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監修者

五藤 良将
千葉県立東葛飾高校卒、防衛医科大学校医学部卒。その後に自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどの勤務を経て2019年9月に継承開業に至る。
- 免許・資格
医師免許、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医、日本医師会産業医、スポーツドクター、日本美容内科学会評議員
朝起きると肩や首がこわばり、「寝ている間も体に力が入っているのでは」と気になっていませんか。
体に力が入ったり、朝に体がこわばったりする背景には、ストレスや寝姿勢、歯ぎしりなどが関わることがあります。ただし、朝のだるさだけで、睡眠中ずっと筋肉が緊張していたとは判断できません。気になる部位や、痛み・眠気などの症状を分けて考えることが大切です。
本記事では、上級睡眠健康指導士でコアラマットレス社員の松本が、寝ているときに体に力が入る原因や、朝のこわばりに関わる要因と、筋弛緩法、睡眠環境や生活習慣の見直し方を紹介します。
寝ているときに体に力が入る・朝にこわばる原因
体の力が抜けないと感じるときは、寝る前から緊張しているのか、朝起きたときに痛みやこわばりがあるのかを振り返りましょう。あごの疲れや歯の違和感、いびきなども、原因を考える手がかりになります。
1. ストレスや不安による緊張
ストレスや不安は、筋肉の緊張や痛みとして体に現れることがあります。仕事や人間関係が気になり、布団に入っても肩の力が抜けない場合は、寝る前の緊張に目を向けてみてください。※1
ただし、朝のこわばりだけで「ストレスが原因」と決めつけることはできません。日中にも同じ部位がこるのか、心配事が多い日に寝つきが悪くなるのかなど、自分の状態を振り返るとよいでしょう。
2. 体に負担がかかる寝姿勢
首が不自然に曲がった姿勢で眠ると、起きたときの首の痛みにつながることがあります。枕を使ったときに頭が大きく持ち上がったり、うつ伏せで首を横にひねったままになったりしていないか確認しましょう。※2
枕やマットレスは、硬さの数値だけで選ぶのではなく、横になったときの楽さも確かめることが大切です。首が無理なく支えられているか、体の一部に圧迫感がないかを見直してください。
3. 歯ぎしり・食いしばり
睡眠中の歯ぎしりや食いしばりでは、あごの筋肉に力が入り、痛みや疲れを感じることがあります。本人が気づかず、家族から歯ぎしりの音を指摘される場合もあります。※3
朝にあごが疲れている、歯がしみる、歯のすり減りが気になるときは、歯科医院で相談しましょう。歯ぎしりには複数の要因が関わるため、ストレスだけで説明できるとは限りません。
4. 寝苦しさによる睡眠の乱れ
寝室が暑すぎたり寒すぎたりすると、寝つきにくくなったり、夜中に目が覚めたりすることがあります。湿度や明るさも、眠りやすさに関わります。※4・5
「朝から体が重い」と感じるときは、体の緊張だけでなく、眠りが妨げられていないかも確認しましょう。夜中に暑さや寒さで目が覚める場合は、寝室環境を見直す手がかりになります。
5. 睡眠時無呼吸症候群などの病気
十分な時間眠っても疲れが残る場合は、睡眠中に呼吸が繰り返し止まる睡眠時無呼吸症候群などが隠れていることもあります。睡眠が何度も中断され、日中の眠気につながる病気です。※4
大きないびきや呼吸の停止を指摘されたり、日中に強い眠気が続いたりするときは、医療機関で相談してください。体の力を抜く工夫だけで対処しようとせず、症状に応じて原因を調べることが大切です。
痛む部位や症状が出る時間帯、睡眠中に家族から指摘されたことをメモしておくと、受診時にも伝えやすくなります。
寝る前に体をゆるめる筋弛緩法
寝る前に体の力が抜けにくいときは、筋肉に力を入れてからゆるめる「筋弛緩法」を試す方法があります。
筋弛緩法は、緊張している状態と力が抜けた状態の違いを感じるためのリラックス法です。睡眠中の歯ぎしりや睡眠時無呼吸症候群を治す方法としてではなく、就寝前の緊張をやわらげる工夫として取り入れましょう。※6
筋弛緩法とは?
