「あと1時間しか寝られないけれど、少しでも寝たほうがいい?それともこのまま徹夜したほうがいい?」と、仕事の締め切り直前や試験の前夜などになやんだことはありませんか。少しでも体を休めたい一方で、「たった1時間で本当に起きられるのか」「眠るとかえって動けなくなるのではないか」といった不安を感じますね。私もかつて、どうしても外せない早朝の出張前夜に準備が長引き、「今から寝たら寝坊するかもしれない、いっそ起きていようか」と激しい葛藤に襲われた経験があります。結局その時は無理に1時間だけ目を閉じましたが、起きた瞬間の凄まじいだるさと、移動中の強烈な眠気に一日中悩まされることになりました。
実は、1時間という中途半端な睡眠時間は、脳が最も深く眠っているタイミングで無理やり起こされることになるため、徹夜するのとはまた違ったリスクを伴います。
本記事では、上級睡眠健康指導士の資格を持つコアラマットレス社員の石川が、1時間睡眠と徹夜のどちらを選ぶべきかについて分かりやすく解説します。リスクを避けるための「20〜30分の短時間仮眠」という第三の選択肢や、どうしても1時間だけ寝る場合の寝過ごさない起き方のコツなども紹介します。
目次
睡眠1時間と徹夜ならどっちがいいのか
「1時間寝るか、いっそ徹夜するか」という問いに対して、多くの人は「少しでも寝たほうがいいはず」と直感的に思いがちですが、1時間という睡眠時間には独特の落とし穴があります。1時間睡眠と徹夜それぞれに伴うリスクについて解説します。
1. 1時間だけ寝ると頭がぼーっとすることがある
人が眠りにつくと、まず浅い眠り(ノンレム睡眠の軽い段階)から始まり、時間が経つにつれて深い眠りへと移行します。眠りはじめから深い眠り(ノンレム睡眠の深い段階)に達するまでには個人差がありますが、おおよそ30〜45分程度かかることが多いとされています。1時間睡眠の場合、ちょうど深い眠りに入り始めた頃、あるいは深い眠りの最中に起きることになります。
深い眠りの最中に無理やり起こされると、睡眠慣性と呼ばれる状態が生じやすくなります。睡眠慣性とは、目覚めた直後に強いだるさや眠気、頭がぼーっとした感覚が続く現象のことです。「寝たのに逆につらい」「むしろ眠くなった気がする」と感じた経験がある方は、この睡眠慣性の影響を受けていた可能性があります。1時間睡眠が必ずしも最善の選択とはいえない理由の一つがここにあります。
2. 徹夜は注意力や判断力の低下につながりやすい
では、徹夜を選んだ場合はどうでしょうか。一晩眠らずに過ごすと、注意力・判断力・集中力が低下することが知られています。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、睡眠不足は日中の眠気や疲労だけでなく、注意力・判断力・作業効率・学業成績の低下、さらには事故のリスクにも関係するとしています。※1
翌日に大事な仕事・試験・運転・重要な会議などが控えている場合、徹夜はリスクが高い選択です。「夜中はなんとか乗り越えられた」と感じていても、翌朝から昼にかけて急激に眠気と集中力の低下が押し寄せてくる可能性が非常に高いでしょう。
3. 時間がないなら20〜30分の仮眠も選択肢になる
「1時間寝るか徹夜するか」で悩んでいる方に知ってほしいのが、20〜30分程度の短時間睡眠という第三の選択肢です。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針2014」では、夜間に必要な睡眠時間を確保できなかった場合、昼間の仮眠がその後の覚醒レベルや作業能率の改善に役立つ可能性がある一方で、必要以上に長く寝すぎると睡眠慣性が生じるため、30分以内の仮眠が望ましいと説明されています。※2
20〜30分の仮眠であれば、深い眠りに入り込む前に目覚めやすく、起床後のぼんやり感を抑えやすいです。残り時間が1時間ある場合でも、「仮眠30分+起床後の準備時間30分」という使い方のほうが、翌日の状態を整える観点では合理的な選択かもしれません。「1時間寝るかオールするか」という二択で悩む前に、短時間仮眠という選択肢を頭に入れておくことをおすすめします。
関連記事:【医師監修】ショートスリーパーとは?睡眠時間が短い人の特徴と健康リスク、睡眠の質を高める方法
