歯ぎしり対策を徹底解説!マウスピース以外の改善方法と原因別アプローチ
睡眠コラム by Koala Sleep Japan2025年12月29日読了目安時間: 7

【医師監修】歯ぎしり対策について徹底解説!マウスピース以外の改善方法と原因別アプローチ

後平 泰信

医療法人徳洲会札幌もいわ徳洲会病院(名称変更) 病院長 現職。

【研究分野】睡眠全般、睡眠時無呼吸症候群、内科全般、循環器内科、スポーツ医学、遠隔医療、地域医療

明るくハキハキとした話し方で、専門的な内容もわかりやすく伝える。特に睡眠医療の分野で多数の講演・メディア出演歴があり、CPAP治療やいびき・睡眠負債など、広く深い見識から生活に密着したあらゆる話題にも柔軟に対応。寝具などスリープテック領域の開発や監修にも多数関わった実績あり。

朝起きたときに顎がだるくてこめかみが重く、なんだか歯がしみる気もする…そんな朝が続くとストレスがたまりますよね。私も一時期、朝起きてすぐ奥歯がジーンと痛む日が続き、「寝ているだけなのにどうして疲れているんだろう」と不思議に思っていました。歯科で「かなり歯ぎしりしていますよ」と言われて、初めて自分の歯ぎしりに気づいたときは、ちょっとショックでした。

歯ぎしりや食いしばりは、はっきり音が出るタイプだけではなく、静かにグッと噛みしめているだけのケースも多く、自覚がないまま歯や顎に負担をかけ続けているケースが少なくありません。しかも、日本人は慢性的な睡眠不足やストレスを抱えがちで、歯ぎしりを後押しする条件がそろいやすいといわれています。

本記事では、上級睡眠健康指導士でコアラマットレス社員の松本が、歯ぎしり(睡眠時ブラキシズム)の原因とメカニズムを整理しながら、マウスピース以外で今日からできる歯ぎしり対策を分かりやすく解説します。また、顎関節症や歯の摩耗を防ぐために、どんなサインが出てきたら歯科医院で相談したほうがよいのかも具体的にお伝えします。

歯ぎしり(ブラキシズム)の原因と日本人の実態

歯ぎしり(ブラキシズム)の原因と日本人の実態

夜中に歯ぎしりをしていると指摘されたり、朝起きたときに顎の疲れや頭痛を感じたりして、「もしかして歯ぎしりかもしれない」と不安になっていませんか?

歯ぎしりは一時的なクセのように思われがちですが、背景に睡眠やストレスといった現代日本人特有の生活環境が深く関係していることが多いです。歯ぎしりの基本的な仕組みから日本人に多い原因まで、医学的な視点で解説します。

歯ぎしりってそもそも何?

歯ぎしりは医学的には「ブラキシズム」と呼ばれています。睡眠中や起きている間に、無意識のうちに歯を強く噛みしめたり、擦り合わせたりする習慣の総称です。※1

多くの人がイメージする「ギリギリと音がする歯ぎしり」だけでなく、音を伴わずに強く噛みしめるタイプや、上下の歯を小刻みに打ち鳴らす動きをするタイプも含まれます。

特に注意が必要なのは、周囲が気づきにくい「食いしばり」です。本人は自覚していない場合が多いのですが、歯科医師の臨床報告では、音が出る歯ぎしりよりも2〜4倍程度多い頻度で見られるのだそうです。※1

知らないうちに歯や顎へ負担がかかり続けてしまう点が大きな問題で、長期間放置すると歯の摩耗やヒビ、破折が起こりやすくなり、詰め物や被せ物が外れやすい原因にもつながります。さらに、顎関節や周囲の筋肉にも慢性的な負担がかかり、顎関節症や頭痛、肩こりといった全身症状につながることも少なくありません。※1。

睡眠不足が歯ぎしりを引き起こすメカニズム

歯ぎしりが起こる原因のひとつが、日本人に多い慢性的な睡眠不足です。

日本人は世界的に見ても睡眠時間が短いことで知られており、OECDの統計をもとにした分析では、日本人の平均睡眠時間は約7時間22分と、加盟国の中で最も短い水準です。※2

さらに、厚生労働省の国民健康・栄養調査では、睡眠時間が6時間未満の人が男女ともに約4割を占め、特に30代から50代の働き盛り世代でその割合が高いことが分かりました。※3

