目次
監修者

松岡 雄治
地方国立大学医学部卒業後、横浜市内で初期臨床研修を経て、関東の基幹病院で勤務中。
資格:医師国家試験合格、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級
布団に入ると鼻が詰まり、口で息をしながら寝つくまで時間がかかると、つらく感じるものです。
寝るときの鼻づまりは、上半身を少し起こすなどの寝姿勢の工夫や、寝室の乾燥・ダニ対策で楽になる場合があります。ただし、毎晩くり返す場合は、鼻炎などの病気が隠れていることもあるため、注意が必要です。
この記事では、横になると鼻が詰まる理由と眠れないときの対処法、鼻づまりを防ぐ寝室や寝具の整え方を解説します。夜の鼻づまりに悩まずに休みたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
寝る時に鼻が詰まるのはなぜ?
寝るときに鼻が詰まるのは、横になると鼻の粘膜に血液がたまりやすくなるためと考えられています。鼻の内側には、血液をためられる血管(静脈洞)が発達しており、そのふくらみ具合で空気の通りやすさが変わります。
横になると頭部の静脈の圧が高まり、鼻の粘膜に血液がたまって、ふくらみやすくなります。その結果、空気の通り道が狭くなり、鼻水が多くなくても鼻が詰まったように感じることがあるのです。
また、鼻の血管の広がり方は自律神経によっても調節されており、血管を収縮させる交感神経の働きが変わることも、鼻の通りに影響します。
横になると鼻づまりが強まることは以前から知られており、とくに鼻炎のある人で変化が大きいと報告されています。
実は健康な人でも、数時間おきに左右の鼻粘膜が交互に膨らんだり縮んだりする「nasal cycle(交代性鼻閉)」という生理現象が起きています。このときにアレルギー性鼻炎などで粘膜全体が腫れていると、このサイクルによって「寝る時だけ片方だけが極端に詰まる」「時間によって詰まる側が入れ替わる」といった現象として感じられます。一時的に詰まっている側を上にして寝るのは有効ですが、根本の腫れを引かせる治療が大切です。
口呼吸で寝続けるとどうなる?
鼻づまりで口呼吸が続くと、のどが乾燥して痛んだり、眠りが妨げられたりすることがあります。鼻には吸い込んだ空気に湿り気を加える働きがありますが、口で息をするとこの働きを通さずに空気が入るため、朝に口やのどが乾きやすくなります。
また、鼻づまりはいびきの原因にもなり、夜中に目が覚めるなど、睡眠に影響する場合があります。鼻づまりが続くと、かぜを引きやすくなったり、集中しにくくなったり、疲れやすくなったりすることもあります。子どもの場合は、学業や成長への影響にも注意が必要です。
鼻が詰まって眠れないときの対処法
鼻が詰まって寝つけないときは、上半身を少し起こす、詰まっている側を上にして寝るなど、呼吸が楽になる姿勢を試してみましょう。鼻に入った花粉やホコリが気になるときは、洗い流す鼻洗浄という方法もあります。
1. 上半身を少し起こして寝る
横になると鼻づまりが強くなる場合は、頭から上半身までを少し起こすと、呼吸が楽になることがあります。平らに寝ると、鼻の粘膜が腫れやすくなるためです。
クッションを使う場合は、背中から頭までがゆるやかな傾斜になるように支えましょう。頭だけを高くすると首が曲がりやすいため、あごが胸に近づきすぎていないかも確かめてください。
ただし、角度が高ければよいわけではありません。鼻で息がしやすく、首や背中に痛みや窮屈さが出ない位置や厚みに調整しましょう。
2. 詰まっている側を上にして寝る
片側の鼻が詰まっているときは、その側を上にして横向きになると、通りやすく感じることがあります。たとえば右の鼻が詰まる場合は、左側を下にして寝てみましょう。
横向きになると、下側の鼻の粘膜がふくらみ、上側より空気が通りにくくなる傾向があります。
