睡眠不足の解消法は?生活習慣と寝室環境を整える方法
睡眠コラム by 松本 恭2026年8月24日読了目安時間: 7

睡眠不足の解消法は?生活習慣と寝室環境を整える方法

毎朝目覚まし時計の音と格闘しながら重い体を起こし、日中も容赦なく襲ってくる強い眠気に頭を抱えてしまう経験はないでしょうか。私自身も、休日の寝だめやドリンク剤に頼ってその場をしのぎ、結局週が明けると激しい疲労感に戻ってしまうという悪循環に陥っていた時期がありました。

睡眠不足を根本から改善して健やかな日々を取り戻すためには、一時的な対処療法に留まらず、一日の生活リズムや就寝環境全体を丁寧に見直していく取り組みが必要です。

本記事では、上級睡眠健康指導士の資格を持つコアラマットレス社員の松本が、睡眠不足を根本から解消するための生活習慣のポイントや蓄積した睡眠負債の整え方、理想的な寝室環境の構築方法から医療機関への相談の目安まで詳しく分かりやすく解説していきます。

日本人の睡眠不足の現状と体への影響

令和6年の国民健康・栄養調査によると、1日の平均睡眠時間が6時間以上9時間未満(60歳以上については6時間以上8時間未満)だった人の割合は56.0%で、「健康日本21(第三次)」が掲げる目標値・60%には届いていません。※1

ここ1か月間に睡眠で休養がとれていると答えた人は79.6%でしたが、20歳から59歳に限ると73.0%にとどまり、60歳以上の86.1%を下回りました。※1

松本 恭
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働く世代ほど眠りで休めていない実態がうかがえます。

厚生労働省が推奨している睡眠時間の目安は、成人の場合、個人差はあるもののおおよそ6時間から8時間、少なくとも6時間以上です。睡眠不足が続くと、日中の眠気や疲労に加えて、頭痛などの心身の不調、注意力や判断力の低下による作業効率の低下につながります。※2

日本人男性労働者2,282人を14年間追跡した研究では、睡眠時間が1日当たり6時間未満の人は、7時間以上8時間未満の人と比べて、心筋梗塞や狭心症などの心血管疾患の発症リスクが4.95倍になったそうです。※2

睡眠不足を解消するために見直したい生活習慣

松本 恭
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睡眠不足を根本から解消するための生活習慣改善のポイントは、朝だけ、あるいは夜だけを変えようとしないことです。

体内時計は、起床後の光、日中の活動量、夕方以降の飲食、就寝前の過ごし方という一日の流れ全体で決まります。※2

次の5つのうち、できそうなものからまず一つだけ試してみましょう。

1. 起床時刻をそろえて朝の光を浴びる

休日も含め、起きる時刻のずれを小さくすると、睡眠と覚醒のリズムが安定します。起きたらまずカーテンを開けて、朝日の光を浴びてください。起床後に朝日の強い光を浴びることで体内時計はリセットされ、睡眠・覚醒リズムが整い、脳の覚醒度が上昇します。※2

日中に多くの光を浴びると夜間のメラトニンの分泌量が増えて入眠が促されますが、この効果は1,000ルクス以上の照度の光を浴びることで得られるそうです。※2

室内の照明では届きにくい明るさですので、通勤時に一駅分歩く、昼休みに外へ出るといった形で取り組みましょう。

朝食をとることも、体内時計を調整する方法の一つです。1週間程度朝食を欠食すると体内時計が後退して遅寝遅起きになることが報告されており、朝食の欠食が睡眠休養感の低下と関連することが分かっています。※2

決まった時刻に起きて、光を浴びて、朝食をとるという3つを、まずは平日だけでも整えてみてください。

2. 日中は適度に体を動かす

朝は忙しくてなかなか取り組めないという場合は、日中の過ごし方を工夫してみましょう。

運動習慣がない人は睡眠休養感が低いことがわかっており、日中に体を動かすことは、入眠の促進や中途覚醒の減少を通じて睡眠時間を増やし、睡眠の質を高めます。※2

厚生労働省のe-ヘルスネットでも、運動習慣がある人は寝つきがよく、中途覚醒などの不眠症状が少ないと説明されています。※3

目安となる強度は息が弾み汗をかく程度の中強度です。散歩や屋外でのウォーキング、軽い筋力トレーニング、掃除機をかけるといった動作が当てはまります。理想は1日60分程度ですが、まとまった時間がとれなくても、60分未満で定期的に続けることから始めて構いません。※2

