睡眠コラム by 松岡 雄治2026年7月27日読了目安時間: 6

眠りつわりとは?妊娠中に眠くてたまらない原因と対処法

眠りつわりがいつまで続くのか、仕事や家事とどのように付き合えばよいのかが気になる人もいるでしょう。

眠りつわりとは、妊娠初期に強い眠気やだるさが続く症状のことです。これは妊娠によるホルモンバランスの変化などが原因で起こる、体の自然な反応といえます。

この記事では、眠りつわりの主な内容や原因、続く期間、仕事や家事への対応、受診を考える目安を解説します。いくら寝ても眠気が取れず不安を感じている方は、ぜひ最後までお読みください。

 

眠りつわりとは?

眠りつわりとは、妊娠中に強い眠気やだるさが長く続くタイプのつわりです。

一般的なつわりは吐き気をともなうことが多いですが、眠りつわりは外見からはわかりにくい特徴があります。そのため、周囲の人に理解されにくく、本人は孤独やつらさを感じやすくなります。

眠りつわりの主な影響

眠りつわりでは、強い眠気やだるさが日常のさまざまな場面で現れます。たとえば、次のような状態がみられます。

  • 寝ても寝ても眠気がとれない
  • 日中に突然眠くなる
  • 体がだるくて動きづらい
  • 頭がぼんやりして集中できない

朝までしっかり眠ったはずなのに、昼間に強い眠気に襲われたり、仕事中に集中力が続かなかったりすることがあります。また、家事の途中で思わず横になりたくなることもあります。

吐きつわりや食べつわりとの違い

つわりには、眠りつわり以外にもいくつか種類があり、それぞれ特徴が異なります。

  • 吐きつわり:主に吐き気や嘔吐がみられる
  • 食べつわり:空腹になると気持ち悪くなる
  • においつわり:特定のにおいに敏感になり不快に感じやすい

眠りつわりは「眠気」が主ですが、ほかのつわりと同時に現れることも少なくありません。たとえば、眠気と吐き気、だるさを同時に感じる人もいます。

一つに限定せず、自分のつらさに合った方法で、対処の仕方を考えていきましょう。

 

眠りつわりが起こる原因

眠りつわりは、明確な一つの原因で起こるのではなく、複数の要素が影響し合って生じます。

とくに妊娠初期には体内でさまざまな変化が起こり、それらが重なり合うことで眠気やだるさといった体調の変化を感じやすくなります。ここでは、つわりの代表的な要因を解説します。

1. 妊娠初期のホルモンバランスの変化

妊娠初期は、体内のホルモンバランスが大きく変化する時期です。なかでもプロゲステロン(黄体ホルモン)には、体を休ませる働きがあり、この作用によって日中に強い眠気やだるさを感じやすくなると考えられています。

また、妊娠中はホルモンの分泌パターンが変わるため、妊娠初期には睡眠がうまくとれなくなるケースも報告されています。眠気が強く感じられるのは、体が妊娠という新しい状態に適応しようとする過程で起こる自然な反応だといえるでしょう。

妊娠初期の強烈な眠気は、ホルモンの変化によるもので、お腹の赤ちゃんを安全に育てるために、母体に「今は無理をせず休んで」とメッセージを送る防衛本能のようなものです。

この時期は休むことが大切な仕事なのです。そうはいっても家事が進まないのは困りものです。もし旦那さんの協力が不十分な時はぜひこの記事を読んでいただき「そういう時期なのよ」と応援を要請しましょう。

※出典:厚生労働科学研究成果データベース「総括研究報告書(202209018A)

2. 自律神経の乱れや体力消耗

妊娠初期は、ホルモンの影響などもあり自律神経が乱れやすくなるため、次のような変化が現れることがあります。

  • 眠気
  • イライラ
  • 頭痛
  • 全身のだるさ

また、吐き気や食欲不振があると食事を十分にとれず、体力が落ちて眠気が強くなることもあります。いくつかの不調が重なると、より一層疲れを感じやすくなります。

3. 不安やストレスによる睡眠の質の低下

妊娠への不安や、体調・生活の変化によるストレスは、睡眠の質を下げる要因になります。睡眠の質が下がると、十分に寝ても疲れが抜けにくくなり、日中の眠気にもつながります。

厚生労働科学研究によると、妊娠初期は、つわりや妊娠に対する不安、ストレスの影響で睡眠が乱れやすいとされています。また、妊娠期間を通じて、約8割の妊婦が睡眠が不安定だと感じていることが分かっています。

夜なかなか眠れない場合や、日中に強い眠気を感じる場合には、睡眠時間だけでなく、睡眠の質にも気を配ることが大切です。

※出典:厚生労働科学研究成果データベース「総括研究報告書(202209018A)

 

眠りつわりはいつからいつまで続く?

