目次
監修者

松岡 雄治
地方国立大学医学部卒業後、横浜市内で初期臨床研修を経て、関東の基幹病院で勤務中。
資格:医師国家試験合格、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級
「寝不足のせいか、ふわふわする」「立ち上がるとめまいがして、吐き気や頭痛がする」。このような症状があると、ただの疲れか別の病気か分からず不安になりますよね。
ただし、 むやみに心配する必要はありません。睡眠不足が続くと、自律神経の乱れや血流の低下が起こり、めまいを引き起こすことは医学的によくある反応です。
この記事では、寝不足とめまいの関係から、今すぐできる対処法、そして早めに受診すべき危険なサインまでを順を追って解説します。落ち着いて原因を見極めましょう。
睡眠不足でめまいが起こることはある
睡眠不足や不眠に伴ってめまいが生じるのは、決して珍しいことではありません。厚生労働省のホームページでも、不眠が続くと日中の症状として「倦怠感や集中力低下、頭重」などと並び「めまい」が出現することが明記されています。
日本めまい平衡医学会の論文でも、めまいを訴える患者の約7割に睡眠の質の低下がみられると報告されています。寝不足とめまいは深く関連しているのです。※1
※1:許斐氏元,小川恭生,大塚康司,他:ピッツバーグ睡眠質問票を用いためまい疾患と睡眠障害の関連性について.Equilibrium Res 73:460, 2014
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jser/73/6/73_502/_pdf/-char/ja
不眠や寝不足の不調としてめまいは珍しくない
不眠や寝不足のときに起こる症状はさまざまです。めまいは珍しい症状ではなく、睡眠が十分ではないときに現れる代表的な症状の一つです。
【不眠や寝不足で現れうる症状】※2
- 倦怠感
- ・意欲低下
- ・集中力低下
- ・抑うつ
- ・頭重
- ・めまい
- ・食欲不振 など
※2:厚生労働省 不眠症
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-02-001
ただし全部を寝不足のせいにしてよいわけではない
一方、寝不足以外の原因で症状が現れていることもあります。すべてのめまいを寝不足のせいにして、様子をみてしまうと、重大な病気のサインを見逃してしまうことになるかもしれません。セルフケアで良いケースと注意すべきケースがあるのです。
- 睡眠をとれば回復する場合は、一時的な寝不足由来のめまいである可能性が高い
- 睡眠を十分にとってもめまいが続く場合は、別の疾患が隠れているサインである
- 「ただの寝不足」と放置せず、受診の目安(後述)を確認する
睡眠不足でめまいが起こる主な理由
睡眠不足によるめまいは、いくつかの理由が絡み合って起こります。厚生労働省の睡眠に関するガイドラインでは、睡眠に関連する不調がある場合、①睡眠習慣の問題と②睡眠障害(不眠症や、睡眠時無呼吸症候群など)の両面から考えるよう推奨されています。※3
※3:厚生労働省 健康づくりのための睡眠ガイド2023
https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf
具体的には、自律神経バランスの乱れ、血流低下、首や肩の緊張などが絡み合い、めまいや浮動感(ふわふわ感)を引き起こします。
①自律神経が乱れる
自律神経は私たちの姿勢保持にも役立っています。私たちが急な動きをしても立ちくらみなどに悩まずにいられるのは、立ち上がった時に、自律神経が即座に反応して血管収縮や心拍数で脳への血流を調整しているからです。
- 睡眠不足が続く → ストレスUP→身体が緊急事態と判断→緊張状態(交感神経優位)になりすぎる
- 自律神経のバランスが崩れる → 血圧や心拍のコントロールが不安定になる
- 立ち上がった時などに、脳への血流調整がうまくいかなくなる(起立性低血圧) → 一時的に脳虚血になって、立ちくらみのようにふわふわとしためまいを感じやすくなる
②脳や内耳への血流が低下する
「身体の傾き」を感じる感覚を平衡感覚といいます。これを可能にしているのは、主に耳の奥にある平衡感覚を司る内耳です。そのため、内耳や、そこから脳への情報伝達がうまくできないと平衡感覚が乱れてめまいなどを感じることがあります。※4
※4:日本めまい平衡医学会 めまいQ&A
