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監修者

松岡 雄治
地方国立大学医学部卒業後、横浜市内で初期臨床研修を経て、関東の基幹病院で勤務中。
資格:医師国家試験合格、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級
夜中に突然起き上がって歩き回る家族の姿を目にしてお困りではないでしょうか。子どもが無意識のまま部屋を徘徊したり、パートナーが寝ぼけた状態で意味不明な行動をとったりする夢遊病について、「なぜこんなことが起きるのか」「危険はないのか」「病院に行くべきか」といった疑問や心配を抱えている方も多いでしょう。特に、階段から落ちたり、外に出てしまったりといった事故の危険性を考えると、早急に原因を知って対策を講じる必要があります。
この記事では、夢遊病の医学的なメカニズムや原因はもちろん、睡眠衛生の改善方法など、今日から自宅でできる具体的な対策を紹介します。また、どのような症状の場合に医療機関を受診すべきか、何科を受診すればよいか、治療にはどのような選択肢があるのかについてもまとめています。
夢遊病は決して珍しい症状ではありません。多くの場合は適切な対策で改善可能です。夢遊病に関する不安を解消し、家族全員が安心して眠れる毎日を取り戻しましょう。
夢遊病とは?深い眠りから起こる不完全な覚醒のメカニズム

夢遊病は、医学的には睡眠時遊行症と呼ばれます。文字通り眠っている間に無意識に歩き回るなどの異常行動をきたすのが大きな特徴です。ノンレム睡眠のうち深い睡眠の段階で、脳が不完全に覚醒することで起こります。睡眠時に異常をきたす疾患を総称して睡眠随伴症と呼び、夢遊病もそのうちのひとつです。1)
深いノンレム睡眠時に起こる脳の部分的覚醒
睡眠には、脳が活発に活動している「レム睡眠(浅い睡眠)」と、脳が休息している「ノンレム睡眠(深い睡眠)」があります。夢遊病は、ノンレム睡眠(深い睡眠)の中でも脳の活動が非常に低いタイミングで起こります。2)
ノンレム睡眠では、通常、身体の筋肉は緩んでいます。しかし夢遊病では、脳がノンレム睡眠で休んでいる状態でも、身体が激しく動いてしまうことがあるのです。意識や記憶を司る脳の部位が深く眠ったままの状態なので、行動に一貫性がなく、翌朝にはその記憶もありません。深いノンレム睡眠は睡眠の前半の3分の1の時間帯に多く出現するため、夢遊病も同じ時間帯に出現する傾向があります。3)
3) 厚生労働省 睡眠のメカニズムより改変
夢遊病の典型的な症状と特徴
夢遊病の典型的な症状は、無意識にベッドから起き上がり、歩き回ることです。脳は覚醒していないため、話しかけても反応が乏しくうつろな表情をしており、多くの場合本人を覚醒させることは難しいといわれています。4)
具体的な症状例にとして、以下のようなものがあります。
- ベッド上で座り込み、あたりを見回す
- 部屋の中を徘徊する
- 押入れやクローゼットで排尿する
- 服を着替えようとする
- 家から外に出て行こうとする
これらの症状は通常、短時間で回復することが多く、本人は行動の記憶がないことがほとんどです。夢遊病の行動を急に制止すると、混乱したりパニックを起こしたりすることがあるため、ベッドに戻るように優しく促すようにしましょう。
年齢によって異なる夢遊病の原因

夢遊病の原因は子どもと大人で異なるため、年代特有の要因を理解することが適切な対策への近道です。夢遊病は幼少期から児童期にかけて多く見られ、思春期には自然に消失する傾向があります。
子供の夢遊病:脳の発達過程が主な原因
子どもの夢遊病は、脳が発達過程にあることが関連すると考えられています。睡眠と覚醒をコントロールする脳の機能がまだ未熟で、深いノンレム睡眠からスムーズに覚醒できず、部分的な覚醒が起こりやすいのです。また、深いノンレム睡眠は加齢とともに減少することが知られています。2)
つまり、子どもは大人に比べて深い眠りの割合が多いため、夢遊病になりやすい傾向にあるのです。多くの場合、成長とともに脳の機能が成熟していくと症状は自然に改善していくため、過度に心配する必要はありません。4)
大人の夢遊病:ストレスと生活習慣が影響
大人の夢遊病は、ストレスや生活習慣の乱れが引き金となることが多いです。過度なストレスや睡眠不足は、自律神経のバランスを崩し、睡眠の質を低下させます。日本は「最も睡眠時間が短い国」であり、睡眠不足が夢遊病のリスクを高める一因となっている可能性も否定できません。そのほかアルコールの過剰摂取や特定の薬剤の使用などが原因となることもあります。5)
夢遊病を引き起こす3つの主要因

