睡眠コラム by 松岡 雄治2025年12月26日読了目安時間: 6

【医師監修】マスクして寝ると効果はある?科学的根拠と正しい方法を徹底解説

森田 麻里子
Child Health Laboratory 代表 / 医師

医師・小児スリープコンサルタント・睡眠専門家

2012年東京大学医学部医学科卒。
亀田総合病院にて初期研修後、2014年仙台厚生病院、2016年南相馬市立総合病院にて麻酔科医として勤務。2017年の第1子出産をきっかけに、2018年より乳幼児の睡眠問題についてのカウンセリングや講座、企業と連携したアプリ監修など行っている。2019年昭和大学病院附属東病院睡眠医療センター非常勤勤務を経て、現在は大人の睡眠カウンセリングや企業向け睡眠講座も手掛ける。

「エアコンで部屋が乾燥して喉の調子が悪い」「風邪をひきやすい体質なので予防策を探している」このような悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。特に冬場や季節の変わり目には、睡眠中の喉の乾燥により、朝から不快な思いをしたり、体調を崩すこともありますね。

「マスクして寝る」という基本的な対策を検討しているものの、「息苦しそう」「肌荒れが心配」「睡眠の質が下がらないだろうか」といった不安を感じるかもしれません。

睡眠は毎日のことだからこそ、正しい知識を持って、自分に合った方法を選ぶことが大切です。この記事では、マスクして寝ることのメリット・デメリット、デメリットを回避するための具体的な対処法、マスクに頼らない総合的な感染対策まで徹底解説し、睡眠環境や体質に合った最適な選択ができるようサポートします。

日本の臨床研究で証明!マスクして寝ることの3つの効果

マスクして寝る方法は、単なる民間療法ではなく、科学的根拠に基づいた効果が期待できるとされています。特に喉の乾燥を防ぎ、風邪症状を早期改善する効果が、日本の臨床研究によって報告されています。

1. 喉と口内の保湿効果で乾燥を防ぐ

マスクして寝る最大のメリットは、喉と口内の保湿効果で乾燥を防げることです。

就寝中、鼻呼吸をしていても口が開いてしまったり、口呼吸になったりして喉や口内の粘膜が乾燥するリスクは常にあります。しかし、マスクを着用すると、自分が吐き出した息に含まれる水分がマスク内に留まるため、その後吸い込む空気の湿度が高まります。呼吸によって自然に喉が保湿され、乾燥による痛みや粘膜の防御機能低下を防ぐのです。口内乾燥の軽減の副次的な効果として口臭や虫歯、歯周病予防も期待できます。

睡眠の質を保つための室内湿度基準は、睡眠に適した室内湿度は50-60%程度なのだそうです。※1

マスクをすることで、室内の空気の乾燥度合いに関わらず、口内周辺の湿度を快適な範囲に近づける効果が得られると言えるでしょう。

2. 風邪症状が2日程度早く改善する

マスクして寝ることの風邪予防における効果は、日本の臨床研究によって報告されています。

2009-2010年に日本で行われた研究では、風邪の成人72名を対象に、就寝時にもマスクを着用した群(32名)と日中のみ着用した群(40名)を比較しました。研究の結果、就寝時にもマスクを着用した群は、日中のみ着用した群と比較して風邪症候群の治癒日数が有意に短縮したと報告されています。※2

具体的には、咳と痰のスコアが6日目以降に有意に改善したとされ、喉や下気道の症状に対しても効果があることが示されました。

3. ウイルス感染リスクの低減

マスクは、ウイルス感染のリスク低減にも寄与します。マスクによる物理的なバリア効果に加え、口や喉の乾燥防止による感染予防効果も期待できます。口や喉が乾燥するとバリア機能が低下するため、ウイルス感染のリスクが高まりますが、マスクはそのリスクを低減してくれるのです。

 

マスクして寝る時の4つのデメリットと対処法

マスクをして寝ることには研究でも示された確かなメリットがありますが、デメリットや注意点もあります。デメリットの影響を最小限に抑えて快適に睡眠できるよう、デメリットの内容を正しく理解して適切な対処法を取っていきましょう。

1. 息苦しさによる睡眠の質低下

マスクが通気性の低い素材でできている場合や、顔に密着しすぎている場合、マスク内への新鮮な酸素の取り込みが妨げられて呼吸がしにくくなり、息苦しいと感じることがあります。睡眠中に息苦しい状態が続くと、脳が覚醒してしまい、深い睡眠が得られにくくなって睡眠の質が大きく低下しがちです。

