
松岡 雄治
地方国立大学医学部卒業後、横浜市内で初期臨床研修を経て、関東の基幹病院で勤務中。
資格:医師国家試験合格、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級
愛犬が夜になっても落ち着かず、鳴いたり歩き回ったりすると、「どうすれば寝てくれるのか」と困ったり、「病気ではないか」と心配になったりする方もいるでしょう。犬が夜に寝ない理由は、年齢や生活リズム、日中の活動量などさまざまです。
この記事では、犬が夜寝ない原因を年代別に分け、今夜からできる対処法や睡眠環境の整え方、動物病院へ相談したいサインを解説します。犬も飼い主もが落ち着いて眠れる環境を作るために、ぜひ参考にしてください。
犬が夜寝ないのはなぜ?年代別の原因
犬が夜に寝ない理由は、子犬・成犬・老犬で異なります。子犬では新しい環境への不安、成犬では活動不足やストレス、老犬では痛みや認知機能の低下などが考えられます。
同じように夜鳴きや歩き回りがみられても、始まった時期や伴う症状によって必要な対応は変わります。夜の行動だけでなく、食欲や排泄、呼吸、歩き方なども普段と比べてみましょう。
子犬:体力が余っている・環境に慣れていない
子犬は短い睡眠と活動を繰り返す行動パターンをとることがしられています。人と同じように夜から朝まで眠るとは限りません。日中に遊ぶ機会が少なかった場合は、夜になってから元気に動き回ることもあります。
また、家へ迎えたばかりの子犬は、親犬やきょうだいから離れ、慣れないにおいや音に囲まれています。不安から鳴いたり、安心できる寝場所を探して動き回ったりする場合もあります。
夜に落ち着かないときは、次の点を確認しましょう。
- 空腹ではないか
- 排泄したがっていないか
- 寝床が暑すぎたり寒すぎたりしないか
- 日中に安心して休めているか
- 遊びや触れ合いの時間を持てているか
月齢に合った食事と排泄の間隔を保ち、安心して休める寝床を用意してください。ただし、嘔吐や下痢、元気の低下、震えなどを伴う場合は、環境に慣れていないだけと考えず、動物病院へ相談しましょう。
成犬:日中の寝すぎ・運動不足・ストレス
成犬は、留守番中に長く眠り、日中に体や頭を使う機会が少ないと、夜になっても活動する余力が残ることがあります。散歩の時間が短かった日や、雨などで外へ出られなかった日に寝つきにくくなる犬もいます。
一方、引っ越しや模様替え、家族構成の変化、工事の音などによるストレスが、夜の行動に影響する場合もあります。飼い主と離れることへの不安から、夜に吠えたり歩き回ったりすることもあります
ただし、これまで眠れていた犬が急に寝なくなった場合は、生活リズムだけでなくあらためて体調も確認してください。次のような変化は、かゆみや痛み、内臓の不調などが関係している可能性があります。
- 体の同じ場所を頻繁になめる
- 寝る姿勢を何度も変える
- 横になることを嫌がる
- 呼吸が普段より速い
- 食欲や排泄の状態が変わった
生活環境を整えても夜の行動が続く場合や、ほかの症状を伴う場合は、動物病院へ相談しましょう。
老犬:認知機能の低下・痛み・トイレ
老犬が夜に寝なくなった場合は、認知機能の低下によって睡眠と覚醒のリズムが変わっている可能性があります。認知機能不全では、夜鳴きや徘徊、夜間の覚醒などがみられることがあります。
ただし、夜に寝ないことだけで認知機能不全とは判断できません。次のような理由で、夜中に起きたり歩き回ったりしている場合もあります。
- 関節の痛みで楽な姿勢をとれない
- 視力や聴力の低下によって不安を感じる
- 排尿回数が増えて何度も起きる
- 暑さや寒さで寝床が快適ではない
- 内臓の不調によって落ち着かない
夜間の行動に加えて、食事量や飲水量、排泄、歩き方なども記録しましょう。急に行動が変わった場合や、痛み・食欲低下などを伴う場合は、年齢のせいと決めつけず、早めに動物病院へ相談してください。
自宅では、寝床までの段差を減らし、夜間も安全に水やトイレへ移動できる動線を確保します。必要に応じて足元を照らす明かりを設置し、水も寝床から移動しやすい場所へ用意しましょう。
犬やほかの動物の一般的な睡眠時間については、以下の記事も参考にしてください。
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犬が夜寝ないときの対策