1時間睡眠で起こりやすい体への影響
1時間睡眠がなぜ翌日の体調に影響しやすいのかを、もう少し具体的に見ていきましょう。「たった1時間でも寝れば多少は回復するはず」という印象がありますが、短時間睡眠が日中の機能に与える影響は無視できないものがあります。
1. 日中の眠気や疲労感が強くなりやすい
1時間睡眠では、体が必要とする睡眠の大部分を補えないため、翌日に強い眠気や疲労感が残りやすくなります。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」によると、睡眠不足は日中の眠気・疲労に関係すると指摘されています。※1
通勤中の電車内、午前中の会議、午後の授業など、眠気が出やすい場面は1日を通して数多くあります。1時間睡眠の翌日は、こうした場面で眠気に襲われる可能性が高まるため、体の状態を事前に把握したうえで、その日のスケジュールを調整することが大切です。
2. 集中力や作業効率が落ちる可能性がある
睡眠不足の状態では、集中力・判断力・作業効率が落ちやすくなることが知られています。試験勉強、仕事の資料作成、プレゼンテーション、運転など、ミスが許されない場面では、1時間睡眠の影響が特に大きく出る場合があります。「昨晩は1時間しか寝ていないが気合いで乗り切る」という選択が、実際には作業の質を大きく下げているケースは少なくありません。
睡眠時間には個人差があり、必要な睡眠時間は年齢や体質によっても異なりますが、1時間という睡眠時間はほとんどの成人にとって十分ではありません。翌日の認知機能に何らかの影響が出る可能性は高いと考えておくのが無難です。
3. 眠気が覚めた感覚と回復は別に考える
「コーヒーを飲んだら目が覚めた」「冷水で顔を洗ったら元気になった」という経験はありますか。これらの刺激は一時的に眠気を抑える効果があるかもしれませんが、認知機能や疲労の回復とは別の話です。
日本睡眠学会の「睡眠不足と眠気」では、冷水での洗顔・高照度光を浴びる・ミント味のガムを噛むなどの刺激で眠気が覚めたように感じても、認知機能が同じように回復するわけではないと説明されています。※3
つまり、「目が覚めたように感じる」ことと「脳が正常に働いている」ことは別というわけです。1時間睡眠の翌日に「なんとか起きられた」と思っていても、実際のパフォーマンスは想像以上に低下している可能性があることを忘れないでください。
どうしても1時間だけ寝るときの起き方
さまざまな事情から、どうしても1時間しか寝る時間がないという状況は実際に起こります。そのような場合に備えて、少しでも起きやすく、寝起きのぼんやり感を和らげるための準備と工夫を紹介します。
1. アラームは複数設定して二度寝を防ぐ
1時間睡眠で最も困るのが「寝過ごし」です。深い眠りに入っている最中にアラームが鳴っても、体が反応できずに止めてしまい、そのまま二度寝してしまう可能性を防ぐための基本的な対策は、アラームを複数設定することです。
たとえば、起床予定時刻の5分前・当日・5分後というように3回以上セットしておくと、最初のアラームに気づかなくても次のアラームで起きられる可能性が高まります。スマートフォンをすぐ手の届く場所に置かず、少し離れた場所にセットして、アラームを止めるために体を動かすようにすると目が覚めやすいでしょう。二度寝のリスクを完全になくすことはできませんが、環境の工夫で寝過ごしのリスクを下げられます。
2. 起きたら光を浴びて水分をとる
起床直後に体を「起きるモード」に切り替えるためにできることの一つが、光を浴びることです。カーテンを開けて自然光を部屋に取り込んだり、明るい照明をつけたりすると、体内時計のリセットが促されます。ベランダや窓際で数分間外の光を浴びるのもよいでしょう。
あわせて、水分を補給することも寝起きの体を整えるうえでおすすめです。眠っている間は汗などで体から水分が失われているため、起床直後にコップ1杯の水や白湯を飲む習慣をつけることで、体が動き始めやすくなります。あくまでも「起きやすくするための工夫」であり、睡眠不足そのものを解消するわけではありませんが、当日のパフォーマンスを下げないために取り入れるとよいでしょう。
