目次
監修者
松本 恭
「健康の秘訣はぐっすり眠ること」がモットーで、これまでウォーターベッド、ウッドスプリングベッド、西式健康枕、ハンモックなどさまざまな寝具の寝心地を追求してきた睡眠マニア。偶然出会ったコアラマットレス®︎の快適さに感銘を受け、メンバーとして参加。上級睡眠健康指導士としての知識を通して、より多くの人に快眠を届けたいと願っている。
仕事で疲れ果てて帰宅し、メイクも落とさずソファでうたた寝。ハッと目覚めた瞬間に感じる、あの目にコンタクトレンズが張り付いたような不快感と「やってしまった」という罪悪感。実は私自身、かつては頻繁にこれを繰り返しており、ある朝コンタクトレンズがどうしても外れず、パニックになりながら眼科へ駆け込んだ苦い経験があります。あの時の「目が開けられないほどの激痛」と、医師から厳しく注意された申し訳なさは、今でも忘れられません。 コンタクトレンズをつけたまま眠ることは、私たちが想像している以上に目に大きな負担を強いています。あのゴロゴロとした独特な違和感は、体からの切実な警告なのです。
本記事では、上級睡眠健康指導士の資格を持つコアラマットレス社員の松本が、コンタクトをつけたまま寝ることで生じるリスクを分かりやすく紐解きます。万が一寝てしまった直後にコンタクトレンズを安全に外すための具体的なステップや、受診を検討すべき危険なサイン、そして寝落ちを防ぐための生活習慣までご紹介します。
コンタクトレンズをつけたまま寝るのが危険な理由
コンタクトレンズには、装用方法によっていくつかの種類があります。日本眼科学会の『コンタクトレンズ診療ガイドライン(第2版)』では、起床後に装用し、就寝時までに外す装用方法を「終日装用」、就寝時も連続して装用する方法を「連続装用」と定義しています。※1 つまり、一般的な終日装用タイプのコンタクトレンズは、就寝前に必ず外すことが前提です。連続装用として承認されていないコンタクトレンズをつけたまま寝ることは、原則として避けるべきとされています。
では、なぜ終日装用のコンタクトレンズをしたまま寝てしまうとよくないのでしょうか。
眠っている間は角膜が酸素不足になりやすい
角膜は、体のなかでも特別な組織です。血管がなく、酸素を血液から受け取ることができないため、空気中の酸素を涙に溶かし込んで吸収するという方法で生きています。目を開けているときは、空気と直接触れているため酸素が比較的届きやすい状態です。
ところが、睡眠中はまぶたが閉じているため、それだけでも角膜への酸素供給量は起きているときより大きく減ります。そこに角膜の表面を覆うコンタクトレンズが加わるので、酸素がさらに届きにくくなります。まぶたの閉鎖+コンタクトレンズという2重の壁が酸素の供給を多くく減少させてしまうわけです。
酸素不足が続くと、角膜の細胞がダメージを受けやすくなり、バリア機能が低下します。角膜内皮細胞は一度減ってしまうと再生しない組織であるため、長期的に繰り返すほど視力への影響が出る可能性が高まります。
涙が減って乾燥しコンタクトレンズが張り付きやすくなる
まばたきには涙を目の表面に均一に広げ、古い涙を洗い流す重要な役割があります。しかし、睡眠中はまばたきをほとんどしないため、涙の分泌や入れ替わりが大きく低下し、目の表面が乾いた状態になります。
すると、本来涙の上に乗った状態でなければいけないコンタクトレンズが目の表面に密着し、張り付きやすい状態になります。起きたときに「なかなか外れない」「張り付いて痛い」という感覚があるのは、この密着によるものです。乾いたまま無理に外そうとすると角膜の表面を傷つけるおそれがあるため、起床直後に無理やりはずすのはかえってよくありません。
コンタクトレンズをつけたまま寝ると起こりうる症状
コンタクトレンズをつけたまま寝てしまった後は、程度の差はあれど何らかの目の変化を感じることがほとんどです。軽い不快感で済む場合もありますが、症状の重さによって対応が変わります。
目の乾きや違和感
起床後に最も多く感じるのが、乾燥感やゴロゴロとした異物感です。瞼を開けたときに「砂が入っているみたい」「何かが引っかかる感じ」があるのは、コンタクトレンズが乾いて目の表面に張り付いている状態です。
これらの症状は比較的軽度に見えますが、この状態で力任せにコンタクトレンズを外そうとするのは危険です。乾いたコンタクトレンズを無理に引き剥がすと、角膜の表面の細胞まで一緒に傷ついたり、剥がれたりする可能性があります。乾燥感や違和感がある場合は、すぐに外そうとしないでください。次の「対処法」のパートで具体的な手順をお伝えします。
充血や痛みや見えにくさ
