睡眠コラム by Koala Sleep Japan2025年4月26日読了目安時間: 8

上級睡眠健康指導士監修|仮眠で起きれない人必見!原因と対策を徹底解説

朝「眠り足りない」と感じたから、昼食後ほんのちょっとだけ仮眠してすっきりしたい。それなのに起きたら昼休みが過ぎていて青ざめた、せっかく寝たのに寝ざめが悪くて仕事を再開するまでぐずぐずしてしまう……そういった経験はありませんか?

パワーチャージするための昼食後の仮眠でなぜかすっきり起きられない人に、どうすれば起きられるようになるのかを、上級睡眠健康指導士でコアラマットレス社員の石川が徹底解説。仮眠が必要な理由、仮眠で起きれない理由、効果的な長さと時間帯、すっきり目覚める工夫など、睡眠のプロならではの視点で取り上げます。

目次

仮眠が必要な理由とメリット

「パワーナップ」という言葉を耳にしたことがありませんか?パワーナップとは就業時間中(多くはランチ後)に仮眠を取ることを指します。AppleやGoogle、Nikeといった世界的企業が取り入れていることでも知られています。また、昼食後の昼寝は昔から製造業などを中心に親しまれている習慣だからか、日本でも「パワーナップ」を受け入れる企業が増えてきましたね。

なぜ企業でパワーナップが推奨されているのか。それは、昼間、短時間仮眠を取ると、脳が活性化して集中力を回復でき、結果として作業効率が向上することが多いからです。この研究を始めたのはなんとアメリカ航空宇宙局(NASA)で、今から70年ほど前のこと。NASAは宇宙飛行士は26分の仮眠で認知能力や注意力が向上したという睡眠研究を発表し、世界を沸かせたのです。

参考:The benefits of napping for safety & How quickly can the brain wake-up from sleep?

仮眠は、短時間でも記憶機能の整理、創造力向上に貢献する、と言われています。また、自律神経を整え、疲労蓄積を防ぐ効果がある、という研究もされています。昼食後に眠くなるのは人間の身体の自然な反応です。消化器官に血液が集中し、血糖値が変化するためです。そこで仮眠を取ると日中の眠気対策としても有効、と言えます。

さらに最近のユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)とウルグアイ共和国大学の共同研究によると、昼間の仮眠を習慣にすると、脳の老化を遅らせることができ、そのおかげで健康そのものを高めるのに役立つ可能性があるのだとか。これは大きなメリットですよね。

参考:Is there an association between daytime napping, cognitive function, and brain volume? A Mendelian randomization study in the UK Biobank

これだけのメリットがあるパワーナップですが、タイミングよく起きられずに深い眠りに陥ってしまうと、せっかく仮眠しても効果が得られない場合もあります。思ったより深く眠ってしまった昼寝の後、起き抜けに数十分ぼーっとしてしまった経験はないですか?

つまり、パワーナップには「サッと短時間寝てさっと起きる」という、効率的な仮眠習慣を身につけることが重要なのです。そのために必要なのは次の2つです。

・適切な時間設定

・環境づくり

この件については、後ほど詳しく解説します。

仮眠で起きれない人が多い主な原因

では、なぜ仮眠で「サッと短時間寝てさっと起きる」ことができないのでしょうか?実はこれにはいくつかの要因があると考えられています。

  • 慢性的な睡眠不足
  • 不規則な生活リズム
  • 不適切な仮眠環境

こういった要因があると、より深い眠りに陥りやすくなり、結果として起床困難が起こる、というわけです。

睡眠サイクルの乱れが起こる仕組み

睡眠は、脳がお休みするノンレム睡眠から始まって身体が休むレム睡眠へと移行するサイクルを繰り返します。このサイクルは1回約90分であり、一晩に4~5回繰り返されます。ところが、深い眠りのタイミングで起きようとすると起床が困難となってしまいます。夜更かしなどで不規則な生活が続くと睡眠リズムを崩し、悪循環を引き起こします。

夜更かしや生活習慣による影響

夜更かしが続いてずっと睡眠が足りない……この「睡眠が足りない」状態を「睡眠負債が増加する」と呼びます。負債、ってイヤな響きですよね。この睡眠負債があると、仮眠時に身体が一気に睡眠を取り戻そうとするのです。「昼寝なのにめちゃめちゃ寝ちゃった」ということが起こることもあります。