夕方や夜に行う場合、強度が高すぎる運動を就寝直後に行うとかえって睡眠を妨げるため、就寝の約2時間から4時間前までの間に、体調に合わせて軽い運動から始めてみてください。※2※3

3. カフェインと遅い食事を控える

夕方以降にやりがちなのが、コーヒーの追加と遅い時間の食事です。カフェインには覚醒作用があり、寝つきの悪化や中途覚醒の増加を招きかねません。日本人のカフェインの血中半減期は3時間から7時間とばらつきがあり、夕方以降に100mg以上を摂取すると、入眠困難や熟睡の減少、中途覚醒の増加が生じるとされています。※2

1日の摂取合計量の目安は400mgで、ドリップコーヒーで珈琲カップ4杯分(700cc程度)に含まれる量に相当します。※2

カフェインはコーヒーだけでなく緑茶や紅茶、エナジードリンクにも含まれます。夕方以降に飲むドリンクは、麦茶やそば茶、カフェインを含まないハーブティーなどに置き換えてみましょう。カフェインに敏感な人は、就寝の5時間から6時間前から控えてください。※3

また、就寝前の夜食や間食も体内時計を後退させます。翌朝の睡眠休養感を低下させることが報告されていますので、食事をとる時間を前倒しにするようにしてみてください。※2

4. 入浴の時間を調整する

夜の習慣のなかで効果が出やすいのが入浴です。深部体温は日中の覚醒時に上昇し夜間の睡眠時に低下しますが、就寝前に体を温めると手足の血流が増えて熱の放散が進み、深部体温が下がり始める過程で寝つきやすい状態になります。※2

実生活のなかで行われた研究でも、就寝の約1時間から2時間前に入浴した場合、しなかった場合と比べて速やかに眠りに入れたとの結果でした。※2

e-ヘルスネットは、40℃の湯船に10分から15分ほど浸かれば、深部体温が0.8℃から1.0℃上昇するとしたうえで、就寝1時間から2時間前の入浴がもっとも効果的だと説明しています。※3

ただし極端に湯温が高いと交感神経の活動が高まり、かえって入眠を妨げる可能性があるため、熱すぎない湯に寝る少し前までに入っておく方法がよいでしょう。

5. 就寝前はスマホと強い光を避ける

一日の締めくくりに見直したいのが、寝る前の光です。睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌が始まるのは、就寝の約2時間前からですが、それ以降も照明やスマートフォンの強い光を浴びているとメラトニンの分泌が抑制され、睡眠・覚醒リズムが遅れて入眠が妨げられるそうです。※2

近年の照明器具やスマートフォンにはLEDが使われており、体内時計への影響が強い短波長光(ブルーライト)が多く含まれます。そのため、寝室にスマートフォンやタブレット端末を持ち込まず、できるだけ暗くして寝ることがすすめられています。※2

何時間前から禁止と一律に決める必要はありませんが、日中に光を多く浴びることで夜間の照明による体内時計への悪影響が減少することも報告されているため、朝の光と夜の暗さをセットで考えると続けやすいかもしれません。※2

関連記事:寝ながらスマホの悪影響を徹底解説|首・目・睡眠への健康被害と今すぐできる対策法

睡眠負債の返し方|寝だめで解消できる?

松本 恭
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生活習慣を整えても、これまでに積み重なった睡眠不足がすぐに消えるわけではありません。

平日の不足分を休日にまとめて取り返そうとする「寝だめ」には限界があり、この習慣で実際に眠りを「ためる」ことはできません、※2

蓄積した睡眠不足との向き合い方について、3つの手順で整理します。

1. 睡眠時間と休養感を記録する※4

最初にやるべきことは、自分の睡眠を見えるようにすることです。厚生労働省の睡眠チェックシートでは、前日の就床時刻、起床時刻、寝床で過ごした床上時間、実際に眠っていた睡眠時間、睡眠休養感を1週間記録する方法が紹介されています。睡眠休養感は、非常に良いを5点、非常に悪いを1点として毎朝つけていきます。

