目次
監修者

松岡 雄治
地方国立大学医学部卒業後、横浜市内で初期臨床研修を経て、関東の基幹病院で勤務中。
資格:医師国家試験合格、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級
「夜中に何度も目が覚める」「眠りが浅くて朝までぐっすり眠れない」「寝たはずなのに疲れが取れない」そんな「細切れ睡眠」が続くと、不安になることもあるでしょう。
令和6年の国民健康・栄養調査では、睡眠で十分に休養がとれていない人は約2割にのぼります。
この記事では、細切れ睡眠が起こる主な原因を、ストレス、自律神経の乱れ、生活習慣、睡眠環境、身体的要因などに分けて整理します。また、今日から実践できる改善策から、専門医への受診を検討すべきサインまで解説します。
自分の睡眠が分断される要因を見極め、取り組むべきことを明確にしたい方は、ぜひ参考にしてください。
細切れ睡眠とは?
細切れ睡眠とは、夜間に何度も目が覚めてしまい、まとまった睡眠が取れない状態を指します。まずは言葉の意味と、注意したい目覚めの見分け方を整理しましょう。
中途覚醒との違い
細切れ睡眠は一般的な表現であり、睡眠中に何度も目が覚める症状は、医学的には「中途覚醒」と呼ばれます。
不眠の症状にはいくつかの分類があります。たとえば、なかなか寝つけない入眠障害や、早朝に目が覚めてしまう早朝覚醒などがあり、中途覚醒はその分類のひとつです。
「自分は不眠症かもしれない」と過度に心配する必要はありません。まずは自分の睡眠状態を正しく知り、どのようなことが睡眠を妨げているのか原因を把握することが大切です。
一時的な目覚めと注意したい目覚め
たまに目が覚める程度であれば、寝室の温度や生活リズムの影響である可能性が高いです。しかし、長く続く場合は、何らかの対策や医療機関の受診を検討してください。
特に、日中に症状が出ているかどうかは、不眠症を診断する際の目安のひとつになっています。次のような状態が続くときは、注意が必要です。
- 日中の活動に支障が出るほどの強い眠気や疲労がある
- いびきが強い、息苦しさを感じて目が覚める
- 生活習慣を見直しても、数週間以上にわたって改善が見られない
細切れ睡眠が起こる主な原因
睡眠が細切れになる原因は、ひとつとは限りません。複数の要因が絡み合っていることも多いため、自分に当てはまるものを確認して、優先的に取り組むべき対策を見つけましょう。
1. ストレスや不安による自律神経の乱れ
ストレスや不安は、睡眠を分断する要因のひとつです。
仕事や人間関係、将来への不安などで緊張した状態が続くと、交感神経が優位になり、深い眠りである徐波睡眠(じょはすいみん:脳と体を深く休める睡眠段階)に入りにくくなります。
眠りが浅くなると、些細な物音や体温の変化でも目が覚めやすくなると考えられています。
2. 加齢による睡眠リズムの変化
年齢を重ねるごとに、睡眠の質やリズムは自然と変化します。加齢にともない深い眠りが続く時間が短くなるため、夜中に目が覚める回数が増えがちです。
しかし、これは加齢による自然な変化なので、過度に心配する必要はありません。日中によく体を動かし、日光を浴びる時間を意識して取ることで、睡眠の効率を保ちやすくなるといわれています。
※出典:日本睡眠学会「高齢者の睡眠障害」
3. カフェインやアルコールなどの生活習慣
就寝前の過ごし方も、睡眠の質を大きく左右します。寝る前は主に次の3つに注意しましょう。
- カフェイン:覚醒作用があり、夕方以降に摂取すると寝つきが悪くなる
- アルコール:睡眠の質が下がりやすい
- 就寝直前のスマートフォン:強い光が寝つきを妨げる
カフェインは半減期が約4時間とされており、敏感な人は就寝5〜6時間前から控えるとよいでしょう。アルコールは深いノンレム睡眠を減らし、中途覚醒を増やすと指摘されています。
また、スマートフォンの強い光は、メラトニン(眠気を促すホルモン)の分泌を抑え、寝つきにくくする原因になります。
4. 寝室の温度や光や音などの睡眠環境
寝室の温度や光、音といった環境は、気づかないうちに睡眠の質を低下させています。そのため、次のような要素を見直すことで、眠りを妨げる刺激を減らせるでしょう。
