睡眠コラム by 八木 宏美2025年10月27日読了目安時間: 7

【医師監修】脳を休める方法8選|脳疲労を解消して集中力を取り戻す科学的アプローチ

田中 貫平
icam取締役 / 医師(現職:Sleep Rest Clinic幕張、いずみ医院 溝の口、AL CLINIC)

医師・メンター・タッチベースドマインドフルネス/shinsetsu-tion考案者・Gallup認定ストレングスコーチ・インド中央政府公認ヨガインストラクター

2013年英国シェフィールド大学医学部卒。

手稲渓仁会病院にて初期研修後、2020年九州大学病院心療内科に入局。国際医療福祉大学成田病院では緩和ケアチームにも所属。2024年からはフリーランスの医師として活動している。一般の方から学生、経営者、スポーツ選手など幅広い層のクライアントに対して傾聴およびマインドフルネスの実践指導や心理療法を提供、あらゆる病気や未病(不眠症も含む)の治療や予防改善に取り組んでいる。

疲れが取れない、集中力が続かないといった悩みをお持ちではありませんか?2025年の10万人を対象にした日本のインターネット調査で、高頻度で“疲れを感じる”と回答した人が、20代で55.9%、30代で54.7%にのぼりました。1)  その原因の1つとして「脳疲労」があります。現代社会では、スマホからの絶え間ない情報やストレスにより、脳が休まる時間が奪われています。本記事では、科学的根拠に基づいた8つの脳を休める方法を詳しく解説します。

  • 脳を休める方法
  • 脳疲労を解消する生活習慣
  • 脳疲労の予防方法

これらを知りたい方はぜひ最後までお付き合いください。

脳疲労とは?多くの現代人が悩む脳の疲れのメカニズム

集中力が続かない、頭がぼーっとするなど、原因不明の「脳の疲れ」に悩んでいませんか?この脳疲労とは、脳のエネルギーを無意識に浪費する仕組みが大きく関わります。脳は、何もしていなくても「デフォルトモードネットワーク(DMN)」という神経回路が常に活動しています。脳の重さは体重のわずか2%ほどですが、体全体のエネルギー消費の約20%を占めます。このDMNの過剰な活動などが脳疲労の原因です。ここでは、脳疲労のメカニズムと、見逃せないサインや症状を解説します。

脳が疲れる3つの主な原因

脳が疲れる3つの主な原因

脳疲労の原因として、「マルチタスク」「スマホの過度な使用」「睡眠不足」の3つが挙げられます。それぞれが、どのように脳の機能を低下させるのか、そのメカニズムを見ていきましょう。

  1. マルチタスクによる脳への過負荷 マルチタスクは効率的に見えますが、実際には脳の注意を頻繁に切り替えさせます。そのため、情報処理能力の限界を超えた大きな負荷をかけます。その結果、集中力が散漫になり、かえって生産性を低下させる原因となります。
  2. スマホによる絶え間ない情報刺激 スマホは便利な反面、SNSやニュース、動画など膨大な情報を絶えず脳に送り込みます。本来リラックスすべき時間でさえ脳が刺激を受け続けるため、情報処理の負担が蓄積します。情報過多は「脳の情報処理能力がオーバーフローし、脳の働きが低下した状態」を引き起こすからです。
  3. 睡眠不足による脳のメンテナンス不全 睡眠不足は、脳が休息する時間を奪います。日中に溜まった疲労物質の排出や記憶の整理といった、重要なメンテナンスが行えなくなるのです。この脳の回復プロセスが不十分になると、機能が低下します。それだけでなく、精神的なストレスも増大し、脳疲労をさらに深刻化させます。

脳疲労のサインをチェック|こんな症状は要注意

脳疲労のサインは、体の疲れとは異なり自覚しにくい特徴があります。気づかないうちに進行し、仕事のパフォーマンス低下や心身の不調につながることも。

日本疲労学会と日本産業学会の研究知見などを元に監修者がまとめたセルフチェックリストとなります。2) ご自身の状態をまずはチェックしてみましょう。

脳疲労のサインチェック表

【認知面】

□ 物事を考えるのが面倒になった

□ ミスが増えた、判断が鈍る

□ 同じことを何度も考えてしまう

□ 思考が堂々巡りになる

 

【感情面】

□ 些細なことでイライラする

□ 喜びや感動を感じにくい

□ 落ち込みやすい、感情が平坦

□ 人との会話が億劫になる

 

【身体面】

□ 頭が重い、締め付けられる感じ

□ 眠っても疲れが取れない

□ 肩こり・眼精疲労がひどい

□ 胃腸の調子が悪い

 

【行動面】

□ SNSやメールをつい何度もチェックする

□ 休憩しても頭が切り替わらない

□ 休日も仕事や情報に意識が向く

□ やる気が出ず先延ばしが増えた

 

3つ以上当てはまる場合、脳が休息を求めているサインです。こちらで紹介している方法を取り入れましょう。もし10項目以上であれば、すでに強い脳疲労がある状態です。体や心の病気の可能性もあり、総合内科や心療内科など医療機関を受診するようにしましょう。

