目次
監修者

本多 洋介
群馬大学医学部卒業。
伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院(いずれも循環器内科)を経て、Myクリニック本多内科医院院長。
- 免許・資格
総合内科専門医、循環器内科専門医、日本心血管インターベンション学会専門医、軽カテーテル的大動脈弁植え込み術指導医(Sapienシリーズ、Evolutシリーズ)
夜寝ているとき、自分や家族の体が突然ビクッと動いたり、ピクピクと痙攣するように見えて不安になったことはありませんか?見ている人が、「てんかん発作ではないか」「危険なサインかも」と心配になる一方で、眠っている人は気づかないことも多く、どう判断すべきか難しいケースもあります。
特に、繰り返し起こったり、動きが大きかったりすると、放置してよいのか病院に行くべきか迷うだけでなく、本人の睡眠の質を下げたり、日中のだるさにつながったりしかねません。
この記事では、寝ているときに起こる痙攣・ピクッとした動きの代表的な原因をわかりやすく整理し、危険性が高いケースとそうでないケースの見分け方を解説します。睡眠時ミオクローヌスや周期性四肢運動障害、てんかんなど、よく検索される症状との違いもわかりやすく説明します。
本記事を参考に、自分や家族の睡眠中に起きている現象を整理し、安心して眠れる環境づくりを実践しましょう。
寝ている時に痙攣が起こる主な原因
寝ている時に起こる痙攣やピクピクという不随意運動(意図しない動き)は、主に以下の3つのパターンに分類されます。
- 入眠時ミオクローヌス(生理的現象としてみられることが多い)
- 周期性四肢運動障害(睡眠関連運動障害)
- 睡眠関連てんかん(発作性疾患)
多くは生理現象である「入眠時ミオクローヌス」ですが、他に、疾患(病気)に分類される原因として「周期性四肢運動障害」と「てんかん」があります。
入眠時ミオクローヌス
入眠時ミオクローヌスとは、寝ている時(特に寝入りばな)に体がビクッと一瞬大きく動く現象です。ミオクローヌスとは、「筋肉」を意味する「ミオ」と「ビクッと動く、痙攣する」を意味するクローヌスに由来する医学用語です。
入眠時ミオクローヌスは、脳が入眠する際の切り替えの過程で、筋肉が反射的に収縮して起こりますが、生理的現象で危険性は低く、成人の7割が経験すると言われるほど一般的なものです。※1
疲労の蓄積、睡眠不足、ストレス、就寝前の刺激(カフェイン・アルコール等)があると起こりやすくなります。
周期性四肢運動障害(PLMD)
周期性四肢運動障害(PLMD)は、睡眠中に手脚が反復的に動く睡眠障害です。痙攣は、20〜40秒間隔で繰り返し、腕や脚がピクピク動きます。眠っている本人は短時間だけ目覚めることもありますが、基本的には気づかず、一緒に寝ている人が気づくケースが多いことが特徴です。自覚できない一方で、睡眠の質は低下し、日中の眠気や生活の質の低下につながる可能性があります。※2
睡眠関連てんかん
てんかんとは、脳の神経細胞が過剰に興奮してしまう病気です。発作を起こす部位によって症状が変化します。てんかん発作の中には、睡眠と関連して起こるものとして睡眠中に70%以上と高い割合で起こるてんかん(睡眠てんかん)があり、全てんかんのうち1〜3割を占めます。
睡眠関連てんかんによる痙攣発作として見られる運動は、手足に力が入ってピンと伸ばした状態になったり、手足は複雑な運動をして身をよじるようにしたりとさまざまです。※3
寝ているときの痙攣で注意したい症状
睡眠中の動きがすべて危険というわけではありません。「医療的に注意が必要な痙攣」を見分けるにはいくつかのポイントがあります。発作の持続時間、意識の変化、付随症状、発生パターンに注目しましょう。
すぐに医療機関へ相談したい症状
以下に当てはまる場合には、早めに医療機関へ相談してください。呼吸ができていないケースなど、救急要請を含めた緊急性の判断が必要なこともあります。※4
- 持続性の長さ:5分以上続く
- 意識障害:呼びかけに反応しないなど
- 付随症状:舌を噛む、嘔吐、失禁(尿や便を漏らす)などの症状が痙攣とともにある、あるいは熱がないのに痙攣する
- 反復性:短時間で何度も全身の発作を再現性をもって繰り返す
- 発生時間帯:てんかん発作はノンレム睡眠で多く、レム睡眠では起こりにくい
大人の場合は脳神経内科、てんかん専門医が在籍する医療機関、睡眠専門外来などで相談できます。
子ども・乳児の症状で注意したいこと
乳児の睡眠中のぴくつきは、保護者が不安になってしまう症状のひとつです。睡眠時ミオクローヌスなどの経過観察でよいものも含まれます。ただし、乳児では痙攣性疾患(例:点頭てんかんなど)や、発熱に伴う痙攣(熱性けいれん)などとの識別が必要です。発熱、意識の変化、長い持続、反復が強い場合は小児科で相談してください。
睡眠中の痙攣でご心配の方へ。記事で詳しく解説されているように、多くは入眠時ミオクローヌスという生理的な現象で、成人の7割が経験する一般的なものです。