犬の元気や食欲が普段と変わらない場合は、日中の活動量や就寝前の過ごし方を見直してみましょう。犬を無理に眠らせるのではなく、夜に自然と休みやすい生活リズムを作ることが目的です。
対策を始める前に、水やトイレ、室温に問題がないかを確認してください。これまで眠れていた犬が急に落ち着かなくなった場合や、体調の変化を伴う場合は、生活リズムの改善よりも動物病院への相談を優先します。
1. 日中に運動する・知育おもちゃで遊ぶ
日中は、犬の年齢や体調に合った散歩や遊びを取り入れ、頭と体を適度に使う機会を作りましょう。散歩中ににおいを嗅ぐことも刺激になるため、必ずしも距離や時間を増やす必要はありません。
室内では、フードを探して取り出す知育おもちゃや、短時間のトレーニングを活用できます。最初は簡単に成功できる難易度から始め、知育おもちゃに使用したフードは1日の食事量に含めてください。
激しい運動を就寝直前に行うと、興奮が残って寝つきにくくなる犬もいます。活発な遊びは早めに終え、その後は静かに過ごす時間へ切り替えましょう。
運動量は、散歩後の呼吸や歩き方、翌日の疲れ方も見ながら調整します。子犬や老犬、心臓・関節などに持病のある犬は、自己判断で運動量を増やさず、適切な内容を獣医師へ相談してください。
2. 就寝前のルーティンをつくる
毎晩できるだけ同じ順序で過ごすと、犬が休む時間を予測しやすくなります。たとえば、次のような流れを家庭に合わせて決めましょう。
- 排泄を済ませる
- 穏やかに声をかける
- 照明や生活音を抑える
- 寝床へ移動する
寝る直前は激しい遊びを避け、テレビなどの音量や家族の動きも抑えます。犬が寝床へ入ったら穏やかに褒め、落ち着いている間は過度に構わず休ませましょう。
夜鳴きがある場合は、要求によるものと決めつけず、水やトイレ、室温、痛みなどの問題がないか先に確認してください。健康上の問題がないことを確認したうえで、家族全員で夜鳴きには応じない対応を続けます。
生活リズムは一晩で変わるとは限りません。犬の様子を見ながら、無理のない範囲で続けましょう。
3. 日光浴で昼夜のリズムを整える
朝から日中に自然光を取り入れると、犬が昼夜の明るさの違いを感じやすくなります。朝はカーテンを開け、犬が起きている時間に、散歩や窓辺で過ごす時間を設けましょう。
とくに外出の機会が減った老犬には、体調に無理のない範囲で、日中に光と活動を取り入れることが大切です。ただし、昼寝を無理に妨げる必要はありません。
暑い季節に散歩する場合は、早朝などの涼しい時間帯を選びます。直射日光の当たる場所に長時間とどまらず、水分と日陰も確保してください。
夜は照明を抑え、日中との明るさに差をつけましょう。ただし、視力が低下した犬が暗闇を不安に感じる場合は、足元灯を使い、水やトイレまで安全に移動できるようにします。
昼夜逆転や夜鳴きが続く老犬は、認知機能の低下や体調不良が関係している場合があります。生活リズムの調整だけで解決しようとせず、獣医師へ相談してください。
日光浴は、睡眠ホルモン「メラトニン」を正しく分泌させるためにとても大切です。人間と同じように、朝に太陽の光を浴びることで体内時計がリセットされ、夜になると自然と眠気が訪れるメカニズムが働きます。自力で歩けない場合でも、カートに乗せて外の空気を吸わせたり、窓辺で日向ぼっこをさせたりするだけで十分な効果が期待できます。
犬が安心して眠れる環境づくり
犬が安心して眠るためには、静けさだけでなく、安全性や体への負担にも配慮した寝床が必要です。好みや過ごしやすい環境は犬によって異なるため、飼い主の近くや静かな場所など、複数の選択肢を用意しましょう。
ここでは、光と音、寝床の形、季節に合った室温と寝具という3つの面から、睡眠環境の整え方を紹介します。
1. 静かで暗い環境をつくる
寝床は、玄関やテレビの近く、人が頻繁に通る場所を避けて設置しましょう。夜は照明や生活音を抑え、外の車や人の気配に反応する場合は、寝床を窓から離したり、カーテンで光や視界を遮ったりします。
ただし、完全な暗闇や無音がすべての犬に適しているわけではありません。新しい環境へ来たばかりの犬は、飼い主の気配を感じられる場所のほうが落ち着くことがあります。また、視力が低下した老犬には、安全に移動できるよう足元灯を用意しましょう。
寝床を急に移すのではなく、慣れた毛布や敷物と一緒に少しずつ移動すると、犬が受け入れやすくなります。飼い主の近くと静かな場所の両方に寝床を用意し、犬自身が選べるようにする方法もあります。
