睡眠コラム by Koala Sleep Japan2025年7月30日読了目安時間: 6

【医師監修】うつ病で「とにかく寝る」状態から抜け出す方法と睡眠環境の整え方

田中 貫平
icam取締役 / 医師(現職:Sleep Rest Clinic幕張、いずみ医院 溝の口、AL CLINIC)

医師・メンター・タッチベースドマインドフルネス/shinsetsu-tion考案者・Gallup認定ストレングスコーチ・インド中央政府公認ヨガインストラクター

2013年英国シェフィールド大学医学部卒。

手稲渓仁会病院にて初期研修後、2020年九州大学病院心療内科に入局。国際医療福祉大学成田病院では緩和ケアチームにも所属。2024年からはフリーランスの医師として活動している。一般の方から学生、経営者、スポーツ選手など幅広い層のクライアントに対して傾聴およびマインドフルネスの実践指導や心理療法を提供、あらゆる病気や未病(不眠症も含む)の治療や予防改善に取り組んでいる。

*病気を患って読むことがしんどい方へ:まとめをまずは読んでみてください。

*周囲のサポートをしている方へ:ご本人ができそうなものを提案したり、必要なところに関して手伝ってあげたりしてください。

 

読者の中で、うつ病による過眠でお悩みではありませんか。この記事では、眠れない「不眠」ではなく、一日中寝てしまい、日常生活が送れない「過眠」をテーマに取り上げています。

実は、うつ病における過眠は単なる「怠け」ではありません。脳内物質の変化や体内時計の乱れ、心理的防衛反応など、複雑なメカニズムによって生じています。研究データによると、単極性うつ病では10〜20%、双極性障害のうつ病相の約半数の方が過眠を経験すると報告されています。※1

2016年の研究では、うつ病患者の36.3%に閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)が合併していることも明らかになっています。※2

本記事では、過眠とうつ病の関係を最新の医学研究とデータに基づいて解説し、今日から始められる具体的な対処法を紹介します。生活リズムの改善から医療機関への受診、睡眠環境の最適化まで段階的に紹介します。一歩ずつ改善への道を歩んでいきましょう。

 

過眠とうつ病のメカニズムを紐解く

うつ病の過眠は「疲れ」や「怠け」ではありません。病気による脳の変化と心理的防衛反応が絡み合って起こる症状です。過眠が起こるメカニズムの解説を通じて、正体を明らかにしていきましょう。

脳内物質と体内時計の乱れ

うつ病では、脳内のセロトニンの低下が過眠の主要な原因の一つと考えられています。セロトニンは「幸せホルモン」として知られていますが、実は覚醒と睡眠のバランスを保つ役割も担っています。※3

セロトニン機能の低下により日中の覚醒度が下がります。これが過眠症状につながるのです。さらに、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌リズムもうつ病では大きく乱れることが報告されています。※4

健康な人では夜間に分泌されるメラトニンがうつ病の人では日中にも分泌されたり、夜間の分泌が不十分になったりします。これにより体内時計(概日リズム)が大きく乱れることがあります。2024年の研究では過眠症の症状(7時間以上の睡眠があっても日中の眠気がある状態)があるうつ病の患者は、過眠症がない人たちと比べて、うつ病が寛解しないリスクが3倍高くなることが示されています。※5

ストレス・現実逃避としての「寝逃げ」

過眠は、つらい現実から逃れるための心理的防衛反応と捉えることもできます。※6 

日常のストレスや抑うつ気分に直面することが苦痛なとき、睡眠という形で一時的に現実から距離を置こうとする「寝逃げ」という逃避行動が起こります。研究では双極性障害の寛解中の過眠患者の実際の睡眠時間は平均7.7時間であるものの、臥床時間は平均10.1時間と大幅に延長していました。実際には眠っていない時間も「寝ている」と認識して、ベッドから出られない状態が続いているのです。※1

重要なのは、この「寝逃げ」は決して「怠け」や「甘え」ではなく、心がストレスから自分を守ろうとする自然な反応だということです。うつ病の症状の1つとして、自責感や罪悪感があり、過眠をしてしまう自分を責めてしまうかもしれません。しかし過眠はあくまでも心理的な逃避行動であると理解して、専門家のサポートを求めることが回復への第一歩となります。

閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の見逃し

「いびきがひどいからマスク(CPAP)で治療する病気」と言われれば、イメージしやすいかもしれません。OSAは睡眠中に上気道が繰り返し閉塞されることによるいびきや無呼吸によって高血圧や糖尿病、心血管関連の病気のリスクを高めてしまう病気です。有病率が18.4%(およそ5人に1人)と意外にも高いですが、うつ病患者ではさらに高い36.3%(3人に1人以上)がOSAを合併しているというデータもあります。※2, 7

