睡眠コラム by 松岡 雄治2025年10月29日読了目安時間: 8

【医師監修】夜中にうなされる原因と今すぐできる5つの改善法|医学的根拠に基づく睡眠改善

目次

監修者

松岡 雄治
医師

地方国立大学医学部卒業後、横浜市内で初期臨床研修を経て、関東の基幹病院で勤務中。
資格:医師国家試験合格、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級

夜中に突然うなされて目が覚める、パートナーから「昨夜うなされていたよ」と言われる。このような経験はありませんか?睡眠中にうなされることは、単に悪夢を見ているだけでなく、日々のストレスや自律神経の乱れ、睡眠環境の問題など、様々な要因が複雑に絡み合って起こる現象です。

特に現代社会で働く大人において、慢性的なストレスや不規則な生活リズムが原因となり、睡眠の質が著しく低下している可能性があります。厚生労働省の令和5年の調査によると、睡眠で休養が取れていると感じている人は約4人に1人程度しかおらず、さらに日本人の約10人に1人(10%)が慢性的な不眠状態にあることがわかっています。1)

夜中にうなされることで十分な休息が取れず、日中の集中力低下や疲労の蓄積につながり、さらにはパートナーや家族の睡眠も妨げてしまうという悪循環に陥っていないでしょうか。

本記事では、睡眠中にうなされる5つの主要な原因について、最新の医学的根拠に基づいて詳しく解説します。さらに、それぞれの原因に対応した今すぐできる5つの改善策と、うなされている人を見つけた場合の適切な対処法をまとめました。質の高い熟睡を取り戻すためのロードマップとしてぜひ活用してください。

うなされるとは?睡眠中の症状と身体への影響

うなされるという症状は、医学的には睡眠時随伴症(すいみんじずいはんしょう)に含まれる現象で、睡眠中に苦痛を伴うような声や体動が現れる状態を指します。具体的にはうめき声、心拍や呼吸の乱れ、発汗などの症状が現れることがあります。2)

睡眠時随伴症は、睡眠中に起こる異常な行動や体験を特徴とする病気です。3)

レム睡眠中に起こる「うなされる」メカニズム

うなされる現象の多くは、レム睡眠(浅い眠り)中に脳が興奮して起こると考えられています。レム睡眠は、脳が活発に活動し、夢を見る睡眠の段階です。実際、ある研究によるとレム睡眠から覚醒させた場合、夢を見ていたと話す割合は80%と言われています。4)5)6)

強いストレスや不安があると、レム睡眠中にそうした感情を反映した悪夢として現れ、これがうめき声や叫び声となって表出しうなされていると認識されるのです。

特にレム睡眠行動障害の場合は、本来レム睡眠中に弛緩しているはずの筋肉がうまく弛緩されていないため、夢の内容に反応して実際に体が動く症状が現れます。7)

うなされることで起こる日常生活への影響

夜中に何度もうなされることで睡眠が断片化されると、熟睡感が得られず、日中の生活にも深刻な影響が出る可能性があります。

  • 睡眠不足による疲労の蓄積:睡眠の質が低下し、たとえ睡眠時間を確保しても、朝起きた時に疲れが取れていない状態が続きます。
  • 集中力とパフォーマンスの低下:日中の眠気や注意散漫を招き、仕事や学業でのミスが増えるリスクが高まります。不眠症の重症度が高まるほど生産性が顕著に下がることも報告されています。8)
  • 自律神経と精神の不安定:睡眠不足は情動不安定と関連し、些細なことでイライラしやすくなるなど、精神的にも悪影響を及ぼします。

個人における悪影響が積み重なれば、国全体としても悪影響を受けてしまいます。日本における睡眠不足による経済損失は20兆円と試算されています。

これは米国のシンクタンクRAND研究所が2016年に報告した調査で、睡眠時間6時間未満の日本の労働者が適正な睡眠時間と考えられる7〜9時間を取るようになった場合に、約20兆円の経済損失を防ぐことができると報告したものです。8)

