睡眠コラム by 松岡 雄治2025年9月29日読了目安時間: 6

仕事で徹夜した翌日を乗り切る方法とは?科学的根拠に基づく対策と健康リスク

松岡 雄治
医師

地方国立大学医学部卒業後、横浜市内で初期臨床研修を経て、関東の基幹病院で勤務中。
資格:医師国家試験合格、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級

締切が迫る案件、終わらないタスク、突発的なトラブル対応―「今夜は徹夜になりそうだ」 と覚悟を決めつつも、翌日の集中力の低下や判断ミスへの恐怖が頭をよぎることはありませんか?

栄養ドリンクを片手に何とか徹夜を乗り切るのは、多くのビジネスパーソンが経験することです。しかし、徹夜は身体に深刻なダメージを与え、パフォーマンスを著しく低下させます。実は、17時間以上起きていると、飲酒運転と同等の判断力になるという研究結果もあるのです。1)

本記事では、徹夜明けの眠気や疲労を回復させるための即効性のある方法から、徹夜が常態化するリスク、そして根本的に徹夜を減らすための対策について、科学的根拠に基づいて解説します。気合いで乗り切るのではなく、戦略的に徹夜と向き合うための知識と自信を手に入れましょう。

 

徹夜が仕事のパフォーマンスに与える3つの深刻な影響

徹夜がもたらす影響は、単なる眠気や疲労だけではありません。脳や体に深刻なダメージを与え、仕事のパフォーマンスを大きく低下させることがさまざまな研究でわかっています。特に3つの深刻な影響について解説します。

1. 起床後17時間で「飲酒運転レベル」の判断力に

徹夜明けの集中力低下はあなたの想像以上のものかもしれません。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針」やNature誌の研究によると、人間が十分に覚醒して作業を行うことができるのは起床後 12~13 時間が限界といわれています。起床後15時間以上では酒気帯び運転と同じ程度の作業能率になり、起床後17時間を過ぎると飲酒運転と同じ作業能率まで低下するのだそうです。1)

これは、徹夜がもたらす認知機能への影響が飲酒と同じくらい大きいという証しであり、翌日は簡単な計算でもミスをしたり論理的思考力が低下したり、集中力の欠如から衝動的な意思決定をしてしまったりというトラブルの発生が容易に起こりえます。まずは、あなたのパフォーマンスが思っているよりも損なわれている状態だと自覚することが大切です。

2. 睡眠不足による年間20兆円の経済損失

徹夜は、個人のパフォーマンス低下に留まらず、社会全体に大きな影響を及ぼしています。米国RAND研究所の調査によると、日本の睡眠不足による経済損失は年間15〜20兆円にも上り、GDP(国内総生産)比で2.92%と先進国の中で最も深刻な症状なのです。徹夜や睡眠不足がプレゼンティーズム(職場には出勤しているものの、何らかの健康問題によって業務の能率が落ちている状況)を引き起こし、労働生産性を著しく低下させると言えるでしょう。2)3)

3. 慢性的な徹夜がもたらす生活習慣病リスク

一時的な徹夜は乗り切ることができても、慢性的な睡眠不足は体に深刻なダメージを与え続けます。睡眠不足が続くと生活習慣病のリスクが高まるというわけです。しかも日本人の約4割が1日の睡眠時間が6時間未満という実態を考えると、多くの日本人が生活習慣病のリスクにさらされていると言えます。5)

例えば、健康な人でも、十分に眠った場合と比べて睡眠不足が数日続くだけでも食欲を抑えるホルモン(レプチン)の分泌が低下し、逆に食欲を促進させるホルモン(グレリン)の分泌が亢進します。さらに膵臓から分泌されるインスリンが効きにくくなり、同じ食事をしていても血糖値が簡単に上がって肥満や糖尿病のリスクが高まるのです。血圧のコントロールも難しくなり、高血圧や心疾患などの生活習慣病の発症リスクも高めることが科学的に証明されています。6)

 

徹夜前・徹夜中・徹夜明けの時系列別対処法

徹夜を上手に乗り切るには、気合いよりも科学的な方法と戦略が欠かせません。徹夜を余儀なくされた場合の対策を時系列に沿って解説します。

徹夜前:90分仮眠法と20分パワーナップの使い分け

徹夜をすることが決まったら、まずは事前に仮眠をとりましょう。仮眠は、比較的短時間で眠気を解消し作業効率を高める方法として有効です。

  • 90分の仮眠:睡眠サイクルは90分で1セットのため、90分単位で仮眠することで、疲労の回復と集中力の維持が期待できます。
  • 20分のパワーナップ:90分の仮眠が難しい場合は、15〜20分以内の仮眠(パワーナップ)を取りましょう。脳の眠気物質であるアデノシンを一時的に減らし、集中力を回復させられます。

7)厚生労働省 睡眠のメカニズムより改変

徹夜中:カフェイン摂取のタイミングと体温調整

つらい徹夜中は、コーヒーの摂取の仕方などの工夫で乗り切りましょう。

  • カフェイン

徹夜中は眠気と戦う必要があります。カフェインは徹夜を乗り切るために有効な対策で、3時間~4時間ごとにコーヒーを1杯飲むと効果的に覚醒効果を持続させられます。カフェインの摂取上限量は個人差がありますが、総摂取量は400mg/日が目安です。

