目次
監修者

森田 麻里子
医師・小児スリープコンサルタント・睡眠専門家
2012年東京大学医学部医学科卒。
亀田総合病院にて初期研修後、2014年仙台厚生病院、2016
「夜中に大量の寝汗をかいた」「朝起きたら頭が痛くて体がだるい」「夜寝苦しい」
そんな経験はありませんか。実はそれ、夜間熱中症の初期サインかもしれません。
熱中症の約4割は屋内で発生し、発症時間帯が夜間(21時〜翌6時)にあたるケースも全体の約9%を占めています。※1
つまり、熱中症は“夜・室内・就寝中”でも十分に起こり得るのです。
放置すると、脱水や意識障害を起こし、翌朝になって救急搬送される可能性があります。特に高齢者ではそのリスクが高く、家族が気づいたときには症状が進んでいることも珍しくありません。
この記事では、
①夜間熱中症の基礎知識
②なりやすい人・環境
③夜〜翌朝に出る症状
④今日からできる5つの対策
⑤快適に眠れる寝室づくり
を順に解説していきます。
夜間熱中症とは?昼間の熱中症との違い
夜間熱中症とは、主に就寝時から早朝にかけて、屋内で発症する熱中症を指します。病名として特別な分類があるわけではありませんが、発症する時間帯と気づきにくさが大きな特徴です。
夏の熱中症の約40%が屋内発生、また全体の中で夜間(21〜6時)の発症は約9%と報告されています。昼間に受けた暑さのダメージが、夜になって表に出るケースも多く、「日中はなんともなかったのに、夜中や朝に体調を崩す」という形で現れることもあります。
必ずしも「熱中症 = 日中」ではないのです。
熱中症の基本症状と重症度の段階
熱中症の症状は、段階的に以下のように進行します。
- 軽症:めまい、立ちくらみ、こむら返り、大量の発汗
- 中等症:頭痛、吐き気、だるさ、集中力低下
- 重症:意識障害、けいれん、体温の異常上昇
夜間でもこれらの症状は同様に起こりますが、睡眠中は自覚しにくく、重症化しやすい点が大きな違いです。
データで見る夜間発症の割合
夜間熱中症の割合を年代別に見ると、子どもが3.4%、成人が9.9%、高齢者が9.0%と報告されています。※1
特に高齢者は暑さを感じにくくなることもあり、「まだ大丈夫」という思い込みからエアコンを使わずに就寝した結果、夜間熱中症のリスクが高まりやすいです。
屋内・就寝中に起こりやすい理由
夜間は水分補給ができません。また就寝中にエアコンを切ると室温が上昇しやすくなり、湿度も上がって汗が蒸発しにくいため、体温が下がらない状態が続いて夜間熱中症につながります。
また、日中の暑さで体がすでに疲弊していると、夜間熱中症の引き金になりやすいです。
夜間熱中症が起こりやすい人・環境
では、夜間熱中症はどのような人がなりやすく、どのような住環境だとリスクが高まるのでしょうか。一つずつ見ていきましょう。
高齢者・持病がある人のリスク
高齢者や高齢者を家族に持つ方は注意が必要です。「高齢者のための熱中症対策」によると、東京都23区における熱中症死亡者の約8割が高齢者でした。屋内での死亡者のうち約9割はエアコンを使用していなかったとの報告もされています。
高齢者は暑さや喉の渇きを感じにくく、脱水が進んでも気づきにくいのが特徴です。夜間のトイレを気にして水分を控える習慣もリスクを高めます。
また、心臓病や腎臓病がある場合は、水分調整が難しいため重症化しやすいです。
子ども・一人暮らし世帯の注意点
子どもは体温調節機能が未熟で、寝汗をかいても自分で対処できません。また一人暮らしの成人は、体調が悪くなっても助けを呼ぶのが遅れがちです。ロフトベッドや風通しの悪い部屋も注意が必要です。
室温・湿度・間取りが与える影響
建物の屋上の熱が伝わりやすい最上階の部屋や、風が抜けない間取り、締め切った寝室などは夜になっても熱がこもったママの状態が続きます。室温だけでなく、湿度が高い状態も長くなるため危険が高まります。
適切にエアコンを使用し、温湿度計で数値を確認する習慣を身につけましょう。
こんな症状は要注意:夜間〜翌朝に出るサイン
夜間熱中症は、寝汗、こむら返り、頭痛やだるさなど「なんとなく不調」として見過ごされがちですが、熱中症の症状が見られたらすぐに適切な対処を行うことが必要です。
受診や救急車を呼ぶタイミングについて解説しますので、参考にして下さい。
夜間・起床時の頭痛やめまい
夜中や朝に頭痛がする、起きた瞬間にふらつく、吐き気があるなどの場合、単なる疲れではなく脱水や電解質バランス、体温調節異常などの可能性があります。また、他の病気が関わっているケースもありますので、症状が続く場合は早めに医療機関を受診しましょう。
大量の寝汗/汗をかかない状態
シーツが濡れるほどの寝汗をかいてしまうのは、他の病気のサインの可能性もありますが、多くのケースでは寝室が暑すぎることが多いです。暑いのに汗が出ない状態や、翌朝口の中が乾く場合や朝の尿の色が濃い場合は、水分不足を疑ってください。
受診の目安・救急車を呼ぶべきケース