睡眠の質は、寝起きに熟睡できたと感じたかどうかが重要です。厚生労働省によると、睡眠による休養を十分にとれていない人の割合は増加傾向にあり、平成30年時点で20%を超えています。※3

睡眠の質を保ちつつ、恩恵を得られるようにしましょう。

2. 肌荒れ・ニキビのリスク

長時間にわたるマスクの着用は、肌荒れやニキビの原因となることも少なくありません。マスク内の湿度が高まると、保湿に効果的な一方で雑菌が繁殖しやすい環境になり、ニキビや吹き出物が生じます。また、マスクが肌に擦れることによる摩擦も肌荒れの一因です。

3. 口呼吸の習慣化による健康リスク

マスクの着用による息苦しさや暑さなどが原因で、無意識に口呼吸をしてしまう可能性が指摘されています。特に睡眠中の口呼吸が習慣化すると、口腔乾燥から唾液による自浄作用が低下し、虫歯や歯周病のリスクが高まります。子どもの場合は顎の発達にも影響を及ぼすおそれがあります。

4. 耳への負担と顔の跡

マスクを就寝中につけると長時間の着用になるため、耳への負担が大きく顔にひもの跡がつきやすいというデメリットもあります。睡眠中は無意識に寝返りを打ち、マスクのひもが耳を圧迫したり、顔に食い込んだりしがちです。朝起きた時、耳が痛いと感じたり肌に跡がついたりして不快感につながることもあります。

 

睡眠時に適したマスクの選び方5つのポイント

デメリットを回避し、マスクして寝ることの効果を最大限に引き出すためには、マスクの選び方が非常に重要です。睡眠時の使用に特化したマスクを選ぶ際の5つの注意点を解説します。

1. 通気性の高い立体構造を選ぶ

睡眠の質を低下させないために、最も重要なのは呼吸のしやすさ、すなわち通気性です。通気性の高い立体構造のマスクは、口とマスクの間に空間を作ることで、息苦しさを軽減し、呼吸をスムーズにします。

プリーツ型よりも立体型のマスクの方が、口元の空間を確保しやすいでしょう。鼻呼吸がしやすい形状を選ぶことが、睡眠中の呼吸の負担を減らすコツです。

2. 肌に優しい天然素材がおすすめ

長時間肌に触れるマスクの素材は、肌荒れや摩擦による刺激を避けるためにも、肌に優しいものを選ぶことが大切です。シルクや綿(コットン)、ガーゼといった天然素材は、肌への摩擦が少なく、保湿性と吸湿性のバランスに優れています。特にシルクは、肌への刺激が最も少ないとされます。一方、普及している不織布は通気性や肌への摩擦が大きく、睡眠時の長時間着用にはあまり適していません。

3. 顔に合ったサイズで密着しすぎない

マスクのサイズ選びは、効果と快適性に直結します。睡眠中は無意識に寝返りを打つため、フィット感がありつつも、密着しすぎない適度なゆとりが重要です。

密着しすぎると息苦しさが増し、睡眠の質が低下します。逆に緩すぎると、保湿効果が薄れるだけでなく、寝返りでマスクが外れてしまい、効果が得られません。自身の顔のサイズを測定し、睡眠用マスクとして販売されている、長時間着用に適したゆとりのあるサイズを選びましょう。

4. 耳が痛くならない形状を選ぶ

睡眠専用マスクの中には、耳ひもを太く設計したり、耳に負担をかけない形状を採用したりしているものがあります。幅が広く、柔らかい素材(シルクなど)でできた耳ひものタイプがよいでしょう。後頭部や首元で固定するタイプは、耳が痛いというデメリットを完全に回避できます。

5. 清潔に保てる使い捨てか洗えるタイプ

睡眠中は唾液や汗でマスクが汚れやすく、雑菌が繁殖しやすい状態です。衛生面を考慮し、清潔に保てるマスクを選びましょう。

使い捨てマスクは、毎日新しいものに交換できるため最も清潔です。洗うことができるマスクは経済的ですが、毎日清潔な状態を維持するためには、予備を用意して必ず毎日洗濯・乾燥させる必要があります。

 

