睡眠コラム by 八木 宏美2025年9月18日読了目安時間: 8

【医師監修】寝かしつけは何歳まで?子どものペースに合わせた卒業の目安と対策

目次

監修者

森田 麻里子
Child Health Laboratory 代表 / 医師

医師・小児スリープコンサルタント・睡眠専門家

2012年東京大学医学部医学科卒。
亀田総合病院にて初期研修後、2014年仙台厚生病院、2016年南相馬市立総合病院にて麻酔科医として勤務。2017年の第1子出産をきっかけに、2018年より乳幼児の睡眠問題についてのカウンセリングや講座、企業と連携したアプリ監修など行っている。2019年昭和大学病院附属東病院睡眠医療センター非常勤勤務を経て、現在は大人の睡眠カウンセリングや企業向け睡眠講座も手掛ける。

子どもの寝かしつけは、家族の日常の中でも特に大変と感じることが多い場面のひとつです。何歳ごろにどう卒業すればいいのか、悩む保護者の方も少なくありません。年齢だけで判断するのではなく、お子さん自身の発達段階や家族環境を含めた総合的な視点が必要になるでしょう。

本記事では、寝かしつけが必要とされる理由や卒業の目安、生活リズムづくりなど、子どものズレやすい就寝習慣を整えるためのヒントを解説します。お子さんの成長ステージに合わせて、負担を減らしながらスムーズに進めるポイントを一緒に考えていきましょう。子どもの睡眠は親の睡眠や生活にも大きく影響するため、対策を知っておくことはとても大切です。

寝かしつけが必要とされる理由と意義

子どもにとっての寝かしつけは、スムーズな入眠だけでなく、情緒の安定や家族のきずなを深める役割を担っているケースもあります

まだ幼い子どもにとって、就寝前に親がそばにいることは夜泣きの一因となる可能性がある一方で、安心感をもたらす面もあります。この安心感があることで寝つきが良くなり、スムーズに深い眠りへ移行しやすくなる子もいます。また抱っこして歩くと赤ちゃんがリラックスして泣きが減ったという結果を発見した研究もあります。※1

子どもがひとりで寝られるようになる時期は、育った文化や親子関係の築き方によって大きく異なります。欧米では、赤ちゃんの頃から親とは別室で寝かせる習慣があります。

一方、日本では「川の字」で眠る文化が根付いています。そのため日本では親子一緒に寝る習慣が長く続いている家庭も多く、2~3歳を過ぎても夜中に起きた子どもを寝かしつけるケースがよく見られます。しかし、このスタイルをいつまで続けるかは家庭によって異なり、「何歳まで」といった明確な区切りはありません。必要に応じて家族の生活パターンを考慮しながら、少しずつ自立を促していくのが望ましいでしょう。

情緒面の安定や親子のきずなに対するプラスの影響も考えられる一方で、寝かしつけの負担は親にも少なからずかかります。そのため、子どもが安心して眠りにつくための方法を整えつつ、親の負担も軽減できるバランスを模索する必要があります。家族みんながストレスなく過ごせる寝かしつけのスタイルを見つけられると、毎日の暮らしがより快適になるでしょう。

子どもの安心感と健やかな睡眠

子どもは夜になると未知への不安を抱きやすいと言われています。寝る前に親が隣にいてくれる方が、子どもは「守られている」という感覚を持ちやすくなり、安心して眠りに落ちることもあります

親子のスキンシップが生む情緒の安定

添い寝や抱っこでの寝かしつけには、子どもと親が直接触れ合い、お互いの体温を感じられるというメリットがあります。スキンシップは親子の信頼関係を築くうえでも大切なプロセスであり、子どもの発育や情緒面に好影響を与えます。就寝前のやりとりが良好なコミュニケーションとなり、子どもは「安心して眠れる存在がそばにいる」という気持ちを自然に育んでいくこともありますただし、乳児との添い寝は窒息等の事故のリスクとなります。少なくとも1歳になるまでは、別の布団で眠るのがおすすめです。

いつまで続ける?寝かしつけ卒業の理想的なタイミング

子どもがひとりで寝るように移行する時期は、生活環境や本人の意欲などさまざまな要因に左右されます。

乳児の頃から寝かしつけを行っている家庭で、時間をかけた寝かしつけを何歳まで行うかは、実際には家庭ごとに大きく異なるものです。最初の節目として挙げられるのは2~3歳ころで、幼稚園や保育園に通い始めるタイミングで寝かしつけのスタイルを変え始めるという例もあります。ただし、子どもによっては新しい環境に慣れるまでの不安から、引き続き添い寝を必要とするケースもあるでしょう。

