睡眠コラム by 松本 恭2025年6月25日読了目安時間: 7

お酒を飲むと眠くなるのはなぜ?アルコールと睡眠の仕組みを徹底解説

松本 恭
コピーライター / 上級睡眠健康指導士

「健康の秘訣はぐっすり眠ること」がモットーで、これまでウォーターベッド、ウッドスプリングベッド、西式健康枕、ハンモックなどさまざまな寝具の寝心地を追求してきた睡眠マニア。偶然出会ったコアラマットレス®︎の快適さに感銘を受け、メンバーとして参加。上級睡眠健康指導士としての知識を通して、より多くの人に快眠を届けたいと願っている。

家族や友人との大切な時間。お酒を少し飲むだけで目がとろ〜んとして徐々に意識が遠のいてしまい、十分楽しめないのは寂しいですよね。

”お酒を飲むと、眠くなる”

この眠気や制御不能な状態が、健康問題に何らかの影響をもたらすかもしれないと不安を感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか?しかしこれには理由があります。まずはこのアルコールと睡眠の関係を知ることから始めてみましょう!生活に活かせるヒントが見つかるかもしれません。

お酒で感じる眠気のメカニズム

まずはお酒で眠気が生じるメカニズムについて紐解いて行きましょう。お酒に含まれるアルコール成分が眠気を引き起こす仕組みを解説します。

アルコールが中枢神経を抑制する

アルコールは、γ—アミノ酪酸(GABA:ギャバ)と呼ばれる神経伝達物質の働きを増幅させて中枢神経を抑制する働きがあります。そのため、リラックス効果と眠気を感じやすくなり、入眠が促進されます。一見寝つきをよくするためにアルコールは有効なようにも思えますが、睡眠全体で見ると悪影響も多いです。アルコールが総合的に睡眠にどのような影響を与えるのかをよく考えなければいけません。

アセトアルデヒドが招く身体の不調

アルコールは確かに入眠作用があります。と同時に、アルコールの分解過程で生成される毒性物質”アセトアルデヒド”が、血中のアセトアルデヒド濃度を高めて神経系への刺激や嘔吐中枢の活性化を促し、頭痛や吐き気、動悸などを引き起こす点に注意が必要です。アセトアルデヒドの働きが、二日酔いや飲酒による身体の不調をもたらします。

日本人は遺伝的にもアセトアルデヒドが溜まりやすい

聞いたことがある方もいるかもしれませんが、実は日本人は遺伝的にもお酒に強いとはあまり言えません。アルコールを分解する過程で生成されるアセトアルデヒドを酢酸に分解するには、ミトコンドリア型アルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)が不可欠ですが、日本人を含む東アジア系民族はALDH22型の酵素活性が低い人が多く、アセトアルデヒドが分解できないまま体内に蓄積しやすい傾向があるのです。アセトアルデヒドが蓄積すると、顔の赤みや不快症状が強く出る傾向があります。飲酒量を抑制しやすい、つまり飲み過ぎ防止といういい面がある一方で、頭痛や吐き気といった症状が起きやすく、発がんリスクも高まると言われています。※1

アルコールが体温に与える影響

アルコールは皮膚血管を拡張させて血流の増加を促し、熱を放散させる働きをします。その結果、深部体温が低下しやすくなり、寒冷下では低体温症のリスクが高まります。酔っ払って眠ってから起きるととても寒く、震えていたという経験はありませんか?それはアルコールによる深部体温の低下が関係しているのです。

寝酒が引き起こす意外なリスク

「という言葉は聞いたことがあるかもしれません。体調不良で休息を取りたい、続いている不眠を解消したいといった場合にお酒の力を借りて眠ろうとすることを「寝酒」と言います。寝酒は入眠作用があるので寝つきをよくするには効果的ですが、その後の睡眠に大きな悪影響を与えてしまうことがよく知られています。

実際に日本の男性労働者を対象とした横断研究では、寝酒と睡眠の量の低下との関連が認められています。※2

睡眠の質低下と断続的な目覚め

少量のアルコール摂取でもノンレム睡眠(脳も身体も休息状態にある睡眠)は増幅します。しかし、次に訪れるレム睡眠(脳が比較的活発な状態ながら身体は深いリラックス状態にある睡眠)が抑制されてしまい、睡眠が浅く断片化してしまうと言われています。レム睡眠には記憶の定着や感情のコントロールなどの役割がありますが、これらが抑制されるのは心身の健康に取って喜ばしいことではありません。また、レム睡眠が抑制されると、抑制された分を取り戻そうとレム睡眠の時間や割合が増加する「レムリバウンド」という事象が発生します。レムリバウンドが起きていると悪夢や金縛りなどが発生しやすいとされ、熟睡感の低下などにもつながりかねません。