マスク以外で喉の乾燥を防ぐ4つの対策

マスクして寝ることは効果的ですが、息苦しさや肌荒れのリスクを完全に排除することはできません。良質な睡眠と喉の乾燥対策を両立するためには、寝室環境の改善にも取り組むことが欠かせません。

1. 寝室の湿度を50~60%に保つ

喉の乾燥対策の基本は、寝室の湿度管理です。厚生労働省が推奨する、睡眠に適した室内湿度は50〜60%です。この湿度を保つことで、粘膜の乾燥を防ぎ、ウイルスの働きを抑制し、風邪予防にも繋がります。※4

加湿器を使用して部屋全体を効率的に加湿しましょう。ただし、加湿し過ぎるとカビの原因となるため、湿度計でチェックしながら加湿すると安心です。加湿器の代わりに濡れタオルを枕元に置いたり、洗濯物を部屋干ししたりする方法もよいでしょう。手軽に湿度を上げられます。

2. エアコンの風向きと温度設定を調整

エアコンは、室内の空気を暖める際に乾燥させる最大の原因の一つです。 風が顔や喉に直接当たらないように、風向きを調整しましょう。寝室が暑すぎると、入眠時に深部体温がスムーズに下がらず、睡眠の質を低下させるおそれがあります。※4

寝具内の温度を33℃前後に保ち、快適差を高めることが特に重要です。

3. 就寝前の水分補給と喉のケア

就寝前の簡単な水分補給と喉のケアも乾燥対策に有効です。就寝前にコップ一杯の温かい飲み物(カフェインを含まないもの)を飲むことで、喉を潤し、体を内側から保温できます。

飲む前には水などでうがいをしておくと、喉の粘膜に付着したウイルスやホコリを取り除く効果が期待できるとも言われています。

4. 鼻呼吸を促す寝姿勢と寝具選び

口呼吸による問題は、口の中の乾燥だけではありません。仰向けで口を開けて寝ると、舌の根元が気道を塞ぐように沈みこみ、空気の通りを悪くしてしまいます。鼻呼吸を促すためには、横向き寝が有効です。気道を確保しやすく、いびきや口呼吸を軽減する効果が期待できます。

また、寝姿勢を安定させるために重要なのは寝具選びです。横向き寝で首や背骨が一直線になるように、枕の高さを調整しましょう。マットレスも柔らかすぎると肩や腰が沈みやすく、逆に硬すぎると肩や腰に負担がかかって寝返りが増え、どちらにしても睡眠の質が低下してしまいます。体圧分散と寝返りサポートに優れたマットレスを選ぶことが、睡眠の質を高めるためにも重要です。

 

マスクして寝ることは科学的に効果あり!自分に合った方法で快適な睡眠を

マスクをして寝ることは、日本の研究で風邪症状の早期改善に効果があることが報告されています。特に喉の乾燥や痛みに悩む人にとって、大きなメリットがあります。

しかし、一方で息苦しさによって睡眠の質が低下したり、肌荒れ、口呼吸の習慣化といったトラブルにつながる可能性があるのも事実です。これらを回避するには、通気性の高い素材や形状のマスク選びと、寝室環境の改善が不可欠です。

寝室環境を改善することは、個人の健康問題の解決だけに留まりません。アメリカのRAND研究所の試算では、日本の睡眠不足による経済損失は約20兆円にものぼるとの結果が出ています。国の経済指数にも影響があるということです。※5

本記事で紹介した対策とポイントを意識して、自分に合った方法で、今夜からマスクを正しく活用してみましょう。そして睡眠の質を高めるよう、寝室環境を整えることも意識してみてください。

 

参考

※1 厚生労働省 快眠のためのテクニック -よく眠るために必要な寝具の条件と寝相・寝返りとの関係

https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-003

※2 睡眠時マスクによるかぜ症状の軽減効果 川本 将浩

https://www.jstage.jst.go.jp/article/stomatopharyngology/24/2/24_2_129/_pdf

※3 厚生労働省 睡眠に関するこれまでの取組について

https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001126766.pdf

※4 厚生労働省 快眠のためのテクニック -よく眠るために必要な寝具の条件と寝相・寝返りとの関係

https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-003

※5 Hafner, M., Stepanek, M., Taylor, J., Troxel, W. M., & Christian, V. S. (2016, November 30). Why sleep matters ー the economic costs of insufficient sleep: A cross-country comparative analysis. RAND.

https://www.rand.org/pubs/research_reports/RR1791.html