3. 起床直後に重要作業を入れない
1時間睡眠の翌朝は、目が覚めた直後から睡眠慣性の影響が残っている可能性があります。そのため、起きてすぐに重要な判断、難しい計算、精密な作業、運転などを行うことはできるだけ避けたほうが安全です。
可能であれば、起床後の30〜60分間は、軽い準備作業や移動時間などに充てるよう、前日のうちにスケジュールを組み直しておきましょう。「起きてすぐに判断しなければならない」という状況をあらかじめ減らしておくだけで、さまざまなリスクの発生をある程度抑えられます。
1時間睡眠の日を乗り切るための眠気対策
あくまでも眠気対策は睡眠不足そのものを解消するものではないという前提のもと、1時間睡眠の翌日を安全に乗り切るための対策について解説します。その日を安全に過ごすための補助手段として活用してください。
1. カフェインは使う時間に注意する
コーヒー・お茶・エナジードリンクなどに含まれるカフェインは、一時的な眠気対策として広く知られています。摂取後30〜60分程度で効果が現れ、覚醒状態を維持しやすくなる作用があります。ただし、カフェインの効果は数時間にわたって続くため、夕方以降に摂取すると夜の睡眠に影響を及ぼす可能性があります。
1時間睡眠の翌日にさらに睡眠不足を引きずらないためにも、カフェインの摂取は午後2〜3時頃までにとどめておきましょう。エナジードリンクなどカフェインが多量に含まれる飲み物を夜間に飲んでその日をなんとか乗り越えても、翌夜の睡眠が妨げられて悪循環を生む可能性があります。
2. 昼に短い仮眠を入れて回復を助ける
午後になって強い眠気が出てきた場合、昼休みなどを利用した短時間の仮眠が有効な場合があります。日本睡眠学会の情報によると、弱い眠気には15〜20分程度の短時間仮眠が有効な一方、夜間の睡眠不足による強い眠気には90分程度の補償的仮眠が必要になることもあり、長時間仮眠の直後には睡眠慣性に注意が必要とされています。※3
仕事や学校の昼休みなど、限られた時間の中では長時間の仮眠が難しい場合がほとんどですから、20〜30分以内の短い仮眠にとどめ、仮眠後は少し時間を置いてから活動を再開しましょう。アイマスクや耳栓を使って光と音を遮断するだけでも、休息の質が高まることがあります。
3. 重要な判断や運転はできるだけ避ける
1時間睡眠の翌日は、特に強い眠気や集中力の低下が現れやすい状態です。このような日に、運転・危険を伴う作業・重要な契約や意思決定などを行うことはできるだけ避けてください。「気合いで乗り切れる」と感じていても、客観的なパフォーマンスは大きく下がっている可能性があることを意識しておくことが大切です。
特に車や自転車の運転については、睡眠不足による注意力・反応速度の低下が深刻な事故につながるリスクがあります。どうしても運転が必要な場合は、出発前に十分な休息をとるか、短い仮眠をとってから乗車するなど、安全を最優先に考えた判断をしてください。
1時間睡眠を繰り返さないために見直したい習慣
1時間睡眠が「たまたまの出来事」ではなく、「毎週のように起きている」という場合は、生活習慣そのものを見直すことが必要です。睡眠時間と睡眠の質を改善するために取り組みやすい基本的な習慣を紹介します。
1. 寝る前のスマホや作業を切り上げる
1時間睡眠になりやすい原因の一つが、就寝前のスマートフォン操作や夜遅くまでのパソコン作業です。「もう少しだけ」という気持ちで続けていると、気がついたら就寝時間が大幅にずれ込んでしまいがちです。スマートフォンやパソコンの画面から発せられるブルーライトは、睡眠を促すホルモンの分泌を妨げる可能性があるとも言われています。
寝る前に「作業を終わりにする時間」をあらかじめ決めておき、その時間になったら仕事を手放す習慣をつけてください。完璧に守れなくてもよいので、少しずつ就寝前の行動を見直していくことが大切です。
2. 起床時間を固定して睡眠リズムを整える
睡眠の質と量を安定させるために重要なのが、毎日の起床時間をできるだけ一定に保つことです。就寝時間は多少ばらつくことがあっても、起床時間を固定することで体内時計が整いやすくなり、自然に眠くなる時間帯が安定してきます。
