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監修者

松岡 雄治
地方国立大学医学部卒業後、横浜市内で初期臨床研修を経て、関東の基幹病院で勤務中。
資格:医師国家試験合格、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級
睡眠の記事やアプリで「徐波睡眠」という言葉を見かけ、どのような眠りなのか気になった方もいるのではないでしょうか。徐波睡眠は、ノンレム睡眠のなかで最も深い段階にあたり、体の修復や脳の休息に関わっています。
ただし、深い眠りが多ければ、それだけでよい睡眠とは限りません。徐波睡眠の量は年齢などによって変わるため、睡眠時間や朝の休めた感覚も合わせて振り返ることが大切です。
この記事では、徐波睡眠の意味と心身への役割、年齢に伴う変化をわかりやすく解説します。毎日の睡眠を見直したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
徐波睡眠とは(読み方・意味)
徐波睡眠は「じょはすいみん」と読み、ノンレム睡眠のなかで最も深い段階を指します。日中に学習した出来事や運動技能の記憶を脳に定着・整理させる役割も担っている睡眠です。
脳の電気的な活動を記録したときに、ゆっくりとした大きな波である「デルタ波(徐波)」が目立つことが特徴です。
ノンレム睡眠は、浅い順にN1・N2・N3の3段階に分けられ、徐波睡眠はN3にあたります。寝ている姿や本人の感覚だけで判断するものではなく、脳波などをもとに区別される睡眠の段階です。
資料によっては「ステージ3・4」と説明されることもあります。これは以前の分類で深いノンレム睡眠を2つに分けていたもので、現在のN3に相当します。
ノンレム睡眠・レム睡眠との違い
睡眠は、大きくノンレム睡眠とレム睡眠に分けられます。徐波睡眠はノンレム睡眠の一部であり、3種類の睡眠が別々にあるわけではありません。
それぞれの主な特徴は、次のとおりです。
- ノンレム睡眠(Non-Rapid Eye Movement sleep):浅い段階から深い段階まであり、最も深いN3が徐波睡眠にあたる
- レム睡眠(Rapid Eye Movement sleep):起きているときに近い脳波が見られ、体の筋肉の力が抜ける。眼球が素早く動くことがある
ノンレム睡眠では、心拍や呼吸が落ち着き、安定していきます。一方、レム睡眠では脳が活発に働き、心拍や呼吸も変動しやすくなります。
夢はレム睡眠でよく見られますが、ノンレム睡眠でも生じます。そのため、夢を覚えていることだけで「深く眠れていない」と判断する必要はありません。
徐波睡眠の役割
徐波睡眠は、脳や体の休息に関わる睡眠です。体の修復を支えるホルモンの分泌や、脳内の環境を保つ働きとの関係を見ていきましょう。
1. 体の修復と成長ホルモン
眠り始めに現れる深いノンレム睡眠の時期には、成長ホルモンの分泌が増えます。成長ホルモンは、骨や筋肉の発達を促すほか、体の代謝や組織の修復にも関わるホルモンです。
名前から、子どもの身長を伸ばすためのものという印象を持つかもしれません。しかし、大人になってからも分泌され、体を維持する働きを支えています。
大切なのは、特定の時刻に眠ることよりも、眠り始めの深い睡眠と分泌の増加が関係しているという点です。深い眠りの時間だけを確保しようとせず、毎晩、必要な睡眠時間を取ることを心がけましょう。
2. 脳の休息と老廃物の排出
徐波睡眠では、起きているときに比べて大脳皮質の活動が落ち着きます。ただし、脳全体が働きを止めるわけではなく、睡眠を維持するための活動などは続いています。
また、睡眠と脳の老廃物を排出するしくみとの関係も研究されています。動物実験では、睡眠中のゆっくりした脳の活動が、脳内の液体の流れや老廃物の除去に関わることが示されています。
こうした研究から、睡眠は脳を休ませるだけでなく、脳内の環境を保つ働きにも関わると考えられています。ただし、人での詳しい仕組みは研究が続いており、徐波睡眠を増やせば老廃物の排出量も必ず増えるとは言い切れません。
3. 熟眠感につながる
朝に「ぐっすり眠れた」と感じるかどうかも、自分の睡眠を振り返るうえで大切です。ただし、この感覚は徐波睡眠の量だけで決まるものではありません。
厚生労働省では、十分な睡眠時間を確保することと同じくらい、睡眠で休養がとれた感覚である「睡眠休養感」を重視しています。朝に疲れが残っていないか、日中の眠気で困っていないかも確認しましょう。
眠る時間を確保しても休めた感じが乏しく、仕事や家事に支障が続く場合は、睡眠障害が関わっていることもあります。生活習慣を見直しても改善しないときは、医師や睡眠を専門とする医療機関へ相談してください。
徐波睡眠はいつ出る?加齢でどう変わる?