呼びかけに反応しない、まっすぐ歩けない、意識がぼんやりしている場合は緊急度が高い状態です。迷わず救急要請が必要です。
今日からできる夜間熱中症対策5つ
夜間熱中症はならないこと、予防することが大切です。
室温・湿度管理、水分・電解質補給、エアコンと扇風機の使い方、寝具やパジャマの選び方、一人暮らし・高齢家族の見守り方法などについて解説します。
① 室温・湿度を整える
寝室の室温は25〜27℃、湿度40〜60%を目安にします。体感ではなく数値で管理しましょう。特に、28℃を上限とすることが大切です。※2
室温が28℃の場合、熱中症警戒レベルの室温・湿度を避けるには湿度をおよそ50%以下に下げなければいけません。暑いと睡眠が妨げられやすいため、快適な睡眠を得るという意味でも室温は25〜27℃まで下げましょう。
② エアコン・扇風機の上手な使い方
エアコンはつけっぱなしにするのがおすすめです。サーキュレーターを併用すると、部屋全体にエアコンの冷風が広がり、涼しくなります。サーキュレーターはエアコンの対角線上に置いて、空気を大きく循環させるようにしましょう。
扇風機の併用も問題はありません。ただし、体に風が直接当たりすぎないようにしましょう。
③ 就寝前・起床後の水分補給
就寝前と起床後にコップ1杯の水を飲んでください。喉が乾いたと自覚する前に摂取することが重要です。就寝前のアルコールとカフェインは控えましょう。
④ 寝具・パジャマの素材と選び方
通気性・吸湿性の良い寝具を選ぶと、熱のこもりを防げます。通気性のよいマットレスの選択も質の良い睡眠のために重要な要素です。
関連記事:【上級睡眠健康指導士監修】通気性の良いマットレスの素材や特徴とは?今すぐできるカビ対策についても解説
⑤ 一人暮らし・高齢家族の見守り工夫
就寝前後の声かけや連絡、室温チェックを習慣にしましょう。小さな行動の積み重ねが夜間熱中症のリスクを下げます。
朝のだるさ・頭痛は「隠れ夜間熱中症」かもしれない
「朝起きても疲れが取れない」「頭が重い・食欲がない」など、朝の体調不良を「寝不足」や「疲れ」と片付けていませんか。
救急搬送データでは、エアコンをつけてない場合において、住宅内熱中症の搬送が朝7時台から増加し、午前中に中等症以上が多い傾向があります。エアコンを付けずに就寝したために夜間に熱中症が引き起こされ、さらに夜間の発症であるため救急要請が遅れて重症化したのではないかと考察されています。※3
昼の暑さダメージが夜に出るメカニズム
日中の暑さで水分や塩分などの電解質バランスがゆっくり崩れていき、夜や翌日に症状が出ることがあります。また、日中の暑さで体温調節機能が疲弊し、夜間に回復できないまま翌朝を迎えることで、症状が表に出ます。
救急搬送データから読み解く「朝のピーク」
「朝の症状=夜間の見逃し」という視点を持つことが重要です。エアコンをつけていない場合、最高気温が出現する前の朝7時台から救急搬送数が増加し、午前9時台に1回目のピークがくることが分かっています。※3
就寝中、気づかぬうちに隠れ熱中症になっている可能性が高いと言えるでしょう。
就寝前・起床後ルーティンの整え方
就寝前は室温・水分・エアコン設定をチェックしてください。加えて、起床後は体調や尿の色を確認しましょう。
就寝前、起床後に行うチェックリストを作成することで熱中症を予防したり、重症化を防ぐ可能性が高まります。
就寝前
・室温、湿度
・水分補給
・エアコンや扇風機
起床後
・体調
・尿の色
・体温
・水分補給
夜間熱中症を防ぐ「快適に眠れる寝室」のつくり方
環境省の熱中症環境保健マニュアルでは、快適に眠れる室温の上限は約28℃とされています。高温多湿では深部体温が下がらず、睡眠が浅くなります。夜間熱中症の予防だけでなく、質の良い睡眠のためにも睡眠環境を整えましょう。
28℃を上限にしたエアコン設定とタイマー活用
自動運転や弱冷房を活用し、明け方まで室温が上がらない工夫をしましょう。一般的に、夏は25~27℃に設定するのがおすすめです。寝る30分〜1時間前から冷房をつけ、布団に入る時間には部屋全体がしっかり冷えている状態にしておきましょう。
風通し・遮光・遮熱カーテンの使い方
日中の遮熱対策として遮光・遮熱カーテンやすだれ、断熱シートなどを活用してください。
寝返りしやすく熱がこもりにくい寝具選び
通気性が良く、寝返りしやすい寝具は、夜間の熱こもり対策に役立ちます。さらに体圧分散力の高いマットレスを選ぶことも快適な睡眠環境を整える上で大切です。
関連記事:マットレス8種類の特徴やメリット・デメリットを解説!後悔しない選び方とは
まとめ:夜間熱中症を防いで、安心して眠るためにできること
夜間熱中症は、特別な人だけの問題ではありません。室温・湿度管理、水分補給、寝具の工夫といった日常の積み重ねで、リスクは大きく下げられます。
「今夜は室温を確認する」「寝る前に水を飲む」「寝具を見直す」など、まずはできることから一つずつ始めてみてください。
参考
※2:熱中症環境保健マニュアル










