睡眠コラム by 森田 麻里子2025年5月21日読了目安時間: 7

【医師監修】寝る前にするとよく眠れる方法4選

森田 麻里子
Child Health Laboratory 代表 / 医師

医師・小児スリープコンサルタント・睡眠専門家

2012年東京大学医学部医学科卒。
亀田総合病院にて初期研修後、2014年仙台厚生病院、2016年南相馬市立総合病院にて麻酔科医として勤務。2017年の第1子出産をきっかけに、2018年より乳幼児の睡眠問題についてのカウンセリングや講座、企業と連携したアプリ監修など行っている。2019年昭和大学病院附属東病院睡眠医療センター非常勤勤務を経て、現在は大人の睡眠カウンセリングや企業向け睡眠講座も手掛ける。

「今日も疲れているのにうまく眠れない」「ベッドに入っても頭が動いている」「最近ストレスを感じている」など思ってませんか。本記事では、寝る前に行うことで睡眠の質を高める具体的な方法や習慣について解説します。寝る前のひと工夫が、翌日のパフォーマンスや心身の健康に大きく影響します。

毎日の疲れをしっかりとリセットするためには、ただ長く眠るだけではなく、質の高い睡眠を得ることが重要です。深くリラックスした状態で寝付くことで、浅い眠りや中途覚醒を防ぎ、身体が回復しやすくなります。

本記事では、寝る前にするとよく眠れる具体的なポイントをいくつか紹介しています。生活リズムの整え方や入浴のタイミング、部屋の環境作りなど、幅広い観点から取り入れやすいアイデアを紹介するので参考にしてください。日々頑張っている心と身体を労わってあげましょう。

①就寝・起床時間を一定に保つ習慣

毎日のスケジュールに合わせ、規則正しい睡眠リズムや生活リズムを作ることは良質な睡眠の土台となります。

まず、寝付く時間と起きる時間を毎日一定に保つことが、体内時計を整えるうえで欠かせません。睡眠と覚醒のリズムが乱れると、いくら寝る前に工夫をしても、睡眠の質が低下しがちです。

休日であっても平日とあまりに大きく異なる時間に起きたり寝たりすると、体内リズムが乱れやすくなります。特に、朝は朝日をしっかり浴びることで脳のスイッチを入れやすくなり、夜間の寝付きもスムーズに進むと言われています。どうしても休日に朝寝坊したい場合は、平日より1時間程度長く寝るぐらいにしておきましょう。休日の睡眠時間をより長く取りたい場合は、起床時間を遅くするだけでなく、就寝時間も同時に早めると体内時計は乱れにくくなります。

朝食を摂って身体を目覚めさせることや、昼寝をしすぎないよう調整することもリズム維持につながります。こうした基本的な生活リズムを意識するだけでも、寝る前のリラックス習慣がより効果的に働き、深い眠りを得やすくなるでしょう。

昼寝の効果と正しい取り方や注意点について詳しく知りたい方はこちらからどうぞ。

②快適な眠りを促す入浴のポイント

入浴にはリラックス効果だけでなく、体温調節をサポートする効果があり、良質な睡眠への導入にとても効果的です。

寝る前に実施するとよく眠れる習慣の一つとして、入浴時間の調整が重要視されています。体温をうまくコントロールし、リラックスすることで、自然と眠気を高めることができます。

入浴でしっかり身体を温めると、その後の体温が低下する過程で眠気が増すと言われています。この仕組みを利用して適切なタイミングや温度を選ぶことで、深い眠りへとスムーズに移行しやすくなります。

温かいお湯にゆったりと浸かることで血流が促進され、筋肉や神経の緊張がほどけやすくなります。入浴中に首や肩を軽く回したり、腕をほぐすストレッチを取り入れるのも、睡眠に適したリラックス効果を高める大切なポイントです。

寝る1時間前〜2時間前に入浴を済ませる

就寝までに体温を適度に下げられるよう、寝る1時間前〜2時間前を目安に入浴を終えるよう心がけます。深部体温が下がる時に、ヒトは眠気を感じる性質があります。

深部体温は体内時計の影響により、夜に自然と低下します。しかし、入浴することで一度深部体温を上昇させ、上がった深部体温を放熱する作用により、より深部体温が急激に下がることがわかっています。この体温の下降がスムーズにできると、心地よい眠りにつきやすくなるのです。