第二の節目としてよく見られるのが、小学校入学にあわせた寝かしつけ卒業です。小学生になると生活パターンが変わり、宿題や習い事など就寝前にやることが増えることも少なくありません。こうした変化とあわせて、「自分の部屋でひとりで寝る」という意欲が高まる子どもも少なくないのです。

もちろん子どもの性格や成長は人それぞれであり、急いで卒業を促す必要はありません。大切なのは、「ひとりで寝てみたい」という意欲が芽生えたときに、その気持ちを尊重しながらサポートできる体制を整えることです。子どもの気持ちに寄り添いつつ、家族にとって無理のない寝かしつけの変化を探ってみましょう。

乳幼児期から幼稚園・保育園への移行をきっかけにする

幼稚園や保育園の入園は、一日を通した生活リズムが大きく変化するタイミングです。この変化をきっかけに、寝かしつけの方法を徐々に変えながら子どもの自立を促すのもひとつの方法でしょう。たとえば、最初は少し離れた場所に座るなど、スモールステップで取り組むと子どもが不安になりにくくスムーズです。

小学校入学・進級を機に区切りをつける考え方

小学校へ進級すると、昼間の活動量も増えて子どもの体力が向上し、夜の眠気も強まりやすくなります。さらに学習や友人関係など、昼間の出来事が多くなることで成長意欲が刺激される時期とも言えるでしょう。このため、小学校入学を機に「ひとりで寝てみようか」という提案が子どもの自尊心につながり、素直に卒業へと移行できる場合があります。

子どもの「ひとりで寝てみたい」意欲を見極める

子どもが明確に「もうひとりで大丈夫」と言い出す時期は、個人差があります。なかなかそうした言葉が出ない場合でも、親や周りの大人が負担なく手伝える環境を整えてあげると自然に意欲が高まることもあります。本人のやる気を感じ取ったら、その気持ちを逃さずに背中を押してあげることで、スムーズな寝かしつけ卒業につながるでしょう。

添い寝・抱っこ・添い乳が長引くときの注意点

寝かしつけのスタイルが固定化してしまうと、かえって卒業が難しくなる場合があります。

たとえば、添い乳の習慣が長く続くと子どもが「授乳されていないと寝られない」という認識を強く持ってしまいます。これは親の生活リズムにも大きく影響し、夜間頻回に起こされることによる睡眠不足を招く原因にもなりかねません。抱っこでの寝かしつけも同様です。添い乳や抱っこでの寝かしつけにより夜間の頻回覚醒が起きている場合は、寝かしつけの介入を無くしていくことが改善の鍵になります。

さらに夫婦や家族が協力体制を築いておくと、寝かしつけの負担を各自が抱え込みにくくなります。家族間で役割分担やローテーションを取り入れることで、子どもにとっても「今日はお父さん、明日はお母さん」といった形で寝かしつけが当たり前のルーティンとなりやすいのです。

抱っこでの寝かしつけがやめられない場合

抱っこなどの寝かしつけの介入を上手に無くしていく方法が、いわゆる「ねんねトレーニング」です。ねんねトレーニングは、生後6ヶ月から1歳半頃までの健康な子どもで行うことができます。子どもを寝床に寝かせたら親が部屋を出て、一定の時間ごとに入室して声掛けをする方法や、そばに座ってトントンや声掛けをして寝るまで待ち、徐々にトントンや声掛けも無くしていく方法等があります。

添い乳からの卒業ステップとコツ

添い乳は座っての授乳に切り替えましょう。授乳が終わったら寝床におろし、寝付けないようならねんねトレーニングの対応を行います。夜間の授乳回数を減らしたい場合は、授乳する時間帯を決め、その他は授乳せずにねんねトレーニングの対応を行いましょう。

夫婦・家族で協力し合うための体制づくり

家族構成によっては、寝かしつけを一人で担うのが当たり前になっているケースもあるかもしれません。しかし、お互いに仕事や家事で疲れている中、ずっと一方が寝かしつけを続けるのは負担が大きくなりがちです。そこで、ローテーション制や曜日ごとの担当などを決めることで負担を分散し、子どもにも柔軟に対応できる環境を整えると、結果的にスムーズに卒業へ近づきます。

ひとり寝を促す生活リズムと環境づくり

子どもが自然に自分のベッドで寝られるように、日々のルーティンと環境整備は欠かせません。

生活リズムの中でも、就寝前のルーティンを確立することは特に重要です。たとえば、夕食→入浴→歯磨き→読み聞かせ→消灯といったシンプルな流れを毎日繰り返すと、子どもの体と心が「そろそろ寝る時間だ」と認識しやすくなります。これは安心感にもつながり、ひとり寝の習慣を助ける大きなステップです。