OSAの一番の問題は心身の回復に重要な良質な睡眠が取れないということです。OSAとうつ病が併存してしまうと、両方の症状が相互に影響し合って、治療がより困難になってしまう場合があります。一方で、OSAを治療するとうつ病が改善することは、これまでの研究をまとめた論文でも強く示唆されているのです。※8

うつ病や双極性障害と診断されて、日中の眠気や倦怠感がなかなか改善しない時には、かかりつけの精神科や心療内科の主治医の先生に相談して、近くの睡眠クリニックも受診してみましょう。OSAは簡単な自宅検査から始めることができますし、適切な治療によって、睡眠の質が改善し、病気の回復にもつながっていきます。

 

今日から始められるうつ病による過眠対策4ステップ

うつ病による過眠は適切な対処法で改善が期待できます。医療機関での治療と生活習慣の改善を進めましょう。周囲の理解と適切なサポートも大切です。

ステップ1:受診のタイミング

受診の目安 以下の症状が2週間以上続く場合は、精神科受診を検討しましょう。

  • 日中の強い眠気で仕事や家事に支障がある
  • 10時間以上連続で寝ても疲れが取れない
  • 朝起きられず遅刻や欠勤が増えた
  • 何をするにも億劫で、寝ることだけが楽に感じる

ステップ2:治療の流れ

  1. 初診:問診と心理検査でうつ病の診断と重症度を評価
  2. 検査:睡眠日誌の記録、必要に応じて睡眠検査を睡眠クリニックなどで実施
  3. 治療開始:
    • 自宅療養 / 職場の仕事量の調整
    • 抗うつ薬による薬物療法(SSRI、SNRI等)
    • カウンセリングでの心理師による傾聴および心理療法(認知行動療法やマインドフルネスなど)
    • 過眠症状への対応薬の検討(主治医と相談)
    • (休職した場合)リワークへの参加

ステップ3:生活習慣の立て直し

うつ病ではそもそも朝起きること自体が難しい場合や、食欲減退、意欲低下、倦怠感などの症状が出る場合があります。参考までに、最初は以下の行動から始めてみて、3ヶ月を目安に厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」を参考に実践してみましょう。※9

リズム作りできることから1つずつ

  • 起きる時間を固定する。
  • 食べる時間を固定する。
  • 生活活動を固定した時間に行う。
    • 初期:家の玄関から出て外の空気を2−3回程度吸う
    • 中期:30分未満の散歩を1日1回(公園など緑がある環境に身を置いてみる)
    • 後期:運動療法(下記)

光刺激による体内時計のリセット

  • 朝起きたらすぐに朝日を浴びる(15-30分)
  • 日中も積極的に屋外で過ごし、自然光を取り入れる

食事による調整

  • 朝食を毎日同じ時間に摂取
  • 朝食欠食は体内時計を後退させるため避ける
  • 就寝3時間前からは食事を控える

運動療法の導入

  • 週3-5回、30分程度の散歩から開始
  • 徐々に1日60分の身体活動を目標にする

睡眠環境の調整

  • 就寝1-2時間前の入浴を習慣化する
  • スマートフォンやタブレットは持ち込まず、できるだけ暗くして眠る
  • リラックスできる寝衣・寝具で眠る

 

病気をきっかけに、「何かを変えていこう」と思われるている読者もおられるかもしれません。体と心の両方の回復に大切な睡眠をしっかりとれる環境の調整として、一度買い替えたら長く使用ができる寝具を変えてみることも、選択肢の1つとしてよいかもしれません。

ステップ4:家族・職場への伝え方と支援制度

他の心の病気と同様、うつ病の治療においても周囲からの理解とサポートを得られることは治療の一環としてとても大切です。

家族への伝え方(例文)

「最近、うつ病の症状で過眠が続いています。これは怠けではなく、脳内物質の変化による病気の症状です。治療を受けていますので、『頑張れ』という励ましよりも、規則正しい生活リズムを保てるよう協力してもらえると助かります。

職場への相談(例文)

「うつ病の治療中で、過眠症状により朝の出勤が困難な状況です。医師の診断書もあります。時短勤務やフレックスタイムの活用など、勤務形態の調整について相談できますでしょうか。」

利用できる支援制度

うつ病で働けない期間も、経済的・社会的なサポートを受けられます。各制度の詳細を確認し、状況に合わせて活用しましょう。

 