1週間分がそろったら、平日と休日それぞれの平均を出してください。成人は少なくとも6時間以上の睡眠時間を確保しましょう。あわせて休日の睡眠時間が平日より長くなっていないかを確認します。大幅に長くなっている場合は、普段の睡眠時間が不足している可能性があります。

睡眠休養感の平均が3点未満であれば、寝室環境や生活習慣、嗜好品のとり方に原因が潜んでいないかを早めにチェックしてください。

2. 平日の睡眠時間を少しずつ増やす

記録で不足が見えたら、休日にまとめて眠るのではなく、平日の睡眠時間を増やすことが基本です。※4

具体的には、平日の就床時刻を早めたり、必要以上の早起きを避けたりする調整がおすすめです。※5

休日の寝だめが勧められない理由は、体内時計の乱れにあります。毎週末に時差のある地域へ旅行を繰り返すことに似ているため社会的時差ボケとも呼ばれ、生活習慣病や脳血管障害、うつ病の発症リスクとなることが報告されています。※2

40歳から64歳の成人を対象とした調査では、平日6時間以上眠っている人に限って休日の1時間程度の寝だめが寿命短縮リスクを低下させた一方、平日の睡眠時間が6時間未満の人は寝だめをしても寿命短縮リスクが有意に高まりました。※2

睡眠不足は数日では解消されない場合もあり、不足した量や個人差によって変わります。焦って一気に取り返そうとするより、平日の睡眠を少しずつ積み増していくほうが確実です。

3. 短い昼寝は一時的な眠気対策に使う

平日の睡眠を増やしている途中でも、日中の眠気は襲ってきます。そのときに使えるのが短い昼寝です。e-ヘルスネットによれば、午後の眠気対策としての昼寝は15分程度の長さで十分だそうです。※3

ただし昼寝は、その場の眠気をやわらげる手段であって、慢性的な睡眠不足そのものを解消するものではありません。休日の寝だめについても、一時的に眠気が解消されても、自律神経やホルモン分泌、代謝、認知機能など睡眠不足の悪影響をすべて解消することはできないのです。※6

長い昼寝や夕方以降の仮眠は夜の寝つきを妨げますので、午後の早い時間に短くとどめると決めておきましょう。

関連記事:なぜ眠くなるのか?眠気のメカニズムと日本人の睡眠実態を科学的に解説

睡眠の質を支える寝室環境の整え方

松本 恭
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睡眠時間を確保できるようになっても、朝の休養感が戻らないことがあります。

睡眠休養感は睡眠時間の不足だけでなく、睡眠環境、生活習慣、日常的に摂取する嗜好品、睡眠障害の有無など、さまざまな要因の影響を受けるからです。※2

就寝前の過ごし方と寝室そのものを3つの視点で見直してみましょう。

1. 寝酒を避けてリラックスして過ごす

まず避けたいのが、眠れないからお酒を飲むという寝酒です。アルコールは一時的には寝つきを促進し睡眠前半では深い睡眠を増加させますが、睡眠後半の眠りの質は顕著に悪化し、飲酒量が増えるにつれて中途覚醒の回数が増加することが報告されています。※2

閉塞性睡眠時無呼吸をはじめとした睡眠障害を悪化させることも知られており、連用によって依存や耐性を形成し、飲まないとよく眠れない状態に至る可能性もあるのです。※2

寝床に就く前は、少なくとも1時間はリラックスする時間を確保することが有効なようです。静かに行うヨガや腹式呼吸、筋弛緩法、音楽やアロマなどが入眠を促しやすい方法とされていますが、すべての人に効果が保証された方法はありませんので、自分が落ち着ける方法を見つけるためにいくつか試してみるのもよいでしょう。※2

2. 寝室の光・音・温度を調整する

リラックスの時間を確保できたら、次は寝室環境を見直します。眠っている間の低い照度の光でも中途覚醒の時間を増やし、睡眠の効率を下げることが報告されていますので、寝るときはできるだけ暗くしましょう。※2

音も見落とせません。寝室内で測定した騒音が、睡眠効率の低下や、入眠までの時間と中途覚醒時間の延長に関連したという研究があります。また、欧州WHOのガイドラインは夜間の屋外騒音を40dB未満とすることを推奨しています。※2※4。