筋弛緩法では、体の一部に意識的に力を入れ、その後に力を抜きます。この動きを部位ごとに行い、脱力したときの感覚を確かめていく方法が「漸進的筋弛緩法」です。※6
「リラックスしよう」と考えるだけでは力が抜けにくい人も、緊張と脱力を比べることで、自分の体の状態に気づくきっかけになります。
筋弛緩法の手順:5秒力を入れ、20秒ゆるめる
まずは、手と腕を使った方法から始めてみましょう。障害者職業総合センターの資料では、5秒ほど力を入れた後、20秒ほど脱力する手順が紹介されています。※6
椅子などで楽な姿勢をとり、両肘を曲げて握りこぶしをつくります。
腕全体に5秒ほど力を入れたら、一度に力を抜きます。そのまま20秒ほど、肩のつけ根から指先まで力が抜けた感覚を確かめましょう。
肩で行う場合は、腕を下ろしたまま両肩を耳に近づけるようにすくめ、5秒ほど保ちます。その後に力を抜き、20秒ほど肩を休めます。
力を入れる強さは、全力の6〜7割程度が目安です。強く力を込めることよりも、力を抜いたときの違いを感じることを意識してください。けがをした部位や痛みのある部位には、無理に力を入れないでください。肩こりや腰痛が強い場合、足がつりやすい場合も注意が必要です。痛みや不快感が出たら中止しましょう。
筋弛緩法を行う環境を整える
筋弛緩法は、体を締めつけない服装で、落ち着いて過ごせる場所で行いましょう。
就寝前は照明を落とし、スマートフォンなどの明るい画面を見る時間も控えます。眠る直前まで仕事や家事を詰め込まず、静かに過ごす時間を設けるとよいでしょう。※4
決めた手順を最後までこなすことにこだわる必要はありません。自分が心地よいと感じる範囲で取り入れてください。
「しっかり寝ているはずなのに、朝から体が重い」「無意識に力が入っている気がする」
——それは、あなたの意思の問題ではありません。
睡眠中の筋緊張は、ストレス、自律神経の乱れ、睡眠環境、生活習慣などが複雑に絡み合って起こる、生理学的に説明できる現象です。厚生労働省の『睡眠ガイド2023』でも示されているように、慢性的な睡眠不足や休養感の欠如は、筋肉が本来あるべき「オフの状態」に切り替わらない一因となります。
筋弛緩法、寝室環境(温度・湿度・光)の調整、食事・運動・入浴といった生活リズムの見直し、これらはどれも、今日から無理なく始められる「医学的に理にかなった対策」です。重要なのは、完璧を目指すことではなく、「少しずつ整える」ことです。
一晩の睡眠が変わるだけで、翌朝の体の軽さ、集中力、気分は大きく変わります。
もしセルフケアを続けても改善しない場合は、睡眠外来や医療機関に相談することも、立派な選択肢です。
あなたの眠りは、もっと楽になっていい。今夜から、体の力をそっと手放す習慣を始めてみてください。
眠りやすい寝室を整えるポイント
寝室は、暑すぎず寒すぎず、暗く静かに眠れる状態に整えましょう。温度や湿度の数値だけでなく、実際の寝苦しさや夜中に目が覚める理由も調整の手がかりになります。
1. 室温を季節や寝具に合わせる
室温は一律の設定に固定せず、季節や寝具、寝間着に合わせて調整しましょう。暑さや寒さを我慢せず、必要に応じてエアコンなどを使ってください。※4
夏は熱がこもりにくい寝具や寝間着を選び、冬は掛け布団などで暖かさを調整します。冷暖房の風が直接体に当たって不快な場合は、風向きや寝る位置を見直しましょう。
寝室の空気の温度と、布団の中の温度は異なります。室温だけを見て判断せず、布団の中が蒸れていないか、足元が冷えていないかも確認してください。
2. 湿度は40〜60%を目安にする
湿度は40〜60%程度を目安に、寝苦しくない状態へ調整しましょう。国立精神・神経医療研究センター病院の解説でも、この範囲が紹介されています。※5
蒸し暑いときはエアコンの除湿機能などを使い、乾燥が気になるときは加湿器などを活用します。湿度計で確認すると、調整の目安がつかみやすくなります。加湿のしすぎや結露にも注意し、換気や機器の手入れを行いましょう。
3. 寝る前の明るさを抑える
就寝前に強い光を浴びると、寝つきに影響することがあります。夜は照明を暗めにし、寝床でスマートフォンを見る習慣を見直しましょう。※4
眠っている間は、できるだけ寝室を暗く保ちます。外の照明が気になる場合は、遮光カーテンなどで光を遮る方法があります。