厚生労働省の資料によると、つわりは妊娠初期に現れる吐き気や胃の不快感などの症状で、一般的には妊娠12週ごろに自然とおさまることが多いと説明されています。

つわりは妊娠5週ごろから始まり、8〜9週ごろに症状がもっともつらくなり、15〜16週ごろには落ち着いてくるケースが多いといわれています。ただし、これはあくまで目安です。人によって時期や症状の重さは異なります。

また、眠気が妊娠後半まで続いたり、日常生活に大きく支障が出たりする場合は、貧血など他の体調不良が関係している可能性も考えられます。気になる症状があるときは、健診の際に医師に相談しておくと安心です。

妊娠中の眠い期間については、以下の記事もあわせてご覧ください。

関連記事:【医師監修】妊婦になってから眠い期間はいつまで?時期別の理由と今すぐできる対策

※出典:厚生労働省「働く女性の心とからだの応援サイト

 

眠りつわりの対処法

眠りつわりに悩んでいるときは、無理に眠気を我慢せず、しっかり体を休めることが大切です。ここでは、今日から取り入れられる3つの方法を紹介します。

1. 眠いときは無理せず休む

強い眠気を感じたときは、我慢せずに休むことが大切です。無理に活動を続けると疲れがたまりやすくなります。

眠くなった場合は、少し横になる、目を閉じて体を休めるなど、その場でできる休息を取りましょう。とくに妊娠初期は体が大きく変化する時期です。「休んでもいいのだろうか」と気にせず、眠れるときはしっかり眠ることを優先しましょう。

2. 短時間の仮眠を取り入れる

日中の眠気が強いときは、可能な範囲で短時間の仮眠を取り入れましょう。15〜20分ほどの短い仮眠でも、眠気やだるさがやわらぐことがあります。

ただし、長すぎる昼寝は、夜の寝つきに影響する場合があります。夕方以降の仮眠は避け、日中の早い時間に短くとるのがおすすめです。自分の体調や生活リズムに合わせて、無理のない範囲で調整してみてください。

3. 寝室環境と姿勢を整える

眠りつわりの時期は、普段よりも睡眠時間が長くなりやすいため、リラックスできる寝室環境を整えることが効果的です。たとえば、室温や部屋の明るさ、寝具や枕が自分に合っているかを確認し、調整することで、限られた時間でもしっかり体を休められます。

おなかが大きくなる前でも、横向きで体を丸める姿勢が楽に感じる人もいます。また、寝返りのしやすさや体への負担を意識して寝具を見直すと、睡眠の質を高めやすくなります。快適に休める環境を作ることは、日中の眠気とうまく付き合うための助けにもなります。

なお、妊娠後半の眠れなさが気になる場合は、以下の記事も参考にしてください。

関連記事:【医師監修】妊娠後期に眠れない原因と今すぐできる5つの対策法

 

仕事中や家事中に眠いときの対応

眠りつわりで困りやすいのは、仕事や家事をしている時間です。強い眠気があると、業務や家事が思うように進まず、焦りを感じることもあるでしょう。

妊娠中は体調が変わりやすく、つわりの影響で日常生活に支障が出ることがあります。ここでは、日常生活に支障が出ているときの対処法を解説します。

1. 職場に相談して休憩を取りやすくする

仕事中に眠気やだるさが強いときは、上司や人事、産業保健スタッフへの相談を検討しましょう。休憩時間の取り方や業務量、通勤時間などを調整できると、負担をやわらげやすくなります。

また、職場では妊娠中の女性が申し出た場合、事業主は休憩時間を長くする、あるいは回数を増やすといった対応を取ることが義務づけられています。妊娠初期はまだ周囲に伝えにくい時期ですが、話せる範囲で少しずつ相談してみてください。

2. 母健連絡カードを活用する

仕事に支障が出るほどつらいときは、母健連絡カード(母性健康管理指導事項連絡カード)を使って職場に配慮を求めましょう。

母健連絡カードは、主治医の指導内容を職場に伝える書類です。カードを提出された職場は、記載された勤務時間の短縮や休憩などに応じて対応することが義務付けられています。普段、体調不良を伝えても配慮を得にくいと感じる職場であっても、医師の判断が根拠になるため、必要な対応を得ることにつなげやすくなります。

カードには、主治医が必要と判断した配慮の内容が記入されます。眠気や倦怠感、通勤の困難などで困っているときは、まず主治医に相談して、カードを書いてもらいましょう。

「眠気や倦怠感だけで診断書を書いてもらえるの?」と遠慮する妊婦さんもいらっしゃいますが、眠気や強い倦怠感もとても大事な情報です。無理をして切迫流産などのトラブルにつながる前に、健診の際に「仕事中の眠気やだるさが辛い」と主治医に相談し、母健連絡カードを書いてもらいましょう。

3. 家事は優先順位を下げて分担する

家事が進まないと感じるときは、優先順位を下げてパートナーと分担しましょう。妊娠初期は、家事を完璧にこなすことよりも、体調を優先した方がよいケースもあります。

たとえば、次のような工夫で家事の負担を減らせます。

  • 料理は簡単なメニューや市販のお惣菜を利用する
  • 掃除の回数を減らす
  • 買い物はネットスーパーを活用する

パートナーや家族には、「今はつわりで体がつらい」など、具体的に伝えると協力を得やすくなります。自分以外の人に頼ることは、体を守るためにも大切な選択です。

 

寝すぎても大丈夫?赤ちゃんへの影響はある?