ただし、以下の症状がある場合は早めの受診が必要です:5分以上続く、呼びかけに反応しない、舌を噛む・嘔吐・失禁を伴う、短時間で何度も繰り返す。これらはてんかん発作など医学的介入が必要な状態の可能性があります。
受診時には、スマートフォンで撮影した動画が非常に有用です。全身が映るよう撮影し、発生時刻や直前の状況もメモしておきましょう。
入眠時の単発的な動きであれば、睡眠環境の改善や規則正しい生活リズム、就寝前のカフェイン・アルコールを控えることで軽減できます。不安を抱え込まず、適切に対処していきましょう。
体のピクつきが気になるときに見直したい生活習慣
体のピクつきが気になるときは、睡眠不足や疲労が続いていないか、日頃の生活を振り返ってみましょう。生活習慣や寝室環境の見直しは、十分な睡眠と休息をとるための工夫です。症状が続く場合や、呼びかけへの反応などに異変がある場合は、生活習慣だけで対処せず医療機関へ相談してください。
ストレスや疲労をためない
忙しい日が続くときは、休息の時間を確保しましょう。寝る直前まで仕事や家事を詰め込まず、入浴や軽いストレッチなど、落ち着いて過ごせる時間をつくるのも一つの方法です。
就寝前の激しい運動は控え、体に負担の少ない過ごし方を選んでください。
睡眠時間と生活リズムを整える
毎日の起床時刻をなるべくそろえ、必要な睡眠時間を確保しましょう。睡眠を妨げることがあるため、夕方以降のカフェインや、寝酒の習慣も見直してみてください。※6
眠りやすい寝室・寝具を整える
寝室の明るさや温度、寝具の寝心地を調整し、眠りやすい環境を整えましょう。厚生労働省は、首や肩に無理のない枕や、体への負担が少ない姿勢を保てるマットレスなどを選ぶことを勧めています。※5
暑さ・寒さや蒸れが気になる場合は、寝具の厚さや素材、室温を調整してください。室温と布団の中の温度は異なるため、数値だけにこだわらず、快適に眠れる状態に合わせましょう。
受診に役立つ症状の記録方法
痙攣やピクつきの様子を記録しておくと、受診時に医師へ伝えやすくなります。可能な範囲で、次の項目をメモしましょう。
- 頻度・発生時間帯:寝入りばなか、睡眠の途中か、週に何回起こるか
- 持続時間:一瞬で終わるか、どのくらい続くか
- 呼びかけへの反応:声をかけると反応するか、目を覚ますか
- 動きの特徴:体のどこが動くか、毎回同じ動きか
- 伴う症状:舌を噛む、嘔吐、失禁、呼吸の異常、発熱などがあるか
家族がその場にいる場合は、スマートフォンで動きの様子を撮影しておくと、診察の参考になります。顔・手足・体幹がわかるよう全身を写し、発生時刻や直前の状況(飲酒、睡眠不足、発熱など)も記録してください。
ただし、撮影のために受診や必要な対応を遅らせないようにしましょう。
まとめ|寝ているときの痙攣は症状を確認し、必要に応じて相談を
寝ている時の危険な痙攣と生理的な痙攣を見分けるためのポイントを解説しました。
数十秒以上続く、意識の変化を伴う、舌を噛む・失禁などの付随症状がある、短時間に反復する場合は、てんかん発作などを含む病気ではないか確認するために受診が必要です。
痙攣の原因によっては、生活習慣や睡眠環境を改善することで痙攣が起こる頻度が下がることもあります。生活習慣や睡眠環境を改善しても痙攣の状態に変化がみられない場合も、早めの受診を検討してください。
不安を抱えたままにせず、自宅でできるセルフチェックとセルフケアを行い、必要であれば専門医に相談して、よりよい睡眠を実現していきましょう。
参考
※1 Walters AS. Clinical identification of the simple sleep-related movement disorders. Chest. 2007 Apr;131(4):1260-6.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17426241/
※2 MSDマニュアル 周期性四肢運動障害(PLMD)およびレストレスレッグス症候群(RLS)
※3 成人における睡眠中のてんかん発作 神 一敬 臨床神経生理学 48巻1号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscn/48/1/48_40/_pdf/-char/ja
※4 MSDマニュアル けいれん性疾患
※5 厚生労働省 快眠のためのテクニック
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-003
※6 厚生労働省 健康づくりのための睡眠ガイド2023
https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf
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