平日に睡眠が不足した分を休日に寝だめで補おうとする方も多いですが、大幅に寝だめをすると体内時計が乱れ、翌週の平日に再び寝つきにくくなるという悪循環につながることがあります。休日も平日との差を2時間以内に抑え、睡眠リズムを整えましょう。
3. 寝室環境を整えて眠りやすくする
どれだけ睡眠時間を確保しようとしても、寝室の環境が整っていなければ眠りの質は上がりません。照明・室温・騒音・寝具など、眠りに影響する要素を見直すことが、限られた時間の中で質の高い睡眠をとるうえで大切です。厚生労働省のスマート・ライフ・プロジェクトでも、睡眠環境の見直しが睡眠の質改善に有効な取り組みとして紹介されています。※4
一般的に、眠りやすい室温は夏場で25〜26℃前後、冬場は18〜19℃前後が目安とされています。また、寝室はできるだけ暗く静かな環境を保つことが、深い眠りを妨げない基本条件です。体を支えるマットレスや枕など、寝具の選び方も睡眠の質に影響します。毎日使うものだからこそ、睡眠の質を改善するうえで自分の体に合った寝具選びは大切な投資です。
眠れない日や強い眠気が続くときの注意点
1時間睡眠が翌日の体調に影響するのは当然のことですが、そもそも「眠れない」日が続いている場合や、十分な睡眠をとっているはずなのに日中の強い眠気が慢性的に続く場合は、別の視点から対策を考える必要があります。
1. 一時的な寝不足と慢性的な不調を分けて考える
仕事の締め切りや試験前などで一時的に睡眠時間が短くなることは、誰にでも起こりうることです。一方で、何週間・何カ月も続けて睡眠が十分にとれない、あるいは毎日のように強い眠気や疲労を感じているという場合は、一時的な寝不足とは区別して考えましょうす。
慢性的な睡眠不足は、認知機能・免疫機能・精神的な健康に広範な影響を与えることが知られています。また、睡眠時無呼吸症候群や過眠症など、医療的な対応が必要な状態が背景にあることも考えなければいけません。異変を感じたら、自己判断だけで対処せず早めに受診することが重要です。
2. 生活に支障がある場合は医療機関に相談する
眠れない・眠っても疲れが取れない・日中に強い眠気があって仕事や学校に支障が出るといった症状が続き、生活習慣や睡眠環境を見直しても改善しない場合は、医療機関への相談を検討することをおすすめします。厚生労働省のスマート・ライフ・プロジェクトでは、このような症状が続き日中生活に影響する場合は、睡眠障害の可能性があるとして早めの受診が推奨されています。※4
睡眠に関する相談は、内科・神経内科・精神科・心療内科・睡眠外来など複数の診療科で受け付けているほか、睡眠に特化した検査や治療を行う「睡眠外来」や「睡眠専門クリニック」が適しています。受診のタイミングを迷っているなら、かかりつけ医に相談してみるとよいでしょう。
睡眠1時間で迷ったら短時間仮眠と翌日の回復を意識しよう
「1時間睡眠か徹夜か」という二択で悩んでいるなら、残り時間や翌日の予定に応じて、20〜30分の短時間仮眠という選択肢も含めて考えることが現実的です。1時間の睡眠は深い眠りの途中で目覚める可能性があり、睡眠慣性によって起床後の頭のぼんやりが生じやすくなります。一方、徹夜は翌日の注意力・判断力・集中力に広く影響するため、どちらも翌日のパフォーマンスに影響することを念頭に置いたうえで判断することが大切です。
どうしても1時間だけ寝る場合は、複数のアラームを設定し、起床後は光を浴びて水分をとり、重要な作業は少し時間を置いてから始めることが大切です。翌日は、カフェインの摂取タイミングを工夫し、昼に短い仮眠を入れましょう。運転や重要な判断はできるだけ避けてください。
そして、1時間睡眠が繰り返されているなら、就寝前の習慣・起床時間の固定・寝室環境の見直しを通じて、日々の睡眠リズムを整えていくことが根本的な解決策になります。慢性的な眠れなさや強い眠気が続く場合は、セルフケアに限界を感じる前に、医療機関に相談してみてください。
・参考
※1 健康づくりのための睡眠ガイド2023 | 厚生労働省
※2 健康づくりのための睡眠指針2014 | 厚生労働省
※3 睡眠不足と眠気 | 日本睡眠学会
※4 睡眠の質について | 厚生労働省スマート・ライフ・プロジェクト