なお、寝返りを打っても同じ側だけが詰まる状態が続くなら、鼻の仕切りの曲がり(鼻中隔弯曲症)などが関係している場合もあります。
3. 鼻洗浄は医師に相談してから行う
鼻洗浄は自己流で始めず、耳鼻咽喉科で適した方法を確認してから行いましょう。鼻に入り込んだ花粉やホコリを洗い流す方法ですが、洗浄液の温度や濃度、やり方を間違えると、鼻の粘膜や耳を痛めることがあります。
洗浄には、体液に近い組成の市販の生理食塩水を使います。水道水は塩素などを含み、鼻の粘膜を傷つけてしまうため、そのまま鼻に入れるのは避けましょう。浸透圧も体液と違うため水道水ではツーンとした痛みも感じます。
正しい方法で鼻洗浄を行なっている場合でも、痛みが出たときは洗浄をやめ、耳鼻咽喉科に相談してください。
鼻詰まりを防ぐ寝室環境・寝具の整え方
鼻づまりを防ぐには、寝室の湿度を整える、寝具のダニやホコリを減らす、枕の高さを見直すなどの工夫が役立ちます。布団や枕は眠っている間ずっと顔の近くにあるため、お手入れの状態も確認しておきましょう。
1. 乾燥も加湿しすぎも避ける
寝室の空気が乾いているときは加湿し、湿気が多いときは加湿器の使い方を見直しましょう。鼻に炎症があると粘膜の働きが低下するため、乾燥を避ける工夫が必要です。
ただし、加湿しすぎると、アレルギーの原因になるダニやカビが増えやすくなります。ダニが増えるには60%以上の湿度が必要で、カビは湿度70%以上で増えやすいため、湿度計で数値を確かめながら加湿の量を調整しましょう。
窓の結露が続いたり、壁際や家具の裏にカビが出たりしている場合は、湿気がこもっています。加湿を弱め、換気や除湿をしましょう。花粉の時期は窓を開けると花粉が入るため、エアコンや除湿機を使う方法もあります。
寝室の湿度の目安と、季節に合わせた加湿・除湿の方法については、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:【医師監修】寝室の湿度は何%が理想?睡眠の質を高める湿度管理方法
2. 寝具のダニ・ハウスダストを減らす
寝具は、乾燥・掃除・洗濯を組み合わせて、ダニ由来の汚れを減らしましょう。アレルギーの原因になるのは、生きているダニではなく、主にフンや死がいです。そのため、干して乾かすだけでなく、汚れを取り除くお手入れも必要です。
寝具の表示を確認したうえで、次の方法を取り入れてください。
- 日光や風にあてるか、乾燥機を使って乾かす
- 掃除機のノズルをゆっくり動かし、フンや死がいを吸い取る
- 丸洗いできる寝具やカバーを選び、こまめに洗う
- 防ダニシーツを使う
寝室全体のホコリや湿気も減らすと、寝具を清潔に保ちやすくなります。カーテンは薄手で洗えるものを選び、家具は壁から少し離して、裏側にも空気が通るようにしましょう。
布団にダニがいるかの確かめ方や、乾燥機と掃除機を使った対策の手順については、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:布団のダニは見えるのか?見分け方と正しい対策をわかりやすく解説
3. 枕の高さと寝姿勢を見直す
枕は、首や肩に無理のない高さに合わせましょう。枕の役割は、敷き布団やマットレスと後頭部から首にかけてのすき間を埋め、立ち姿勢に近い自然な体勢を保つことです。
枕が高すぎたり低すぎたりすると、首や肩・胸の筋肉に負担がかかり、呼吸もしにくくなります。鼻づまりをやわらげようと枕を何枚も重ねると、高すぎる枕と同じ状態になるため注意が必要です。
また、横向きで寝る場合は、肩先から側頭部全体を支えられる奥行きがあるかも確かめましょう。朝起きたときに首や肩がこっているなら、枕の高さが合っていない可能性があります。
鼻詰まりが続くときに考えられる病気