- 温度・湿度:快適でないと、体温調節のために体が目覚めやすい
- 光:遮光カーテンなどで暗さを保つ
- 音:静かな環境を整える
- 寝具:体に合わないと寝返りが増え、眠りが浅くなる
もし心当たりがある場合は、一度、睡眠環境を見直してみましょう。
※出典:厚生労働省 e-健康づくりネット(健康日本21アクション支援システム)「快眠のためのテクニック -よく眠るために必要な寝具の条件と寝相・寝返りとの関係」
5. 夜間頻尿や睡眠時無呼吸症候群などの身体的要因
夜間頻尿や大きないびきなどの身体的なサインがあるときは、背景に疾患が隠れていることもあります。
夜間に何度もトイレで目が覚める夜間頻尿は、加齢のほか、心疾患や糖尿病などが関係している場合があります。
いびきや息苦しさをともなう場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性も考えられます。睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中に呼吸が止まることで、脳が酸素不足を防ごうとして目覚めを繰り返すことがあります。気になる症状があるときは、医療機関への相談を検討しましょう。
細切れ睡眠が続くと起こりやすい影響
睡眠が途中で途切れてしまうと、睡眠休養感が得られず、日中の生活の質に直結します。
1. 日中の眠気や集中力低下
細切れ睡眠が続くと、日中の眠気や集中力の低下を招きやすくなります。実際に、細切れ睡眠の習慣によって起こりやすい問題は次の通りです。
- 日中の強い眠気
- 集中力や判断力の低下
- 仕事や育児、運転でのリスクの高まり
十分な連続した睡眠が確保できないと、日常生活の質や安全が損なわれやすくなります。そのため、細切れ睡眠が続いている場合は十分な注意が必要です。
2. 疲労感やストレスの蓄積
睡眠時間を確保しても、細切れであれば「よく休んだ」という休養感が得られず、疲労やストレスが積み重なっていきます。
- 慢性的な疲労感がある
- 気分が落ち込みやすくなる
- イライラしやすくなる
- ストレスに対する抵抗力が下がる
細切れ睡眠は心身の健康に影響を及ぼす可能性があるため、できるだけ連続した質の良い睡眠を心がけることが大切です。
今日からできる細切れ睡眠の改善策
細切れ睡眠の改善は、生活リズムや睡眠環境を整えることから始めてみましょう。ここでは、今日から取り組める4つの方法を紹介します。
1. 起床時刻をそろえて生活リズムを整える
睡眠リズムを整えるために、まずおすすめしたいのは、毎日同じ時間に起きることです。体内時計が安定し、夜の眠りも整いやすくなります。
起床直後に日光を浴びると、体内時計がリセットされ、睡眠と覚醒のリズムが整いやすくなります。カーテンを開けて朝の光を取り入れる習慣をつけるとよいでしょう。
また、休日も起床時間を大きくずらさないことが大切です。寝だめで生活リズムが乱れると、平日の睡眠にも影響することがあります。
2. 寝る前のカフェインや飲酒やスマホを見直す
寝る前のカフェイン摂取・飲酒・スマートフォンの使用は、夜中に目が覚めやすくなる原因となります。これらの習慣は、次のように見直しましょう。
- 夕方以降のカフェイン摂取を控える
- 寝酒を控え、就寝数時間前には飲酒を終える
- 就寝前のスマートフォン利用を控え、強い光を避ける
このような工夫を実践することで、寝付きがよくなったり、夜中に目が覚めにくくなったりして、睡眠の質の向上が期待できます。
3. 寝室環境を整えて眠りを妨げる刺激を減らす
寝室環境を整えると、眠りの質を高めやすくなります。整えるときは、眠りを妨げる刺激をできるだけ減らすことを意識しましょう。
たとえば、室温や湿度を快適に保ち、光や音が入りにくい空間をつくることが大切です。遮光カーテンや耳栓を使うのも効果的です。
また、自分の体格に合った枕やマットレスを選ぶと、体への負担を減らせます。睡眠中に寝返りがしやすいような環境を整えることで、より快適な眠りにつながるでしょう。
