寝不足でイライラするのはなぜ?原因と今すぐできる対処法
睡眠コラム by 松本 恭2026年6月28日読了目安時間: 6

寝不足でイライラするのはなぜ?原因と今すぐできる対処法

松本 恭
コピーライター / 上級睡眠健康指導士

「健康の秘訣はぐっすり眠ること」がモットーで、これまでウォーターベッド、ウッドスプリングベッド、西式健康枕、ハンモックなどさまざまな寝具の寝心地を追求してきた睡眠マニア。偶然出会ったコアラマットレス®︎の快適さに感銘を受け、メンバーとして参加。上級睡眠健康指導士としての知識を通して、より多くの人に快眠を届けたいと願っている。

睡眠が足りていない日は、家族や職場のスタッフに対してついトゲのある言い方をしてしまい、後から「どうしてあんなに怒ってしまったのだろう」と落ち込むことも多いものです。私も以前、連日の徹夜で睡眠不足が続いていた時期に、同僚からの親切なアドバイスを「余計なお世話だ」とひねくれて受け止めてしまい、職場の雰囲気を気まずくしてしまった苦い経験があります。

しかし、睡眠不足によるイライラは、決してあなたの性格や気合いの問題ではありません。寝不足のときに感情のブレーキが利きにくくなるのは、脳の仕組みから見て自然なことなのです。

本記事では、上級睡眠健康指導士の資格を持つコアラマットレス社員の松本が、寝不足でイライラしやすくなる理由を、脳の働きや自律神経の乱れ、ストレスホルモンの関係から分かりやすく紐解きます。そのうえで、今すぐ気持ちを鎮めるための深呼吸や軽いストレッチ、日中の効果的な仮眠のコツ、カフェインとの上手な付き合い方を紹介します。

寝不足でイライラする理由

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」でも、睡眠不足が日中の眠気・疲労だけでなく、情動不安定、注意力・判断力の低下とも関連することが整理されています。※1

睡眠が不足すると、脳内のさまざまな領域の働きが変化し、感情をコントロールする仕組みそのものが崩れてしまいます。イライラが起きやすくなるメカニズムを、前頭葉・扁桃体・コルチゾールと自律神経という3つの観点から詳しく説明します。

1. 感情を抑える前頭葉の働きが低下する

前頭葉は、感情の衝動を抑えたり、状況を理性的に判断したりするための「感情のブレーキ」として機能している脳の領域です。普段であれば、誰かの言葉にカッとなりかけたとしても、前頭葉がその反応をとどめ、落ち着いた対応へとつなげてくれます。

ところが、睡眠が不足した状態ではこの前頭葉の活動が低下するため、感情の抑制がうまく働きません。その結果、普段なら流せるはずの些細な言葉に過剰に反応したり、冷静な判断を下しにくくなったりします。「なぜあの程度のことでこんなに腹が立ってしまうのだろう」と感じる背景には、前頭葉が十分に機能していないことが関係している可能性があります。

これは個人の性格の問題ではなく、睡眠不足という身体的な状態によって引き起こされる脳機能の変化といえます。

2. 扁桃体が過敏になり怒りや不安を感じやすくなる

脳の奥深くにある扁桃体は、恐怖・不安・怒りといった情動反応に深く関わる領域で、外からの刺激に対してどの程度強く反応するかを調節する役割を担っています。国立精神・神経医療研究センターの研究によると、5日間の睡眠不足(平均睡眠時間4時間36分)の状態では、ネガティブな情動刺激に対する左扁桃体の活動が亢進し、感情制御を担う腹側前帯状皮質との機能的結合が減弱することが示されています。※2

つまり、睡眠が不足している状態では、感情の「アクセル」にあたる扁桃体の反応が強まる一方で、前頭葉と連携した「ブレーキ」が効きにくくなるのです。自分でもなぜこんなに腹が立つのかわからないと感じるときは、扁桃体の過敏化が背景にある可能性が高いといえるでしょう。

