睡眠コラム by 古川 由己(Yuki Furukawa)2026年1月22日読了目安時間: 6

【不眠専門医監修】疲れてるのに眠れないのはなぜ?原因と今夜できる対処法をやさしく解説

古川 由己(Yuki Furukawa)

所属:東京大学 大学院医学系研究科 脳神経医学専攻 臨床精神医学教室 / ミュンヘン工科大学医学部精神科・心理療法科

プロフィール:日本専門医機構認定精神科専門医、精神保健指定医。臨床と並行して臨床研究を主導。筆頭著者として、精神科臨床領域のトップジャーナルであるJAMA Psychiatryなどに論文を発表。著書に『ねころんで読める(けどねころんじゃいけない)不眠症』。不眠の認知行動療法 (CBT-I) の普及に取り組んでいる。

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「疲れているのに眠れない」

「眠いのに眠れない」

ということはありませんか?

眠れないことに悩んで余計に目が醒めてしまうという方もいるかも知れません。

この記事では疲れているのに、眠れない場合の原因と対処法について紹介します。

疲れているのに眠れないのはおかしいこと?

「疲れているのに眠れない」という経験は、決して珍しいものではありません。
そもそも、「疲れているのに眠れない」とは、どのような状態なのでしょうか。

多くの人は、

疲れていれば、自然と眠れるはず

と思いがちです。しかし、これはよくある誤解です。

疲労=すぐに眠れる、ではありません

たとえ体がクタクタに疲れていても、それがすぐに眠れることにはなりません

たとえば、マラソンを走りきった人は間違いなく疲労困憊しています。しかし、ゴールした瞬間にその場で眠ってしまうランナーを見たことはないはずです。サッカーが延長戦までもつれ込んでも、試合終了後に選手が眠ってしまうわけではありません。

運動は不眠の改善に役立つことが知られていますが[1]、「今すぐ眠れる状態」になるとは限らないのです。

不眠に悩んだことのない人ほど、

「疲れたら眠れるでしょ?」

と簡単に言いがちです。(実際に言われたことはありませんか?)

しかし現実には、不眠のある方の多くが強い疲労感を訴えています。それでも眠れないのです。


不眠症状と疲労は、はっきりと関連していることも分かっています[2]。

もちろん、

  • 眠れないから疲れる
  • 疲れているからつらい

という面はありますが、
「疲れたからといって眠れるようになるわけではない」というのが実情です。疲れと眠気は似ていますが別物なのです。(退屈な会議、昼食後などでは、体はそれほど疲れていなくても、強い眠気を感じることがありませんか?電車やバスに乗っていると不思議と眠くなるという方もいるかも知れません。疲れていることは眠気の前提条件というわけでもないのです。)

「疲れているのに眠れない」にはいくつかのタイプがあります。それぞれちょっとずつ対処法が変わってくるので注意が必要です。

主なものは、次の4つです。

  1. 緊急事態で興奮して眠れない
     例:COVID-19対応、災害対応、葬儀など
  2. 体内リズムのズレで眠れない
     例:交代勤務、育児・介護、時差ボケ、夜型生活
  3. 身体症状が邪魔をする
     例:痛み、かゆみ、更年期症状
  4. 長引く不眠

このあと、順番にわかりやすく解説していきます。

緊急事態への対処に追われていて疲れているけど興奮していて寝付けない

  • 目的: 身体と脳のズレを理解させる
  • 主要ポイント:
    • 自律神経(交感神経・副交感神経)の仕組み
    • ストレスで脳が覚醒し続けるメカニズム
    • 「考えごとが止まらない」正体
  • 含めるデータ・事実:
  • コルチゾール・メラトニンの役割

たとえば、

  • 災害対応
  • 家族や親族の葬儀
  • 仕事や家庭での重大なトラブル

このような緊急事態のあとに、眠れなくなる方は少なくありません。

 

人の体には、危険やストレスを感じたときに働く「交感神経」という仕組みがあります。

これは、体を戦闘モードにするスイッチのようなものです。

  • 心拍数が上がる
  • 目がさえる
  • 頭が冴えてしまう

この状態では、たとえ体が疲れていても、簡単には眠れません。でもこれは、「異常」でも「弱さ」でもなく、身を守るための正常な反応なのです。交感神経が頑張ってくれるからこそ、緊急対応ができるのです。

