質が出てカビ特有の臭いがします。

  • 壁や天井に黒い斑点がある

黒い斑点は視認しやすいカビのサインです。いわゆる黒カビで、目で見える状態は既に大量の胞子を空気中に放出している危険度が高い状態です。

  • 原因不明の体調不良が続いている

特に寝室にいる時間帯や、起床時に症状が強い場合には、カビが原因となっている可能性があります。

 

今すぐできる!寝室のカビ対策5ステップ

カビ対策において重要なのは、「換気」「除湿」という日常的な清掃・予防と、「寝具管理」という睡眠環境の組み合わせです。「ステップ」と書きましたが、必ずしも順番に取り組む必要はなく、可能なら複数同時に行ってもかまいません。

1.毎日10分×2の換気を実施

カビの胞子を排出して、新鮮な空気を取り込む「換気」は、最も重要な対策です。

文部科学省は、学校環境衛生基準として二酸化炭素や一酸化炭素の濃度の基準を設けており、例えば小学校の換気は1時間あたり2.2回以上と定めています。※3

2.湿度を40~60%に保つ除湿対策

カビの繁殖を抑え、快眠を実現するための湿度管理は40~60%が目標です。寝具内も湿度は50%程度が理想的です。※4

湿度が高くなる場合には、除湿器やエアコンのドライ機能を使って除湿しましょう。また、窓際やクローゼットなど、部分的に湿度が高くなりやすい場所には除湿剤を設置して定期的に交換してください。

3.週1回の徹底清掃と除菌

カビの栄養源となるホコリや皮脂を清掃することが予防につながります。

具体的な清掃箇所は、窓のサッシ、マットレスの下、壁と寝具の隙間などです。週1回は徹底的に清掃しましょう。また、カビを除去するには、市販のアルコール消毒や、次亜塩素酸ナトリウムを含むカビ取り剤を使用すると効果的です。

4.寝具の定期的なメンテナンス

マットレスや布団はカビの温床となることがあります。寝具内の湿度を低下させておくことが重要です。布団は天日干しすることで、内部の湿度が40%程度低下し、天日干し後も低く維持できることがわかっています。こうして寝具内にカビが生えにくい状態をつくる用意識しましょう。※5

一方、マットレスは天日干しが難しい場合が多いため、週に一度、壁に立てかけて内部に風を通すほか、マットレスカバーを洗濯するなどのメンテナンスを徹底しましょう。通気性と吸湿性に優れた防カビ機能のある寝具に買い換える検討も有効です。

5.再発防止の環境づくり

カビが再び発生しない環境づくりを行いましょう。家具を壁から少し離して置く、クローゼットなどに物を詰め込みすぎない、除湿剤を設置するといった方法で繁殖しない環境に整えてください。

 

賃貸でもできる!状況別カビ対策方法

賃貸物件は退去時に原状回復の義務があるため、カビを放置したままだと退去前に思わぬトラブルになることがあります。壁紙や床材などの張り替えを勝手に行うことはできないため、賃貸物件の制約を考慮した現実的な対策を知っておくことが大切です。

賃貸物件でのカビ発見時の対処法

カビを発見した場合、次の手順で対処すると大きな問題にならずに済みます。

  1. 写真撮影:カビの発生状況を証拠として写真に収めます
  2. 報告:大家、または管理会社に速やかに連絡し、除去方法について相談しましょう。
  3. 基準の提示:国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」を参考にしてもよいでしょう。※6

工事不要でできる応急処置

大家の許可を待つ間や、原状回復を考慮して工事不要でできる応急処置を行います。上記のカビ対策ステップを参考に、カビ取りスプレーや除湿器、防カビグッズを活用してカビの胞子が飛散しないようにしてください。

引っ越しを検討すべきケース

カビによる健康被害が深刻な場合は、引っ越しも選択肢に入れなければなりません。清掃や換気を徹底しても症状が改善しない場合、カビは壁の内部や構造的な問題として発生している可能性が高いからです。特に、子どもの小児喘息や呼吸器疾患が悪化している場合は、早急に引っ越しを検討しましょう。転居先を探す際に、窓の配置などから換気が良いか、収納に湿気がないか等の確認をしっかりすることが重要です。

 

カビから健康を守るために今すぐ行動を

カビのある部屋で寝ることは、アレルギー疾患や呼吸器疾患といった深刻な健康被害に直結する健康リスクです。カビのチェックリストを参考に、ご自宅の状態を確認し、本記事で紹介した防カビのステップを実践しましょう。

特に寝具は、就寝中の汗などによって湿気が溜まり、カビが生えやすいです。通気性の良いマットレスを選んで管理する意識が大切です。

 

参考

※1 疫学:有症率・死亡数の推移https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/108/6/108_1119/_pdf

※2 日本アトピー協会 カビについてhttps://www.nihonatopy.join-us.jp/skin/shittoku/kabi.html

※3 学校施設の換気設備に関する調査研究報告書 第1章 学校施設における換気計画の基本的な考え方(1)

https://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/shuppan/04062201/002.htm

※4 快眠のためのテクニック -よく眠るために必要な寝具の条件と寝相・寝返りとの関係

https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-003

※5 寝具の真菌実態調査および手入れの効果 Effects of treatment on fungi in bedclothes

https://teapot.lib.ocha.ac.jp/record/39898/files/KJ00004828357.pdf

※6 国土交通省 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)https://www.mlit.go.jp/common/001016469.pdf