睡眠が不足すると、脳と身体は十分に回復できず、睡眠の質そのものが低下します。深く眠るノンレム睡眠が減り、浅い眠りであるレム睡眠や浅いノンレム睡眠の時間が増えやすくなるため、脳が覚醒に近い状態になって筋肉の緊張も高まりやすくなり、顎の筋肉が過剰に働いて無意識の歯ぎしりや食いしばりが起こりやすくなります。

寝不足が続くことで起こる浅い眠りの中で歯ぎしりが誘発され、さらに寝不足になるという負のループに入りやすくなるのです。

ストレスと歯ぎしりの関係性

歯ぎしりの主要な原因の一つに、ストレスによる自律神経の乱れが挙げられます。※4

仕事のプレッシャーや長時間労働、育児や介護による負担、人間関係の悩みなど、日中に蓄積された緊張は夜になっても完全には解消されません。

本来、睡眠中は副交感神経が優位になり、身体はリラックス状態に入ります。しかし、強いストレスを抱えていると自律神経の切り替えがうまくいかず、交感神経が優位なまま眠りに入ってしまうことがあります。その結果、顎の筋肉の緊張が続き、歯ぎしりや食いしばりとして現れやすくなるのです。歯ぎしりは単なる口の問題ではなく、ストレス社会を映し出す身体のサインの一つと考えてよいでしょう。

なお、日本では、睡眠不足やストレスによる生産性低下が年間で約20兆円規模の経済損失につながるとも試算されています。※2

睡眠時無呼吸症候群と歯ぎしりの関連

近年の研究や睡眠歯科の報告で、睡眠時無呼吸症候群と歯ぎしりが同時にみられるケースが多いことが分かってきました。※5

睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中に呼吸が一時的に止まったり浅くなったりするため、身体が危険を察知して一瞬覚醒します。

この一過性の覚醒が起こるタイミングで、顎を強く噛みしめる反応が出やすくなり、歯ぎしりが発生すると考えられています。いびきが大きい、呼吸が止まっていると指摘されたことがある、日中に強い眠気があるといった症状に加えて歯ぎしりも疑われる場合は、睡眠時無呼吸症候群が背景にある可能性が高いため、歯ぎしり対策と睡眠時無呼吸症候群の検査や治療をまとめて行うことが重要です。

後平 泰信 医師
後平 泰信 医師
歯ぎしり、特に睡眠時に起こる歯ぎしり(睡眠時ブラキシズム)は、寝ている間にに無意識に歯を食いしばったり擦り合わせたりする、浅い眠り(ノンレム睡眠)の際に起こりやすい症状です。ストレスや睡眠の質の低下、また記事でも触れられていますが睡眠時無呼吸症候群の一つの症状でもあります。歯のすり減りや欠損、顎関節症、肩こりなどが起こることがあり、主な対策は歯科でのマウスピース作成です。ストレスのコントロールや生活習慣の改善などを行ってみてはいかがでしょうか?改善がない場合は医療機関の受診をお勧めいたします。

今すぐできる歯ぎしり対策5つの方法

今すぐできる歯ぎしり対策5つの方法

歯ぎしり対策というと歯科で作るマウスピースの印象が強いですが、日常生活の中でできるセルフケアも非常に重要です。特に、睡眠の質や筋肉の緊張、日中の食いしばり癖にアプローチし、歯ぎしりの頻度や強さをやわらげる方法は非常に効果的です。

今日から自宅で実践できる5つの方法を紹介します。

1. 睡眠環境の改善で質の良い睡眠を確保する

歯ぎしりを減らすためには、まず睡眠の質を整えることが欠かせません。厚生労働省が公表している「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、成人においては睡眠時間を6時間以上確保することが一つの目安とされています。※6

睡眠時間に加えて、眠っている環境も歯ぎしりに大きく影響します。寝室の温度や湿度が適切でないと眠りが浅くなりやすく、結果として歯ぎしりが起こる確率も上がります。一般的には、およそ18度から26度の室温、40~60%程度の湿度が快適とされています。

