
松岡 雄治
地方国立大学医学部卒業後、横浜市内で初期臨床研修を経て、関東の基幹病院で勤務中。
資格:医師国家試験合格、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級
猫が夜中に走り回ったり、鳴いて飼い主を起こしたりすると、「どうすれば夜に寝てくれるのか」と困ってしまう方もいるでしょう。猫は明け方や夕方に活動しやすいため、夜に起きていても元気であれば、必ずしも異常とは限りません。
一方で、遊びや食事の時間、寝床の環境を見直すことで、夜間の活動を減らせる場合があります。この記事では、猫が夜に寝ない理由と今夜からできる対策、快適な睡眠環境の整え方を解説します。病気やストレスを疑い、動物病院へ相談したい変化も確認しておきましょう。
猫が寝ない・夜に活発になるのはなぜ?
猫が夜に走り回ったり鳴いたりする背景には、本来の習性や日中の過ごし方が関係しています。一方、急に夜の行動が変わった場合は、環境によるストレスや体調不良にも注意が必要です。
夜に起きていること自体で判断せず、いつから始まったのか、ほかに変化がないかも確認しながら、主な4つの理由をみていきましょう。
1. 薄明薄暮性という習性
猫は夜行性ではなく、明け方や夕方に活動しやすい「薄明薄暮性」の動物です。そのため、飼い主が寝る時間帯や起床前に、活発に動くことがあります。
また、猫は人間のように夜間にまとめて眠るとは限りません。昼夜を通して短い睡眠を何度もとるため、日中に長く寝ていても、夜通し眠るとは限らないのです。
室内で生活するうちに、食事や遊びの時間を通して飼い主に近い生活リズムになる猫もいます。ただし、人間とまったく同じリズムで過ごすわけではなく、朝夕に活発になるのは猫として自然なことなのです。
とくに子猫は、短い睡眠と活動を繰り返し、起きている間は活発に遊ぶ傾向があります。
2. 日中の運動不足や退屈
日中に体や頭を使う機会が少ないと、夜になっても活動する余力が残りやすくなります。留守番の時間が長い猫は、刺激の少ない日中を寝て過ごし、飼い主の帰宅後に食事や遊びを期待して活発になることがあります。
ただし、夜に寝てもらうために、昼寝を無理に妨げてはいけません。猫が起きている時間に短い遊びを数回取り入れ、おもちゃを追う、隠れたものを探すなど、狩りに似た動きを楽しめる機会を作りましょう。
遊ぶ時間や運動量は、猫の年齢や体力、持病の有無に合わせて調整してください。
3. 環境の変化やストレス
引っ越しや模様替え、新しい家族・ペット、工事の音など、生活環境の変化によって猫が警戒し、夜も落ち着かなくなることがあります。
猫は、においや物の位置などを手がかりに、周囲が安全かどうかを確かめています。慣れた寝床や毛布がなくなったり、食器やトイレの位置が急に変わったりすると、安心できる場所を探して歩き回る場合があります。
環境が変わったあとは、次のような方法で猫が落ち着ける場所を確保しましょう。
- 慣れた寝床や毛布を残す
- 食器やトイレの位置を一度に変えない
- 隠れて休める場所を用意する
- 引っ越し後は静かな一室から少しずつ慣らす
食欲の低下や過剰な毛づくろい、攻撃的な行動などもみられる場合は、環境への対応だけで様子を見ず、獣医師へ相談してください。
4. 高齢猫の認知症や体調不良
高齢猫が急に夜寝なくなった場合は、加齢による生活リズムの変化だけでなく、認知機能の低下や病気も考えられます。
認知機能が低下すると、昼夜のリズムが変わり、夜鳴きや徘徊などがみられることがあります。また、関節の痛みや排尿時の不快感などによって、楽な姿勢をとれず歩き回る猫もいます。
そのほか、腎臓病や甲状腺機能亢進症などが行動の変化に関係している場合もあります。食欲や体重、飲水量、排泄などに変化がないか確認してください。
夜に起きているからといって病気とは限りませんが、夜鳴きや徘徊が続く場合や、普段と異なる症状を伴う場合は、思わぬ病気が隠れていることもあるため、見過ごさないことが大切です。早めに動物病院を受診しましょう。夜間の様子を動画に残しておくと、獣医師へ状況を伝えやすくなります。
猫の一般的な睡眠時間を知っておくと、夜の活動が普段の範囲か判断しやすくなります。以下の記事も参考にしてください。
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猫が寝ないときの対策