 

【即効性あり】今すぐできる脳を休める方法4選

仕事の合間に実践できる、即効性の高い脳の休息法があります。 ここでは4つの休息法を紹介していきます。

脳を休める方法4選

1. 深呼吸で脳を休息モードに(所要時間:1分)

仕事や勉強の合間に、わずか1分で実践できる最も手軽な脳を休める方法が深呼吸です。特に効果的なのが「鼻呼吸」。鼻の奥には脳につながる毛細血管が集中しています。そのため鼻呼吸には、脳を間接的にクールダウンする効果があり、それが自律神経を整えてくれます。

具体的な呼吸法は「4-7-8呼吸法」がおすすめです。背筋を伸ばし、4秒で吸い7秒止め、8秒で吐き出します。これを3〜4回繰り返して、頭と気分がスッキリするのを実感してみてください。この呼吸法が難しければ、吐く息を吸う息より長くした自分のリズムで鼻からの深呼吸を5-6回繰り返してみましょう。

2. マインドフルネス瞑想(所要時間:3~5分)

何もしていない時でも、脳は無意識に考え事を続けます。これは「デフォルトモードネットワーク(DMN)」の働きです。このDMNの過剰な活動が、脳疲労の大きな原因の一つです。マインドフルネス瞑想は、このDMNの活動を意図的に鎮める効果が期待できます。

マインドフルネス瞑想の手順

  1. 楽な姿勢で座りましょう: 椅子に座っても床にあぐらをかいても、場所が許すなら仰向けでもかまいません。背筋を軽く伸ばし、リラックスします。
  2. 目を閉じて呼吸に集中する: 鼻から息を吸い、ゆっくりと吐き出します。お腹や胸のふくらみや鼻を通る空気の流れなど、呼吸に伴う体の感覚に意識を向けてください。
  3. 雑念を受け流す: 「今日の仕事のこと」「夕飯どうしよう」など、考えが頭に浮かびますが、「考えが浮かんだな」と客観的に気づきます。評価や判断をせずに、再び意識を呼吸に戻します。

3. 軽い運動で脳をリフレッシュ(所要時間:5~20分)

マインドフルネス瞑想のように止まっているのが苦手な読者の方もおられるでしょう。5〜20分の軽い運動も、脳を休めるための即効性があるリフレッシュ方法です。運動によって、脳の神経細胞の成長を促すBDNF(脳由来神経栄養因子)の分泌が増加します。3) 

さらに、運動は精神の安定に関わるセロトニンや、意欲や幸福感をもたらすドーパミンといった神経伝達物質の分泌も促します。これにより、モヤモヤした頭がスッキリし、ポジティブな気持ちを取り戻すことができます。

少し息が弾む程度の早歩きでの散歩や、その場でのストレッチ、階段の上り下りなどがおすすめです。特に朝の散歩は、日光を浴びることでセロトニンの分泌がさらに活性化し、体内時計が整うというメリットもあります。仕事の合間に少し体を動かすだけでも、脳の疲労回復に繋がります。

4. スマホ画面から離れる”デジタルデトックス”(所要時間:1~2時間)

スマホからの情報や通知は、脳を常に刺激し続けます。これが脳疲労の大きな原因となるのです。意識的にスマホから離れる「デジタルデトックス」を設けることで情報過多から脳を解放し、効果的に休ませることができます。

まず、スマホのスクリーンタイム機能を活用することがおすすめです。

 

  • 就寝前1〜2時間からはスマホに触らない
  • 食事中や会話中はスマホをカバンにしまう
  • 寝室に充電器を置かず、スマホを持ち込まない

こうした小さな工夫で、意識的に脳を休める時間を作ることができます。

【根本改善】脳疲労を解消する生活習慣4選

質の高い睡眠、運動、バランスの良い食事、ストレス管理など、脳の健康に良いとされる習慣があります。 ここからは脳疲労を解消する生活習慣を詳しく解説します。

脳疲労を解消する生活習慣

1. 質の高い睡眠で脳をリセット(安定して6時間以上を確保)

脳疲労を解消する最も効果的な方法は、質の高い睡眠です。睡眠中、脳は休息とメンテナンスを行い、日中の活動で溜まった疲れをリセットします。

睡眠には、深い眠りの「ノンレム睡眠」と浅い眠りの「レム睡眠」があり、それぞれが重要な役割を担っています。

  • ノンレム睡眠: 脳の活動がおだやかになり、記憶の整理や脳の回復が進むと考えられています。この時期に脳内の老廃物を除去する仕組み(グリンファティック系)が働く可能性も示されています。4)
  • レム睡眠: 脳は比較的活発に働いており、夢を見ることが多い状態です。学んだことを整理したり、感情のバランスを整えたりする役割があるとされます。

脳をしっかりリセットするためには、最低でも6時間を目安に、自分に合った睡眠時間を確保することがおすすめです。5) 睡眠不足を感じている人は、まずは普段より30分早く眠ることを1週間 続けてみましょう。