また寝具も重要です。枕の高さが合っていない場合、顎が前に突き出た姿勢になり、顎周囲の筋肉が緊張しやすくなるため、枕の高さを調整しましょう。

今すぐできる調整方法としておすすめなのが、フェイスタオルを使った枕の高さ調整です。仰向けで寝た状態で首の後ろにタオルを一枚差し込み、呼吸が楽で顎の力が抜ける高さを探してみてください。家にあるもので微調整できるため、手軽に取り入れやすいです。

2. 顎周りのマッサージとストレッチを取り入れる

次に意識したいのが、顎周囲の筋肉をゆるめるケアです。歯ぎしりや食いしばりがある人は、ほおの奥にある咬筋や、こめかみ周辺の側頭筋、首の横に走る胸鎖乳突筋などが慢性的に緊張していることが多いとされています。顎関節症治療の指針でも、咀嚼筋のマッサージやストレッチは有効なセルフケアとして位置づけられています。※7

寝る前に数分だけでも、ほお骨の下あたりを指の腹でやさしく押し、円を描くように動かしてみてください。痛みを感じるほど強く押す必要はなく、心地よいと感じる程度で十分です。こめかみから耳の上にかけても同じように動かすと、顎全体の緊張がゆるみやすくなります。

さらに効果を高めたい場合は、温めたタオルを使う方法もおすすめです。電子レンジで軽く温めたタオルをほおからこめかみに当て、1分ほど温めてからマッサージを行ってみてください。顎周辺の筋肉がほぐれます。入浴後に行うと、リラックス効果と歯ぎしり対策を同時に期待できるのでおすすめです。

3. ストレス管理と生活習慣を見直す

歯ぎしりはストレスと深く関係しているため、生活習慣の見直しも重要なポイントになります。

厚生労働省の睡眠ガイドでは、アルコールや喫煙が睡眠の質を低下させる要因になると指摘されています。※6

寝酒は一時的に眠気を誘うように感じられますが、夜中の覚醒や浅い睡眠を増やし、歯ぎしりが起こりやすい状態を作ってしまいます。また、覚醒作用が強いカフェインを就寝直前まで摂取すると、眠りの質を下げる原因になります。喫煙も同様で、ニコチンの刺激によって交感神経が優位になりやすくなります。

寝る前は寝酒やカフェインの摂取を避けて、副交感神経が働きやすい行動を意識しましょう。ぬるめのお風呂にゆっくり浸かる、軽いストレッチを行う、静かな音楽を聴くといったことを習慣づけると、心身がリラックスして歯ぎしりのリスクを下げることにつながります。

4. 日中の食いしばり習慣に気づいて改善する

夜間の歯ぎしりだけでなく、日中の食いしばりにも注意が必要です。覚醒時に無意識で上下の歯を接触させ続ける状態は、歯列接触癖(TCH)と呼ばれ、顎関節症治療の指針でもTCHの是正が重要な対策として示されています。※7

本来、上下の歯は会話や食事のとき以外はわずかに離れているのが正常な状態です。しかし、仕事中や集中しているとき、家事や運転中などに、無意識に歯を噛み締めている人は少なくありません。この状態が続くと、顎の筋肉が常に疲労することになり、夜間の歯ぎしりを助長します。

改善のためには、まず食いしばりを自覚することが大切です。パソコンや冷蔵庫など、よく目に入る場所に「歯を離す」と書いたメモを貼るだけでも意識づけになります。1時間に一度程度顎の力を抜く時間を作り、上下の歯の間に舌先を軽く置くイメージで力を抜く練習をする方法も有効です。

5. 適度な運動で睡眠の質を高める

厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、日常的に体を動かす習慣を持つことが、睡眠の質向上につながると示されています。※8

激しい運動をする必要はありません。軽いウォーキングやストレッチでも十分です。日中に体を動かすことで、夜に深い睡眠が得られやすくなり、歯ぎしりが起こりやすい浅い眠りの割合を減らす効果が期待できます。

一駅分歩いてみる、エレベーターではなく階段を使うといった小さな工夫でも構いません。無理なく続けられる運動を生活の中に取り入れることが、歯ぎしりの根本的な改善につながります。

歯科医院での治療が必要なケースと治療法

歯科医院での治療が必要なケースと治療法

セルフケアを続けていて「これで本当に合っているのかな」と不安になることは珍しくありません。歯ぎしりは習慣の問題に見えますが、歯や顎の組織に負担が積み重なると、生活の工夫だけでは追いつかない段階に入ることもあります。