40dBとは、図書館内の物音と同じくらいの静かさです。

温度は季節によって対応が変わります。夏は寝室の室温が上がると睡眠時間が短縮し睡眠効率が低下するため、エアコンを用いて涼しく保ちましょう。※2

冬場は室温18℃以上を維持するのがおすすめです。快適に感じる温度には季節差も個人差もありますので、決まった数値を唯一の正解とせず、暑すぎず寒すぎないと感じる範囲で調整してください。

3. 体に合った寝具を使う

最後に寝具です。枕やマットレスが体に合っていないと、痛みや違和感によって眠りが妨げられることがあります。e-ヘルスネットによれば、寝床内の温度は33℃、湿度は50%の状態が最適とされており、寝具は寝床のなかの環境を保つ役割も担っています。※7

枕の高さは、仰向けに寝たときに敷き布団やマットレスの表面から首の角度が約5度、最近の報告では約15度になる高さが目安とされ、頸部のすき間の深さは一般に1cmから6cmと個人差があります。※7

マットレスについては、立ち姿勢のときの腰部のS字カーブのすき間が4cmから6cmであるのに対し、寝た姿勢でもっとも体への負担が少ないのはすき間が2cmから3cmの状態です。自然な寝姿勢を保てるか、寝返りを打ちやすいかを確かめてみてください。

ただし、寝具を替えればすぐに睡眠不足が解消するわけではありません。光や音、温度と合わせて見直す一要素として考えましょう。

睡眠不足が改善しないときの受診の目安

松本 恭
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ここまでの見直しを続けても、日中の強い眠気が消えないことがあります。

2019年の調査では、この1か月間に週3回以上、日中に眠気を感じた人が34.8%にのぼり、20歳代では43.6%と最も高い割合でした。※6

その原因は睡眠不足だけでなく、睡眠の質が低下する睡眠障害、医薬品の副作用、うつ病などの精神疾患まで多岐にわたります。

判断の軸になるのは、我慢した期間の長さではなく、生活への支障です。睡眠ガイドでも、睡眠環境や生活習慣を見直しても十分な時間眠れない、睡眠で休養感が得られない、日中の眠気が強いといった症状が続き、日中の生活に影響を及ぼしている場合は、速やかに医師に相談するよう示されています。※2

なかでも、いびきや睡眠中の呼吸停止は、閉塞性睡眠時無呼吸が潜む可能性を示す重要なサインとされ、なかなか寝つけない、夜中に何度も起きるという状態が続く場合は不眠症の代表的な症状にあたります。※5

「あと1か月様子を見てから」と自分で期限を決めず、生活に支障が出ていると感じた時点で相談しましょう。

まとめ:睡眠不足は生活習慣と寝室環境から整えよう

睡眠不足を解消する出発点は、その場の眠気を抑えることではなく、必要な睡眠時間を継続して確保することです。成人はおおよそ6時間から8時間、少なくとも6時間以上を目安に考えてください。

一日の流れとしては、起床時刻をそろえて朝の光を浴びること、日中は息が弾む程度に体を動かすこと、夕方以降のカフェインと遅い食事を控えること、就寝の1時間から2時間前に入浴すること、寝る前は強い光を避けることの5つが柱です。

積み重なった睡眠不足は休日の寝だめでは返せません。1週間記録をつけて自分の睡眠時間の傾向を把握し、平日の睡眠時間を少しずつ増やすほうへ舵を切りましょう。また寝酒を避ける、寝室の光と音と温度を整える、体に合った寝具を選ぶといった方法も、朝の休養感を支えてくれるはずです。

すべてを一度に変える必要はありません。今日から続けられそうなものを1つだけ選んで始めてみましょう

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・参考

※1 令和6年 国民健康・栄養調査結果の概要 | 厚生労働省
※2 健康づくりのための睡眠ガイド2023 | 厚生労働省
※3 快眠と生活習慣 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
※4 睡眠チェックシート | 厚生労働省
※5 睡眠チェック&アドバイスシート | 厚生労働省
※6 昼間の眠気 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
※7 快眠のためのテクニック | e-ヘルスネット(厚生労働省)