さらに、アルコール代謝後の血中アセトアルデヒドの上昇は、覚醒反応を増大させるため疲労回復が十分にできず、起床時の爽快感が低下して翌日のパフォーマンスにも大きく影響してしまうでしょう。※3

飲酒量の増加とアルコール依存症への懸念

寝酒の注意点は、アルコール依存症のリスクです。アルコールは繰り返し摂取するとシナプス機能が適応し、耐性がついてしまいます。寝酒が習慣化すると同じ導眠効果を得るために次第に飲酒量が増加し、結果的にアルコール依存状態となってしまう恐れが高いのです。「飲めば飲むほど飲み足りない」という状況に近づいてしまうかもしれません。※4

いびき・無呼吸症候群の悪化

アルコールには筋弛緩作用があります。寝ている間に筋弛緩作用がより働いてしまうと、上気道が狭くなっていびきの増大につながりやすいです。上気道が完全に塞がってしまうと、睡眠中に呼吸が止まってしまう”閉塞性睡眠時無呼吸症候群”のリスクも上がります。閉塞性睡眠時無呼吸症候群は睡眠中に気道が塞がれることで覚醒が繰り返され、十分な睡眠が取れません。それだけでなく、心血管系にも大きなストレスを与えてしまいます。実際に心血管疾患や脳卒中、狭心症、心筋梗塞などの発症リスクが報告されています。※5

体内時計に与える悪影響

アルコールは、体内時計と呼ばれる体に備わっている時計の機能にも影響を及ぼします。体内時計の調整や睡眠に関連する働きをするメラトニンや、起床が近づくに連れて分泌されるコルチゾールなどのホルモン分泌への影響も大きいです。体内時計が乱れてしまうと、日中に強い眠気が起きたり就寝時間になっても目が冴えて眠れないといった弊害が生まれます。眠れないから寝酒をし、体内時計が乱れ、眠れないのでまた寝酒をし…という悪循環に陥るリスクが高い点に注意しなければなりません。※6

寝る何時間前にお酒をやめるのがベスト?

寝酒をする時は眠りに落ちる直前までお酒を飲んでいることがほとんどですが、寝酒でなくても就寝の1〜2時間前くらいまでお酒を嗜んでいることが多いのではないでしょうか?アルコールの分解などを考慮した場合、寝る何時間前にお酒をやめるのが良いとされるのでしょうか。

アルコール耐性や体格など似個人差があるため一概には言えませんが、一般的には就寝の3時間前までに飲酒を終えるのが良いとされています。最後の一杯から実際の睡眠までの時間は空いているほどいいものの、夕食時に飲む習慣があれば就寝3時間前程度と覚えておくと良いでしょう。飲酒時間よりも飲酒量の調整によって就寝時のアルコール濃度を抑えやすいです。翌日の二日酔いや睡眠の質の低下を防ぐためにも、飲酒量には十分注意しましょう。

翌日の二日酔い・集中力低下を防ぐポイント

飲酒による二日酔いや翌日の影響をなるべく最小限にするには、とにかく水分補給を行うです。アルコールと同量以上の水分を補給しましょう。

アルコールには利尿作用があり、体内の水分が失われていきます。翌日の頭痛や体のだるさは脱水症状も一因なのです。体内の水分が失われていくと喉が乾き、水分補給を行わない場合はお酒で喉を潤すというサイクルになってしまいます。お酒の席を楽しんでいるとつい水分補給を忘れがちですが、必ずお酒の横にチェイサーとしてお水を置いておきましょう。目の前に水があれば、忘れずに摂取できます。また、普段お水をお酒と一緒に飲む習慣がない方は、”お酒を飲む前にコップ一杯のお水”というとても簡単な習慣づけから始めると良いでしょう。

寝酒以外に眠りを促す方法とは?

寝酒に頼っている方は、「そんなに寝酒がダメならどうやって寝ればいいんだ!」と思うかもしれません。急にやめようと思わず、まずは少しずつ寝酒を減らしていくのがポイントです。なぜなら今から紹介する代替方法が習慣づくには時間がかかりますし、寝酒と比較すると効き目が弱いと感じやすいからです。

寝酒をいきなり0にしたり、大幅に量を減らしたりすると、前述したレムリバウンドが起きてしまうことがあります。まずは寝酒の量を少しずつ減らし、順調に減らせたらアルコール以外の副交感神経を優位にする習慣などを取り入れていきましょう。すぐには効果は出ませんが、継続することでがスムーズな入眠を促す習慣がつくかもしれません。

