目次
監修者

松岡 雄治
地方国立大学医学部卒業後、横浜市内で初期臨床研修を経て、関東の基幹病院で勤務中。
資格:医師国家試験合格、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級
授業を聞きたいのにまぶたが重くなり、ノートを書く手が止まってしまう方もいるのではないでしょうか。
授業中の眠気には、座り直す、先生の話をメモするなど、座ったままできる対処法があります。ただし、眠気が毎日のように続くなら、夜の睡眠時間や生活リズムを見直すことも必要です。
この記事では、授業中の眠気の原因と、教室でできる対処法、眠くならないための睡眠習慣を解説します。授業中の眠気に困っている方は、ぜひ最後までご覧ください。
授業中に眠くなる主な原因
授業中に眠くなる主な原因は、夜の睡眠不足や、思春期に起こる体内時計の変化、昼過ぎに眠気が強まる体のリズムなどです。集中しようとしても眠くなるのは、やる気の問題だけでなく、体の状態によることもあります。
1. 夜の睡眠時間が足りていない
授業中の眠気の大きな原因は、夜に必要なだけ眠れていないことです。中学・高校生に必要な睡眠時間は8〜10時間が目安ですが、ある調査では、平日の平均睡眠時間は中学生で7時間33分、高校生で6時間58分でした。どちらも、目安の8時間に届いていません。
短い睡眠が続くと、徹夜をしたときに比べて、眠気や疲れを自覚しにくくなる傾向があります。「この睡眠時間には慣れている」と感じていても、授業中にうとうとするなら、睡眠不足のサインかもしれません。睡眠不足が続くと、学業成績の低下につながることも報告されています。
2. 思春期は体内時計が夜型に傾きやすい
思春期には、眠る時刻と起きる時刻が遅くなりやすいとされています。これは、睡眠の始まりに関わるホルモンのメラトニンが、分泌され始める時刻も遅くなるためです。夜になっても眠くならず、朝は起きづらいといった変化が現れることがあります。
さらに、部活動のあとに宿題をしたり、友人とメッセージをやりとりしたりして、寝る時刻が遅くなることもあるでしょう。
それでも、朝は登校時刻に合わせて起きなければなりません。その結果、学校のある日は睡眠時間が短くなり、本人は普段どおりのつもりでも、睡眠不足が積み重なっていくことがあります。
3. 昼過ぎは体のリズムで眠気が強まりやすい
昼過ぎは、健康な人でも体内時計の働きで眠気が出てくる時間帯です。昼食のあとと重なるため、食べたことが原因のように感じられるかもしれません。本来は、意識すれば起きていられる程度の眠気です。
ただし、午後の授業で毎日のように強い眠気がある場合は、体のリズムによる眠気に、夜の睡眠不足が重なっている可能性があります。
授業中に座ったままできる眠気対策
授業中は、背筋を伸ばして座り直す、ノートに書き込む量を増やすなど、座ったままできる方法で注意を授業に戻しましょう。
どれも眠気をすぐに消す方法ではなく、ぼんやりした状態から授業に戻るきっかけです。音を立てたり大きく動いたりせず、周りの妨げにならない範囲で行ってください。
1. 背筋を伸ばして座り直す
ぼんやりしてきたら、背もたれから体を少し離し、背筋を伸ばして座り直します。うつむいたままになっていた顔を上げ、先生や黒板のほうへ視線を戻しましょう。
足の位置を変えたり、肩をゆっくり上げ下げしたりして、同じ姿勢が続いた状態から抜け出すのもよいでしょう。
ただし、腰を強く反らせたり、肩に力を入れ続けたりする必要はありません。両足を床につけて、ノートに手を置ける楽な姿勢に整えましょう。
2. ノートに書き込む量を増やす
眠くなってきたら、黒板を写すだけでなく、先生が話した言葉もノートに書き足してみましょう。聞いているだけの時間が続くと、ぼんやりしやすくなります。聞いた内容から書くことを自分で選び、手を動かす作業を加えると、授業に意識を戻すきっかけになります。
書くのは、先生が強調した言葉や、説明を聞いて疑問に思ったことなど、短いメモで十分です。きれいにまとめようとせず、聞こえた言葉をそのまま書き留めましょう。
3. 手や首元を冷やす
手や首元を軽く冷やすことは、ぼんやりした気分を切り替える方法のひとつです。冷たいペットボトルを手に持つか、水で濡らして絞ったハンカチを首元に軽く当てます。
ただし、冷やしすぎには注意が必要です。凍らせたペットボトルや保冷剤を肌に直接、長く当てると、肌を傷めることがあります。当てるのは短い時間にとどめ、少し気分が変わったら離して、授業に戻りましょう。