昼間に思い切り体を動かし、適度な疲労を蓄積させることも有効な手段です。幼少期は好奇心が旺盛なので、外遊びや散歩、室内運動などの時間を多めにとり、夕方以降自然と眠くなるサイクルを作っていきましょう。これにより、子ども自身が布団に入ると同時にスッと眠りに入りやすくなります。

部屋の照明や室温、音の有無といった睡眠環境にも気を配りましょう。過度な明るさや暑さは、入眠を妨げる一因となります。静かな音環境に調整してあげると、子どもの気持ちが落ち着きやすくなります。

寝る前のルーティンを確立し習慣化させる

たとえば、絵本の読み聞かせやスキンケアなどを毎晩同じ順番で行うことで、子どもの脳は「寝るときの一連の行動」として無意識に認識していきます。特に絵本の読み聞かせは、親の声で安心しながら穏やかに眠りに入れる効果が期待できるでしょう。

日中の活動量を増やし適度な疲労をつくる

幼稚園や保育園での外遊びだけでなく、休日には公園やプールなど体を動かせる場所を積極的に活用してみてください。十分に体を使うことで、夜間には自然と深い眠りに誘導されやすくなります。子どもが喜ぶアクティビティを見つけることも、生活リズムを整えるうえで重要です。

照明・室温・音環境を整えて入眠をスムーズに

寝室は高すぎず低すぎない適切な室温を保ち、照明はできるだけ暗く設定しておくと落ち着きやすくなります。夏はエアコンや扇風機、冬はエアコン・加湿器などを利用して快適な空間を作りましょう。音に敏感な子どもの場合は、ベッド周りの家電の音や外からの騒音をできる限り減らしたり、ホワイトノイズという雑音で物音をかき消してあげると、ストレスなく眠りに入れるはずです。

関連記事:ホワイトノイズとは?その効果と活用方法

寝かしつけの負担を軽くするヒントとNG行動

寝かしつけが大変に感じるときは、生活習慣の見直しだけでなく、親のメンタルケアも重要です。

夜遅くまでアニメや動画を視聴すると、子どもの脳が興奮状態になり寝つきが悪くなるケースがあります。就寝直前までのテレビやスマホ、タブレットの使用を避けることで、子どもが落ち着いて布団に入れるように意識しましょう。視覚刺激の少ない読書やお絵かきに切り替えるのも一つの策です。

親自身がイライラしてしまうと、子どもにその緊張感が伝わり、余計に寝つきが悪くなることがあります。子どもが寝つく前に深呼吸をしたり、音楽を小さく流すなどして、親もリラックスできる環境づくりを工夫してみましょう。ほどよいリラックス状態は子どもの安心感を引き出します。

焦りや不安で心がいっぱいになると、「早く寝てほしい」という思いが強まり、子どもにもプレッシャーを与えがちです。そこで、毎日の寝かしつけ時間を前向きに捉え、「今日も一日を振り返る時間」くらいの気持ちで臨むと、寝かしつけそのものがスムーズになりやすいです。

遅い時間までの映像視聴が及ぼす影響

ブルーライトを多く含むデバイスの使用は覚醒度を高め、脳への刺激となってしまいます。特に遅い時間まで使用するほど寝つきが悪くなる傾向があり、子どもの睡眠時間を圧迫してしまいます。親子で時間を決めて使用を制限し、代わりに穏やかで刺激が少ないアクティビティを取り入れるのがおすすめです。

イライラを溜めないためのマインドセット

思うように寝てくれない子どもに対して、イライラを感じるのは自然なことです。しかし、その気持ちをそのままぶつけると子どもはさらに不安定になります。日中から適度に息抜きできる時間を持ち、穏やかな心持ちで寝かしつけに挑めるように、自分もサポートしてあげる意識を忘れないようにしましょう。

寝かしつけがつらいときの対処法

寝かしつけが辛いと感じるときは、まず「親自身が楽になる工夫」を取り入れるのが大切です。子どもを寝かせることは毎日のことなので、親が疲れ切ってしまうとお互いに負担になってしまいます。

対処法の例

  • 寝かしつけの「儀式」を決める
    毎晩同じ順番で「絵本を読む → 電気を暗くする → 子守唄を歌う」といった流れをつくると、子どもは「これから寝る時間だ」と分かりやすくなります。親も毎回ゼロから工夫する必要がなくなり、負担が減ります。
  • 寝かしつけの介入を少しずつ減らす
    特に幼児の子どもであれば、介入は少しずつ減らしていきましょう。例えばトントンであれば、トントンの間隔を開けたり、強さを弱くしたりなどして、徐々にトントンを辞めていきます。
  • 寝かしつけを早めすぎない
    乳児では寝かしつけが遅すぎて寝付きが悪くなることもありますが、幼児では寝かしつけが早すぎるケースが増えてきます。あまりに早く寝かしつけしようとすると、眠くないので寝付くまでの時間も長引いてしまいます。幼児の寝かしつけに時間が長くかかる場合は、思い切って寝かしつけ開始時間を遅らせる方がストレスも少なく、上手くいくことも多いです。

就寝前のルーティンを決めてみよう!