https://www.memai.jp/qa/
- 睡眠不足で自律神経が不安定になる → 血管が収縮しやすくなる
- 脳や内耳(平衡感覚をつかさどる器官)への血流が一時的に低下する
- 平衡感覚の処理が乱れる → 立ちくらみやめまいが生じる
③首や肩のこりで血行が悪くなる
首回りの緊張もまためまいの原因になります。
- 睡眠不足で体の回復が不十分になる → 首や肩周りの筋肉に緊張が残る
- 首の筋肉が硬く縮こまる → 脳へ血液を送る太い血管が圧迫される
- 頭部への酸素供給が滞る → めまいや頭痛の原因になる
睡眠不足によるめまいで出やすい症状
めまいに伴う具体的な症状のパターンを知り、ご自身の状態と照らし合わせてみてください。寝不足によるめまいには、回転するような激しいものよりも、足元がおぼつかない浮遊感や、吐き気、頭痛などを伴うケースが多くみられます。自身の症状をよく見比べてみてください。それが的確な対処につながる第一歩です。
ふわふわする浮遊感のようなめまい
めまいは、大きく「回転性」と「非回転性」に分けられます。※4
睡眠不足によるめまいはぐるぐると天井や景色が回るというよりも、ふわふわした浮動性のめまいと表現されることが多い特徴があります。
- 「景色がぐるぐる回る」というより、足元が定まらない感覚が強い
- 地に足がつかないような、ふわふわとした浮遊感を覚える
- 起き上がった時や、歩き出した瞬間に立ちくらみを感じやすい
吐き気や頭痛を伴うこともある
めまいに伴って起こりうる症状を知るとともに、どこまで様子をみてもいいか知っておくとよいです。よくあるのは吐き気と頭痛です。※5
- 自律神経の乱れや血行不良の影響により、胃腸の働きが低下して吐き気をもよおす
- 首や肩の緊張が後頭部の神経を刺激し、頭痛を引き起こす
- 激しい頭痛や嘔吐を伴う場合は、別の疾患の可能性があるため受診を優先する
※5:日本神経治療学会 標準的神経治療:めまい e.頻度の高い随伴症状
https://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/memai.pdf#page=13
日中のだるさや集中力低下が重なることも多い
めまい以外の症状が重なることもあります。早めに気づくことで、早期の対処が可能になります。
- 仕事中や家事をしているときにも強い眠気や全身の倦怠感が現れる
- 仕事や家事に対する集中力が低下し、ぼんやりしてしまう
まず自宅でできる対処法
めまいを感じたとき、医療機関に行く前に自宅で安全に行えるセルフケアを実践しましょう。
厚生労働省のガイドラインでも、睡眠「環境」と睡眠「習慣」の見直しが推奨されています。まずは無理をせずに身体を休め、水分を補給し、睡眠の質を高める環境を整えることから始めましょう。
まずは横になって休み、刺激を減らす
異変に気づいた時に正しく対応することで、めまいの悪化を防ぎやすくなります。※4
- めまいを感じたら、無理に動き続けず、すぐに安全で静かな場所で横になる
- 脳への刺激を減らすため、スマートフォンの画面や明るい光を避ける
- 衣服をゆるめ、深呼吸をして心身の緊張を解く
睡眠時間は、最低でも6〜8時間を目安に確保しましょう(厚生労働省推奨)。※3
水分補給と生活リズムの立て直しを意識する
睡眠が関連するめまいの場合、翌日以降に向けた対応も大切です。
- 寝不足時は、自律神経の乱れから脱水に傾きやすいため、コップ1杯の水をゆっくり飲む
- 夕方以降のカフェイン摂取を控える
- 翌日は起床時間を大きく崩さず、朝の光を浴びて体内時計をリセットする
睡眠環境を見直して寝不足を繰り返さない
睡眠の質を根本から改善することで、めまいの再発を防ぎます。
- 季節に応じた快適な室温と湿度に設定する
- 遮光カーテンなどで寝室の光を遮断し、音も極力減らす
- 体に合わないマットレスや枕を使用していないか見直す
「寝室環境の見直し」などに関連する情報も参考にし、自分に合った睡眠環境を構築してください。
医療機関を受診するべき症状
セルフケアで改善しない場合や、危険なサインがある場合は、ためらわずに医療機関を受診してください。めまいの背景には、平衡感覚が関与する耳の病気が隠れていることがあります。例えば、過労や睡眠不足で起こりやすい「突発性難聴」は、早めの受診が重要です。以下の目安を参考に、適切なタイミングで医師に相談しましょう。
耳鳴りや聞こえにくさを伴うとき