また、机の上で何度も出し入れすると授業の妨げになるため、学校の決まりの範囲で、すぐ手に取れるものを使いましょう。
4. 手のツボを押す
眠気を感じたら、手のツボを軽く押して気分転換をするのもひとつの方法です。なかでも、手の甲側の親指と人差し指のあいだあたりにある「合谷(ごうこく)」は、座ったままでも目立たずに押しやすいツボです。反対の手の親指の腹を当て、ゆっくり押してから力を緩めます。
強く押す必要はなく、心地よいと感じる程度にとどめましょう。痛みや傷がある場合は避けてください。
押しても気分が変わらないときは、座り直しやノートへの書き込みなど、ほかの方法に切り替えましょう。
休み時間にできる眠気対策
休み時間は、短い仮眠をとる、席を立って体を動かす、外の光を浴びるなどして、次の授業までに眠気を切り替えておきましょう。
次の授業の準備や移動にかかる時間も考えて、休み時間内で終えられる過ごし方を選んでください。
1. 短い仮眠をとる
昼休みに眠気を感じたら、短い仮眠をとると、日中の眠気をやわらげやすくなります。仮眠は30分以内にとどめましょう。机に伏せて目を閉じ、静かに休みます。すぐに眠れなくても、目を閉じて静かに過ごしましょう。
長く眠ると眠りが深くなり、目覚めたあとにだるさや強いぼんやり感が残りやすくなります。夜の睡眠にも響くことがあるため、眠るのは休み時間のうちだけにしましょう。
休む前に、教室移動と準備にかかる時間を考えて、起きる時刻を決めておきます。目覚めたら顔を上げて背筋を伸ばし、次の授業の準備を始めましょう。
仮眠の長さによる違いや、学校で短く眠るときのコツについては、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:昼寝は何分がベスト?効果を高める最適な仮眠時間とコツ
2. 席を立って体を動かす
授業で座り続けたあとの休み時間は、席を立って軽く体を動かしましょう。教室の外に出るだけでも、気分を切り替えられます。たとえば、次のような動作です。
- 廊下をゆっくり歩く
- 階段を1階ぶん上り下りする
- 広さのある場所で肩や首を無理なく動かす
短い休み時間なら、その場で肩を回す程度でもよいでしょう。ただし、どうしようもないほど眠いときは、先生に伝えて保健室で休めるか相談してください。
3. 外の光を浴びる
休み時間は、校舎の外や明るい窓際に移動して、日中の光を浴びましょう。日中に明るい環境で過ごすと、体内時計が整いやすくなります。また、昼間に明るい光を浴びると、夜に分泌されるメラトニンが増えることも知られています。
外に出られる場所や時間は、学校のルールに合わせてください。校庭に出られないときや暑い日は、校舎内の明るい窓際を選びましょう。
カフェインをとるときの注意点
カフェインには目を覚ます作用がありますが、中高生は大人より少ない量でも睡眠に影響を受けます。日本ではカフェインの摂取量について明確な基準は示されていませんが、海外では、18歳未満の摂取上限が次のように定められています。
| 国・対象 | 摂取上限の目安 | 体重50kgの場合 |
| カナダ・18歳未満 | 1日2.5mg/kg体重 | 1日125mgまで |
| 豪州・ニュージーランド・18歳未満 | 1回3mg/kg体重 | 1回150mgまで |
子どもでは、1日1〜3mg/kg体重以上の摂取で、睡眠に悪影響が出ると報告されています。
農林水産省によると、エナジードリンクや眠気覚まし用の飲料には、1本に50〜170mgほどのカフェインが含まれ、製品によって量に大きな幅があります。飲む場合は表示でカフェイン量を確かめ、量を控えめにして、朝のうちに飲むようにしましょう。
日本人では、血液中のカフェイン濃度が半分になるまで3〜7時間かかるとされ、昼過ぎにとったカフェインも夜まで体内に残ります。午後の眠気は、カフェインに頼らず、休み時間の仮眠などで対処しましょう。
授業中に眠くならないための生活習慣
授業中の眠気を毎日くり返さないためには、8〜10時間を目安に寝る、朝は光を浴びて朝食をとる、寝室を整えるなどして、夜の睡眠と寝起きのリズムを整えましょう。
授業中や休み時間の工夫でその場の眠気をしのいでも、夜の睡眠不足が続けば、眠気は毎日のようにくり返しやすくなります。
1. 中学・高校生は8〜10時間を目安に寝る
中学・高校生は、8〜10時間を目安に睡眠時間を確保しましょう。小学生の目安は9〜12時間で、成長期には大人よりも長い睡眠が必要です。