3. コルチゾールと自律神経の乱れで心身が緊張しやすくなる

睡眠不足はホルモンバランスにも大きな影響を及ぼします。コルチゾールはストレス反応に関わるホルモンで、睡眠の質が低下するほど分泌パターンが乱れやすくなります。国立精神・神経医療研究センターの研究グループによると、コルチゾール反応が亢進している人ほど睡眠の質が低く、睡眠状態の悪化はストレス症状の増大とも関連していることが示されています。※3

さらに、睡眠不足が続くと、活動時に優位になる交感神経が過剰に働き続けて心身がなかなか休まらない緊張状態が持続します。これが「寝不足でイライラする→寝つけない→さらに寝不足になる→ますますイライラしやすくなる」という悪循環を生み出すのです。

関連記事:【医師執筆】寝不足でも仕事を乗り切る!科学的根拠に基づいた7つの即効対策

寝不足によるイライラを落ち着ける方法

睡眠不足でイライラが高ぶっているとき、原因のメカニズムを理解しているだけでは状況をすぐには変えられません。「今この瞬間、どうやって感情を落ち着かせるか」という応急処置が必要です。厚生労働省の資料でも、睡眠不足が注意力や判断力に影響することが示されており、無理に作業を続けるよりも一度休んで状態を整えることの重要性が指摘されています※1。

ここで紹介する方法は、睡眠不足そのものを解消するものではありませんが、高ぶった感情を一時的に鎮めるための手段として役立ちますので、状況に合わせてできることから試してみてください。

1. 深呼吸やストレッチで交感神経の高ぶりを下げる

イライラが強くなっているとき、身体は緊張状態にあります。肩や首に力が入り、呼吸が浅く速くなりがちですから、まず身体の緊張をゆるめることを意識することが重要です。

深呼吸は、鼻から4秒かけてゆっくりと吸い込み、口から8秒かけてゆっくりと息を吐き出すように意識しましょう。息を長く吐くことで副交感神経が活性化され、高ぶった交感神経のはたらきが穏やかになっていきます。あわせて、肩を大きく前後に回す、首をゆっくりと左右に傾けるといった軽いストレッチも、筋肉の緊張をほぐす助けになります。

同時に、外からの刺激を減らすことも、心身の緊張を和らげるうえで有効な手段の一つです。強い照明や騒がしい環境を避けるようにすると効果的です。

2. 昼過ぎまでに短い仮眠をとる

眠気やイライラが強い場合、15〜20分程度の短い仮眠は効果的です。短時間の仮眠は集中力や判断力の回復に役立つとされており、午前中から午後2時頃までの間に行うことが望ましいため、昼休みを活用して短い仮眠を取るのがおすすめです。

ただし、仮眠が30分以上になると深い睡眠段階に入りやすくなり、目覚めたときに強い眠気や倦怠感が生じやすいです。また、夕方以降の仮眠は夜の入眠を妨げる可能性があるため、仮眠をとる時間帯と長さには注意しましょう。「眠れなくても横になって目を閉じるだけでよい」という気軽な気持ちで試してみてください。

3. カフェインや甘いものに頼りすぎない

眠気やイライラを感じると、コーヒーやエナジードリンク、甘いものを摂りたくなることがあります。一時的な覚醒や気分転換には一定の効果が期待できる場合もありますが、摂り方によっては翌日以降の睡眠に悪影響を及ぼしかねません

カフェインの覚醒効果は摂取後5〜6時間にわたって続くとされているため、午後2〜3時以降のカフェイン摂取は夜の寝つきを悪くする可能性があります。甘いものも血糖値を急激に変動させるため、過剰に摂ると眠りの質を下げる要因になることがあります。

寝不足のイライラを今日だけでなく明日以降も改善していくためには、こうした食習慣を改善する意識が大切です。カフェインは午前中に楽しみ、午後は水や麦茶などノンカフェインの飲み物に切り替えるだけでも、翌日の睡眠環境が整いやすくなるでしょう。