寝るときの鼻づまりが続く場合は、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、鼻中隔弯曲症などの病気が関係していることがあります。鼻水が透明か粘りがあるか、片側だけが詰まるかによっても、考えられる原因は異なります。
1. アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎は、ダニや花粉などへの反応で鼻の粘膜が腫れ、鼻づまりが起こる病気です。症状が出る時期によって、次のように分けられます。
- 通年性:ダニやホコリなどが原因で、1年を通して症状が出る
- 季節性:花粉の飛散時期に症状が出る、いわゆる花粉症
くしゃみをくり返し、透明でさらさらした鼻水が出るのが特徴です。鼻が詰まって口呼吸になると、乾いた空気が入りやすくなり、感染症などにもかかりやすくなります。
眠りや集中力にも影響するため、生活に支障がある場合は、耳鼻咽喉科で治療を受けましょう。診察では、鼻の状態やアレルギーの原因を調べ、症状に応じて薬などを選びます。
夜の鼻づまりに加えて、起きた直後にくしゃみや鼻水がひどくなる場合については、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:朝の鼻水が止まらない原因はモーニングアタックかも?すぐできる対策と見分け方
2. 副鼻腔炎・鼻茸
副鼻腔炎は、鼻の周囲の空洞(副鼻腔)に炎症が起こり、鼻づまりや粘りのある鼻水が出る病気です。黄色くどろっとした鼻水が出たり、鼻の中に嫌なにおいを感じたりすることがあります。
炎症が長引くと、粘膜に鼻茸(はなたけ)と呼ばれるポリープができ、鼻の通り道をふさいで詰まりが強くなることがあります。
かぜが治ったあとも鼻の症状が残る場合や、においがわかりにくい状態が続く場合は、耳鼻咽喉科を受診しましょう。診察では、鼻の奥を内視鏡などで調べ、原因や炎症の広がりに応じて治療します。
最近増えている「好酸球性副鼻腔炎」という難治性のアレルギー疾患は、両側に鼻ポリープができやすく、においがわからないのが大きな特徴です。睡眠の質が悪い、においがしないと感じたら、市販薬でごまかさずに是非一度耳鼻咽喉科を受診してください。
3. 鼻中隔弯曲症
鼻中隔弯曲症は、鼻を左右に分ける仕切りが強く曲がり、鼻づまりなどを起こす病気です。片側だけ通りにくい状態が続くときに考えたい原因のひとつです。
鼻の形そのものが原因ですが、アレルギー性鼻炎などを伴うと、症状がさらに強くなることもあります。診察では、内視鏡などで鼻の中を確認し、必要に応じてCT検査や、空気の通りにくさを測る鼻腔通気度検査を行います。
なお、片側だけの鼻づまりでは、ときに腫瘍が見つかることもあります。寝方の問題と決めつけず、耳鼻咽喉科で診察を受けましょう。
4. 点鼻薬性鼻炎
血管を収縮させる成分を含む点鼻薬を使い続けると、かえって鼻づまりが悪化することがあります。これを点鼻薬性鼻炎(薬剤性鼻炎)と呼びます。
市販の点鼻薬には、鼻の血管を収縮させて一時的に通りをよくするタイプがあり、使った直後は楽になります。ただし、使いすぎると効きにくくなり、かえって詰まりやすくなるため、ご注意ください。
購入時は成分と対象年齢を確認し、添付文書にある使用回数や期間を守りましょう。とくに2歳未満では、呼吸抑制などのおそれがあるため、血管収縮薬は使えません。
毎晩、点鼻薬を使わないと眠れない状態なら、自己判断で回数を増やさず、耳鼻咽喉科で相談してください。
血管収縮成分によって効果をもたらす点鼻薬は、効果が高いため頻用している方も多いのですが、薬が切れた時にかえって粘膜が浮腫んでしまうことがあります。自己判断で使いすぎないように耳鼻科で相談しながら使うと安心です。
5. アデノイド肥大
子どもの鼻づまりには、鼻の奥にあるリンパ組織(アデノイド)が大きくなる、アデノイド肥大が関係する場合があります。大きくなった組織が鼻を後ろからふさぎ、鼻で息をしにくくなる状態です。
