睡眠コラム by Koala Sleep Japan2026年4月6日読了目安時間: 5

【医師監修】五月病で眠れない原因とセルフケア方法6選

後平 泰信

医療法人徳洲会札幌もいわ徳洲会病院(名称変更) 病院長 現職。

【研究分野】睡眠全般、睡眠時無呼吸症候群、内科全般、循環器内科、スポーツ医学、遠隔医療、地域医療

明るくハキハキとした話し方で、専門的な内容もわかりやすく伝える。特に睡眠医療の分野で多数の講演・メディア出演歴があり、CPAP治療やいびき・睡眠負債など、広く深い見識から生活に密着したあらゆる話題にも柔軟に対応。寝具などスリープテック領域の開発や監修にも多数関わった実績あり。

「GWが明けてから、夜なかなか眠れない…」「疲れているはずなのに、布団に入っても眠れない」。もしこのような悩みを抱えているとしたら、それは五月病の症状のひとつかもしれません。

五月病は「気の持ちよう」と思われがちですが、不眠をはじめとした心身の不調は、決して怠けや弱さではなく、自律神経の乱れや心理的なストレス反応によって起こる、れっきとした体の反応です。本記事では、五月病による不眠の原因、セルフケアの方法、そして「いつ受診すべきか」の目安をわかりやすくご説明します。

五月病とは何か?

「五月病」は正式な医学用語ではありませんが、GW明け前後に現れる心身の不調を総称した言葉として広く知られています。医学的には、適応障害や、症状が重くなるとうつ病として診断されることがあります。

もともとは1960年代後半に、難関大学に入学した学生が5月頃に無気力になる現象として名付けられましたが、現在では学生だけでなく、新入社員・異動・転職・引っ越しなど、環境の変化を経験したすべての方に起こりうる状態として知られています。

五月病が起こりやすいのには理由があります。4月の新生活スタートから約1ヶ月間、多くの人は新しい環境に適応しようと頑張り続けます。そして、GWで一時的に緊張が解けたとき、これまで溜め込んでいた疲れやストレスが一気に表面化しやすくなるのです。

五月病で「眠れなくなる」メカニズム

五月病の代表的な症状のひとつが不眠です。「疲れているはずなのに眠れない」という状態は、一見すると矛盾しているように思えますが、これには明確な理由があります。

新しい環境や人間関係でのストレスが続くと、体は常に交感神経(緊張・興奮をつかさどる神経)が優位な状態になりやすくなります。本来、夜になると副交感神経(リラックスをつかさどる神経)が優位になって体を休息モードに切り替えるはずなのですが、強いストレス下では夜になっても交感神経が過剰に働き続け、脳が「休んでいいよ」というモードに入りにくくなることがあるとされています。

具体的には、以下のような不眠の症状が五月病では多く報告されています。

  • なかなか寝つけない(入眠困難)
  • 夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)
  • 朝早く目が覚めてしまう(早朝覚醒)
  • 眠れた気がしない・熟睡できない(熟眠困難)
  • ストレスに関連した悪夢を見る

また、眠れないことで夜型の生活になり、昼夜逆転が起きやすくなります。その結果、さらに睡眠リズムが崩れ、昼間の強い眠気・集中力の低下・気分の落ち込みが悪循環を生むことも少なくありません。

後平 泰信 医師
後平 泰信 医師
五月病かもしれないと感じている方々はきっとつらい思いをされていらっしゃるでしょう。
まずは自分なりにストレスを回避する行動をしてみて、特に睡眠に関しては規則正しい生活を心がけてください。
症状が長期に渡る場合はうつ病や睡眠障害の可能性もありますので、一人で悩まずに専門医に早めに相談しましょう。

五月病の不眠:セルフケアの方法

五月病の不眠セルフケア6選五月病による不眠には、いくつかのセルフケアが効果的である可能性があります。無理なく取り組めるものから試してみてください。

①起床時間を固定して体内時計を整える

不眠の改善に最も有効とされるアプローチのひとつが、毎朝同じ時間に起きることです。たとえ眠れなかった日であっても、決まった時間に起き、朝の光を浴びることで体内時計がリセットされやすくなります。眠気が強くても昼寝は15〜20分以内にとどめ、夕方以降の昼寝は避けることが大切です。

②就寝前のリラックスルーティンをつくる

就寝1〜2時間前からリラックスできる時間を意識的につくりましょう。ぬるめのお湯(38〜40℃程度)での入浴、ゆったりとした音楽、軽いストレッチ、読書(刺激の少ないもの)などが有効とされています。一方で、スマートフォンやパソコン画面のブルーライトは睡眠ホルモン(メラトニン)の分泌を妨げる可能性があるため、就寝前は控えることをおすすめします。

③「眠れない」ことを過度に気にしすぎない

眠れないことへの焦りが、さらに脳を覚醒させてしまうことがあります。「眠れなくてもいい、横になって休んでいるだけでも体は回復する」という気持ちで過ごすことが、逆に睡眠に入りやすくなるきっかけになることもあります。無理に寝ようとせず、深呼吸や読書など、心を落ち着けるルーティンに切り替えるのも効果的です。