寝不足とイライラを繰り返さない睡眠習慣

応急処置でその場を乗り越えたとしても、寝不足が繰り返されればイライラも戻ってきます。根本的な改善には、日々の生活リズムを見直すことが欠かせません。まずは取り組みやすいものから一つずつ試してみてください。

1. 起床時間をそろえて体内時計を整える

良質な睡眠の土台は、体内時計を安定させることにあります。毎朝同じ時刻に起きる習慣を身につけることで、脳と身体が「この時間に目覚め、この時間に眠る」というリズムを覚えていきます。

「休日は平日の寝不足を取り戻すために長く眠る」という方は多いですが、休日と平日の起床時刻に2時間以上の差が生じると、いわゆる「社会的時差ぼけ」の状態が起きて体内時計が乱れやすくなります。睡眠時間を増やすことも大切ですが、まずは起きる時刻を一定にすることから始めましょう。

起床後に朝の明るい光を5〜10分ほど浴びることも、体内時計のリセットをより効果的にするうえで役立ちます。朝散歩はその両方を同時に実践できるため、習慣として取り入れやすいでしょう。

2. 寝る前のスマホや強い光を減らす

スマートフォンの画面から発せられるブルーライトは、眠気を促すメラトニンの分泌を抑制する可能性があるとされています。また、SNSやニュースアプリなど刺激の強い情報に触れることは、脳を興奮状態にさせるため入眠しにくくなることも少なくありません。

寝る前の30分から1時間は、スマートフォンの通知をオフにして画面から離れる習慣を取り入れてみてください。照明を暗めにしたり、読書や軽いストレッチなど刺激の少ない活動に切り替えたりすることも、脳と身体を睡眠モードに切り替えていく助けになります。「通知を切る」「画面の明るさを下げる」といった小さな変化から始めてみましょう。

3. 寝室環境と寝具を見直す

睡眠の質は、寝室の環境とも深く関わっています。一般に、睡眠に適した室温は夏で25〜26度前後、冬で18〜19度前後が目安とされており、湿度は50〜60%程度が快適とされています。また、寝室の明るさや音の刺激を減らすことも、深い眠りを得るうえで重要な要素です。遮光カーテンや耳栓、アイマスクなどを活用し、睡眠の質を高めましょう。

マットレスや枕などの寝具も、身体に合っていないものを長期間使用していると、寝返りが打ちにくくなったり、特定の部位に圧力がかかり続けたりして、睡眠の質を下げることがあります。自分の体型や寝姿勢に合った寝具を選ぶことは、快眠への投資として非常に効果的です。

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どのくらい眠ればイライラしにくくなる?

適切な睡眠時間は年齢・体質・生活スタイルによって異なるため、一概に「○時間眠れば十分」と断言することは難しいです。自分の日中の状態を観察しながら、必要な睡眠時間を見極めていくことが、より現実的なアプローチといえます。

必要な睡眠時間は人によって違う

成人の睡眠時間の目安として7〜8時間が示されることが多いですが、大切なのは時間の長さだけではありません。「日中に強い眠気を感じないか」「感情が安定しているか」「集中力が続いているか」を自分でチェックすることが、必要な睡眠時間を把握するうえで重要な視点です。

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」においても、睡眠不足が日中の眠気・疲労のほか、情動不安定、注意力・判断力の低下と関連することが整理されています。※1

自分では十分に眠っているつもりでも、日中にこうした症状が続いている場合は、睡眠時間だけでなく睡眠の質も含めて見直しを検討しましょう。数日間、自分の睡眠時間と日中の状態を記録してみると、自分にとって必要な睡眠量が把握できます。

睡眠負債がたまると感情にも影響する

毎日1〜2時間ずつの睡眠不足が積み重なっていくと、「睡眠負債」と呼ばれる慢性的な睡眠不足の状態になります。睡眠負債は一夜の長時間睡眠では完全に解消されないとされており、感情の不安定さや集中力の低下が持続しやすくなります