乾燥感にとどまらず、目の白い部分が赤くなっていたり、鋭い痛みや視界のかすみ、光がいつもより眩しく感じるといった症状がある場合は、角膜が傷ついていたり、炎症が起きている可能性があります。
日本眼科学会の『感染性角膜炎診療ガイドライン(第2版)』では、コンタクトレンズは感染性角膜炎の誘因として特に重要とされており、使用方法の誤りが感染リスクを高めることが指摘されています。※2 角膜炎が重症化すると、緑膿菌やアカントアメーバによる深刻な感染につながりかねません。充血や痛みは「少し休めば治る」と油断せず、症状の変化をしっかり観察することが大切です。
寝てしまった直後にやるべき対処法
コンタクトレンズをつけたまま寝てしまったことに気づいたら、まずは焦らないことが重要です。急いで外そうとしたり、こすったりするのは逆効果ですから避けましょう。以下の手順で、目の状態を確認しながら落ち着いて対処してください。
起きてすぐ無理に外そうとしない
目を開けた瞬間に違和感があると、反射的に外そうとしてしまいがちです。しかし、乾燥して張り付いた状態のコンタクトレンズを力で引き剥がすと、角膜の表面に傷がつくリスクがあります。これは軽いトラブルを一気に悪化させる原因になりかねません。
まず、目を閉じたまま数回ゆっくりまばたきをしてください。次に、目の状態を鏡で確認し、充血や強い痛みがないかどうかをチェックします。症状が軽い場合は、このまま次のステップに進みますが、痛みや充血が強い場合は、無理に外すことをやめて至急眼科を受診しましょう。
目をうるおしてからゆっくり外す
コンタクトレンズ対応の人工涙液や目薬を差すと、眼球とコンタクトレンズの間に液が入ってコンタクトレンズが少しずつ浮き、外れやすくなります。点眼した後は、目を閉じてしばらく待つか、ゆっくりまばたきを繰り返して液の循環を促しましょう。
水道水で目を洗うのはやめてください。水道水には塩素や微生物が含まれており、傷ついた角膜に触れると感染症のリスクが高まります。あくまでもコンタクトレンズ対応の専用目薬を使うようにしてください。
潤いが戻ってきたと感じたら、焦らずにゆっくりとコンタクトレンズを外します。それでも外れない場合や痛みがある場合は、無理をせず眼科を受診してください。安全に取り出してもらえます。
外した後はその日の再装用を避ける
コンタクトレンズがうまく外れたからといって、安心してすぐ新しいレンズをつけてしまう方もいます。しかし、コンタクトレンズを外した後の目は、酸素不足や乾燥のダメージが残っている可能性が高く、目への負担が大きくなります。
コンタクトレンズを外した後は、症状が軽い場合でもその日は目を休めてください。乾燥感やゴロゴロ感がしばらく続くようであれば、眼科への相談を検討しましょう。翌日以降も異常を感じる場合は、放置せずに受診することをお勧めします。
すぐに眼科を受診したほうがよい症状
起きた後に症状があっても、「少し待てば治るかな」と様子を見てしまうことがあります。しかし、目のトラブルは早期対応が回復に大きく影響します。日本眼科医会では、コンタクトレンズの長時間装用や寝落ちは目への大きなリスクになると案内しており、症状がない場合でも定期的な眼科受診の重要性を伝えています。※4 以下のような症状がある場合は、自己判断で放置せず、その日のうちに眼科を受診しましょう。
強い痛みや充血がある
起床後にコンタクトレンズを外した後も、鋭い痛みや強い充血が続く場合は、角膜が傷ついているサインである可能性が高いです。目の痛みは「乾燥しているだけ」と思いがちですが、角膜の傷や炎症が起きていると、時間が経つにつれて悪化することがあります。
市販の目薬でしのごうとせず、まず眼科を受診して状態を確認してもらいましょう。角膜炎や角膜潰瘍は、適切な治療が遅れると重症化しかねません。強い痛みや充血があるときは、その日のうちに医療機関を受診してください。
かすみやまぶしさや目やにが続く
視界がかすんで見えにくい、光を異常に眩しく感じる、目やにが増えているといった症状は、目の表面で感染や炎症が起きているサインかもしれません。これらの症状が数時間経っても改善しない場合は、翌日まで様子を見るのではなくすぐ眼科に行きましょう。
PMDA(医薬品医療機器総合機構)が公開しているコンタクトレンズの添付文書には、角膜潰瘍、角膜炎、角膜びらん、角膜浮腫、結膜炎などの有害事象が記載されており、放置すると失明につながるものがあるとも示されています。※3 目の感染症は進行が早いため、症状が出たらためらわずに受診することが大切です。
関連記事:【医師監修】寝る前にするとよく眠れる!快眠のための習慣4選と避けるべき習慣
昼寝でもコンタクトレンズを外したほうがよい理由