④ストレスの原因と距離を置く時間をつくる

五月病の根本的な原因はストレスです。仕事や学校のことを考えながら眠ろうとしても、脳はなかなか休まりません。就寝前は「今日の悩み事リスト」をノートに書き出して頭から切り離す・好きなことをする時間をつくる・信頼できる人に話を聞いてもらうなどの方法で、意識的にストレスと距離を置く時間をつくることが大切です。

⑤日中に適度な運動を取り入れる

ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動は、自律神経のバランスを整え、夜の睡眠の質を改善する可能性があるとされています。ただし、就寝直前の激しい運動は体を覚醒させてしまうため、運動は日中〜夕方の早い時間帯に行うことが理想的です。

⑥食事の内容にも目を向ける

気分や感情をコントロールする脳内の神経伝達物質(セロトニンなど)は、食事から摂る栄養素をもとに作られるとされています。特にトリプトファン(たんぱく質に含まれる必須アミノ酸)はセロトニンの原料として知られており、肉・魚・大豆製品・乳製品などに多く含まれています。バランスのとれた食事を意識することが、心の安定にもつながる可能性があります。

こんな症状があれば受診のサインかも

セルフケアを続けていても改善が見られない場合や、以下のような症状がある場合は、医療機関への相談を検討してください。

  • 眠れない状態が2週間以上続いている
  • 何も楽しめない・休日も気分が晴れない状態が続いている
  • 食欲がない日が続いている
  • 遅刻や欠勤が増えるなど、日常生活や仕事・学校に支障が出ている
  • 気分の落ち込みが強く、涙が出る・消えてしまいたいという気持ちがある

受診の際は、内科・心療内科・精神科・睡眠外来などが選択肢になります。「精神科はハードルが高い」と感じる方は、まずはかかりつけ医や内科に相談してみるのも良いでしょう。五月病は適切なサポートで回復できることが多いため、ひとりで抱え込まずに専門家に頼ることも大切な選択肢です。

五月病の予防方法

五月病は誰にでも起こりうるものですが、特に几帳面で責任感が強い・完璧主義・人の目を気にしやすいといった性格傾向のある方は、ストレスを溜め込みやすく、なりやすい傾向があると言われています。

予防という観点では、「ストレスをゼロにする」ことよりも、ストレスと上手に付き合う方法を見つけることが現実的です。好きなことを楽しむ時間を持つ・誰かに相談する・「完璧にやらなくていい」と意識的に自分に許可を与えるなど、小さなことから取り組んでいくことが五月病の予防につながります。

まとめ

GW後に眠れなくなる・眠りが浅くなるという状態は、心と体が疲れているサインです。無理に「頑張らなきゃ」と思いすぎず、まずは起床時間の固定・リラックスルーティン・適度な運動といったセルフケアから始めてみましょう。

不眠の症状が2週間以上続く、または生活に支障が出るほどつらい場合は、ひとりで抱え込まずに医療機関への相談を検討してみてください。五月病は、適切なケアで回復できることが多い状態です。焦らず、自分のペースで対処していくことが大切です。

参考文献

よくある質問(FAQ)

五月病で眠れないのはなぜですか?

新しい環境へのストレスが続くと、体が交感神経(緊張モード)優位な状態になりやすく、夜になっても脳と体がリラックスモードに切り替わりにくくなることがあるためです。その結果、入眠困難・中途覚醒・熟睡できないなどの不眠症状が起きやすくなるとされています。

五月病の不眠はどのくらいで治りますか?

軽度であれば、生活リズムの調整やストレスのケアで数週間〜1〜2ヶ月で改善するケースも多いとされています。ただし、症状が2週間以上続く・日常生活に支障が出るほど重い場合は、医療機関への相談をお勧めします。

五月病の不眠に市販の睡眠補助薬を使っても良いですか?

一時的な使用であれば市販品の利用という選択肢もありますが、根本的な原因(ストレス・生活リズムの乱れ)へのアプローチが重要です。薬に頼りすぎず、生活習慣の改善も並行して行うことをおすすめします。また、症状が長引く場合は自己判断での服用より、医師への相談が優先されます。

五月病はいつ病院に行けば良いですか?

眠れない・気分が落ち込む・何も楽しめないといった症状が2週間以上続く場合や、日常生活(仕事・学校)に支障が出ている場合は、受診のタイミングの目安とされています。受診先は内科・心療内科・精神科・睡眠外来などが考えられます。迷った場合は、まずかかりつけ医に相談してみましょう。

五月病になりやすい人はどんな特徴がありますか?

几帳面・責任感が強い・完璧主義・人の目を気にしやすいといった性格傾向の方がなりやすいと言われています。また、4月に大きな環境変化(就職・進学・異動など)を経験した方も注意が必要です。ひとりで抱え込まず、誰かに話す・相談するという習慣が予防につながります。