寝る時刻は、朝起きる時刻から逆算して先に決めましょう。宿題が終わってから寝ると、勉強が長引くたびに睡眠が短くなってしまいます。寝る時刻を先に予定に入れ、その前に勉強や入浴を済ませる流れにするのがおすすめです。
必要な睡眠時間には個人差があるため、目安とあわせて、日中の眠気や朝の目覚めも確かめてください。部活動や通学で時間が足りないときは、保護者と夜の予定を見直しましょう。
『睡眠時間が大事なのはわかるけど、勉強や部活で忙しい』という中高生は多いです。しかし、実は睡眠中、脳の中ではその日勉強したことを「記憶として定着・整理させる」という非常に重要な作業が行われています。つまり、睡眠時間を削って勉強しても、脳に記憶が定着しないためテストの点数には結びつきにくい可能性があります。学力アップのためにも、まずは最低8時間の睡眠を確保する計画を立ててみることも検討しましょう。
2. 朝は太陽の光を浴びて朝食をとる
朝は明るい光を浴びて朝食をとり、体内時計を整えましょう。起きたらカーテンを開けて部屋を明るくし、朝食をとる時間も含めて起きる時刻を決めておきます。
また、朝食を抜くと、眠る時刻と起きる時刻が後ろにずれやすくなります。夜ふかしや朝寝坊で朝食を抜く日が増えると、それがさらに夜ふかしや朝寝坊を進める悪循環につながるため注意が必要です。
休日も、なるべく普段と同じ時刻に起きて光を浴びましょう。遅くまで寝ていると午前中の光を浴びられず、リズムが後ろにずれやすくなります。
朝食で大豆製品や卵、乳製品などから「トリプトファン」という栄養素をとると、夜になって睡眠ホルモン(メラトニン)に変わり、ぐっすり眠るための材料になります。
3. 寝室を眠るための環境に整える
寝る前のスマートフォンは、寝室の外に置いて手に取りにくくしましょう。寝床に入ってから使い続けるのを防げます。
寝そべって画面を見ると、目との距離が近くなって光の影響を受けやすくなり、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりすることがあります。SNSや動画の刺激によって、交感神経が優位になってしまうこともあります。置き場所は、家族と相談して決めておきましょう。
また、寝室の明るさや暑さ、音も、眠りを妨げることがあります。次の点を見直しましょう。
- 照明を落とし、外の光が気になるならカーテンを閉める
- 室温と湿度を調整し、掛け布団の量も見直す
- 外の音が気になる場合は、窓から寝床を離す
- 枕の高さや寝具の硬さが体に合い、楽に寝返りできるか確かめる
今使っている枕の高さが体に合っているかを確かめる方法は、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:【医師監修】理想的な枕の高さがわからないときどうする?自分に合う高さの確認方法と調整のコツ
毎日続く強い眠気で注意したいこと
十分に寝ても強い眠気が毎日続く場合は、保護者や学校の保健室に伝え、医師に相談しましょう。特に、次のような状態は相談の目安です。
- 睡眠時間を確保しても、授業を聞き続けられないほど眠い
- 朝どうしても起きられず、登校が難しい
- 気づかないうちに眠ってしまうことをくり返す
強い眠気が続く背景には、次のような病気が隠れていることがあります。
- 睡眠不足症候群:慢性的な睡眠不足が続いている状態
- 睡眠・覚醒相後退障害:極端な遅寝・遅起きになる病気で、思春期や若い成人に多い
- ナルコレプシー:通常は眠らない場面でも突然居眠りが起こる病気で、多くは思春期に発症する
「意識が飛ぶ」と感じるときも、眠気のせいと決めつけず、医師に相談して、そのときの状況を伝えてください。
まとめ:授業中の眠気は夜の睡眠から見直そう
授業中の眠気をくり返さないためには、その場の対処とあわせて、夜の睡眠を見直すことが大切です。授業中は座り直したり、先生の話をノートに書き足したりして、注意を授業に戻しましょう。休み時間には、短い仮眠をとったり、明るい場所まで歩いたりする方法もあります。
中学・高校生は8〜10時間を目安に睡眠時間を確保し、朝は光を浴びて朝食をとりましょう。まずは明日の起床時刻から逆算して、今夜寝る時刻とスマートフォンを置く場所を決めてみてください。
眠気をカフェインでしのごうとすると、夜の睡眠に響くことがあります。十分に寝ても強い眠気が続く場合や、朝起きられず登校が難しい場合は、保護者や保健室に伝えて、医師に相談してください。
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