短期間なら心配いりません。

緊急事態の直後に一時的に眠れなくなるのは、誰にでも起こりうる自然なことです。

数日から1週間程度で落ち着くことも多く、過度に心配する必要はありません。

ただし、長引くと心が疲れてしまいます。

何週間も眠れない、気持ちが張りつめたまま、「もう限界かも」と感じる。

このような状態が続くと、心も体も消耗してしまいます。

緊急事態がすぐに終わるならよいのですが、

長期戦になる場合は、意識的に休むことがとても大切です。

一人で抱え込まないことが大事です。

  • 「自分が頑張らないと」
  • 「弱音を吐いてはいけない」

そう思いがちですが、助けを求めることも大切な対処法です。

  • 周囲に相談する
  • 休める時間をつくる
  • 無理をしすぎない

心と体を守ることが、結果的に長く乗り切る力になります。

なお、なんとか頑張ろうと普段よりもカフェイン入り飲料が増えているかもしれません。とりすぎは睡眠だけでなく体によくありません。気をつけてください。特に動悸がするようであれば要注意です。

体内リズムのズレで眠れない

睡眠のためには起きていることで疲れをためるプロセスだけでなく、体内時計も大事です。

「眠気」と「体内時計」がうまく同期することで眠れるのです。睡眠の2プロセスモデル(Two-Process Model of Sleep)と呼ばれます。[3]

・眠気が溜まっている

だけでは不十分で

・体内時計も「眠る時間だよ」と言っている

という条件が揃うのが大事なのです。

生活リズムが崩れがちな人はまず、起きる時間を一定にするところから始めましょう。

育児介護などで夜中にどうしても起きざるを得ない方もいます。家族や福祉サービスの協力を得て、まとまって休める時間ができるといいですね。

交代勤務・夜勤の方は

  1. 夜勤前に長めの仮眠をとること
  2. 夜勤後の仮眠前にあまり陽の光を浴びないようにサングラスをかけるなどの工夫すること
  3. 夜勤後の朝に仮眠をするとしても長くしないこと、遮光カーテンを使って暗くするなど工夫をすること
  4. 夜勤の次の日の昼寝も長くしないこと
  5. 夜勤の次の日の睡眠は眠くなったら早めに取ること
  6. 複数のシフトの中でも共通して睡眠が取れる時間を3-4時間設ける「睡眠アンカー」を作ること

などが推奨されています。[4, 5] 

痛み・かゆみなど体の症状のために眠れない

「腰が痛くて眠るための体勢がみつからない」

「かゆくてかゆくてなかなか眠れない」

いくら疲れていて、眠気が溜まっていても、体の症状のために眠れないということもあります。まずは体の症状を改善できないか、医療機関で相談してみましょう。

とはいえ、すでに相談しているけれどどうにもならない、という方もいらっしゃるかと思います。実は、体の症状がある方の不眠に対しても、不眠の認知行動療法という治療法が有効です。[6] 欧州不眠症ガイドラインでも、体の症状の治療と並行して、不眠の認知行動療法を提供するように推奨されています。

日本ではまだまだ普及していませんが、近年ではオンラインでも受けられるところがあります。興味がある方はぜひ調べてみてください。

長引く不眠

「疲れているのに眠れない」という方は、不眠が長引いてしまっている事が多いです。

「疲れ」と「眠気」を混同し、「眠気」をきちんと感じられなくなってしまっていることもあります。

不眠の方の多くは、不眠をなんとかしようとして、余計に不眠になってしまう悪循環に陥っています。

よくあるのは、

  • なんとか眠ろうと早くから横になる
  • 昼寝をして睡眠時間を確保しようとする
  • 早く眠らなきゃと焦る

などがあります。

横になる時間を延ばすと、睡眠が浅くなって、余計に熟睡考えられなくなってしまいます。

昼寝をすると、せっかくたまってきていた眠気が解消されて、夜までに眠気が十分たまらなくなってしまいます。

実は、本来眠る時間の2−4時間前は、体内時計の働きで脳が最も覚醒して眠りにくい時間帯です。「睡眠禁止ゾーン(Forbidden zone for sleep)」とも呼ばれます。寝ようとしても眠れないし、寝られたとしてもすぐに起きてしまいます。無理に早くから寝ようとしてもうまくいかないのはこのためです。

疲れていても眠れないときにやっていいこと・悪いこと

「疲れていても頑張らなければ」という時もあるかもしれません。

短期的にはそれで乗り切れることが多いかもしれませんが、長引くとずっと緊張したままというのはよくありません。意識的に息抜きの時間を取るようにしましょう。

また、カフェインの取りすぎにも要注意です。健康成人で1日のカフェイン摂取量は400mgまでが目安とされています。[8]  コーヒーで4-5杯程度までです。特に夕方以降は控えるようにしましょう。エナジードリンクの中には高用量のカフェインが含まれているものもあり要注意です。特に、動悸や吐き気がある場合は過剰摂取の可能性があります。

まだ十分に眠気が溜まっていないのに早くから横になるのは逆効果なことが多いです。巷でよく言われる「早寝早起き」は、不眠には不向きです。むしろ「遅寝早起き」を試してみてください。