睡眠研究では、「ベッドタイム・ルーティン(就寝前の習慣)」が子どもの入眠を助け、親のストレスも減らすことが分かっています。

例えば、米国睡眠財団(National Sleep Foundation)の報告によると、絵本を読んだり、入浴や歯磨きなど毎晩決まった流れを行うことで、子どもの入眠時間が短くなり、夜間覚醒も減少することが確認されています。※2

就寝前のルーティン例

1. お風呂でリラックス(就寝の1時間前までに)

  • 軽く温かいお風呂に入ると、体温がいったん上がり、その後下がることで眠気が訪れやすくなります。
  • 長湯よりも10〜15分程度の入浴が効果的。

2. 照明を暗めにする(寝る1時間前

  • 強い光は「まだ昼間だ」と脳に勘違いさせます。
  • 就寝1時間前からは間接照明や常夜灯で薄暗くしましょう。ブルーライトは特に避けるのがポイントです。

3. 静かな遊びや絵本の時間

  • テレビや激しい遊びではなく、絵本の読み聞かせやお話をする時間に切り替えましょう。

4. 歯磨き & トイレ

  • 習慣として「寝る前は必ず歯磨き・トイレ」と決めると、体も自然と寝る準備に入ります。
  • これをルーティンに組み込むと、「この後は寝るんだ」と子どもも理解しやすいです。

5. 軽いスキンシップ

  • 寝る前に、ハグしながら今日の楽しかったことなどをお話するのも良いでしょう。

ポイント

  • 毎晩同じ流れを繰り返すことが大事です。子どもは「パターン」で安心しやすいため、習慣化すると寝かしつけ時間が短くなります。
  • 論文でも、ベッドタイム・ルーティンを導入した家庭では「入眠までの時間が有意に短縮」「親のストレス軽減」が報告されています。

 

家族やパートナーとシフトを組んで負担を分散

寝かしつけ当番を何日かごとに交代する、あるいは週末はパートナーがメインで行うなど、柔軟なシフトを組むことでお互いが休息を取れるようになります。子どもにとっても、誰かが寝かしつけをしてくれる安心感を持ち続けながら、さまざまな人とのコミュニケーションを楽しめるメリットがあります。

保健師・助産師など専門家への相談も視野に

寝かしつけの悩みは一人で抱え込まず、公共機関や医療機関の専門家に早めに相談してみるのがおすすめです。睡眠以外にも、食事や生活リズム全体を見直すアドバイスを受けられる場合があるので、より広い視点で改善策を検討しやすくなります。

見守りカメラなど便利グッズを活用する

子どもがひとりで眠るようになってきたタイミングでは、見守りカメラがあると安心感が高まります。少し別の部屋にいても姿を確認できることで、親の不安を和らげるとともに、子ども自身も完全に放っておかれているわけではないと感じやすくなります。結果的にスムーズな独り寝の定着につながるでしょう。

まとめ

寝かしつけの卒業時期は家庭ごとに異なりますが、子どもの自立を見据えた段階的なサポートが重要です。

寝かしつけは一般的に2~3歳ごろにはいったんの節目を感じることが多いものの、家庭によっては6歳を過ぎても続く例が見られます。卒業を考える際は発達段階や生活リズム、家族構成などを踏まえて、無理のないステップで取り組みましょう。

子どもの精神面や暮らし全体を見渡しながら、寝かしつけのスタイルを徐々に変化させると、親子の負担も軽減しやすくなります。入眠儀式や生活リズムづくり、家族の協力体制など、多角的にアプローチするとスムーズに進行することが多いです。

一方で、寝かしつけが辛くなったときは一人で抱えずに周囲や専門家に相談することも重要です。長期的な視点で子どもの寝かしつけ卒業を見据えつつ、日々の工夫やサポートを大切にして、より良い睡眠習慣と家族の暮らしを実現していきましょう。

参考文献

  1. Infant calming responses during maternal carrying in humans and mice 
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23602481/
  2. 2.”A nightly bedtime routine: impact on sleep in young children and maternal mood.”   https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19480226/