眠りつわりで長く眠ってしまうことがあっても、過度に心配する必要はありません。強い眠気がある時期にたくさん眠るのは、妊娠中に多くの方が体験する体の変化です。

母性健康管理サイトの調査によると、妊娠中または産後に、身体的につらい経験をした人は92.1%にのぼります。その中でも、「眠気や不眠」を感じた人が44.5%、「全身のだるさや脱力感、疲労感」を訴えた人が43.5%を占めました。

しかし、食事や水分がほとんど取れない、体重が大きく減るといった変化がみられる場合は注意が必要です。そのようなときは、できるだけ早く医療機関に相談しましょう。

※出典:厚生労働省「母性健康管理サイト(妊娠中の女性労働者に関する調査)

 

眠りつわりで受診や相談を考える目安

眠りつわりで注意したい体調変化は、以下のとおりです。

  • 眠気以外の不調が強い
  • 気分の落ち込みや不安が強い

このような変化が見られる場合には、早めに医師に相談しておくと安心です。体調の変化を把握し、適切に対処することで、母体と赤ちゃんの健康を守ることにつながります。

1. 眠気以外の不調が強い

眠気に加えて、吐き気や嘔吐、食欲不振、頭痛、めまい、強い倦怠感などの変化が重なる場合は、眠りつわりだと決めつけないようにしましょう。なかでも、水分がとれない状態や体重が減っている場合は、注意が必要です。

厚生労働省の資料では、妊娠悪阻で脱水がある場合や体重が3〜4kg減少する場合には入院加療が必要と記載されています。異変を感じたら、我慢せず早めに産婦人科を受診しましょう。

※出典:厚生労働省「妊娠中の症状等に対応する措置

2. 気分の落ち込みや不安が強い

心の調子が悪いと感じたときは、体の不調と同じように、医師やカウンセラーに相談することが大切です。たとえば、眠気や体調不良が続くと、気分が落ち込んだり、不安が強くなったり、自分を責めてしまうことがあります。

また、つらい気持ちを一人で抱え込むと、十分に休むことが難しくなります。家族や職場の人、主治医に自分の状況を話し、支えてもらえる環境を整えていきましょう。つらい気持ちが続く場合は、妊婦健診などで医師に相談してみてください。

 

眠りつわりに関するよくある疑問

ここでは、眠りつわりについて、性別や流産との関係などに関する疑問にお答えします。

Q1. 眠りつわりで赤ちゃんの性別はわかる?

眠りつわりの有無やその強さによって、赤ちゃんの性別がわかるという医学的な根拠はありません。つわりの感じ方には大きな個人差があるため、つわりの強弱を客観的に判断することは難しいでしょう。

このような言い伝えは、あくまで楽しみのひとつとして受け止めるのがよいでしょう。赤ちゃんの実際の性別は、健診で確認するのが確実です。

Q2. 眠りつわりと流産は関係ある?

眠りつわりがあっても、眠気を感じるだけで流産と判断することはできません。眠気は妊娠初期によく見られる体の変化であり、眠いからといって流産のサインとは限りません。

ただし、出血や強い腹痛、体調の急な変化が現れた場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。眠気の強さだけで不安になりすぎないようにしましょう。気になる症変化があれば、その都度相談することが、安心して過ごすためのポイントです。

Q3. 眠りつわりを経験する人はどれくらい?

妊娠中や産後に「眠気」や「不眠」を感じる人は、全体の4割以上を占めます。これは、ホルモンバランスの変化をはじめとする身体的・精神的な要因が大きく関係しているためです。

実際、妊娠中に強い眠気やだるさを経験するケースは珍しくありません。このように、「眠りつわり」は妊娠中に多くみられる変化の一つといえます。

※出典:厚生労働省「母性健康管理サイト(妊娠中の女性労働者に関する調査)

 

まとめ:眠りつわりは無理せず休みながら周囲に相談しよう

眠りつわりは、妊娠初期のホルモン変化などによって起こる、強い眠気やだるさが続く状態のことです。これはホルモンバランスの急激な変化などが原因で起こると考えられており、決して自身を責める必要はありません。

主に、強い眠気や身体のだるさを生じます。多くの場合、妊娠12週頃を過ぎると不調は落ち着いてきますが、感じ方や経過には個人差があります。眠気を我慢しようとせず、まずは体をしっかり休めることが大切です。

具体的な対処法としては、眠いときは無理をせず意識的に休憩をとる、短時間の仮眠を活用する、寝室の環境を整えるといった工夫が挙げられます。また、仕事や家事は無理をせず、家族や職場に協力を依頼して調整しましょう。

眠気以外にも強い不調が出ていたり、気分の落ち込みが続いたりする場合は、一人で抱え込まず、家族や職場、医療機関へ早めに相談することをおすすめします。周囲の支援を積極的に利用しながら、この時期を無理なく乗り越えていきましょう。