 

うなされる5つの主な原因|最新医学研究でわかったこと

うなされる現象は、何かひとつの原因で起こるというよりもむしろ心・体・環境の要因が複合して引き起こされることがほとんどです。

1. 日常的なストレスと精神的プレッシャー

うなされる原因としてまず考えられるのは、ストレスと悩みです。厚生労働省の調査では、睡眠不足の理由として約3人に1人(29.1%)が挙げたのが、「悩みやストレス」でした。9)

ストレスがあると、身体は自然と興奮状態に入り、ストレスを乗り越えようとします。自律神経のうち興奮を司る交感神経を活性化して、脳を興奮させます。睡眠中にストレスホルモン(コルチゾール)の放出が増えると、身体が休息できず、浅い眠りが続きます。さらにレム睡眠中に、悪夢として日中のプレッシャーが再現され、うめき声や叫び声となります。

仕事や人間関係の悩みが多い、働く世代によく見られる原因です。

2. 自律神経の乱れと不規則な生活習慣

生活習慣の乱れ、趣味などによる夜更かしは、自律神経を乱し、睡眠の質を低下させます。厚生労働省の調査では、全体の約4〜5人に1人(22.2%)が睡眠不足の原因として挙げています。9)不規則な生活は体内時計を狂わせ、本来寝るべき夜に交感神経が優位な状態(活動状態)をつくります。これにより、睡眠が不安定になり、質の悪い睡眠によってうなされる頻度が高まります。

3. アルコール・カフェインなど嗜好品の影響

就寝前の嗜好品は睡眠の質を低下させ、悪夢を誘発します。

寝る前のアルコール(寝酒)は入眠を早めますが、その後の睡眠の質を著しく低下させます。入眠してすぐのレム睡眠(浅い眠り)を抑制しますが、反動で後半のレム睡眠の割合が増えて夜中に目が覚めたり、悪夢をみたり、うなされたりといった現象を誘発します。また、アルコールは喉の筋肉を緩めるため、いびきや無呼吸の原因にもなることでも睡眠の質を下げることが知られています。カフェインには覚醒作用により深い眠りを妨げます。

4. 睡眠環境の問題(不適切な寝具・室温・騒音)

寝具や寝室の環境が合っていないと、無意識のストレスとなりうなされる原因となります。

  • 寝具:マットレスが柔らかすぎたり、硬すぎたりすると、寝姿勢が崩れて気道を圧迫し、息苦しさやいびきが発生するほか、寝返りを妨げて睡眠の質を低下させてしまいます。こうした不快感が脳を覚醒させ、うなり声や叫び声を引き起こす原因となります。
  • 室温:暑すぎても寒すぎても睡眠の質が低下してしまいます。
  • 騒音:騒音があると睡眠の質が下がってしまいます。

5. 潜在的な病気(レム睡眠行動障害・睡眠時無呼吸症候群)

頻繁にうなされる場合は、以下の病気が潜んでいる可能性があります。

  • レム睡眠行動障害:夢の内容に合わせて叫ぶ、殴るなど激しい体動を伴います。これはパーキンソン病の前駆症状として知られています。レム睡眠行動障害を発症すると10年以内にパーキンソン病などの病気を発症する確率が非常に高くなります。10)
  • 睡眠時無呼吸症候群(SAS):呼吸が停止する無呼吸発作により睡眠が浅くなることで、うめき声やうなり声が増えます。また、息苦しさから悪夢を見ることも増えます。 

今すぐできる!うなされるのを改善する5つの方法

うなされることの根本原因に対応した実践的な改善法を提示します。

 

1. ストレス解消法:就寝前のリラクゼーション習慣

ストレスでお悩みの場合、まずはこれから試してみましょう。きっといくらか穏やかな気持ちで寝付くことができるようになるはずです。

  • 呼吸法:腹式呼吸や4-7-8呼吸法など、深呼吸を繰り返し、副交感神経を優位にします。
  • 入浴:就寝1〜2時間前にぬるめのお風呂に浸かると、一度上がった体温が下がることで自然な眠気を促すことができます。10)
  • 瞑想:不安や考えごとから意識を解放して、脳を休息させます。