また、食事時間や運動時間が不規則だと、体内時計が調整されず、眠気のタイミングが不安定になることがあります。その結果、思わぬ時に深く寝てしまう(=仮眠の時に)というわけです。

ストレスや心身の疲れと仮眠不足

ストレスを感じることで、自律神経のバランスが崩れ、夜間の睡眠が浅くなる場合があります。心身の疲労が強いと仮眠をした時に深い眠りに陥りやすく、「起きられない」ということにつながります。

短い仮眠の効果的な長さと時間帯

2~3時間は休むスペインのシエスタのように、時間が許すなら仮眠はたーっぷり取ったほうがいい、と思いますか?実は真逆で、仮眠は短い方が効果的なのです。研究によると、理想的な仮眠は15〜20分程度。これより長いと深い眠りに入りすぎて起床時の頭がぼんやりする、とわかっています。先ほど述べたNASAの発表によると危険な長時間任務の宇宙飛行士は平均26分ですが、私たちにはそれより少し短いくらいがちょうどいいのです。

参考:The effects of napping on cognitive functioning

15分〜20分のパワーナップのメリット

15分程度の短い仮眠は、精神的なパフォーマンスを即向上させます。パワーナップは脳の疲れをリセットし、頭をクリアにする効果があるのです。深い眠りに入る前に起きるので、仕事を再開した後のパフォーマンスも素早く回復できます。

午後3時前までに仮眠を取るのが理想的

短い仮眠の効果は起床後3時間持続します。したがって、午後3時までに仮眠を取ると夜の睡眠への影響を避けられます。昼過ぎ〜午後2時は自然と眠気が高まる時間帯でもあり、この時間の仮眠が効果的です。

シーン別:仮眠の取り方と起きれない時の対策

では、どのように仮眠を取るのがベストで、すっきり起きれない場合の対策はどうすればいいのでしょうか。状況に応じた仮眠方法を身につけることが鍵となってきます。勉強、仕事、夜勤など場面ごとに適した仮眠の取り方と起床方法があります。

勉強中の仮眠:集中力を維持するコツ

勉強中は5〜15分程度の短い仮眠が効果的です。ぐっすり寝込まないよう(そして勉強の意欲が削がれないよう)、机に伏せるなど適度な緊張感を保つ姿勢で眠るのがおすすめ。起床後はストレッチや深呼吸で体を目覚めさせましょう。

仕事中や昼休憩での仮眠:効率UPのための工夫

仕事中の場合、昼休みを活用し15分程度の仮眠を取るのがおすすめです。Google社のように、仮眠用のポッドがある会社もあるかと思いますが、そういった素晴らしい睡眠環境では、ついうっかり深く眠ってしまうことも。前もって同僚に伝えておく、タイマーを設定する、など起きる準備をしっかり行っておきましょう。また、デスクにうつぶせ寝できるよう専用枕を用意しておく、椅子で寝る場合はアイマスクを使うなど、仮眠環境を工夫してみましょう。

夜勤・徹夜時の仮眠:体内リズムを崩さないポイント

通常とは違う睡眠パターンである夜勤中の仮眠や、徹夜作業中の仮眠では、眠気が来る時間帯を見極めましょう。深い睡眠に入りすぎない範囲で仮眠を取るのがおすすめです。音と光とバイブレーションで起こしてくれる強力なアラームの活用や、仮眠前に軽食を摂ることで眠りに入りやすくするなど、起床管理を徹底することが重要です。

仮眠からスッキリ目覚めるための工夫

仮眠から起きた時に取る行動や、仮眠時の環境を整えることで仮眠後のスッキリ感を高めることができます。アラーム設定や光の利用、カフェインの活用など、さまざまな工夫を取り入れてみましょう。

目覚ましの使い方と設定のコツ

いくら目覚ましが大事といっても、不快な警告音などをアラーム音に設定するのは、睡眠の質に影響する可能性があるのでおすすめしません。段階的に音量が上がるアラーム設定や、心地よいサウンドを選ぶことが大事です。アラームはすぐ手が届くところに置くのではなく、止めるために体を動かさないと届かない場所に置くなど、ちょっとした仕組みを取り入れると効果的です。

