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監修者

五藤 良将
千葉県立東葛飾高校卒、防衛医科大学校医学部卒。その後に自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどの勤務を経て2019年9月に継承開業に至る。
- 免許・資格
医師免許、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医、日本医師会産業医、スポーツドクター、日本美容内科学会評議員
「熱中症は夏のもの」——そう思っていませんか?実は近年、4〜5月のゴールデンウイーク前後に熱中症で救急搬送される人が急増しています。春の熱中症は「まだ暑くないはず」という油断があるぶん、夏よりも危険な側面があります。この記事では、春に熱中症が起きやすい理由と、今日からできる対策を解説します。
春に熱中症が起きやすい理由
体が暑さに慣れていない
人間の体は気温が上がってから3〜4日しないと体温調整がスムーズにできません。急に気温が高くなる日があると対応が難しく、水分調整もうまくいかず熱中症になりやすくなります。
体が暑さに慣れていない中、日中と朝晩の大きな寒暖差があると、体が環境の変化についていけず体温調整がうまくできなくなります。汗をかく習慣がないと、熱が体にこもって体温が上がっても自分で下げることができないのです。
春の救急搬送者数は決して少なくない
熱中症の発生は7〜8月がピークですが、消防庁のデータによると5月だけでも2,799人が熱中症で救急搬送されています。 4月にも25度以上の夏日や30度以上の真夏日が続出し、早くも搬送される人が出ているのが現状です。
熱中症の症状|重症度別チェックリスト
熱中症は体温が著しく上昇して体温調節機能が働かなくなり、体内の水分や塩分のバランスが崩れることで起こる、めまい・吐き気・頭痛・けいれんなどさまざまな症状の総称です。適切な処置を行わずに重症化すると死に至る危険もあります。
症状の重さによって3段階に分けられています。
軽度(Ⅰ度) 熱を放出させようと皮膚に血液が集まり、脳に運ばれる血液が減ることで顔が青くなる・めまい・立ちくらみが起こります(熱失神)。また、発汗に伴う塩分の欠乏により、ふくらはぎなどの筋肉のこむら返りが起こることもあります(熱けいれん)。
中等度(Ⅱ度) 頭痛・嘔吐・倦怠感・虚脱感・集中力や判断力の低下が見られます。この段階では医療機関での診察が必要です。
重度(Ⅲ度) 体内の熱が放出できなくなって深部体温が急激に上昇し、呼びかけや刺激への反応がおかしい・全身のけいれん・まっすぐ歩けない・39度以上の高体温などが起こります(熱射病)。 すぐに救急車を呼んでください。
春の熱中症を防ぐための対策
1. 暑熱順化(体を暑さに慣らす)
春の熱中症対策の柱は「暑熱順化」です。
暑熱順化が進むと発汗量や皮膚血流量が増え、体温調整がしやすい体になります。適度な汗をかくためには運動や入浴が最適です。30分程度のウォーキングを取り入れ、湯船にゆっくりつかって心地よい汗をかきましょう。
暑熱順化には数日から2週間程度かかるとされています。自身の体力や体調に合わせて無理なく行いましょう。
2. こまめな水分・塩分補給
熱中症の予防として、暑い環境下にいるときは少なくとも30分に1回を目安に水分を摂ること、スポーツドリンクなどを活用して水分と一緒に塩分もこまめに摂ることが効果的です。 喉が渇く前に飲むことを意識しましょう。
3. 「まだ春だから」という油断をやめる
天気予報士が「夏日」「真夏日」「蒸し暑い日」と言ったら、「春ではなく夏だと思って過ごす」ことが大切です。 気温が25度を超えたら夏と同じ熱中症対策を始めましょう。
4. 直射日光・高温環境を避ける工夫
熱中症を引き起こす条件として、気温が高い・湿度が高い・風が弱いといった環境要因があります。 外出時は日傘・帽子を活用し、日中の最も暑い時間帯(11〜14時)の屋外活動はなるべく避けましょう。
5. 体調が悪いときは無理をしない
二日酔いや寝不足など体調がすぐれない場合や、糖尿病などの持病をお持ちの方も熱中症になりやすいため注意が必要です。 春のお花見・スポーツイベント・ゴールデンウイークのレジャーなど、体を酷使するシーンでは特に注意が必要です。
内科医として日々診療をしていると、「まだ4月なのに…」と驚きながら来院される患者さんに、春になるたび出会います。体が暑さに慣れていない時期に気温が急上昇する春は、実は非常に油断のならない季節です。
この記事で特に強調したいのは、暑熱順化の大切さです。体を暑さに慣らすには数日から2週間かかります。ゴールデンウイークにアウトドアやスポーツを思い切り楽しむためにも、今のうちから軽いウォーキングや入浴で、じんわり汗をかく習慣をつけておいてください。
また、糖尿病などの持病をお持ちの方、高齢の方、お子さんは特にリスクが高い点も覚えておいてください。「なんとなくだるい」「頭が重い」という感覚は、体からのサインです。重症化する前に、迷わず涼しい場所で休み、必要であれば医療機関を受診してください。
天気予報で「夏日」の言葉が出たその日から、夏と同じ意識で行動する。それだけで、多くの熱中症は防ぐことができます。
どうか安全で楽しい春をお過ごしください。
熱中症になったときの応急処置
熱中症の症状が疑われる場合は、風通しの良い日陰やクーラーが効いている室内へ移動しましょう。衣類を緩め、足を高くして寝かせます。首・わきの下・太ももの付け根を冷やすと体温を効果的に下げられます。
意識がある場合は、冷たい水や塩分も補える経口補水液・スポーツ飲料などを少しずつ何回にも分けて補給します。呼びかけに反応しない・おかしな返答をするなど意識がもうろうとする場合は、すぐに救急車を呼びましょう。
まとめ
春の熱中症は「油断」が最大のリスクです。体がまだ暑さに慣れていない春こそ、暑熱順化・水分補給・直射日光対策を夏と同じ意識で行うことが大切です。気温が上がりはじめたら、ぜひ今日から対策を始めてください。快眠・良質な睡眠で体調を整えておくことも、熱中症への抵抗力を高める重要な一歩です。
参考文献
- 豊橋ハートセンター「春こそ危険な熱中症!早めの熱中症対策が大切です」https://www.heart-center.or.jp/rehabnow/5069/
- 草花クリニック「春なのに熱中症?!」https://www.kusabanaclinic.jp/news/1020.html
- 環境省熱中症予防情報サイト「熱中症の予防方法と対処方法」https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness.php
- 全日本病院協会「熱中症について|みんなの医療ガイド」https://www.ajha.or.jp/guide/23.html
- 大正製薬「熱中症|原因・症状・対策・予防法」https://www.taisho-kenko.com/disease/110/
- 厚生労働省「熱中症関連情報」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/index.html
※本記事は医療情報の提供を目的としており、診断・治療を行うものではありません。気になる症状がある場合は、必ず医師にご相談ください。