寝室に移るまでに少し時間の余裕があると、身体が上手にクールダウンしていき、自然な眠気を得やすくなるでしょう。

適切な温度と時間を選ぶ入浴法

お湯の温度はややぬるめの38~40℃程度が理想とされています。熱すぎるお湯は交感神経を刺激し、リラックス効果を得にくくなる場合があるので注意しましょう。

入浴時間は15~20分程度を目安に。長すぎる入浴はのぼせや肌の乾燥につながりやすいため、ほどよい時間配分を心がけることが大切です。

ぬるめのお湯にゆっくり浸かったあとは、湯船から上がると同時に急速に体温が下がり始めます。この体温変化が寝付きの良さを後押ししてくれます(※1)。

※1:簡易脳波、深部体温と遠位・近位皮膚温から見た温泉浴の睡眠への効果

入浴後の身体を温める工夫

湯冷めを防ぐために、入浴後はタオルで身体をしっかりと拭き、パジャマやリラックスできる衣服に着替えましょう。特に冬場にはソックスやスリッパを活用して冷えを防ぐことがポイントです。ただし、厚すぎるソックスは放熱を妨げるので注意しましょう。

手先や足先が冷えてしまうと、放熱が妨げられ、深部体温が下がりにくくなってしまいます。入浴後こそ暖かさを保つよう意識しましょう。

汗をかかない程度の軽いストレッチを取り入れても良いでしょう。筋肉のこわばりや血行不良を解消することで、寝床に入ったときのリラックス感をさらに高めることができます。

③リラックス効果を高める習慣

就寝前のリラックスタイムを十分にとることで、余計な緊張をほぐし、入眠をスムーズにします。

ストレスや不安感が高まった状態では、脳が興奮しやすく、なかなか寝付けないことがあります。こうした状態を和らげるためには、一日の終わりに心と身体を落ち着ける時間を設けることが大切です。

読書や日記を書くなどの穏やかな時間を作ったり、照明を暗めに抑えた部屋でゆったりと過ごすのも有効です。こうした習慣が副交感神経を刺激し、自然な睡眠モードへ移行しやすくなります。

さらにリラックス効果を高めるための工夫として、ストレッチや呼吸法などの短時間で行えるメソッドも数多くあります。自分に合ったやり方を見つけることで、日々の入眠儀式として楽しむことができるでしょう。

ストレッチやヨガで心身をほぐす

軽めのストレッチやヨガは、副交感神経を活発にし、身体の緊張をほどく効果が期待できます。特に首や肩、背中まわりを中心に動かすと血行が良くなります。

筋肉のこわばりがやわらぐと、呼吸がしやすくなり、深い呼吸を自然と行いやすくなるメリットもあります。特に胸郭や体幹の周囲をストレッチすることが効果的です。運動量をあまり増やしすぎずに、リラックスを最優先にした内容を選びましょう。

寝る前のたった数分のストレッチでも、慢性的なコリや疲労がやわらぎやすくなり、寝付きやすい状態を作り出せます。少しずつ習慣化することが肝心です。

呼吸法や腹式呼吸を取り入れる

深くゆったりとした呼吸は、リラックスした状態を維持するために有効な手段です。息を吐くときにやや時間をかける腹式呼吸を意識すると、副交感神経が働きやすくなります。

腹式呼吸とは、お腹を膨らませたりへこませたりしながら行う呼吸法で、全身に酸素が行き渡りやすくなるのが特徴です。心拍数が安定し、心地よい眠気に移りやすくなるでしょう。

スマホやパソコンなどのデバイスを見ながらではなく、なるべく静かな環境で腹式呼吸を練習するとより効果的です。

ヒーリング音楽や自然音で心を落ち着ける

音楽の持つリラックス効果は大きく、ゆったりとしたテンポのヒーリング音楽は神経の興奮を抑え、穏やかな気持ちに導いてくれます。

鳥のさえずりや小川のせせらぎなど、自然の音に身を委ねるのも有力です。このような音には、余計な思考を手放しやすくする効果があると言われています。

再生デバイスの音量は大きすぎず、心地よい程度に調節しましょう。耳障りな音量になってしまうと、逆に神経を刺激し、眠りを妨げる可能性もあるため注意が必要です。

アロマの香りを使ったリラクゼーション

就寝前にアロマオイルやディフューザーを活用することで、さらに深いリラクゼーションを得られるでしょう。ラベンダーやカモミールなど、鎮静効果があるとされる香りが特におすすめです。