子どもは鼻の詰まりを言葉で伝えにくいため、口を開けて呼吸していないか、いびきをかいていないかなど、普段の呼吸や眠り方を見ておきましょう。
なお、鼻をよくこする場合は、アレルギー性鼻炎が関係していることもあります。鼻づまりが続き、だるさや集中しづらさがあるときは、小児科や耳鼻咽喉科で原因を確認してもらいましょう。
寝る時の鼻詰まりで注意したい症状
寝姿勢や寝室を見直しても、鼻づまりで眠れない日が続くときは、耳鼻咽喉科で原因を調べましょう。とくに、次のような症状は相談したいサインです。
- 毎晩のように鼻が詰まり、寝つけない
- 片側だけの鼻づまりが続いている
- においがわかりにくい
- 膿のような鼻水が続いている
- 毎日点鼻薬を使わないと眠れない
普段から点鼻薬などを使用している場合は、受診の際に使っている点鼻薬の名前と、使い始めた時期を伝えましょう。
また、ひどいいびきや、眠っている間に呼吸が止まる様子を指摘された場合は、睡眠時無呼吸症候群が隠れていることもあります。速やかに耳鼻咽喉科や睡眠外来を受診し、日中の強い眠気や夜中に目が覚めることもあわせて伝えましょう。
寝る時の鼻詰まりについてよくある質問
鼻づまりへの対処は、妊娠中かどうかや年齢によって注意点が変わります。とくに薬は、家族が使っているものをそのまま使わず、対象年齢や使用上の注意を確認しましょう。
Q1. 妊娠中に鼻が詰まりやすくなるのはなぜですか?
妊娠中はホルモンの影響などで鼻の血管が広がり、粘膜がむくんで鼻が詰まりやすくなることがあります。鼻づまりを主な症状とするものは妊娠性鼻炎と呼ばれ、妊娠2〜5か月頃から始まる例が報告されています。
眠りが妨げられるほどつらい場合は、我慢せずに産婦人科や耳鼻咽喉科に相談しましょう。使える薬は妊娠の時期や症状によって変わるため、市販薬を自己判断で使わず、受診時に妊娠中であることと、今使っている薬を伝えてください。
Q2. 鼻づまりを一瞬で解消する方法はありますか?
鼻づまりを確実に一瞬で解消できる方法はありません。ただし、上半身を起こすなどの工夫で、一時的に楽になることはあります。市販の点鼻薬は使うとすぐに通りがよくなりますが、使い続けるとかえって鼻づまりが悪化するため、頼りすぎないようにしましょう。
毎晩くり返す場合は、寝室の環境を整えながら、耳鼻咽喉科で原因を調べてもらいましょう。
Q3. 子どもが鼻づまりで眠れないときはどうすればよいですか?
自分で鼻をかめない子どもには、鼻吸い器で鼻水を取ってあげましょう。とくに乳児は、鼻水で鼻が詰まると呼吸がうまくできません。部屋が乾いている場合は、加湿も取り入れてください。
鼻吸い器は、対象年齢と説明書を確認して使いましょう。保護者が子どもの鼻を口で直接吸うのは、二次感染のおそれがあるため避けてください。
市販の点鼻薬にも年齢制限があり、とくに2歳未満には血管収縮薬を使えません。鼻づまりが続いたり、いびきが気になったりする場合は、小児科や耳鼻咽喉科に相談しましょう。呼吸が苦しそうなときは、すぐに医療機関を受診してください。
まとめ:寝る時の鼻詰まりは寝姿勢と寝室環境を見直してみよう
寝るときの鼻づまりは、上半身を少し起こしたり、詰まっている側を上にして寝たりすると、楽になることがあります。上半身を起こすときは、枕を重ねるのではなく、背中から頭までゆるやかな傾斜をつけましょう。
寝室では乾燥を避けつつ、ダニやカビが増えないよう加湿しすぎにも注意してください。寝具は乾かしたうえで掃除機をかけ、洗えるカバーなどはこまめに洗濯しましょう。
鼻づまりが毎晩続く、片側だけ通りにくい、点鼻薬が手放せないといった場合は、自己判断せず、耳鼻咽喉科で原因を調べてもらいましょう。
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