関連記事:睡眠の質を劇的に改善する呼吸法5選

2. 生活リズムの整え方:規則正しい睡眠習慣の確立

生活リズムを整えることは、睡眠習慣を整えることに他なりません。「規則正しい生活」の具体的な実践方法について解説しましょう。

  • 起床時間の固定:平日・休日を問わず、毎日同じ時間に起きることで、体内時計を狂わせることなく、安定した睡眠リズムを作ります。
  • 睡眠時間の確保:成人は6~8時間の睡眠時間を目安として確保しましょう。

3. 睡眠環境の最適化:寝室を快眠空間にする工夫

睡眠の質が低下していると心当たりがある場合、睡眠の質を効率よく高めることができる方法は睡眠環境の最適化です。

  • 寝具の見直し:体を直接包む寝具は睡眠の質に直結します。体圧分散性に優れたマットレスを選び、自然な寝姿勢を実現することで物理的なストレスを解消します。また、通気性も重要です。寝床の湿度が高くなると発汗による放熱がうまくいかず寝苦しくなってしまいます。11)
  • 室温・湿度:室温は13〜29℃の範囲内に、湿度は40~60%を目安に調整しましょう。寝具内の温度は33℃前後が最適とされています。11)12)
  • 遮光・防音:夜には部屋を暗くして、寝室はできるだけ暗く静かに保ちます。個人差はありますが、部屋の照明程度の明かりでも睡眠を促すメラトニンというホルモンの分泌を妨げることがあります。

4. 食事・運動習慣の見直し:身体から整える睡眠改善

食事や運動習慣の問題に心当たりがある場合、これらを最適化しましょう。

  • 夕食のタイミング:就寝2時間前までに食事を済ませ、消化活動が睡眠を妨げるのを防ぎます。12)
  • 運動:日中の適度な運動は夜の睡眠を深くします。ただし、寝る直前の激しい運動は交感神経を活性化させて睡眠の質を下げるため、運動は就寝3時間前までに終えるようにしましょう。

5. 専門医への相談タイミング:こんな症状は要注意

セルフケアで改善しない場合や、以下のような場合は、ぜひ睡眠外来や精神科などを受診し、専門医の診察を受けましょう。

  • 眠れない(寝入りに時間がかかる、夜中に何度も目が覚める、朝早くに目が覚める)
  • 大きないびき、寝ているときに息が止まる、息苦しくて何度も目が覚める。
  • 日中の耐えがたい眠気、疲労、集中力の低下で仕事に支障が出ている。
  • 叫ぶ、暴れるなど体動を伴う激しいうなり声がある。前述したレム睡眠行動障害の症状に心当たりがある。

 

うなされている人を見つけたときの適切な対処法

普段静かに寝ている家族やパートナーがうなされているのを見つけたときは、驚くかもしれませんが、以下の手順で冷静に対処しましょう。

安全に起こす方法と声かけのポイント

  • 決して揺り起こさない:睡眠中の脳はすぐにははっきりと覚醒することができないため、急に起こすとパニックになることがあります。
  • 優しく声をかける:「大丈夫だよ」「ここにいるよ」と落ち着いたトーンで優しく声をかけ、安心感を与えます。
  • 安全確保:周囲の危険物を片付け、特にレム睡眠行動障害の場合は怪我をしないように静かに見守ります。

また、ポイントは「必ずしも起こす必要はない」ということです。起こすことで睡眠不足になり、さらなる症状の増悪を招くおそれもあります。危険がないように周囲を整理して、翌日本人に伝えて睡眠習慣の改善から始めてみるのもおすすめです。