匂いの好みや刺激の強さには個人差があるため、自分に合った香りを見つけることが大切です。気持ちよく感じられる香りならば、より一層心身がリラックスできます。

寝る前にすると落ち着く香りを楽しむ習慣は、思考が散らばりにくくなり、睡眠への導入をスムーズにしてくれます。

良質な睡眠をサポートするアロマオイルと効果的な使い方をもっと知りたい方は「睡眠×アロマで快眠を叶えよう!良質な睡眠をサポートする定番アロマオイル3選と効果的な使い方」も是非チェックしてください。

サプリメントの活用

サプリメントは薬ではなく健康食品の一つです。睡眠の質を高めることやリラックス効果が期待される栄養素を摂取することでスムーズに眠れる可能性もあります。特に睡眠に良いとされる科学的根拠のある成分を含むサプリメントは機能性表示食品として消費者庁に届出がされており、サプリメントを選ぶ基準として活用してください。

眠りやすい環境作り

寝室環境を整えることは、良質な睡眠に直結する重要な要素です。

身の回りの寝室環境が乱れていると、どれだけ寝る前にリラックスしても浅い眠りになりがちです。身体が安心できる空間や光の設定、温度管理などを整えるだけで眠りの質は大きく変わります。

人は光の刺激を強く受けるため、就寝前の強い光は覚醒作用を高め、メラトニンの分泌を抑制してしまいます。寝る際にはできるだけ暗い環境を作ることが重要です。

また、温度や湿度は体感的な心地よさに直結します。肌寒い、または暑すぎると感じる環境では、体温調節をスムーズに行えず、夜中に目が覚めることもあるため要注意です。

遮光カーテンや間接照明で暗い寝室を作る

外からの光が部屋に入らないよう、遮光性の高いカーテンを使用するのがおすすめです。特に街灯や車のライトが入る地域では、遮光カーテンがあると安定した睡眠を確保しやすくなります。

入浴後は間接照明でやわらかな光を取り入れるたり、照明を暖色系に変えることで、就寝前に過度に目を刺激しないことができます。強い照明は脳を覚醒しやすくするため、寝付きにくくなる原因となりがちです。

夜の時間帯にはゆったりとした光量を意識し、寝付きやすい環境を作りましょう。些細な工夫でも、睡眠ホルモンの分泌を促進する効果が期待できます。

室温と湿度を理想的に調整する

室温は約18〜22℃、湿度は50〜60%程度が理想とされています。これらの数値は体感温度が安定し、快適に眠りにつきやすい環境をつくるといわれています。

エアコンや加湿器、除湿機をうまく組み合わせることで、就寝中も温湿度を一定に保ちやすくなります。季節や天候によって調整しながら、過度な乾燥や蒸し暑さを防ぎましょう。

人によって快適に感じる温湿度には若干の差があるため、実際に眠ってみて快適な設定を探すことが大切です。

リネンや寝具を清潔に整える

シーツや枕カバーなどのリネン類は、定期的に洗濯して清潔さを保ちましょう。素材によって寝心地は大きく変化するため、自分に合った肌触りのものを選ぶことがポイントです。

寝具の汚れやダニが増えてしまうと、肌荒れやかゆみなどのトラブルにつながり、睡眠を妨げる原因となります。こまめなケアが快適な眠りには不可欠です。

高価な寝具を揃える必要はありませんが、マットレスに適切な反発力があるか、枕は自分の頭や首のカーブに合っているかなど、一度見直してみると良いでしょう。毎日の睡眠の質を整える自分に合ったマットレスを選ぶことは良質な睡眠への大切な自己投資です。

マットレスの特徴や自分に合った選び方について知りたい方はこちらからどうぞ。

避けるべき行動や見直す生活習慣

良質な睡眠を妨げる要因をなくし、根本的な生活習慣の改善を図りましょう。

いくら寝る前にするとよく眠れる工夫を行っていても、普段の生活習慣自体が乱れがちだと、本来の効果を十分に発揮できません。特に、睡眠を妨げる行動パターンは早めに見直す必要があります。