支援制度 内容 対象者の条件 申請窓口・方法 利用時の注意点
傷病手当金 ・標準報酬日額の3分の2を支給

・最長1年6ヶ月間

・月収30万円なら約20万円/月

・健康保険加入者

・連続3日以上の休業

・医師の診断書あり

・会社の人事部

・健康保険組合

・協会けんぽ

・退職後も継続可能な場合あり

・有給休暇中は支給なし

休職制度 ・治療に専念できる期間確保

・会社により期間は異なる

・一般的に3ヶ月〜2年

・正社員が中心

・就業規則で定められた条件

・医師の診断書が必要

・直属の上司

・人事部門

・産業医

・復職プログラムの有無を確認

・休職期間の延長可否も要確認

就労移行支援 ・職業訓練や就労準備支援

・最長2年間利用可

・利用料は収入により異なる

・18歳以上65歳未満

・一般就労を希望

・医師の意見書が必要

・市区町村の障害福祉課

・相談支援事業所

・ハローワーク

・体調に合わせた通所が可能

・就職後6ヶ月の定着支援あり

精神障害者保健福祉手帳 ・税金の控除、減免

・公共料金の割引

・就労時の配慮申請可

・精神疾患で6ヶ月以上治療

・日常生活に制限あり

・医師の診断書が必要

・市区町村の障害福祉課

・保健所

・精神保健福祉センター

・2年ごとの更新が必要

・等級により受けられるサービスが異なる

家族会・自助グループ ・同じ悩みを持つ仲間との交流

・情報交換や相談

・多くは無料〜低額

・本人または家族

・事前申込み不要の会も多い

・精神保健福祉センター

・保健所

・医療機関の相談室

・無理のない範囲で参加

・オンライン開催も増加中

 

ハローワークと就労移行支援の違い・連携

・ハローワーク: 求人紹介や雇用保険の手続きなど、就職活動全般をサポートします。

就労移行支援: 障害や病気のある方向けの福祉サービスです。一般就労を目指す際に、職業訓練や生活支援を提供しています。職場定着支援も行い、障害者手帳がなくても利用できる場合があります。

制度活用のポイント

  • 複数の制度を組み合わせて利用可能です
  • まずは会社の人事部や医療機関のソーシャルワーカーに相談しましょう
  • 申請には時間がかかることがあるため、早めの相談が大切です
  • 分からないことは遠慮なく窓口で質問しましょう

 

まとめ:できることからまず1つ

うつ病に伴う過眠について解説してきました。読者の中で過眠になっていることを怠けていると思って自分を責めてしまっている人がいたら、今は病気だからそういう気持ちや思いになっていると理解してみましょう。

また、睡眠時無呼吸症候群(OSA)の合併も多いため、主治医の先生に相談して睡眠クリニックも受診しましょう。身近な人たち、職場や公的機関などのサポートも受けながら、「できることからまず1つ」を目指してください。少しずつ自分のペースで歩みを進めていき、ふと振り返った時、再び活動ができるようになって、新たなご自身になられていますように。

参考

  1. https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/english/123-7_P424-430_Masahiro_SUZUKI.pdf?utm_source=chatgpt.com(参照 2025-07-21)
  2. Stubbs, B., Vancampfort, D., Veronese, N., Solmi, M., Gaughran, F., Manu, P., Rosenbaum, S., De Hert, M., & Fornaro, M. (2016). The prevalence and predictors of obstructive sleep apnea in major depressive disorder, bipolar disorder and schizophrenia: A systematic review and meta-analysis. Journal of Affective Disorders, 197, 259–267
  3. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11924032/(参照 2025-07-21)
  4. Hickie, I. B., Naismith, S. L., Robillard, R., Scott, E. M., & Hermens, D. F. (2013). Manipulating the sleep-wake cycle and circadian rhythms to improve clinical management of major depression. BMC Medicine, 11(1)
  5. Cheung, M. M. S., Lam, S. P., Chau, S. W. H., Chan, N. Y., Li, T. M., Wing, Y. K., & Chan, J. W. (2024). Hypersomnolence is associated with non-remission of major depressive disorder. Sleep Medicine, 119, 35–43
  6. Haskell, A. M., Britton, P. C., & Servatius, R. J. (2019). Toward an assessment of escape/avoidance coping in depression. Behavioural Brain Research, 381, 112363
  7. Yamagishi, K., Ohira, T., Nakano, H., Bielinski, S., Sakurai, S., Imano, H., Kiyama, M., Kitamura, A., Sato, S., Konishi, M., Shahar, E., Folsom, A., Iso, H., & Tanigawa, T. (2010). Cross-cultural comparison of the sleep-disordered breathing prevalence among Americans and Japanese. European Respiratory Journal, 36(2), 379–384
  8. Yang, X., Yang, J., Yang, C., Niu, L., Song, F., & Wang, L. (2020). Continuous positive airway pressure can improve depression in patients with obstructive sleep apnoea syndrome: a meta-analysis based on randomized controlled trials. Journal of International Medical Research, 48(3), 030006051989509
  9. 健康づくりのための睡眠ガイド2023:https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001181265.pdf

 

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