日中に活動し、夜に眠る生活では、朝に光を浴びることも生活リズムを整える助けになります。起きたらカーテンを開けるなど、夜と朝で明るさにメリハリをつけましょう。
眠りを整える食事・運動・入浴の習慣
食事・運動・入浴の習慣も、眠りやすさに関わります。体のこわばりへの対処とあわせて、夜の睡眠を妨げる習慣がないか見直しましょう。
就寝直前の食事を避ける
就寝直前の夜食や間食は、睡眠の質に影響する可能性があるため控えましょう。帰宅が遅い日は、夕方に主食を食べ、帰宅後に副食を軽くとる「分食」も選択肢です。※4
また、夕方以降のカフェインや、眠るための飲酒にも注意が必要です。寝つきや夜中に目が覚めることが気になる場合は、食事だけでなく飲み物の種類と時間も振り返ってください。
日中に適度な運動を取り入れる
適度な運動を続けることは、睡眠の改善に役立ちます。まずは日中のウォーキングなど、自分の体力に合った運動から取り入れましょう。※4
一方、就寝直前の激しい運動は眠りを妨げる場合があります。運動の後に寝つきにくくなるときは、時間帯や強度を調整してください。
寝る前にストレッチをする場合も、痛みが出るほど伸ばす必要はありません。気持ちよく動かせる範囲で行いましょう。
就寝1〜2時間前を目安に入浴する
入浴は、就寝の1〜2時間前を目安にすると寝つきの改善が期待できます。入浴で体が温まった後、深部体温が下がる過程が入眠に関わるためです。※4
熱すぎるお湯や長湯を避け、自分にとって負担のない入浴を心がけましょう。入浴後は明るい画面や激しい運動を控え、落ち着いて過ごしてください。
生活習慣は一度にすべて変える必要はありません。寝る直前の食事や遅い時間のコーヒーなど、思い当たることから見直していきましょう。
交代勤務中・更年期の睡眠対策
交代勤務や更年期に伴う睡眠の悩みでは、生活習慣を整えるだけでは対処しきれないこともあります。体のこわばりに加えて眠れない状態が続くときは、働き方や体調の変化も含めて考えましょう。
交代勤務では睡眠時間を確保する
交代勤務では、勤務と勤務の間に十分な休息をとり、睡眠時間を確保することが大切です。夜勤中に仮眠をとれる場合は、職場の体制に合わせて休む時間を設けましょう。※4 日中に眠る必要があるときは、遮光カーテンなどで寝室を暗くし、静かに休める環境を整えます。光を浴びる時間の調整は勤務の頻度によっても変わるため、すべての人が同じ方法で対応できるわけではありません。
眠気や不眠が続き、仕事や生活に支障が出ている場合は、産業医や医療機関に相談してください。
更年期の不調が続くときは相談する
更年期は、ほてりや発汗などの症状に伴って眠りが妨げられることがあります。眠れないことを気持ちの問題と考えず、体調の変化として捉えることも大切です。※4
日中の適度な運動や、寝る前に落ち着いて過ごす時間を取り入れつつ、寝具や寝間着を体感に合わせて調整しましょう。
症状が強い場合や睡眠の不調が長引く場合は、婦人科やかかりつけ医で相談してください。ほてりや発汗など、眠りを妨げている症状への治療が必要な場合もあります。
まとめ:体に力が入ると感じたら睡眠習慣を見直そう
寝ているときに体に力が入ったり、朝にこわばりを感じたりするときは、ストレスだけでなく、寝姿勢や歯ぎしりなども振り返りましょう。だるさや日中の眠気がある場合は、睡眠が十分にとれているかも確認が必要です。
自宅では、次のような工夫から始められます。
- 寝る前に筋弛緩法で、力を抜く感覚を確かめる
- 枕や寝姿勢を見直し、寝室の温度・湿度・明るさを整える
- 就寝直前の食事を控え、日中の運動や入浴の習慣を整える
痛みやこわばりが続く場合は医療機関へ、あごの疲れや歯の違和感がある場合は歯科医院へ相談してください。大きないびきや呼吸の停止、強い日中の眠気も、受診を考える目安です。
症状に合った対処を選びながら、無理なく休める寝具や睡眠環境を整えていきましょう。
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・参考
※1 Stress|英国国民保健サービス(NHS)
※2 Neck pain|英国国民保健サービス(NHS)
※3 Bruxism|米国国立歯科・頭蓋顔面研究所
※4 健康づくりのための睡眠ガイド2023|厚生労働省
※5 温度、湿度と睡眠|国立精神・神経医療研究センター病院
※6 リラクゼーション紹介講座〈2〉漸進的筋弛緩法|障害者職業総合センター