昼寝はするとしても午後3時までの30分までにしましょう。長く取りすぎると余計による眠れなくなってしまいます。

巷では「眠れなくても横になっていれば疲れは取れる」などと言われることがあります。短期的に眠れなくなっている人はそれでいいかと思いますが、不眠が長引いている場合は要注意です。特に、8時間以上横になっているけれども眠れないで辛い時間が長いという場合は、一時的に横になる時間を短くしたほうがよいかもしれません。

毎日完璧な睡眠を取れる人はいません。完璧な睡眠を求めようとするほど逃げていくものです。ある程度日常生活を送れていたら十分、と思ったほうがむしろ眠れるものです。

こんな状態が続くなら専門家に相談を

たまに眠れないことがあるのは自然なことです。夜中に1−2回起きることがあるのも自然なことです。特に昼間の生活に問題がなければ気にしなくてよいでしょう。

ただし、眠れない状態が1ヶ月以上続き、辛いようであれば、我慢せず専門家に相談をしてみてください。

不眠症は他の様々な疾患と合併することがあります。

かかりつけ医がいる場合はまずかかりつけ医に相談してください。不安や気分の落ち込みが強い場合は精神科、いびきや寝ている間に、呼吸が止まると指摘されたことがある場合は、耳鼻咽喉科などが候補になるでしょう。いずれにせよ受診したときに眠れない以外にも気になることがあればしっかりと伝えるようにしてください。

まとめ

「こんなに疲れているのに、どうして眠れないのだろう」

そう感じる夜が続くと、不安や焦りが強くなってしまいますよね。しかし、疲れているのに眠れないのは決して珍しいことでも、異常なことでもありません。

私たちの睡眠は、「疲れのたまり具合」だけで決まるものではなく、「体内時計」や「心身の緊張状態」、「体の症状」など、さまざまな要因が関わっています。強いストレスや緊張があると、脳は覚醒モードのままになり、体が疲れていても眠れなくなります。また、生活リズムの乱れや夜勤・育児・介護などで体内時計がずれると、眠気のタイミングが合わなくなります。さらに、痛みやかゆみといった身体症状があれば、眠ろうとしても眠れません。

加えて、不眠が長引くと「早く寝なきゃ」「横になっていれば大丈夫」といった行動が逆効果になり、眠気が十分にたまらない悪循環に陥ることもあります。特に、無理に早く布団に入る、長い昼寝をする、寝床で考えごとを続けるといった習慣は、かえって寝つきを悪くしてしまいます。

大切なのは、「完璧に眠ろう」としないことです。眠れない夜があっても、人の体はある程度の回復力を持っています。

それでも、眠れない状態が1か月以上続き、日中の生活に支障が出ている場合は、我慢せず専門家に相談してください。不眠は治療できる症状です。お薬に頼らずに眠れるようになる治療法(不眠の認知行動療法)もあります。今夜は「眠らなきゃ」と力を入れすぎず、できることから一つずつ試してみてください。

参考

  1. Banno M, Harada Y, Taniguchi M, et al. Exercise can improve sleep quality: a systematic review and meta-analysis. PeerJ. 2018;6:e5172. Published 2018 Jul 11. doi:10.7717/peerj.5172
  2. Kim SJ, Kim S, Jeon S, Leary EB, Barwick F, Mignot E. Factors associated with fatigue in patients with insomnia. J Psychiatr Res. 2019;117:24-30. doi:10.1016/j.jpsychires.2019.06.021
  3. Borbély A. The two-process model of sleep regulation: Beginnings and outlook. J Sleep Res. 2022;31(4):e13598. doi:10.1111/jsr.13598
  4. Wickwire EM, Geiger-Brown J, Scharf SM, Drake CL. Shift Work and Shift Work Sleep Disorder: Clinical and Organizational Perspectives. Chest. 2017;151(5):1156-1172. doi:10.1016/j.chest.2016.12.007
  5. Minors DS, Waterhouse JM. Does ‘anchor sleep’ entrain circadian rhythms? Evidence from constant routine studies. J Physiol. 1983;345:451-467. doi:10.1113/jphysiol.1983.sp014988
  6. Wu JQ, Appleman ER, Salazar RD, Ong JC. Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia Comorbid With Psychiatric and Medical Conditions: A Meta-analysis. JAMA Intern Med. 2015;175(9):1461-1472. doi:10.1001/jamainternmed.2015.3006
  7. Riemann D, Espie CA, Altena E, et al. The European Insomnia Guideline: An update on the diagnosis and treatment of insomnia 2023. J Sleep Res. 2023;32(6):e14035. doi:10.1111/jsr.14035. 日本語訳: 古川由己. 監修: 山本隆一郎, 中島俊, 坂田昌嗣. 2025. URL: https://yukifurukawa.jp/european-insomnia-guideline-2023/ 
  8. 食品に含まれるカフェインの過剰摂取について(消費者庁. 2024年. https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/food_safety/food_safety_portal/other/contents_002/ 最終確認 2026年1月17日)

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