また、単に長く眠るだけでなく「睡眠の質」を高めることも欠かせません。朝までぐっすり眠れるよう、寝室環境を整えましょう。温度や湿度を快適に保ち、光や音を遮断する工夫が大切です。体に合ったマットレスを選ぶことも、質の高い睡眠への大切な投資です。

2. 有酸素運動を習慣化(週3回以上)

根本的に脳を休めるには、「脳は使わず、体を使う」、つまり定期的な有酸素運動を取り入れた運動習慣が効果的です。有酸素運動は、脳の神経細胞を育てる栄養素であるBDNFの分泌を促すだけでなく、ストレスを和らげる「幸せホルモン」セロトニンの働きも整えます。これにより、ストレスが軽減され、脳がリラックスした状態になるのです。

1日30分程度のウォーキングや軽いジョギングを週3回程度続けるだけでも、脳の活性化や気分の安定に効果があると報告されています。

3. 脳に良い食べ物を積極的に摂る

脳疲労の回復には、脳をダメージから守り、エネルギー不足を補うため、栄養の摂取が不可欠です。脳の活動で発生する活性酸素から脳細胞を守る抗酸化物質と、エネルギー産生を助ける成分がおすすめです。

抗酸化作用のある成分

  • イミダゾールペプチド(まぐろ、かつお、鶏むね肉など):全身の疲労回復を助ける働きが報告されています。
  • ビタミンC(ピーマン、ブロッコリー、キウイフルーツなど):脳の酸化ストレスを抑え、細胞を守ります。
  • オメガ3脂肪酸(サバやイワシなどの青魚、ヘンプシードなど):脳の炎症を抑え神経の健康を保ちます。

エネルギー産生を助ける成分

  • ビタミンB群(豚肉やうなぎなど):糖質をエネルギーに変え、神経の働きを助けます。
  • クエン酸(レモンなどの柑橘類や梅干しなど):体内でのエネルギー産生を円滑にします。

どれか一つに偏るのではなく、こうした成分を含んだ脳に良い食べ物を日々の食事にバランス良く取り入れることが大切です。

4. 毎日の休養時間を確保

1日の中に、意識的にリラックスする時間を作ることで、脳は日中に得た情報を整理し、ストレスから解放されます。効果的なストレス解消法として、読書や音楽鑑賞、ぬるめのお湯での入浴、軽いストレッチなどがおすすめです。また、あえて何もしない「ぼーっとする時間」を作ることも、脳の回復に役立ちます。

1時間程度あれば理想ですが、難しければせめて20〜30分の時間だけでも脳のためにもご自宅でしっかりと設けてあげましょう。

脳疲労を防ぐ!仕事中にできる予防法

長時間のパソコン作業は、脳の「集中モード」を使い続けます。そのため「休息モード」へ切り替える機会が奪われ、脳疲労が蓄積しやすくなるのです。ここでは、仕事の合間に実践できる脳疲労の予防法を解説します。

脳疲労を防ぐ方法

集中と休憩のメリハリをつける

仕事中、脳は情報処理や意思決定のたびにエネルギーを消費します。これは「認知コスト」と呼ばれています。この認知コストを意識的に管理し、こまめに脳を休めることが仕事効率を高める鍵となります。

そこで有効なのが「ポモドーロ・テクニック」です。これは「25分間の集中作業」と「5分間の休憩」を1セットとして繰り返す時間管理術です。

具体的な方法は以下の通りです。

  1. タイマーを25分にセットし、一つのタスクに集中する(通知などはオフにする)。
  2. タイマーが鳴ったら、作業を中断して5分間の休憩をとる。
  3. このサイクルを4回繰り返したら、15〜30分の長めの休憩をとる。

ランチタイムは外に出て歩く

スマホは脳を休めることに不向きです。スマホを見るかわりに、5分でも外に出て街路樹などの緑を意識して散歩してみるのがおすすめです。時間が許せば、公園でお弁当を食べたり、少し遠めのレストランまで行ってみましょう。短い散歩の中で自然に触れることで、デジタルデトックスと軽い運動の両方ができて脳をリフレッシュできます。

まとめ

脳のための短い休息をこまめに取り、体を動かし、食事を整え、そしてよく眠る。基本的な積み重ねが脳疲労の予防・改善に役立ちます。

たとえば今このコラムを読み終わったら、こちらを読むためにまさに今使っているスマホやパソコンから一旦離れ、外の空気を吸いにいくのもよいかもしれません。意識して外の空気を深呼吸をしながら吸ってみるともしかすると何か新鮮かもしれませんね。

ここでお伝えした内容はどれも日常に組み込みやすいものです。まずは1つを選んで1週間続けてみましょう。

【参考文献】

  1. 一般社団法人日本リカバリー協会 | 深刻化する日本人の疲労 ~全国10万人調査が映し出す現代社会の課題~
  2. 産業疲労研究会 | 自覚症しらべ 
  3. A meta-analytic review of the effects of exercise on brain-derived neurotrophic factor
  4. Garbage Truck of the Brain
  5. 厚生労働省 | 健康づくりのための睡眠ガイド2023