聴覚の異常を見逃すと、聴力低下などの後遺症リスクが大きくなります。次の症状がある場合には、医師に相談しましょう。
- めまいと同時に、キーンという耳鳴りがする
- 耳が詰まったような感覚や、音が聞こえにくい症状がある
これらは、突発性難聴などの耳鼻科疾患のサインであるため、すぐ「耳鼻咽喉科」を受診してください。
数日たっても改善しないとき
自己判断を長引かせて、受診のタイミングを逸してしまうことがないように、下記を目安に対応します。
- 6〜8時間の睡眠時間をしっかり確保し、生活習慣を整えてもめまいが続く
- 数日経過しても症状がまったく軽くならない
- 睡眠障害やその他の内科的疾患の可能性があるため、内科やかかりつけ医に相談する
日常生活に支障が出るほどつらいとき
めまいだけだからと我慢してしまう方も多いですが、適切な医療介入のために、次の状態になっていないか確認しましょう。
- めまいがひどく、仕事や家事、外出が困難になっている
- 吐き気が強く、食事がとれない状態が続いている
- 特に手足のしびれや麻痺(動かしにくさ)が出ている場合には脳疾患の可能性もある ※4
症状が強くなっている場合は、無理をせずに医療機関で検査を受けることが重要です。
睡眠不足によるめまいを防ぐ習慣
めまいを一度経験したら、再発させないために予防習慣を取り入れましょう。一時的に睡眠時間を延ばすだけではなく、毎日の睡眠リズムを安定させ、夜間の脳の興奮を鎮めることが重要です。継続しやすいポイントから生活に組み込んでください。
平日と休日の睡眠リズムを大きく崩さない
睡眠負債を溜め込まないための、実践的なルールです。※6
- 平日の睡眠不足を、休日の「寝だめ」で一気に解消しようとせず毎日の睡眠時間を確保する
- 休日の起床時間は、平日と比べてプラス1時間程度にとどめる
- 毎日同じ時間に起きることで、体内時計が整い自律神経が安定する
※6:厚生労働省 良い目覚めは良い眠りから 知っているようで知らない睡眠のこと
https://kennet.mhlw.go.jp/tools/wp/wp-content/themes/targis_mhlw/pdf/guide-sleep.pdf
夜の刺激を減らして眠りやすい環境をつくる
就寝前と就寝時の行動と環境を整えることで、睡眠の質を確実に高めることができます。
- 就寝の1時間前には、スマートフォンやPCのブルーライトを避ける(ブルーライトは特に体内時計への影響が大きい)※3
- 夜になったら部屋の照明をなるべく薄暗くし、脳に夜であることを知らせる
- ぬるめのお湯で入浴し、深部体温を下げてスムーズな入眠を促す
- 寝る時には、外からの光も入らないように真っ暗にする
つらさが続くなら早めに受診しておく
残念ながら、生活改善ですべてが改善できるわけではありません。早めに、気軽に受診することでつらい時間を短くすることができます。
- 予防習慣を続けても、めまいや不眠が改善しない場合は、睡眠障害の可能性がある
- 自力で解決しようとせず、睡眠外来や内科に相談する
- 専門医の診察を受けて、必要に応じた治療を受ける
- 受診の際には、めまいの起こり方が診断のヒントになるため、どんな状況でどのようなめまいが起こるのかをメモをする ※7
※7:厚生労働省 ヘルスケアラボ めまい・耳鳴り
https://w-health.jp/woman_trouble/dizzy/
睡眠不足でめまいがするときは原因を整理し、無理せず対処することが大切
睡眠不足でめまいが起きることは、決して珍しくありません。一方で、病気が隠れていることもあるため、耳の症状や改善しないときには受診を検討しましょう。
- 寝不足とめまいは、自律神経の乱れや血流低下によって深く関係している
- ふわふわとしためまいや吐き気がある時は、まず横になって休み、刺激を避ける
- 睡眠リズムを整え、睡眠環境を見直すことが確実なセルフケアとなる
- 耳鳴りを伴う場合や、休んでも改善しない場合は、迷わず医療機関を受診する
まずは今夜、スマートフォンを手放して十分な休養をとることから始めてみてください。睡眠環境を見直すときには、関連記事も参考にするとわかりやすいです。心地よい眠りを手に入れましょう。
【メタディスクリプション】 睡眠不足でめまいが起こる理由を、自律神経や生活習慣の乱れ、関連症状の観点から整理。すぐにできる休養の取り方や睡眠リズムの見直しなどのセルフケア、病気が疑われるサイン、受診の目安までわかりやすく解説します。