そこでここからは、歯科医院での評価や治療を検討したいサインと、代表的な治療の考え方について解説します。

マウスピース療法の効果と種類

歯科医院で行われる代表的な治療が、就寝時に装着するスプリント(ナイトガード)です。睡眠時ブラキシズムの管理では、口腔内装置(スプリント)療法が基本的な選択肢として位置づけられています。※9

ただし、ナイトガードの主な目的は、歯ぎしりそのものをゼロにするというより、歯や顎関節に加わる力を受け止めて分散し歯の損傷を増やさないことです。被害を食い止める安全装置として考えるとイメージしやすいでしょう。※9 ※10

素材や設計にはいくつかの考え方があります。ソフトタイプは装着感が比較的やさしい一方で、噛みしめが強い人では噛む行為を助長する可能性が指摘されることがあります。ハードタイプは耐久性が高く、力を受け止めて歯を守る目的に向きやすい傾向があります。両者の特徴を組み合わせたタイプを提案する医院もあり、歯の状態や噛みしめの強さ、顎関節の症状の有無で選び方が変わります。※11

費用については、保険適用になるかどうかにより異なります。歯ぎしりや食いしばりが原因で歯や顎に悪影響が出ていると診断され、治療用装置として扱われる場合は、自己負担が数千円台になることが一般的のようです。※11

装着時の違和感が心配な人は、最初から一晩中つけようとせず、就寝前の短時間から慣らしていくほうが続けやすいでしょう。違和感や痛みが出る場合は無理に我慢せず、早めに歯科で調整の相談をしてください。

受診すべきタイミングと症状のチェックポイント

「歯ぎしりがあるかも」という段階で受診するのは、決して大げさではありません。歯のすり減りがはっきり分かるようになった、歯にヒビや欠けが起きた経験がある、詰め物や被せ物が外れやすいといった場合は、力の集中が進んでいる可能性があります。加えて、朝起きたときに顎の痛みやだるさを感じたり、口の開けにくさが続いたりするなら、顎関節や咀嚼筋のトラブルが関与している可能性が高いため、放置しないでください。※9 ※10

また、口を開けたときに顎関節が鳴る感覚がある人や、頭痛や肩こりが慢性的に続く人は、噛みしめ由来の筋緊張が背景にあるかもしれません。歯科を受診すれば、噛み合わせや顎関節、歯の摩耗や修復物の状態を確認し、必要に応じて画像検査や、関連する睡眠の問題を疑う場合の追加検査を行い、適した治療法を提案してもらえるでしょう。※9

まとめ 歯ぎしり対策は「マウスピース+生活習慣」の総合戦略で

まとめ 歯ぎしり対策は「マウスピース+生活習慣」の総合戦略で

歯ぎしりは珍しい症状ではなく、自己申告ベースの調査では成人の睡眠時ブラキシズムが約5〜8%とされ、年齢とともに割合が下がる傾向も示されています。※1

歯ぎしり治療で使用するナイトガードは、歯や顎関節を守り、力を分散させる目的で使う治療であり、歯ぎしり自体を完全に止める装置というよりはダメージを増やさない方法と考えるとよいでしょう。※9 ※10

セルフケアで改善しきれないときや、歯や顎に「変化」が出てきたときは、生活習慣の見直しを続けつつ歯科で適切な検査と治療を受け、歯ぎしりを少しずつ治していきましょう。

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・参考

※1 歯ぎしり – 歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020 | 日本歯科医師会
※2 日本人の4割近くが抱える「睡眠負債」。睡眠不足を解決するソリューションとは? | フィリップス
※3 令和5年 国民健康・栄養調査報告 | 厚生労働省
※4 日本歯科医学会誌 33 | 日本歯科医学会
※5 閉塞性睡眠時無呼吸症候群患者における睡眠時ブラキシズムの検討-重度ブラキシズムを認めた一例- | CiNii Research
※6 健康づくりのための睡眠ガイド2023 | 厚生労働省
※7 顎関節症治療の指針2020 | 日本顎関節学会
※8 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 | 厚生労働省
※9 SBガイドライン-治療編-0 公開版 | 日本補綴歯科学会
※10 睡眠時ブラキシズムの診断法と管理法 | J-STAGE
※11 ナイトガード(歯ぎしり用マウスピース) | シーク歯科・矯正歯科

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