仮眠前にカフェインを摂るタイミング

仮眠直前にカフェインを摂取する「カフェインナップ」ってご存知ですか?実はこのカフェインナップは、仮眠からスッキリ起きるのに効果的です。短い仮眠(15分程度)の起床時にちょうど覚醒作用が発揮されるからなのですが、カフェイン耐性は個人差があるので、摂取のタイミングや量の調整が必要です。

光を浴びて覚醒度を高める方法

仮眠から起きたらすぐ明るい光を浴びると体内時計をリセットし、覚醒を促進できます。自然光が理想的ですが、人工的な光でも自然光の代わりとなります。ただしこの場合、覚醒を促すには、明るさがとても大事です。晴天時の屋外の明るさは10万ルクス以上、曇天時でも2万ルクス以上あります。一方、蛍光灯の室内は500ルクス程度しかありません。すっきり目覚め、体内時計を整えるには、2,500ルクス以上の明るさが必要です。

仮眠による寝過ぎを防止する具体策

では、より具体的に、仮眠による寝過ぎ防止の具体策を考えてみましょう。まず、仮眠は短時間に制限し、寝過ぎを防ぐ工夫が必要です。アプリやタイマーで仮眠時間を管理し、寝過ぎないような環境も調整しましょう。

スマホアプリ・ガジェットを活用する

スマホに入っているデフォルトのアラームアプリではなく、睡眠管理専用アプリを探してみましょう。また、スマートウォッチなど身に付けているものを活用して仮眠時間をコントロールするのもおすすめです。浅い眠りを検知して起こしてくれる機能付きの製品もあります。

姿勢や環境を工夫して眠り過ぎを防ぐ

心地よく眠れるベッドではなく、ソファーやリクライニングチェアなど、座った姿勢で仮眠を取るのがおすすめです。完全に暗くせず、睡眠環境的に快適すぎないよう、心がけましょう。

オフィスや自宅での仮眠環境づくり

サッと寝てスッキリ起きられる仮眠環境を整えましょう。仮眠場所を検討し、目覚めるときにはツールを活用します。ただし快適すぎる空間は深い眠りを誘発するため注意が必要です。ベストな仮眠環境とは、快適にぐっすり眠れる睡眠環境ではないのです。

リクライニングチェアや簡易ベッドの活用

リクライニングチェアで仮眠を取る寝姿勢の場合、深く寝すぎるリスクを軽減できる上、リラックスもできます。一方、オフィスの仮眠室などにある簡易ベッドは寝心地が良い反面、寝過ぎる可能性があるため、誰かに起こしてもらうよう前もって声をかけておくなど、注意が必要です。

静音・暗所を意識したスペースの確保

完全に遮音・遮光した暗闇は避けましょう。「ほどほどの暗さ」を意識して、ツールを活用するのをおすすめします。イヤホンやアイマスクで外部刺激を遮断する方法が有効です。

夜の睡眠に悪影響を与えない仮眠の取り方

昼寝しすぎて夜寝られなくなった経験、ありませんか?仮眠はいわば栄養ドリンクのようなものであり、主役はあくまである程度の長さがある夜の睡眠です。仮眠は効果的と言っても、良質な睡眠の代わりにはななりません。良質な睡眠とはノンレム睡眠・レム睡眠というサイクルを繰り返すことであり、この間に脳の疲労回復や記憶整理、心身の修復がなされるからです。

したがって仮眠を取る際には、時間や長さを工夫し、夜間睡眠への悪影響を最小限に抑えることが大事です。特に夕方以降の仮眠は生活リズムを乱す原因となるため、注意が必要となります。

仮眠時間の上限を設定する

仮眠は20分程度を上限とし、長く寝すぎて夜の睡眠が削られるリスクを避けましょう。複数のアラーム設定など、自分で目覚めをコントロールできるよう、前もって準備しておきましょう。

夕方以降の仮眠は控えめに

冒頭でもいいましたが、仮眠から起床後、3時間は覚醒効果が続きます。したがって、夕方以降の仮眠は夜の睡眠の質を低下させることになります。どうしても仮眠が必要な場合は10分以内の極短時間に留め、夜の睡眠に影響を与えないよう工夫しましょう。

長期的な睡眠リズム管理と生活習慣の改善

サッと寝てスッキリ起きられるよう、仮眠の質を上げるには、矛盾しているようですが、まず夜たっぷり寝ることが大事です。NASAの研究者によると、「仮眠のメリットが得られるかどうかは、その人の日々の睡眠が大きく関係している」のだとか。

トラック運転手やパイロット、あるいは看護師や警備員など、運用上どうしても睡眠が不規則になる職業の人もいるでしょう。その場合、まず、日々の睡眠リズムや生活習慣全体を整えることが根本的な課題です。食事や運動のリズムも含め総合的に見直す必要があります。

参考:The benefits of napping for safety & How quickly can the brain wake-up from sleep?