2. クレートなど囲まれた寝床を用意する
周囲が囲まれたクレートやケージを、安心して休める場所として好む犬もいます。ただし、叱ったあとに閉じ込めるなど、罰を与える場所として使用してはいけません。
クレートは、犬が中で立ち上がり、向きを変え、体を伸ばして休める大きさを選びます。通気性を確保し、出入り口の周辺にも物を置かず、安全に出入りできる状態にしましょう。
初めは扉を開けたままにし、おやつや慣れた敷物を使って、自分から入れるようにします。短い時間から少しずつ慣らし、嫌がる犬を無理に押し込まないでください。
夜通し鳴いている場合は、単なる要求鳴きと決めつけず、排泄や暑さ・寒さ、痛み、不安などがないか確認しましょう。クレートを好まない犬には、屋根付きベッドや家具の陰など、別の寝床を用意します。
使用時は、首輪やリードが柵へ引っかかる危険がないかも確認してください。安全な慣らし方がわからない場合は、獣医師やドッグトレーナーなどの専門家へ相談しましょう。
3. 季節に合った室温と寝具を整える
室温は、犬種や年齢、被毛、体格、健康状態などに合わせて調整します。過ごしやすい温度には個体差があるため、室温の数値だけでなく、寝姿や移動の様子も確認してください。
暑い時期は、冷房の風が寝床へ直接当たらないようにし、犬が水や涼しい場所へ自由に移動できる状態を保ちます。寒い時期は毛布などを用意し、ペット用ヒーターを使う場合は、低温やけどを防ぐため犬が熱源から離れられるようにしましょう。
犬用ベッドは、体を伸ばせる広さがあり、無理なく出入りできる高さのものが適しています。とくに老犬や関節に不安のある犬には、体が沈み込みすぎず、立ち上がるときに足を取られにくい寝床が適しています。
カバーを取り外して洗える製品を選ぶと、抜け毛や汚れを管理しやすくなります。洗濯後は十分に乾かし、洗剤などの強い香りが残らないようにしてください。濡れたり汚れたりしたときにすぐ交換できるよう、予備の敷物も用意しておくと安心です。
受診を考えたいサイン
一晩寝つけなかっただけであれば、過度に心配する必要はありません。ただし、普段は眠れている犬が急に落ち着かなくなり、食欲や排泄、呼吸などにも変化がある場合は、動物病院へ相談しましょう。
次のような症状がある場合は、早めの受診を検討してください。
- 嘔吐や下痢、食欲不振がある
- 触ると痛がる、震える、足を引きずる
- 何度もトイレへ行く、排尿しにくそうにしている
- 毎晩激しく鳴く、同じ場所を歩き続ける
- 咳が続いている
- 荒い呼吸が続き、横になることを嫌がる
夜鳴きや徘徊は、認知機能の低下だけでなく、痛みや排泄の問題などによって起こることもあります。老犬だからと決めつけず、夜の行動が続く場合は獣医師に確認してもらいましょう。
なかでも、次のような症状は緊急性が高い可能性があります。
- 口を開けるなど、明らかに苦しそうな呼吸をしている
- 舌や歯ぐきの色が白い、または青紫色になっている
- 尿がまったく出ていない
- 呼びかけへの反応がおかしい、意識がもうろうとしている
- けいれんしている
これらの症状がある場合は翌朝まで様子を見ず、かかりつけの動物病院や夜間救急へ速やかに連絡してください。
受診する際は、夜間の様子を撮影した動画に加え、食事量や飲水量、排泄、睡眠時間などの記録があると、獣医師へ状況を伝えやすくなります。
まとめ:犬が夜寝ない夜は原因に合わせて整えよう
犬が夜に寝ない理由は、年齢や生活環境によって異なります。子犬では新しい環境への不安や活動量、成犬では運動不足やストレス、老犬では痛みや排泄、認知機能の変化などが考えられます。
元気や食欲が普段と変わらない場合は、日中に適度な運動を取り入れ、就寝前の過ごし方を整えてみましょう。朝から日中は自然光を取り入れ、夜は照明や生活音を抑えることも、生活リズムを整える助けになります。寝床は静かで落ち着ける場所に置き、季節や犬の体調に合った寝具を選んでください。
一方、荒い呼吸や痛み、嘔吐・下痢、排尿困難などを伴う場合は、生活習慣の問題と決めつけず、動物病院へ相談しましょう。老犬の夜鳴きや徘徊が続く場合も、年齢のせいだけにしないことが大切です。
変化が始まった時期や夜間の様子、食事・飲水・排泄などを記録しておくと、受診時に状況を伝えやすくなります。家庭でできる対策と受診が必要な状態を見分け、犬と飼い主の双方が休みやすい環境を整えましょう。