夢遊病の発症には、様々な要因が複合的に関わっています。3つの主な要因を確認してみましょう。
睡眠不足による深い睡眠の反動
睡眠不足の状態が続くと、身体は深い眠りによって回復しようとします。これにより、深いノンレム睡眠が通常よりも強く出現し、脳の一部が不完全に覚醒するリスクが高まります。これは子どもの場合も同様です。
文部科学省の調査によると、過去20年間で夜22時以降に起きている6歳未満の子どもの割合は2〜4倍にまで増加しています。就床時刻が0時以降の子どもの割合も増加傾向にあり、子どもの慢性的な睡眠不足が夢遊病の原因となる可能性が指摘されています。6)
またある研究では、22時までに寝る割合が低い(小学生49%、中学生10%)こと、0時以降に寝る割合が高い(中学生22%、高校生47%)ことが報告されています。7)
7)知っておきたい子どもの睡眠 睡眠口腔医学 3 (2), 127-132, 2017より改変
※深夜0時以降に就寝する小学生については、データなし
遺伝的要因:家族歴の重要性
夢遊病には遺伝的な要素も大きく関係しています。夢遊病や夜驚症は家族歴を持つことが多く、両親にこれらの病歴がある場合、子どもの発症リスクは高まります。
環境要因とトリガー
夢遊病は外的環境によっても引き起こされます。次のような環境の変化や特定の要因がトリガーとなることがあります。
- 普段と異なる場所(旅行先や出張先)での睡眠
- 特定の薬剤(非ベンゾジアゼピン系睡眠薬であるゾルピデムなど)の服用
- 夜間のアルコール摂取
- 心理的ストレスや過度な疲労
これらの要因が重なることで、夢遊病のエピソードが起こりやすくなります。
夢遊病の予防と改善のための実践的対策

夢遊病を予防し、改善するためには、日々の生活習慣を見直して睡眠環境を整えることが大切です。また、夢遊病で動いてしまうことを念頭に、窓を閉めて鍵をかけておく、ベッドから出る時に怪我をしないようベッド周辺に物を置かないなどの対応も有効です。
規則正しい睡眠習慣の確立
睡眠不足や生活リズムの乱れは夢遊病の大きな原因となります。8)
- 規則正しい睡眠習慣(決まった時間に起床・就寝)
- 年齢に応じた十分な睡眠時間の確保
- 睡眠の準備をルーティン化(室温、照明、入浴 等)
- カフェイン摂取の制限(就寝12時間前まで)
忙しい毎日でなかなか難しいこともありますが、規則正しい睡眠習慣は毎日の疲れやストレス対策にもとても有効です。ぜひ積極的に取り組みましょう。
快適な睡眠環境づくり:マットレスの重要性
睡眠環境は、疲労回復の場として重要なことはもちろん、不快な環境だとそれ自体が睡眠中のストレスや覚醒の原因になってしまいます。そのため、質の高い深い眠りを得るためには、睡眠環境を整えること欠かせません。特に、身体を支えるマットレスは、理想的な寝姿勢を保ち、睡眠の質を向上させる上で重要な役割を果たします。
コアラマットレスのクラウドセル™フォームは、優れた体圧分散性と適切な反発力で、あなたの身体を無理なくサポートします。これにより、身体の一部に負担が集中するのを防ぎ、自然な寝姿勢を実現します。さらに、クラウドセル™フォームは通気性にも優れており、寝床内のムレを防ぎ、快適な睡眠環境を一年中保ちます。
また、寝返りによる振動も瞬時に吸収することで、隣で寝ている人の邪魔になりません。これは、不完全な覚醒などを避ける上でも効果的だと考えられます。
関連記事:至福の寝心地をもたらすクラウドセル™
医療機関への相談タイミング

医療機関への相談タイミングは基本的に「日中の生活に支障をきたしているかどうか」で判断します。夢遊病の症状によって身の安全に不安がある場合は、医療機関への相談を早めに行うのが適切です。具体的には、下記のような場合に受診を検討しましょう。
- 症状が頻繁に起こる、または危険な行動を伴う
- 大人になってから症状が始まった、または悪化した
- ストレスや睡眠不足など、明らかな原因が見当たらない
- 夜驚症など、他の睡眠障害を併発している
受診の際は、睡眠外来や精神科、心療内科を受診するとよいでしょう。子どもの場合は小児科でも相談可能です。症状次第ですが、睡眠薬を使って不完全な覚醒を防ぐことが有効なケースなどもあるため、医師の指示に従いましょう。
夢遊病の原因を理解して、家族全員が安心して眠れる毎日へ

夢遊病は、深いノンレム睡眠から脳が不完全に覚醒することで起こる睡眠障害です。子どもの場合は脳の発達段階、大人の場合はストレスや睡眠不足といった生活習慣が主な原因となることが多く、年齢によってその原因が異なります。そして夢遊病の対処法には、生活習慣の見直しや危険を回避するための環境整備が重要です。特に、質の高い睡眠環境はストレスや疲労を解消できるばかりでなく、不完全な覚醒状態への陥りやすさを軽減することで、症状の改善に役立つと考えられます。
コアラマットレスは、優れた体圧分散性と通気性で、快適な睡眠環境を提供し、家族全員が安心して眠れる毎日をサポートします。身近な人の夢遊病の症状を見ると不安になってしまいますが、夢遊病の原因を正しく理解し、適切な対策を講じることが重要です。慌てたり不安を感じたりする必要はありません。今できることから見直し、あなたとご家族の睡眠の質を向上させましょう。
参考
1)厚生労働省 睡眠時随伴症
(https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/heart/yk-025)
2)厚生労働省 ノンレム睡眠
(https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/heart/yk-048)
3)厚生労働省 睡眠のメカニズム
(https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-002)
4)国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部
(https://www.ncnp.go.jp/nimh/sleep/sleep-medicine/parasomnia/index.html)
5)厚生労働省 健康づくりのための睡眠ガイド2023
(https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf)
6)文部科学省 子どもの生活の現状
(https://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/katei/08060902/002.pdf)
7)知っておきたい子どもの睡眠 睡眠口腔医学 3 (2), 127-132, 2017
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/josm/3/2/3_127/_pdf)
8)MSDマニュアル 睡眠時随伴症 睡眠時遊行症(夢遊病)