週末に睡眠負債を返済する際の注意点

日々の足りない睡眠(睡眠負債)を一気に返済する週末の「寝だめ」では、一時的に疲労回復できますが、かえって体内リズムを乱す可能性もあります。寝だめよりは、平日の昼間の仮眠で睡眠負債を分散させる方が効果的です。

食事や運動を含めた総合的な生活リズムの整え方

睡眠の質には、食事と運動の習慣も影響します。規則正しい食事と適度な運動を取り入れ、総合的な生活リズムを整えましょう。英国BBCの人気健康番組で長年活躍してきた医師ランガン・チャタジー氏は、すぐ取り入れられる運動として「朝コーヒーメーカーでコーヒーを作っている5分間にスクワットする」ことをおすすめしています。忙しい現代の生活で週に数回ジムに行くのは本当に大変ですが、朝コーヒーを淹れる5分間にスクワットをする、このちょっとした運動なら長続きするし、そこを起点に生活を整えられるからだとか。

参考:Feel better and Live More with Rangan Chatterjee

仮眠後にスッキリするためのリフレッシュ方法

仮眠から起きた後には、どうしても「ぼーっ」としてしまう時間があります。これは身体の自然な反応であり、専門用語で「睡眠慣性」と呼びます。この睡眠慣性からスッキリとすばやく通常の状態に切り替えるには、ストレッチや深呼吸、水分補給などを行いましょう。こういったリフレッシュ法で覚醒度が高まります。

軽いストレッチや呼吸法で体を起こす

仮眠後すぐに軽いストレッチや呼吸法を行うと、血流が促進され、脳や筋肉が活性化します。大がかりな運動は不要です。起きてすぐ「うーん」と大きい伸びを数回行うのがおすすめです。呼吸法にはいろいろな方法がありますが、自衛隊で気合を入れるときに行われているのが「6秒息を吸う・4秒止める・短く強く吐く」という呼吸法だとか。

水分と栄養補給で覚醒度を高める

仮眠後にコップ一杯の水を飲むだけでも体のスイッチを切り替えやすくなります。また、軽い食事で脳にエネルギーを供給し覚醒度を高めましょう。

起きれない人におすすめのアイテム・グッズ

仮眠の入眠から起床までをサポートする様々なグッズがあります。これらを活用することで、仮眠の質を高めることができます。「眠りに入りにくい」や逆に「目覚めが悪い」など、自分の課題に合わせて最適な製品を選ぶのがおすすめです。

アイマスク・耳栓などの安眠グッズ

光をシャットアウトするアイマスクやノイズキャンセレーション機能のついたイヤホン、遮音する耳栓は仮眠の質を向上してくれます。小さいツールなので持ち運びも容易、場所を選ばず使用できます。

スマートスピーカーやウェアラブル端末などの活用

スマートスピーカーは「15分後に起こして」など、話しかけるだけの音声コマンドで、タイマー設定や音楽再生を行えます。スマホにAIアプリが入っている場合も同様です。

AppleWatchなどのウェアラブル端末には、浅い眠りのタイミングでアラームを鳴らす機能があるタイプがありますが、これはすっきり目覚めるのにとても便利です。

まとめ

サッと寝てスッキリ起きる仮眠のためには、まず、夜たっぷり寝ること。仮眠では満足いくまで眠り込んではいけない、ということが分ったでしょうか。

まとめると、仮眠の効果を最大限に引き出すには、次のようにすることが大事です。

仮眠に入る前
仮眠は15分~20分に限定する
午後3時までに仮眠を終える
深く眠りすぎない仮眠環境を整える
アラームなど「起きる」手だてを整えておく
仮眠から起きたら
「睡眠慣性」を覚ますため、行動する
すぐに伸びをし、深呼吸を行う
すぐに光を浴びる
コップ1杯の水を飲む、軽く食べる

この記事のヒントを元に、パワーナップが思い通りにできることを願っています。