猫の元気や食欲が普段と変わらない場合は、遊びや食事の時間、日中の過ごし方を見直してみましょう。一晩で人と同じ睡眠リズムに変えようとせず、猫の習性に配慮しながら同じ対応を続けることが大切です。
対策を始める前に、水やトイレ、室温などに問題がないか確認してください。夜の行動が急に変わった場合や、体調不良が疑われる場合は、生活リズムだけで解決しようとせず獣医師へ相談しましょう。
1. 就寝前に遊んで疲れさせる
就寝前に、猫じゃらしなどのおもちゃを使って遊ぶ時間を設けましょう。おもちゃを物陰に隠したり床の上で動かしたりすると、獲物を探して追いかけるような動きを取り入れられます。
遊ぶ時間や強度は、猫の年齢や体調に合わせてください。子猫や若い猫には短い遊びを数回取り入れ、高齢猫には床に近い位置でおもちゃをゆっくり動かすなど、負担の少ない方法を選びます。
遊びの最後はおもちゃを捕まえられるようにし、猫の興奮が落ち着いたら片づけましょう。ひもや小さなおもちゃを出したままにすると、誤飲や絡まりにつながるおそれがあります。
息が上がる、足をかばう、途中で横になるといった場合は、すぐに遊びを中止してください。遊び終えたあとは、照明や生活音を少しずつ抑え、落ち着いて過ごせる環境に切り替えましょう。
2. 食事の時間を固定する
食事は毎日できるだけ同じ時間帯に与え、猫が一日の流れを予測できるようにしましょう。夕方以降に「遊ぶ→食べる→休む」という流れを作ると、食後に落ち着いて過ごしやすくなる場合があります。猫本来の本能的なリズムに合わせるのです。
早朝に空腹で飼い主を起こす場合は、自動給餌器を利用する方法もあります。食事が出る時間を固定することで、「飼い主を起こせば食べられる」という習慣がつきにくくなります。
ただし、食事の回数を増やしても、1日に与える総量は増やさないようにしてください。療法食を与えている場合や、病気によって食事管理が必要な場合は、時間や回数を変える前に獣医師へ相談しましょう。
食事と夜鳴きの関係がわかりにくい場合は、それぞれの時刻を記録しておくと傾向を振り返りやすくなります。
3. 夜の要求鳴きには応じない
猫が夜に鳴いたときは、要求鳴きだと決めつけず、まず原因がないか確認してください。
- 水や食事がなくなっていないか
- トイレが汚れていないか
- 部屋などに閉じ込められていないか
- 痛がる、苦しそうに呼吸するなどの異変がないか
- トイレで何度もいきんでいないか
健康や生活環境に問題がなく、食事や遊びを求めて鳴いていると考えられる場合は、そのたびに食事を与えたり遊んだりしないようにします。鳴くたびに応じると、「鳴けば要求が通る」と学習してしまい、夜泣きがエスカレートする原因になるためです。
対応は家族で統一し、大声で叱ったり驚かせたりしないでください。夜鳴きが急に始まった場合や、鳴き方が普段と違う場合は、動物病院へ相談しましょう。
4. 日中の退屈を減らす
日中は、猫が自分で遊んだり周囲を観察したりできる環境を用意しましょう。キャットタワーや爪とぎ、隠れ場所などを離して配置すると、室内を移動するきっかけになります。
フードを探して取り出す知育玩具も、頭と体を使う刺激になります。初めは簡単に取り出せる状態から始め、使用したフードは1日の食事量に含めてください。
窓辺で外を眺められる場所を作る場合は、網戸の脱落や転落を防ぐ対策が必要です。また、留守番中に置くおもちゃは、壊れにくく、ひもや小さな部品がないものを選びましょう。
帰宅後だけにまとめて遊ぶのではなく、朝や夕方など猫が起きている時間に短い遊びを取り入れると、活動する機会を分散できます。
猫が安心して眠れる睡眠環境づくり
猫は、そのとき安心できる場所を自分で選んで眠ります。用意した寝床を使わなくても、形や位置、季節などが猫の好みに合っていないだけかもしれません。
ここでは、「静かで落ち着ける場所」「周囲を見渡せる高さ」「過ごしやすい温度・湿度」の3つの面から、睡眠環境の整え方を紹介します。ひとつの寝床へ無理に誘導せず、猫が複数の場所から選べるようにしましょう。
1. 静かで暗い場所に寝床を置く
寝床は、テレビや洗濯機の近く、人が頻繁に通る場所を避け、猫が落ち着いて過ごせる場所へ置きましょう。夜は照明を抑え、大きな生活音を減らすと、刺激の少ない環境を作れます。
ただし、完全な暗闇や無音にする必要はありません。猫が周囲を確認でき、水やトイレへ自由に移動できる状態を保ってください。