ノンアルコールビールやノンアルコールのドリンク

何かを飲む習慣は継続しつつお酒から別の飲料に代える方法として、ノンアルコールドリンクは非常に有効です。女性看護師を対象にした研究では、夕食時にノンアルコールビールを摂取すると睡眠の質が向上したという研究結果の報告もあります。ビールに含まれるホップの成分が有効に影響しているとともに、アルコールのデメリットがないというのが非常に大きなポイントです。ビールが苦手な方でも、アルコール飲料をノンアルコールにするだけで良い効果が得られます。習慣化された行動をいきなりなくすのはなかなか難しいため、まずは飲むものを置き換えてみましょう。※7

軽い運動・ストレッチで血行を促進

入眠を促す上で軽い運動やストレッチなどは有効です。軽いストレッチであれば就寝前に行う程度で良いですが、負荷が大きい運動を就寝直前に行ってしまうと逆に交感神経が優位になってしまい、眠れなくなってしまうため注意してください。運動は夕方ごろを目安に行いましょう。運動がアルコール摂取の抑制につながることを示唆する研究もあるので、ウォーキングやランニング、ヨガなどを取り入れてみると良いでしょう。※8

アルコールと上手な付き合い方

アルコールは上手に付き合うことが大切です、適量を守りながら楽しんでリスクを最小限に抑えれば、睡眠に対する悪影響を軽減できます。付き合い方のポイントを3つご紹介します。

適量の目安とペース配分を意識する

なんといっても大切なのは摂取量、そしてペース配分です。飲み会などの席で楽しんでいるとつい忘れてしまいがちですが、自分が何杯をどのくらいの時間飲んでいるか、意識してみてください。空腹時を避けることや、食事とともにゆっくり楽しむことを意識しましょう。

「寝るためのお酒」はNG

お酒自体が睡眠に関してデメリットが大きいのは、ここまででお分かりいただけたかと思います。では良い睡眠のためにはお酒を飲んではいけないのでしょうか?

もちろん飲まないに越したことはありませんが、現実的には難しいという人もいるでしょう。お酒は付き合いやストレス解消になりますから、必ずしもやめる必要はありません。回避したいのは「寝るため」にお酒を飲むことです。睡眠薬を使うようにお酒を飲むという使い方は寝酒のデメリットを受けやすく、寝酒なしでは眠れないという状況になりかねません。結果的にアルコール依存や睡眠の悪化がより顕著になってしまいます。

アルコール依存が疑われる場合の相談先

寝るためのお酒がやめられず、お酒がないと眠れないという状況になってしまった場合は、専門機関や医療機関への相談すると良いかもしれません。飲酒はタイミングや量も含めてコントロールできれば適度に楽しむことができますが、睡眠薬の代わりにしているようなら、厚生労働省のアルコール関連相談窓口や自治体の保健所に一度相談してみましょう。早めの相談が重篤化防止に役立ちます。

飲酒後に眠くなる症状と向き合うための注意点

お酒を飲んで眠くなってしまう理由から、アルコールと睡眠の関係、寝酒のデメリットなどを様々な研究結果などを含めて解説しました。アルコール摂取は入眠が早まるものの、その後の睡眠サイクルが大きく乱れやすく、二日酔いによる頭痛や倦怠感を招きやすくなります。こうした寝酒の弊害を克服するには、就寝の約3時間前までに飲酒を終えて水分補給を徹底するほか、その他ご紹介した代替方法も試してみてください。自然な入眠と質の高い睡眠を得るために、できることから取り組みましょう。どうしても寝酒習慣が抜けない場合は、専門家への相談を検討してみるのもおすすめです。

参考

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6707127/

  • ※4 Aakriti Bhandari et al. 2024 Synaptic Mechanisms of Ethanol Tolerance and Neuroplasticity: Insights from Invertebrate Models

https://www.mdpi.com/1422-0067/25/13/6838

  • ※5 Nader Salari et al. 2022 The effect of obstructive sleep apnea on the increased risk of cardiovascular disease: a systematic review and meta-analysis

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34797460/

  • ※6 Manon Meyrel et al.2020 Alterations in circadian rhythms following alcohol use: A systematic review

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0278584619303975

  • ※7 Lourdes Franco et al. 2012 The sedative effect of non-alcoholic beer in healthy female nurses

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22815680/

  • ※8 David T. Lardier et al. 2021

Exercise as a Useful Intervention to Reduce Alcohol Consumption and Improve Physical Fitness in Individuals With Alcohol Use Disorder: A Systematic Review and Meta-Analysis

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34305729/

3種類のコアラマットレスを比較