夜遅い時間に食事をしたり、スマホ画面を見続けたりといった行動は、寝付きに悪影響を及ぼします。一日の終わりは、身体と心を休めるためのクールダウンタイムと考える意識が大切です。

直前まで刺激の強い映像やゲームを続けていると、脳が興奮状態を保ったまま布団に入ることになります。こうした状態を避け、自然に副交感神経に切り替わる生活リズムを意識してみてください。

スマホやタブレットなどのデバイスを寝る1時間前にOFFにする

ブルーライトは脳を刺激し、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を抑制する働きがあります。寝る直前までスマホやタブレットを見ていると、寝付きが悪くなるだけでなく、睡眠の質も低下しがちです。

寝る1時間前になったらデバイスの電源を切り、通知やメッセージから離れる時間を作りましょう。こうすることで頭がスッキリ落ち着き、深いリラックス状態を整えやすくなります。

デバイスに依存していると感じる方は、紙の読書や音楽鑑賞、静かな瞑想などの代わりになる習慣を見つけてみるのもおすすめです。

カフェインやアルコールの摂取を控える

カフェインは覚醒作用が強く、夕方以降に摂取すると寝つきに悪影響を及ぼします。特にコーヒーやエナジードリンクの飲み過ぎは注意が必要です。コーヒーは最大でも1日4杯程度までにしましょう。より良い睡眠を取りたい場合には1日1〜2杯程度まで少しずつ減らすのがおすすめです。

アルコールは一時的なリラックス効果があるように感じられますが、実は睡眠が浅くなったり中途覚醒しやすくなるなど、睡眠の質を下げる原因となります。

お酒はビールなら500ml程度に抑え、寝る4時間前になったら終わりにしましょう。夜の飲酒が習慣化している場合には、量を減らしたりノンアルコール飲料に切り替えたりすることで、安定した睡眠を取り戻すきっかけになるかもしれません。

重い夕食や刺激物を避ける

寝る直前に食事をすると、消化器官が活発に働き続けるため寝付きが悪くなりがちです。夕食は就寝の3時間前までに済ませるのが理想といわれています。

辛い物や香辛料の効いた食事も刺激が強いため、胃に負担がかかりやすく、心拍が高まるなど覚醒状態になりやすい要因となります。

夕食をやや軽めにしておくことで、寝る前の身体が落ち着く時間を取りやすくなり、スムーズな入眠へとつなげることができます。

寝る直前の運動は避ける

軽いストレッチなどはリラックス効果が期待できるため、睡眠には良いとされていますが、ランニングや筋トレなど激しい運動は深部体温の上昇や交感神経優位になるため睡眠には悪影響です。もし運動をする場合は、寝る3時間前までに終わりにすることを目安にしてみてください。

夜に仕事をしない

夜に仕事をすると脳が覚醒モードに切り替わり、寝付きが悪くなります。脳は1日中活動しているため、夜は判断力や集中力が下がっていおりパフォーマンスが低下している状態です。そんな中仕事をしてもかなり効率が悪くなっています。もし家でも仕事をしなければいけない時は、早く寝て早く起きましょう。眠ることで脳がフレッシュになり、集中力が高い朝に仕事をすることで効率がよくなります。

まとめ:質の良い眠りを得るための実践ポイント

それぞれの習慣を少しずつ取り入れることで、無理なく快適な睡眠環境を整えていきましょう。

寝る前にするとよく眠れるポイントとして、生活スケジュールの整え方や入浴のタイミング、リラックス効果の高いストレッチや呼吸法など、多岐にわたるコツを紹介しました。どれか一つだけを集中して実践するよりも、自分に合った複数の習慣を組み合わせるほうが効果的です。

良質な睡眠を得るためには、体内時計を整え、深部体温の上昇と下降をスムーズにし、副交感神経が優位になるリラックス状態を作ることが重要です。小さな心がけの積み重ねが、徐々に大きな変化をもたらします。

また、環境作りと生活習慣の見直しは同時並行で行うと相乗効果が得られやすいでしょう。無理なく続けられる範囲で、自分のペースで取り入れてみてください。