猫によって、囲われたベッドを好む場合もあれば、周囲を見渡せる開けた寝床を好む場合もあります。形の異なる寝床を複数用意し、猫自身に選ばせましょう。
寝床には、慣れたにおいが残る毛布やタオルを敷く方法もあります。汚れた場合は洗濯し、洗剤の強い香りが残らないよう十分にすすいで乾かしてください。
寝床の位置を頻繁に変えず、来客時などに逃げ込める場所を残すことも、猫の安心につながります。
2. 高くて見晴らしのよい居場所をつくる
高い場所から周囲を見渡せると、猫は人やほかの動物の動きを確認しながら休めます。キャットタワーの上段や安定した棚などに、横になれるスペースを作りましょう。
高い場所へ寝床を設ける場合は、次の点を確認してください。
- 家具やキャットタワーが揺れない
- 寝床から物が落下するおそれがない
- 足元が滑りにくい
- 安全に上り下りできる
- 行き止まりになっていない
子猫や高齢猫、足腰に不調のある猫には、高い場所だけでなく低い位置にも寝床を用意しましょう。必要に応じてステップや緩やかな足場を設け、転落しそうな場所には寝床を置かないでください。
多頭飼いの場合は、猫同士が適度な距離をとれるよう、異なる高さや部屋に居場所を分けます。ほかの猫に進路をふさがず、安全に移動できる動線も確保しましょう。
3. 過ごしやすい温度・湿度を保つ
室温と湿度は、季節や猫の年齢、被毛、健康状態に合わせて調整します。快適に感じる環境には個体差があるため、数値だけでなく、猫の姿勢や選んでいる寝床も観察しましょう。
暑い時期は日差しを遮り、冷房の風が寝床へ直接当たらないようにします。新鮮な水を複数の場所へ用意し、猫が自分で涼しい床や部屋へ移動できる状態を保ってください。
寒い時期は、毛布や囲いのある寝床など、暖かく過ごせる場所を用意します。暖房器具やペット用の電気マットを使う場合は、低温やけどを防ぐため、猫が熱源から自由に離れられるようにしましょう。
室温を確認する際は、猫が過ごしている高さや寝床に近い位置へ温湿度計を置くと、実際の環境を把握しやすくなります。
安静にしているのに呼吸が速い、口を開けて呼吸している、震えが続くといった場合は、室温だけの問題とは限りません。環境を調整しても改善しない場合や、呼吸に異常がある場合は、速やかに動物病院へ相談してください。
猫が飼い主と同じ寝床で眠りたがる理由については、以下の記事で解説しています。
受診を考えたいサイン
猫が一晩元気に遊んでいるだけで、すぐに病気とは限りません。ただし、夜に寝ないことに加えて、食欲や排泄、呼吸、行動などにも変化がある場合は、動物病院へ相談しましょう。
受診を考えたい主なサインは、次のとおりです。
- 食欲がない、水をほとんど飲まない
- 嘔吐や下痢を繰り返している
- 何度もトイレへ行くのに尿が出ていない
- 安静にしていても呼吸が速い、口を開けて呼吸している
- 触ると痛がる、足を引きずっている
- 大きな声で鳴き続け、落ち着かず歩き回っている
- 高齢猫の夜鳴きや徘徊が急に増えた
- 食欲が増えているのに体重が減っている
なかでも、口を開けて苦しそうに呼吸している、呼びかけへの反応がおかしい、けいれんしている、尿が出ていないといった場合は、緊急性が高い可能性があります。翌朝まで様子を見ず、かかりつけの動物病院や夜間救急へ速やかに連絡してください。
また、夜間の行動を動画などで記録しておくと、口頭では伝えにくい様子まで獣医師に正確に伝えられます。
まとめ:猫が寝ない夜は対策と環境づくりで乗り切ろう
猫は明け方や夕方に活動しやすいため、夜に起きていても元気であれば、必ずしも異常とは限りません。日中の退屈や生活環境の変化による不安が、夜の活動につながっている場合もあります。
猫が夜に寝ないときは、まず水やトイレ、室温、体調に問題がないか確認してください。そのうえで、次のような対策を続けてみましょう。
- 猫が起きている時間や就寝前に短く遊ぶ
- 食事の時間をできるだけそろえる
- 健康上の問題がなければ、要求鳴きへ毎回反応しない
- 静かで落ち着ける寝床を複数用意する
- 安全に過ごせる高い場所や隠れ場所を作る
- 猫が過ごしやすい室温と湿度に調整する
猫の習性を無理に変えるのではなく、遊びや食事の時間を通して、飼い主と猫の双方が休みやすい生活リズムへ少しずつ整えることが大切です。
ただし、食欲低下や繰り返す嘔吐、排尿困難、呼吸の異常、高齢猫の急な夜鳴きなどがある場合は、生活習慣の問題と決めつけず、動物病院へ相談しましょう。