記録をつけて専門医と共有する重要性

  • 記録の内容:症状の頻度、時間、内容(叫び声、うめき声、体動の有無)を詳しく記録します。動画を撮影してもよいでしょう。
  • コアラマットレスの振動対策:本人の睡眠の質を改善するほかにも、マットレスは有効です。うなされることによる体動や振動がパートナーの睡眠を妨げる場合、コアラマットレスの「ゼロディスターバンス®(振動吸収)」技術が役立ちます。パートナーの安眠を守るためにも、寝具の見直しを検討しましょう。

 

まとめ:うなされる悩みから解放されて、質の高い睡眠を取り戻すために

睡眠中にうなされる症状は、ストレスや睡眠不足のサインであることが多いです。放置すると心身の健康や日中のパフォーマンスに深刻な影響を及ぼします。

うなされることを根本から改善するためには、生活習慣の見直しと睡眠環境の最適化が不可欠です。特に、身体を支えるマットレスは正しい寝姿勢を維持し、快適な状態を提供し続けることで睡眠中のストレスを大きく軽減します。

コアラマットレスは、体圧分散性と通気性に優れ、深い眠りをサポートします。うなされる不安から解放され、質の高い安眠を取り戻すために、今からできる第一歩を踏み出しましょう。

FAQ

Q.うなされている人を見つけたら起こした方がいいですか?

A.必ずしも起こす必要はありません。特に急に揺り起こすのは避けてください。意識が混乱してパニックになることがあります。安全を確保し、優しく声をかけるか、静かに見守るのが適切です。

Q.夢を見ていないのにうなされることはありますか?

A.夢を見ていなくてもうなされる可能性はあります。夢をよく見るレム睡眠だけでなく、比較的夢を見ないとされる深い眠りのノンレム睡眠の段階でもうめき声や叫び声が出ることがあります。しかし、ノンレム睡眠中にも夢をみることがあり、その夢はレム睡眠でみる夢より不明瞭といわれています。たとえノンレム睡眠中にうなされている人を起こしても、実際に夢を見ているかはわからないかもしれません。

Q.夜中にうなされて叫ぶのは病気の可能性がありますか?

A.激しい叫び声や暴力的な体動を伴う場合は、レム睡眠行動障害や他の睡眠障害の可能性が高いです。一度、専門医の診察を受けてください。

 

参考文献

1)厚生労働省 令和5年 国民健康・栄養調査

https://www.mhlw.go.jp/content/001435384.pdf) 

2)厚生労働省 睡眠時随伴症

https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/heart/yk-025

3)国立精神・神経医療研究センター 睡眠時随伴症

https://www.ncnp.go.jp/nimh/sleep/sleep-medicine/parasomnia/index.html

4)日本睡眠学会 睡眠と夢

https://jssr.jp/sleepandsociety3

5)Dement W, Kleitman N. The relation of eye movements during sleep to dream activity: an objective method for the study of dreaming. Journal of Experimental Psychology 53, 339-346, 1957.

6)Roffwarg HP, Dement WC, Muzio JN et al. C. Dream imagery: Relationship to rapid eye movements of sleep. Arch Gen Psychiatry 7(4), 235-258, 1962.

7)A pontine-medullary loop crucial for REM sleep and its deficit in Parkinson’s disease

https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(24)00975-9?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS0092867424009759%3Fshowall%3Dtrue

8)株式会社NTTデータ経営研究所 【前編】日本人の睡眠は足りていない?

https://www.nttdata-strategy.com/knowledge/reports/2024/241125/

9)厚生労働省 睡眠不足の理由

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/hftyosa/hftyosa00/kekka10.html

10)厚生労働省 健康づくりのための睡眠ガイド2023

https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001181265.pdf

11)国立精神・神経医療研究センター 温度、湿度と睡眠

https://www.ncnp.go.jp/hospital/guide/sleep-column21.html

12)厚生労働省 解説書 良い目覚めは良い眠りから 知っているようで知らない睡眠のこと

https://www.horiclinic.org/wp-content/uploads/2023/09/guide-sleep.pdf