「夜中ずっと寝るのは危ないとわかった。でも30分くらいの昼寝なら大丈夫では?」と思う方も多いかもしれません。しかし、短時間の昼寝であっても、コンタクトレンズをつけたまま眠ることは避けるべきとされています。
PMDAのコンタクトレンズ添付文書には、「寝る前には必ずはずして捨ててください。昼寝、仮眠をするときもレンズをはずして捨ててください」と明確に記載されています(一日交換終日装用ソフトコンタクトレンズの場合)。※3 医療機器として公式に定められた使用上の注意ですから、「短時間なら例外」というルールは存在しません。特にソフトコンタクトレンズはトラブルが起きやすいため、慎重な使用が求められます。
短時間でも乾燥と張り付きは起こりうる
目を閉じている間は、寝ている時間の長さに関わらず、まばたきが止まり涙の循環が低下します。30分の昼寝でも、その間目の表面は乾燥し続けていきます。
「短時間だから乾燥しない」ということはありません。時間の長短よりも、「眠っている間はまばたきがない」という点を理解しておくことが大切です。
うたた寝は想定より長くなることが多い
「ちょっと横になるだけ」「電車で5分うとうとするだけ」のつもりが、気づいたら1〜2時間経っていた、という経験は誰にでもあるはずです。特にソファでのうたた寝や、帰宅後のうっかり仮眠などは、当初の予定より長くなりやすいですね。勉強中の机での寝落ちなども同様です。 「この程度なら大丈夫」という見通しが外れたときに、目には負担がかかっています。昼寝や仮眠をとる前にコンタクトレンズを外すひと手間を習慣にしておくと、乾燥による目のトラブルを確実に防げます。
寝落ちを防ぐために見直したい習慣
一度気をつけようと思っても、疲れている日や忙しい日には同じことを繰り返してしまいがちです。そこで大切なのは、外さざるを得ない仕組みを生活の中に組み込むことです。日本眼科医会では、定期的な眼科受診と正しい装用習慣の重要性を継続的に呼びかけています。※4
帰宅後すぐ外す流れを作る
コンタクトレンズをつけたまま寝てしまう大きな原因のひとつは、帰宅後も装用し続けることです。夜遅い帰宅後にソファに腰を下ろすと、そのまま眠ってしまう可能性があります。 装用したまま寝てしまうことを防ぐには、「帰宅したら手を洗ってすぐコンタクトを外す」という行動をルーティン化するのが効果的です。洗面台にコンタクトケースと保存液を置いておき、帰宅後の手洗い後すぐコンタクトレンズを外すという流れを定着させましょう。「リビングに座る前に外す」という順番を決めておくだけで、寝落ちのリスクを大きく下げられます。
疲れている日はメガネを使う
残業で帰りが遅い日、体調がすぐれない日、長時間の移動がある日など、いつもより疲れやすい状況では、コンタクトレンズをつけたまま眠ってしまうリスクが高まります。こういった日は、最初からメガネに切り替えることが最も確実な予防策です。
「メガネが手元にない」という方は、職場や外出先にメガネを一本置いておくと安心です。また、コンタクトレンズの使用時間が長くなりがちな日は、夕方以降をメガネに切り替えるだけでも目への負担は大きく変わります。コンタクトレンズとメガネを場面に応じて使い分け、目の健康を長く保ちましょう。
まとめ:コンタクトレンズをつけたまま寝たときは落ち着いて対処し再発も防ぐ
コンタクトレンズをつけたまま寝てしまっても、まずは冷静に対処することが大切です。この記事の内容を改めて整理します。
一般的な終日装用タイプのコンタクトレンズは、就寝前に外すことが前提です。眠っている間は角膜が酸素不足になり、涙の循環も低下してレンズが乾燥・張り付きやすくなります。起きてすぐ無理に外そうとするのではなく、コンタクトレンズ装用中も使える目薬で目を潤わせてから、ゆっくりと外すことが正しい対処法です。外した後はその日のコンタクト再装用を控え、目を十分に休めてください。
強い痛みや充血、視界のかすみ、まぶしさ、目やにが続く場合は、その日のうちに眼科を受診することをお勧めします。短時間の昼寝や仮眠でも例外ではありません。
再発を防ぐには、帰宅後すぐ外す習慣と、疲れた日のメガネへの切り替えが効果的です。目は毎日使い続けるものだからこそ、小さな習慣の積み重ねが大切です。快適な睡眠と目の健康を両立するために、今日から少しずつ行動を変えてみてください。
就寝前のルーティンを整えることは、目の健康だけでなく、睡眠の質にも影響します。コンタクトレンズを外すタイミングに合わせて、就寝前の行動を見直すのもよいでしょう。
・参考
※1 コンタクトレンズ診療ガイドライン(第2版)| 日本眼科学会
※2 感染性角膜炎診療ガイドライン(第3版) | 日本眼科学会