厚生労働省の休養・睡眠に関する資料では、令和元年国民健康・栄養調査の結果として、1日の平均睡眠時間が6時間未満の人は男性37.5%、女性40.6%に上ることが示されています。特に男性の30〜50歳代、女性の40〜50歳代では4割以上が6時間未満の睡眠状況にあることが明らかになっています。※4

働き盛り世代が慢性的な睡眠不足の状態にある現状を踏まえると、「週末にまとめて眠れば大丈夫」という考え方から、「毎日の睡眠時間を少しずつ確保する」という意識への切り替えが大切です。平日の就寝時刻を15〜30分だけ早めるような小さな工夫の積み重ねが、睡眠負債の解消につながるでしょう。

関連記事:【医師監修】寝不足で腹痛が起こる原因は?下痢・便秘の違い、対処法と受診の目安

寝不足によるイライラで受診を考えたいサイン

生活習慣を見直すことで睡眠の質が改善し、イライラが落ち着くケースは多くあります。一方で、自分なりに対処してみても状況がなかなか改善しない場合や、日常生活に強く支障が出ている場合には、医療機関や専門家への相談を検討することも選択肢の一つです。以下のようなサインが当てはまる場合は、早めに相談することを考えてみてください。

1. 不眠や強いイライラが続く

数日程度の寝不足であれば、十分な睡眠をとることで回復することが多いです。しかし、眠りたくても眠れない状態や強いイライラが何週間も続いている場合は、睡眠障害やメンタルヘルスの不調が関係しているかもしれません。不眠が慢性化すると、「眠れないのでは」という睡眠に対する不安そのものが入眠をさらに妨げる要因になることもあります。

このような状態が続いているなら、専門家に相談して生活習慣のアドバイスや、必要に応じた治療を受けてください。まずかかりつけ医に相談し、必要であれば睡眠外来・心療内科・精神科などへ紹介してもらうとスムーズです。

2. 日中の生活に支障が出ている

睡眠不足によるイライラや強い眠気が、仕事や家事・育児に具体的な支障をもたらしている場合も、相談を検討したいサインです。仕事でのミスが目立って増えた、家事や育児をこなすのが非常につらい、日中の強い眠気がなかなか改善しないといった状態は、そのまま放置すると健康面や社会生活への影響がさらに広がる可能性があります。

特に、車の運転や機械の操作など危険を伴う作業の最中に強い眠気を感じる場合は、重大な事故につながるリスクがあるため放置してはいけません。自己判断だけでの対処や先延ばしはせず、専門機関に相談することを最優先に考えてください。

寝不足によるイライラは原因を知って早めに整えよう

寝不足でイライラしやすくなることは、前頭葉による感情のブレーキ機能の低下、扁桃体の過敏化、コルチゾールや自律神経の乱れなど、脳と身体の仕組みと深く関わっています。性格や気合いの問題と考えず、睡眠不足が引き起こす心身の反応として理解することが大切です

今すぐできる対処として、深呼吸やストレッチで身体の緊張をゆるめること、昼過ぎまでに15〜20分の短い仮眠をとること、午後のカフェイン摂取を控えるなどがおすすめの方法です。加えて起床時間を一定に保つ、就寝前のスマートフォン使用を控える、寝室環境を整えるといった習慣を取り入れ、根本的な睡眠の改善につなげましょう。

睡眠と感情の安定は密接につながっています。不眠や強いイライラが何週間も続く場合や、日常生活に大きな支障が出ている場合は、早めに専門機関へ相談することも選択肢に入れててみてください。

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・参考

※1 健康づくりのための睡眠ガイド2023 | 厚生労働省
※2 睡眠不足が感情コントロールに関わる脳活動を変化させる | 国立精神・神経医療研究センター
※3 ストレスと睡眠の悪化の関連 | 国立精神・神経医療研究センター・国立生理学研究所
※4 休養・睡眠領域に関する資料  | 厚生労働省