  • 体を動かす

徹夜中はストレッチをしたり、席を立って少し歩いたりして体を動かしましょう。軽い運動は血流を促進し、脳を活性化させることで眠気を払う効果があります。

徹夜明け:朝の光を浴びる最適なタイミング

徹夜明けは体内時計を整えるための行動がおすすめです。

  • 朝の光を浴びる

徹夜明けの体調を整えるために、朝の太陽の光を浴びましょう。太陽の光は体内時計をリセットさせる方法として有効です。9)

  • 食事

血糖値の急上昇((血糖スパイク)は食後の眠気やだるさを引き起こすため、徹夜明けの食事は消化の良いものや血糖値が急に上がりにくいものを選んでください。食べ物を食べた後の、血糖上昇がどのくらい上昇するかを示した指標をGI(グリセミックインデックス)値と呼び、GI[値が低いものを食べるのがおすすめです。9)

GI値が高い食べ物を摂ると、食後に血糖値が急上昇しやすいため注意してください。10)

 

徹夜を避けるための5つの時間管理術

身体に大きなダメージを与える徹夜は、基本的にはなくすことが重要です。忙しい毎日でゼロにはできなくとも、頻度を下げるための具体的な対策を取りましょう。

1. タスクの優先順位を「重要度×緊急度」で整理

徹夜に追い込まれる原因の一つは、タスク管理の調整不足です。タスクを「重要度×緊急度」の組み合わせで分類して、優先順位をつけましょう。今すぐ本当にやるべきこと、明日以降に回して今はやらなくていいことなどを見極め、徹夜を回避できる可能性を高めてください。

2. 集中力が高い時間帯を見極める

人の集中力は一日を通して一定ではありません。徹夜を避けるために、自身の体内時計とパフォーマンスの関係を理解し、最も集中力が高まる時間帯に、最も重要な仕事を行いましょう。

3. 「ポモドーロ・テクニック」で疲労を最小限に

長時間仕事を続けると集中力が低下し、疲労が蓄積します。「ポモドーロ・テクニック」で、疲労を最小限に抑えながら集中力を維持し、結果的に業務効率を上げるのがおすすめです。

ポモドーロテクニックとは、25分作業+5分休憩を1セット(1ポモドーロ)として、4セットごとに30分程度の長めの休憩を取る方法で、イタリア人のFrancesco Cirilloが提唱しました。pomodoroとはトマトの意味で、トマト型のキッチンタイマーから名付けられたものです。

4. デジタルツールを活用した業務自動化

現代は便利なデジタルツールが溢れています。タスク管理アプリやスケジュール共有ツール、定型業務の自動化ツールなどを活用し、業務を効率化しましょう。無駄な仕事を減らすことが徹夜の回避につながります。

5. チーム内での業務分担と相互サポート体制

一人で仕事を抱え込むことも徹夜の原因となりえます。チームで動いているなら、プレゼンティーズムの観点からも徹夜の発生は組織として対応すべき問題です。チームや同僚と仕事を共有して協力できるサポート体制を構築し、組織的にタスクをこなして徹夜を防ぎましょう。

良質な睡眠を確保するための環境づくり

質の高い睡眠は、あなたの体調を整える最高の方法です。徹夜を繰り返さないだけでなく、徹夜の疲れをしっかり取って毎日のパフォーマンスを高め、効率よく仕事を終わらせために、日々の睡眠の質を根本から改善することが重要です。

睡眠環境の中でも、全身を支えるマットレスは睡眠の質を大きく左右します。体の体圧分散性と通気性が優れていて、短時間でも深く眠れるマットレスを選ぶと疲労が蓄積しにくくなるでしょう。

コアラマットレスは、優れた体圧分散性と通気性で、どんな体調でも快適な睡眠環境を提供します。徹夜を乗り切るばかりでなく、徹夜をしない毎日への投資として、検討してみてはいかがでしょうか?

 

徹夜は最終手段、計画的な睡眠管理で健康と生産性を両立

https://elements.envato.com/home-office-workplace-with-keyboard-and-supplies-PF59LJ7

徹夜明けのパフォーマンスによって集中力が飲酒運転レベルにまで低下したり、生活習慣病のリスクが高待ったりすることを考えると、徹夜は身体に深刻なダメージを与える行動であることがわかりました。実際に徹夜を乗り切るためには、栄養ドリンクや仮眠といった対症療法にとどまらず、時間管理やチームワークといった仕事管理方法の根本的な調整や睡眠環境の改善を組み合わせることが重要です。

徹夜は気合いで乗り切るには無理があります。睡眠を戦略的に管理して、健康と仕事のパフォーマンスを両立させましょう。コアラマットレスは、その実現をサポートするあなたの信頼できる強力なパートナーとなります。

参考

1)厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/content/001208252.pdf

2) Hafner, M., Stepanek, M., Taylor, J., Troxel, W. M., & Christian, V. S. (2016, November 30. Why sleep matters – the economic costs of insufficient sleep: A cross-country comparative analysis. RAND(https://www.rand.org/pubs/research_reports/RR1791.html

3)厚生労働省 データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン(https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000171483.pdf

4)厚生労働省 睡眠と生活習慣病との深い関係(https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-02-008

5)厚生労働省 令和5年 国民健康・栄養調査報告(https://www.mhlw.go.jp/content/001435384.pdf

6)睡眠問題と健康リスク(https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-02-008) 

7)厚生労働省 睡眠のメカニズム(https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-002

8)厚生労働省 食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000170477.html

9)厚生労働省 健康経営セミナー(https://jsite.mhlw.go.jp/saitama-roudoukyoku/content/contents/001609463.pdf

10)厚生労働省 炭水化物(https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4h.pdf