徐波睡眠は、一晩の睡眠の前半に多く現れます。一般的には浅いノンレム睡眠から始まり、深い段階へ進んだあと、いったん浅くなってレム睡眠へ移ります。
この流れは一晩のなかで繰り返され、明け方に近づくほど徐波睡眠は少なくなり、レム睡眠の時間が長くなります。深い眠りが前半に多いからといって、短時間の睡眠で十分というわけではありません。
徐波睡眠は、加齢に伴って減る傾向があります。年齢を重ねると、夜中に目が覚めやすくなったり、朝早くに目覚めたりする変化も見られます。
若いころと同じ深さを目指すよりも、今の睡眠で休めた感覚があり、日中を無理なく過ごせているかに目を向けましょう。眠気や疲れが生活に影響している場合は、年齢のせいと決めつけずに相談することが大切です。
「若い頃のようにぐっすり眠れない」「途中で目が覚める」と悩む方は非常に多いですが、加齢とともに徐波睡眠の割合が減るのは、誰にでも起こる自然な生理現象です。睡眠時間が短くなったとしても、日中に強い眠気がなく、すっきりと活動できているのであれば、特に問題はないためご安心ください。
徐波睡眠(深い眠り)を増やすには
深い眠りをとりやすくするには、必要な睡眠時間を確保し、眠りを妨げる習慣や環境を見直しましょう。適度な運動などは深い睡眠の増加に役立ちますが、効果には個人差があります。
徐波睡眠の量だけにこだわらず、夜の睡眠全体を整えるつもりで、次の4つを取り入れてみてください。
1. 就寝前のスマホ・カフェイン・アルコールを控える
寝る前はスマートフォンの使用を控え、飲み物の種類や飲む時間も見直しましょう。夜の強い光やカフェインの覚醒作用は、寝つきや眠りの深さに影響することがあります。
それぞれ、次のような工夫から始めてみてください。
- スマホ:寝る前に使用を切り上げ、寝室への持ち込みを控える
- カフェイン:夕方以降は水や麦茶など、カフェインを含まない飲み物へ替える
- アルコール:深酒を避け、眠るための寝酒をしない
カフェインの影響は、飲む量や体質によっても異なります。就寝直前だけでなく、コーヒーやお茶、エナジードリンクなどを1日にどのくらい飲んでいるかも振り返りましょう。
また、お酒は一時的に寝つきをよくしても、睡眠後半に目が覚めやすくなるなど、眠りを乱すことがあります。「すぐ眠れた」という感覚だけで、睡眠によいと判断しないことが大切です。
アルコールは、尿意によって眠りを妨げるだけではありません。アルコールが体内で分解されてできるアセトアルデヒドには強い交感神経刺激作用があり、夜中に目が覚めやすくなってしまうのです。
2. 日中に適度な運動をする
日中に適度に体を動かす習慣は、夜の深い眠りを増やすことに役立ちます。ウォーキングなどの運動を継続すると、寝つきや睡眠時間、睡眠休養感の改善が期待できます。
運動の強さは、息が弾んで軽く汗をかく程度が目安です。慣れていない場合は短い散歩から始め、通勤や買い物の際に歩く機会を増やす方法もあります。
一度に長時間頑張るよりも、体調に合う強さで続けることが大切です。寝る直前の激しい運動は興奮が残って眠りを妨げる場合があるため、時間帯にも気をつけましょう。
3. 朝日を浴びて体内時計を整える
起床後に朝の光を浴びると、眠りと目覚めのタイミングを調整する「体内時計」が整いやすくなります。夜に眠りやすいリズムをつくるために、朝の過ごし方も見直しましょう。
起きたらカーテンを開け、部屋に日光を取り入れてください。通勤や散歩の機会に外の光を浴びることも、取り入れやすい方法です。
休日も起床時刻を大きくずらさなければ、光を浴びるタイミングを保ちやすくなります。日中は明るい環境で過ごし、夜は照明を暗めにするなど、昼と夜の明るさに差をつけましょう。
人は加齢によって早寝早起きの朝型傾向が強まっていきます。早朝に目覚めてしまうことにお悩みの方が、早朝から強い光を浴びすぎると、さらに朝型の傾向が加速してしまう場合があります。早朝覚醒にお悩みの方は、朝日を浴びるタイミングを調整してみてください。
4. 寝室環境と寝具を整える
寝室はできるだけ暗く静かにし、暑さや寒さで目が覚めにくい環境を整えましょう。季節や体感に合わせてエアコンや掛け寝具を調整し、寝苦しさを減らすことが大切です。
枕やマットレスは、横になったときに首や肩、腰が楽なものを選びます。体が沈みすぎないか、圧迫感がないかに加え、自然に寝返りを打てるかも確認してください。
寝具やパジャマは、保温性だけでなく、汗や湿気を逃がしやすいかも見ておきましょう。蒸れが気になる場合は、素材や厚さ、重ねる枚数を見直す方法があります。
外の光や音が気になるときは、遮光・遮音機能のあるカーテンを使ったり、寝床を窓から離したりする工夫もできます。気になる刺激を減らし、落ち着いて休める環境をつくりましょう。
まとめ:徐波睡眠は心身を回復する最も深い眠り
徐波睡眠は、ゆっくりとした大きな脳波が特徴の、最も深いノンレム睡眠です。成長ホルモンの分泌や脳の休息に関わり、一晩の睡眠の前半に多く現れます。
深い眠りをとりやすくするために、次の習慣を見直してみましょう。
- 必要な睡眠時間を確保する
- 寝る前のスマホや、夕方以降のカフェインを控える
- 眠るための寝酒を避ける
- 日中に適度な運動をし、朝の光を浴びる
- 寝室の明るさや温度、寝具の使い心地を整える
徐波睡眠の量は年齢などによって変わるため、深さだけで睡眠のよしあしを判断しないことも大切です。朝に休めた感じがあるか、日中の眠気で困っていないかも振り返りましょう。
できることから取り入れ、不眠や強い眠気が続くときは医師へ相談してください。自分の体調と生活に合う習慣を続け、心地よく休める睡眠を目指しましょう。