4. 日中の活動量と昼寝の取り方を調整する
日中はこまめに体を動かし、昼寝をとりすぎないことが、夜の快眠につながります。たとえば、ウォーキングなど無理のない運動を日常生活に取り入れてみましょう。
- また、30分以上の昼寝は将来の健康リスクを高めるとの指摘もあります。昼寝をとる場合は長くなりすぎないように注意し、夕方以降の仮眠は控えることで、夜の眠りを妨げにくくなります。
年齢やライフステージ別に考える細切れ睡眠
ライフステージによって、睡眠の課題は変わります。そのため、自分の状況に合った対策を選ぶことが大切です。ここでは、睡眠が乱れやすい代表的なケースとして、高齢者・女性・育児中の3つを取り上げ、それぞれの特徴や対策について解説します。
1. 高齢者は睡眠が浅くなりやすい
加齢により、深い睡眠や睡眠時間は自然と減少します。
対策としては、日中に適度な活動を心がけ、日光を浴びる時間を増やすことが有効です。また、夜間頻尿が気になる場合は、水分をとる時間帯を調整する方法もあります。
ただし、これらの対策をやりすぎると、かえって体調を崩すこともあります。特に持病のある方は、かかりつけ医と相談しながら無理のない範囲で取り組みましょう。
2. 女性はホルモン変化で眠りが乱れることがある
女性は月経前、妊娠、産後、更年期など、ライフステージごとにホルモンバランスが大きく変動し、睡眠が不安定になりがちです。
そのため、日々の生活の中で自分の体調や心身の変化を記録し、無理のない範囲で食事や運動、就寝時間などを調整することが大切です。こうした工夫によって、体調の変化を察知し、早めに対策を取ることで症状の悪化を防げる可能性があります。
- また、症状が強くなって日常生活に大きな影響を感じる場合は、早めに婦人科などの専門医療機関へ相談することをおすすめします。適切なサポートを受けることで、生活の質をより保ちやすくなります。
3. 育児中は赤ちゃんの睡眠リズムの影響を受けやすい
育児中は、授乳や夜泣きのために睡眠がたびたび中断される時期です。そのため、「十分に眠る」ことだけにこだわりすぎる必要はありません。
睡眠不足を自分の責任だと思い詰めすぎず、まずはできる範囲で休息を取ることを心がけましょう。具体的には、次のような工夫をしてみましょう。
- 日中に短時間でも仮眠を取る
- 家族と役割を分担し、交代で休む時間を持つ
- 寝室の環境(照明・温度・騒音など)を調整する
細切れの休息や環境の調整を組み合わせることで、まとまった睡眠をとるのが難しい育児中でも、少しずつ心や体をリフレッシュできるでしょう。
セルフケアで改善しないときに確認したいこと
生活習慣を整えても改善が見られない場合や、体に不調を感じる場合は、専門機関への相談が重要です。
1. いびきや息苦しさがないか
次のような症状がある場合、睡眠時無呼吸症候群などの疾患が隠れている可能性があります。これらに当てはまる場合は、睡眠外来などでの検査を検討してください。
- 強いいびきを指摘される
- 寝ている間に呼吸が止まっている
- 起床時の頭痛や口の渇きがある(睡眠中に低酸素になっていたり、口を開けて寝ていることのサインの可能性)
2. 不眠や気分の落ち込みがないか
長期間眠れない状態が続き、気分が晴れない場合は、精神的な要因や不眠症が背景にあるかもしれません。以下のようなケースは、無理をせずに睡眠外来や心療内科、精神科に相談しましょう。
- 眠れないことへの強い不安がある
- 日常生活に支障が出るほどの気分の落ち込みがある
細切れ睡眠は原因を切り分けて改善策を選ぶことが大切
細切れ睡眠は、何かひとつの原因で起きているわけではないことが多いものです。ストレス、加齢、生活習慣、睡眠環境、身体的要因などが複合して起こるため、まずは規則正しい起床、寝室環境の整備、夜の過ごし方といったセルフケアから見直してみましょう。
一方で、いびきや強い眠気、気分の落ち込みがある場合は、無理をせず医療機関に相談することが改善への近道になります。本記事を参考に、ご自身の睡眠を丁寧に見直すことで、睡眠の質を高め、日中の生活をより快適に整えていきましょう。





